東方怪獣録   作:怪獣好き

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今回はオリジナル設定全開で行きます。ご注意を。


咲夜の過去・父との再会

時間。それは一方通行に流れる川のようなもの。その流れは止まる事も、遡る事もできない……普通は、だが。これは時間の物語。時間を止める事の出来る少女は、自身の過去に何を見る。

 

紅い悪魔、レミリア・スカーレットが住む館、紅魔館。その従者である十六夜咲夜は目の前で立ったまま昼寝をするという器用なまねをしている紅魔館の門番、紅美鈴を見て頭を抱えていた。まあ、こんな事していても敵が来ればちゃんとしてくれるし、仕事を放棄しているわけではないのだが。逆を言えば敵意がなければ素通りできると言う事だし、紅魔館の門番がこれでは、紅魔館全体が弛んでいると思われ、評判も下がってしまうかもしれない。

とにかく起こそうと思い、ナイフを投げる。その殺気を察知したのか美鈴は眼を覚まし、寸での所でナイフを避ける。ナイフは門の隣の壁に突き刺さる。

 

「わ!……酷いじゃないですか咲夜さん。私だってナイフが刺さったら痛いんですよ。」

「黙りなさい。全く。いつもいつも昼寝をして、あなたがそんなのでは紅魔館の評判に傷がつくのよ。」

「ははは、すいません。でも、もうすぐ春なんですから、少しぐらい……」

「何か言ったかしら。」

「い、いえ!」

 

咲夜は軽くため息をつき、紅魔館へと戻る。美鈴は気を取り直して門の前に立ち続ける。このやり取りは週に2~3回は行われる。よく飽きずに昼寝をするなと思うが、美鈴もちゃんと考えて昼寝をしているのだろう……多分。

 

咲夜の仕事に休みは無い。主人のわがまま、使えないメイド妖精。咲夜がいないと中々紅魔館は動かない。だが、空き時間を見つけて休憩をとるのも一流のメイドの務めだ。時間を止めて休めばいいと思われるかもしれないが、毎回時間を止めていると自分の体内時計が外の時間とずれてしまうので、休む時には使わない。使うのは、敵が来たときや忙しい時のみだ。今日も仕事の合間に一息つく。そして、自分の持っている時計を見つめる。この時計、自分が持つ唯一の、自分が十六夜咲夜となる前の物だ。自分の血筋に伝わってきた時計らしいが、今の自分は十六夜咲夜。そんな物は関係ない。だが、この時計を眺めていると、捨てきれなかった思い出、ただの少女だった頃の思い出が蘇ってくる。そういえば、今日は……

 

そんなことを考えている時だった。何かガラスが割れるような音が聞こえ、次いで地響きが響く。急いで外を見るとそこには、自分の悪夢がいた。

 

美鈴は驚愕した。いきなり空が割れたと思ったら、中から青いナメクジの化け物が出てきたのだ。しかも特大の。これが新聞に載っていた怪獣とかいう奴だろうか。とにかく、こんなのが紅魔館に入ってきたらたまらない。美鈴はそんなに弾幕勝負は強くない。だが、格闘戦ならば普通の妖怪の中では強い方だ。美鈴は拳法の構えをとり、そのナメクジに飛びかかろうとした。だが、それより先に何かが自分の横を飛んで行った。

 

「あああああああああああああああ!!」

 

それは、叫びながら鬼のような形相でナイフを振るう咲夜だった。咲夜はいつもの瀟洒な雰囲気を捨て、暴れるようにナイフを投げつけている。美鈴はそれを見て一瞬あぜんとしたが、すぐに気を引き締め、咲夜を捕まえようとしている触手を自慢の拳で吹き飛ばす。

「咲夜さん、冷静になってください。」

「美鈴、邪魔しないで!こいつは……こいつは!」

「咲夜さん!」

 

美鈴の言葉は怒りに身を任せている咲夜には届かない。すると二人の耳に、聞いた事のない音が聞こえる。そして空間が歪み、この時間から二人と化け物は消えた。

この化け物こそ、かつてアンヘル星を始めとした数々の星の時間をめちゃくちゃにして滅ぼしてきた怪獣、時間怪獣クロノームである。

 

 どれほどの時間気絶していただろうか。どこだかわからないが森の中で美鈴は目を覚ました。

 

「おねーさん。おねーさん。」

「う、うう……ここは?」

 

 起き上がると、隣には銀髪の少女がいた。

 

「おねーさん。大丈夫?」

「え、うん。大丈夫だよ。ほら。」

 

美鈴は立ち上がると、空中で一回転して見せた。

 

「おお、すごい!」

「ははは。ところでお嬢ちゃん、ここはどこかな?」

「ここ?ここは私のお家だよ。」

「お嬢ちゃんの?」

「うん。」

 

 美鈴が周りを見渡してみると、道の遠くに屋敷が見えた。紅魔館では無い。だが、幻想郷に紅魔館以外の洋館なんてほぼない。どういう事だろうかと考えていると、少女が話しかけてきた。

 

「おねーさん。どうかしたの?」

「え、いや、何でもないよ。ところで、私の他にあなたと同じ髪の色をしたお姉さんはいなかった?」

「いなかったよ。」

 

 どうやら、咲夜は別の場所にいるらしい。さっきのあの剣幕。あれはなんだったのだろう。

 

「おねーさん。おねーさんのお名前は?」

「え?ああ。自己紹介しなくっちゃね。私は紅美鈴。」

「ほんみりん?」

「ほ・ん・め・い・り・ん!あなたは?」

「私?私は○○、○○××だよ。」

「××ちゃんか。いい名前だね。」

「美鈴さん。一緒に遊びましょ。」

「え、いや、その……」

 

困った。自分は咲夜を探さなければならないのに。だが、目の前の少女の頼みを聞かないのも後味が悪い。まあ、咲夜も子供じゃないんだから少しくらい大丈夫だよね。そう思い、少女と遊ぶことにした。

 

「わかった。何して遊ぶ?」

「えっとね、鬼ごっこ!」

「じゃあ、まずは私が鬼をやるね。」

「うん。十数えてね。」

 

こうして、美鈴と少女は遊びに夢中になり、結局夕方になるまで遊んでしまった。

 

 

 咲夜が目を覚ましたのはどこかの屋敷の前だった。その屋敷を見て、咲夜は眼を見開く。

 

「わたしの……家。」

 

そう、その屋敷は咲夜の実家であった。咲夜は、震える手で扉を開き、内部へと入る。同じだ。飾ってある壺の配置からシャンデリアの形、階段の飾りに至るまですべて記憶の底に封印していた物と同じだった。

 

「どうして……何が、どうなっているの?」

 

 この屋敷が今、建っているわけがない。この屋敷は、あの悪夢の日に崩れ落ちたのだから。それこそ、時間を逆行しなければ。

 

「まさか私は、過去の世界にいると言うの?」

 

 あり得ない。自分の能力でも過去に飛ぶことはできないのに、過去に来る事ができるなんて。だが、過去に来たとしか考えられない。それか、これが夢か。そうだ、夢に違いない。

 

「そうだ。」

―――――どうせ夢なら、何をしてもいいよね。

 

咲夜は階段を上り、ある人物に会いに行った。

 

 

美鈴と少女は3時間ぶっ続けで追いかけっこをした。よく飽きないものだ。

 

「あー疲れた。」

「いやー夕方まで遊んじゃったね。」

「もう、美鈴さんったら足早すぎよ。」

「はは、普通の鍛え方はしてないからね。さて……××ちゃん。」

「なあに?」

「もうそろそろお家に帰る時間じゃない?」

「あ、そうだね。美鈴おねーさん。一緒にいこ。」

「え、でも……」

「一緒にご飯食べよ。私、お父様以外とご飯食べた事がないんだ。」

「そう……わかった。でも、ご飯を食べたらわたしは帰るよ。」

「うん!」

 

 美鈴は断れなかった。少女が見せた僅かな悲しみの表情を見ると。でもこの少女、どこかで会った気がするのはなぜだろう。

 

 

咲夜はとある扉の前に来ていた。その扉に書かれている名前を愛おしそうに撫でる。そして、意を決して開けた。

中には一人の銀髪の男が窓から外を見ていた。その男は扉が開いた音に驚き、咲夜を見た。

 

「……?誰だね、君は。」

「私は……私は……!」

 

咲夜は言葉が出なかった。何年も流していなかった涙が止めどなくあふれてくる。

 

「私は、○○××です。お父様!」

「なに?」

 

 そう、この男こそ咲夜の父であった。咲夜の心の中には様々な気持ちが渦巻いていた。

 

「……証拠は。」

「?」

「君が私の娘、○○××であるという証拠だよ。それを見せてみたまえ。」

「……」

 

咲夜は無言で懐中時計を取り出す。それを見て、咲夜の父の目が見開かれる。

 

「それは……!」

 

 咲夜の父はデスクに向かい、懐中時計を机から取り出した。それは、咲夜の物とまったく同じものであった。

 

「そうか……俺はこの時計を娘に渡したのだな。」

「お父様……じゃあ。」

「ああ、認めよう。お前は私の娘だ。」

「お父様……お父様!」

 

咲夜は父に抱きつく。そして父親も抱き返す。一体何年ぶりの感覚だろう。この父の筋肉の感触、臭い、全て、あの日に捨ててきた物だ。そして、父親は疑問を言う。

 

「××。どうやらお前は時間を逆行してきたらしいな。」

「はい……でも、どうしてかわからないの。」

「そうか。お前の能力では無いのだな。」

「……!お父様、私の能力を知っていたのですか?」

「ああ。お前の能力を知れば世間の科学者にモルモットのように扱われると思ってな、その能力を伝えなかったのだ。そして……」

 

そこで父は言葉を切る。そして意を決したように話し始めた。自分の罪を。

 

「××。お前には謝らなければならない事がある。」

「なんですか?」

「××、お前は地球人では無い。月人なのだ。」

 

その言葉で咲夜は殴られたかのような衝撃を受けた。自分が、人間ではない?

 

「どういう事なの?」

「ああ。私はな、かつて月の都がヤプールという悪魔に滅ぼされたときに地球に逃げて来たんだ。そして地上でお前の母親と出会い、お前が生まれたのだ」

「……」

「いつかは伝えなければと思っていたのだ。だが、どうやら私はこれを伝える前に死んでしまったらしいな。」

「……」

「すまん。お前にこんな秘密を明かさぬまま死んだ私を許してくれ!」

「……」

 

咲夜は、頭を下げる父の頭を両手で優しく包んだ。

 

「許すも何も、私は何も恨んではいませんよ。」

「××。」

 

その言葉に咲夜は首を振る。

 

「今の私は十六夜咲夜という名前です。でも、よかった。例え夢でも、お父様にもう一度出会えたのだから。」

「……××。すまない。」

 

そこで咲夜は思い出した。今日は、何月何日だ?

 

「お父様、今日は何月何日ですか?」

「今日?今日は○月○日だが……」

 

○月○日!それはあの悪夢の日ではないか。咲夜は急いで父にこの屋敷から避難する超に言おうとした。だが……

 

「ん?何だこの音は……海鳴り?こんな内陸で……」

 

そして、地響きと共にクロノームが姿を現した。

 

 

美鈴は外からクロノームの出現を見ていた。

 

「あれは……!」

「なに?あの化け物……」

「××ちゃん、ここを動いちゃだめよ。」

「え、美鈴おねーさんは?」

「私はすぐにあの化け物を倒してくるから。」

「え、そんなの無理だよ。」

「無理じゃないよ。大丈夫、私は強いから。」

 

 そう言って、××の制止を振りきりクロノームへと向かう。あの化け物を倒せば元の場所に戻れるかもしれない。クロノームも美鈴に気づき、触手を伸ばして迎撃してくる。それに対し弾幕を張り触手をそらす、そして角のような部分に飛び蹴りをくらわす。そして一旦距離を置き、弾幕を繰り出す。

 

「{華符「セラギネラ9」}」

 

美鈴の周りから無数の弾幕が放たれ、クロノームは後ずさりする。さらに、美鈴は体のでぱったところをつかみ、全力でへし折る。クロノームは叫び声を上げ、光弾を放ってくる。だが、弾幕勝負になれた美鈴に当たるわけがない。戦いは美鈴が優勢に見るが、決定打がない。クロノームはちょこまか動く美鈴の事を無視して、屋敷を破壊しようとしていた。

 

 

屋敷の内部では咲夜が必死になって父親を脱出させようとしていた。

 

「お父様、急いでここから逃げてください。」

「……いや。やめておこう。」

「な、何でですか。」

「××、君の様子では、私は今日死ぬようだね。」

「……!そ、そうです。」

「ならばそれに逆らってはいけない。私が生き残れば、時間が変わってしまう。そうなれば君のいた未来も消えてしまう。お前は、新しい家族を見つけたのだろう?」

 

 そう言われ、十六夜咲夜としての家族の姿が思い浮かんできた。スカーレット姉妹、パチュリー、小悪魔、紅美鈴……

 

「さあ、お前はお前の時間を生きろ。××……いや、十六夜咲夜。」

「……はい。」

「そうだ、最後に頼みがある。この懐中時計をこの時代の××に渡してくれないか?そしてこう言ってくれ。生きろ、何が何でも生き続けるのだ。生き続ければ必ず何かがつかめると。」

「はい、必ず!」

「さあ行くのだ。お前のいた時間に!」

「……はい!」

 

そして咲夜は屋敷を出る。その時、クロノームの攻撃が屋敷に当たり、崩れていく。

 

「お父様……あなたの仇は必ず討ちます。」

 

そして咲夜もクロノームへと向かっていた。

美鈴は蹴りや正拳突き、たまに弾幕を放って攻撃するが、クロノームに対して決定的なダメージが与えられない。すると、後ろからナイフが飛んできて、クロノームに突き刺さる。

 

「咲夜さん!」

「ごめん。遅くなったわ。」

「まともに戻ったのですね。よかった……」

「さあ、あの化け物を殺すわよ。」

「でも、私達の攻撃では火力が……」

「美鈴、あなたの持てる最大の技を使いなさい。」

「え?」

「魔理沙が言ってたわ。一人では無理でも、二人なら何とかなるってね。」

「あの泥棒魔法使いもたまにはいい事言いますね。じゃあ、行きますよ!気符「猛虎内頸」」

 

 美鈴の体に光が集まる。そして……

 

「華符「彩光蓮華掌」」

 

クロノームの頭部に拳を打ち込む。すると、そこに気が集まり、大爆発した。そしてそこに、咲夜が無数のナイフを打ち込み、爆発によって外に見るようになった脳は針千本のようになった。

幾ら生命力がバカに高い怪獣でも、脳みそを攻撃されればまず間違いなく行動不能となる。

 咲夜たちの勝利である。気づくと、体が少しずつ消えていく。完全に消える前に、父との約束を果たさなければ。

 

 完全に崩れた館を前に、少女は茫然としていた。

 

「あ、ああああ、ああああああああ……」

「××ちゃん。」

「あ、美鈴おねーちゃん……おねーちゃん!」

 

少女は美鈴に抱きつき、泣いた。喉が枯れ、涙が枯れ果てても叫び続けた。そして、何とか落ち着いた。

 

「××ちゃんね。」

「あ、あなたは?」

「私は十六夜咲夜。お父様から預かりものですよ。」

 

咲夜は、懐中時計を少女に手渡した。

 

「××ちゃん。強く生きなさい。何が何でも生きるのよ。そうすればきっと何かをつかめるから。それが、お父様の願い。」

「……」

「あ、そうだ。」

 

美鈴は何か思い出したかのように帽子を脱ぎ、少女に渡す。

 

「これ、貸してあげるわ。」

「これは?」

「私の帽子。いつか私に会えたら返してね。」

「ま、待って、待ってよ!」

 

そして、二人の姿はこの時代から消えた。

 

 

「う、う~ん。」

「美鈴、起きなさい。」

 

咲夜はナイフで起こそうとする。

 

「ぎゃ!さ、咲夜さん。それに紅魔館。帰ってきたんですね。」

「ええ。あ、そうだ。少し待ってて。」

 

咲夜は時間を止め自分の部屋に行き、あるものを取り出す。そして美鈴の前に持って行った。

 

「はい。」

「え、こ、これって。」

 

それは、美鈴が少女に与えた帽子であった。

 

「ありがとうね、美鈴おねーちゃん。」

「え、じゃあの子が咲夜さん?」

「さあ、仕事仕事よ。」

「ちょっと待ってくださいよ。咲夜さーん。」

 

こうして彼女達は時間に迷うことなく元の世界に戻ってこれた。この日から、咲夜の美鈴に対する昼寝の起こし方は気持ち優しくなったらしい。

 

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