東方怪獣録   作:怪獣好き

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人里お茶騒動

 

 皆さんはお茶は好きだろうか。紅茶、中国茶、緑茶と無数に種類があるお茶だが、特に日本人が好むのは緑茶だろう。これは妖怪達だって同じだ。魔女や吸血鬼は除くとして、彼らも喉を潤したいときには水以外なら緑茶を飲む。これは、そんなお茶好きな人々が利用されたある騒動の物語である。

 

幻想郷に人間が追う税住んでいる所はどこかと聞かれたら、迷いなく人里と誰もが答えるだろう。人里は確かに幻想郷最大の街だが、規模はそれほどでもない。なので、何かを商っている店は古くから続く老舗のみとなっている。幻想郷にとあるニュースが流れた。お茶を扱っていた店が、外来人にその店を継がせるというのだ。幻想郷の老舗を外来人に継がせるというのは前代未聞の珍事だ。

 

幻想郷に入ってくる外来人の種類は三つある。一つは凶悪犯罪者などの死んでも誰も困らない人間、一つは自殺をしようとしていた人間、そして運悪く足を踏み入れてしまった人間の三種類である。一つ目の人間は幻想郷に迷い込んだら大抵すぐに殺され、妖怪の糧となる。三つ目の人間は運が良ければすぐに八雲紫や博麗霊夢の手によって幻想郷とおさらばできる。まあ、運が悪ければ妖怪の餌になるが。だが、二つ目の自殺をしようとした人間はどうだろうか。自殺の原因は様々な物がある。借金で首が回らなくなったような自業自得な者からいじめ等で自殺しなければならないほど追いつめられてしまった者まで様々だ。そんな人間は勿論餌になってしまう者が多いが、外での生活に嫌気がさしたり居場所がなかったりで外に帰るという選択肢を取らない者たちがいる。そんな者たちのために作られた長屋がある。通称外来人長屋だ。そこには外に帰らなかった人間や外に帰るまでしばらく滞在しなければならない人間が住んでいて、自殺志願者だった人間達はそこで、人里の役に立ちながら人生の再起を図っている。

 

鈴木隼人もそんな外来人の内の一人だった。彼は外の世界でお茶を販売していたが、友だった人間の連帯保証人となり、裏切られ莫大な借金を背負い、自殺を選んだのだが、運がいいのか悪いのか、ここ幻想郷に迷い込んだのだ。そして妖怪との追いかけっこや霊夢との出会いなどと色々あって最終的に外来人長屋の住人となったのだ。そして、お茶を扱う店の手伝いとして働いていたのだが、そこの一人娘に惚れられ、トントン拍子で店を任されたのだ。元々人柄のよかった彼は、すぐにとはいかなかったがだんだんと若旦那として人里になじんでいった。すべてが順調だった。それは、恐ろしいほどに。

 

人里に妖怪の山から二人の男が降りてきた。大田と木村、彼らは元MACの技術班出身で、MACステーションの生き残りだ。そんな彼らは木更津から頼まれ、道具屋と交渉しに来たのだ。

 

「しかし木更津主任はすごいよな。まさかマッキーを生産しようだなんて。」

「ああ。でも俺は難しいと思うな。正直言ってここの技術レベルじゃ、科学特捜隊のジェットビートル以前の機体すら生産できそうにないぜ。」

「ああ。レアメタルやエンジンの問題もあるしな……だけど、そんな事言えないよな~。」

 

 そんなことを言っていると、銃声が聞こえる。二人は一瞬顔を見合わせると、大急ぎでその音の鳴った方へと向かう。

そこでは旧式の猟銃を持った男が暴れていた。その男は猟銃を乱射していて、里の人々は混乱している。二人はMACガンを抜き、男の猟銃を狙い撃つ。弾は命中し、猟銃は男の手から離れる。そして暴れる男を二人がかりで取り押さえようとしたが、大暴れしてなかなか落ち着かない。結局里の男達も参加し取り押さえると、ふっと男の力が抜け、倒れた。

 

「ふぅ、一体なんだってんだ。」

「とにかく、けが人はいないか確認しないとな。」

 

二人は周囲を確認したが、物が壊れた以上の被害は出ていないようだ。後は自警団に頼んで、さっさとお使いを済ませようとしていると、再び騒ぎが起こる。今度は女性が大暴れして人に噛みつこうとしていた。

 

 

「今日取り押さえた人間は四人。全員暴れていた時の記憶は無い、か。」

「はい。全員お茶を飲んで一息入れた後の記憶がないらしいです。」

 

滝裏の秘密基地。そこで二人は木更津に今日起こったことを説明した。

 

「何が起こったんでしょう。人が意味もなく暴れるなんて。」

「うむ、何か、侵略者の臭いがするな。一応、霊夢さんに話してみるか。」

 

次の日、木更津は博麗神社へ向かった。到着してみると、奥の方で何かが壊れる音と叫ぶ声が聞こえた。

木更津は急ぎ奥に向かう。すると、霊夢が暴れており、それを必死で角の生えた少女が取り押さえていた。。

 

「霊夢、一体どうしちゃったの!?」

「ああああああああああああああああ!!」

 

 これはいけないと木更津は霊夢の首を狙い、手刀をふるう。

 

「ぐぎゃ……」

 

 霊夢は気絶し、大人しくなる。部屋の中は嵐が起こったかの如くボロボロだ。

 

「いや、助かったよ人間。で、あんたは誰?」

「私かい、私は木更津。君は……もしかして鬼かい?」

「その通り、私は鬼の萃香だよ。でも、霊夢はいったいどうして……」

「ふむ……」

 

木更津は、割れた急須と湯呑を見る。

 

「もしかして、霊夢さんはお茶を飲まなかったかい?」

「え?たしかに、縁側でお茶を飲んで一息ついてたけれど、それがどうかしたの?」

「お茶、か。」

 

たしか人里で暴れていた人間達もお茶を飲んだと言っていた。お茶に何かあるのか?

 

木更津は、急須の欠片をサンプルに持ち帰った。そして基地の機器で無事だった高性能成分分析機にかける。すると、驚くべき結果が出た。

 

「これは……」

「主任、どうかされたんですか。」

「ああ、実はな……」

 

そう言いかけた時、大田がお茶を飲もうとした。

 

「飲むな!大田。」

「え、あ、わ!」

 

大田はいきなりの大声にお茶をこぼす。

 

「一体なんですか主任。」

「実はな、今お茶の分析結果が出たんだ。それで分かったんだが、どうやらこのお茶には宇宙ケシの実の成分が入っているんだ。」

「宇宙ケシ?」

「ああ。一昔前、煙草の中にその宇宙ケシの実が入っていてな、人を凶暴化させたのだ。」

「じゃあ今回の人の凶暴化の原因は……」

「十中八九、お茶によるものだ。」

「じゃあ大変だ!お茶を飲まない日なんてないですよ。」

「ああ。だが、被害は意外に小さい。どうやら、特定のお茶にのみ入っているらしい。俺は霊夢さんと共にお茶屋へ行く。大田、お前は永遠亭へ行って永琳聖戦を呼んで来い。他の三人は鎮静剤を持って先に人里へ行け!」

「了解!」

 

木更津は再び博麗神社へと向かう。着くと、一人の女性も来ていた。誰だろうか。

奥へ行くと、布団に入った霊夢がいた。声をかけると、よろりと起き上がった。

 

「木更津さん。さっきは恥ずかしい所を見せちゃったわね。」

「いや、霊夢さんが悪いんじゃない。お茶が悪いんだ。」

 

お茶、その言葉に女性は肩を震わす。木更津は、お茶についての話を霊夢にした。

 

「へぇ、じゃあその宇宙ケシってのがお茶に入っていたのね……舐められたものだわ。」

 

霊夢は心底悔しそうだ。まあ、異変解決のプロフェッショナルが今回の異変の首謀者の思う通りの行動をしてしまったのだ。無理もない。

 

「で、そっちのあんたは誰?」

「あ、わ、私は、その……」

 

女性は言いにくそうに口ごもっていたが、意を決したように口を開く。

 

「私は人里の茶問屋の娘です。」

「茶問屋の娘?」

「はい、今回は、私どものお茶のせいでご迷惑をおかけしました。」

「で、その茶問屋の娘が何の用。」

 

霊夢はかなり機嫌悪く言い放つ。

 

「はい、実は、私の夫が何か悪いものに取りつかれているようなのです。」

 

茶問屋の娘話は次のようなものだった。

最近、夫の様子がおかしい。昼間は何か上の空で、夜も寝ずに何かをしている。夜中偶然目覚めて、夫の部屋を見てみると、夫が恐ろしい、狂った目で何かを粉末にし、お茶っ葉に混ぜ込んでいたのだ。その行為を止めたかったが、その時の夫の目が恐ろしく、何もできなかった。きっと悪い何かに取りつかれたに間違いない。なので、着き物を落としてもらおうとここまで来た。

 

「なるほど、たしか茶問屋の若旦那って言えば、外来人だったわね。もしかしたら、本性を現しただけじゃないの?」

「違います!彼は優しくて、とてもお茶に毒を仕込むような人間ではありません。」

「ふぅむ……その何かが宇宙ケシであることには間違いない。だが、あなたの夫もまた誰かに操られているな。」

「ま、行ってみない事には始まらないわね。」

 

霊夢は立ち上がり、お祓い棒を持って外に出る。

 

「もう大丈夫なのかい?」

「ええ。私をコケにしてくれた奴をコテンパンにしないと気が済まないのよ。」

「そうか。じゃあ行こうか。」

 

そして木更津と霊夢は人里へと向かう。人里につく寸前、二人は驚愕した。人里で火の手が上がっていたのだ。急いで人里に入ると、多くの住人が暴れまわっていた。

 

「これは……!どうやら、急がないといけないな」

「ええ!」

 

二人は急ぎお茶問屋に入る。そこでは、ぼうっと虚空を見上げる鈴木隼人がいた。

 

「あなたね、今回の異変の主犯は!」

「霊夢さん、厳密には違う。犯人は彼に憑いているやつだ。正体を現せ、メトロン星人!」

 

 メトロン星人、その言葉を聞くと、鈴木は不気味に笑う。

 

「ふふふ……まさか、我らの事を知っている者がいるとはな。」

「メトロン星人?」

「ああ。こいつは怪獣でも妖怪でもない。別の星から来た侵略者なんだ。メトロン星人、なぜこんな真似をする。」

「実験さ。」

「実験だと!」

「そう。宇宙ケシの実が人を狂わすのは前任者の実験で十分なデータが取れた。私はそれを、君達が一般に飲む飲料に混ぜてみたのさ。名付けて目兎龍茶作戦だ。どうだ、面白いだろう?」

「ふざけないで!」

 

霊夢が札を出そうとしたが、鈴木は不気味に笑ったままだ。

 

「おっと、この体はただの人間の物だ。傷つけていいのかね?」

「ええ。」

「え?」

 

霊夢は、札を鈴木に叩きつけた。

 

「ぐぁ!貴様、この体は人間だぞ。なぜ攻撃できる!」

「弾幕用の札に殺傷能力は無いわ。さあ、あなたがその体から出ていくまでぶつけるわよ。」

「くっ……なんて野蛮なんだ。仕方ない。」

 

がくりと鈴木が倒れる。どうやら、メトロン星人が出ていったようだ。

 

「霊夢さん……荒療治ですね。」

「ふん。異変の首謀者にかける情けは無いわ。」

「主任!」

「おお、大田か。」

「永琳先生たち、呼んできましたよ。」

「よし、後はメトロン星人の……」

 

その時であった、空が軋む音が三人に聞こえた。

 

「……!まさか。」

 

三人が外に出ると、サクランボ型のメトロン星人の宇宙船が空の割れ目に入って行こうとしていた。

 

「くそ、あのままでは逃がしてしまう!」

「でも、さすがにMACガンでは宇宙船は落とせませんよ。」

「くそ、マッキーが完成していたら……!」

 

その時であった。空の割れ目を覆うように、裂け目ができた。

 

「あれは?」

「まったく、遅いわよ、紫。」

 

その裂け目から無数のレーザーや弾幕が宇宙船に降り注ぎ、火を吹いて墜落していく。さらに墜落する先に隙間が現れ、宇宙船を飲みこんだ。

 

「何が起こったんだ……」

「わ、わかりません。」

「これが妖怪の大賢者、八雲紫の力よ。」

 

木更津と大田は驚いていた。妖怪の力の強さに。そして、目の前にも隙間が現れ、金髪の妖艶な女性が現れた。

 

「初めまして、ですわね。木更津さん。」

「あ、あなたが八雲、紫さん……」

「この間のザンボラーとの戦いでのご協力の感謝をしていませんでしたね。」

「い、いえ。MACの人間として当然のことをしたまでです。」

「ですが、あなたの協力がなければ幻想郷は滅んでいた。そして今回も。」

「はあ。」

「そのお礼に私の家に招待したいのですが、いかがでしょう。」

「よ、喜んで。」

「では、また……」

「待ってください!」

 

紫が隙間に消える前に木更津は声をかける。

 

「我々が消えて外の世界は、地球はどうなったのですか!」

「……」

 

 少し間が空き、紫は振り返る。

 

「ご心配なく。立派にウルトラマンレオが守り抜きましたよ。」

「ほんとですか!よかった……」

「詳しい話は、東風谷早苗が知っていますよ。では。」

 

そして、八雲紫は隙間に消えていく。木更津はホッとしていた。自分達がいなくなっても、レオは立派に戦いぬいたのかと。

 

「主任。よかったですね。」

「ああ。さて、めちゃめちゃになった人里の復旧に力を貸さねばな。行くぞ、大田。」

「はい!」

 

 こうしてお茶による幻想郷侵略は失敗に終わった。皆さんもお茶にご注意を。もしかしたら私達が信頼し合うのを邪魔するためにお茶に何か仕込む侵略者がいないとも限りませんから。

 

 

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