東方怪獣録   作:怪獣好き

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妖怪標本一号が捕まらない

 風見幽香は花を愛している。なので、冬という季節はあまり好きではなかった。まあ、花が育つのに必要な休眠の季節と考えればいいかもしれないが、それでも花がほとんど育たない季節というのは好きになれない。

なので、様々な植物がその芽を出し、花を開花させる春を告げる春告精リリーホワイトとは意外と仲が良かった。一般に雑魚と言われる妖精であるリリーホワイトと最強クラスの妖怪である幽香の仲がいいのはおかしく思われるかもしれないが、リリーホワイトが通った道には花が芽吹き、美しい桜が咲く。幽香は、それを楽しみにしていたのだ。

なので、リリーホワイト害すると言う事は―――――特に春という季節の間は――――――幽香を敵に回すという事だ。それを、この存在は知らなかった。

その存在の胴はシマウマのような幾何学模様の縞縞で、顔は見ようによっては女性にもみえる……だが女性と見るにしてははるかに不気味な顔をしたその存在は、外の世界で人間標本を集めようとしウルトラマンと戦った三面怪人ダダと呼ばれる存在だ。

このダダは356号という番号が振られ、幻想郷に生息する人間以外の二足歩行の生命体の標本を集めろと上司から命令されたのだ。なのでダダは異次元からのルートで幻想郷に侵入し、そして目についたその生き物をミクロ化機の光線を使って捕獲しようとした。それがこのダダ356号の受難の始まりだとは知らずに……

 

「ダア……ダ……」

「なんだかピンチですよー!」

 

ダダははじめに目についた妖精、リリーホワイトを追いまわしていた。空を飛ぶその存在は意外とすばしっこく、中々捕まえられない。そうこうしている内に、なんだか開けた場所に出た。

 

「あら、リリーじゃない。」

「幽香ー!助けてー!」

 

 そして優香の目は人間によく似た何かを見つけた。何者かは分からないが、とりあえずリリーに害為す者だろう。

 

「へぇ……わかったわ。リリー、危ないから向こう行ってなさい。」

「わかりましたよー。」

「さて。リリーを危ない目にあわして……春の桜が咲かなかったらどうしてくれるの?」

「ダァ?」

 

 その次の瞬間、幻想郷が少しだけ震えた。

 

 異次元に存在するダダの基地。そこにダダ356号は転送されてきた。白かった顔を茶色く焦がして。

 

「だ、だめだ。妖精には強い用心棒がついている……」

 

だが、上司は全くダダの様子を気にした様子は無い。

 

「妖怪標本を早急にとらえ、転送せよ。」

 

 その言葉を受け、ダダ356号は顔を変え再び幻想郷へと向かう。今度は紅い館へと。

 

 紅魔館の悪魔の妹、フランドール・スカーレットは強力無比な能力も持っている。そして同時に、気がふれていると言われている。だが、本当に最初から気がふれていたのだろうか?彼女が生まれたのは495年前、そして幽閉されていた時間も495年。つまり、生まれたばかりの彼女はすぐに幽閉されたのだ。それは誰の意思だ。少なくともスカーレット家の誰かが決めた事には間違いないだろう。それがなぜか、親は反対しなかったのか、それはわからない。だが、少なくとも彼女の気が多少ふれていようと、彼女のせいではない。なので、屋敷に侵入してきたその不届き者がどんな目にあったとしても、その不届き者が不運だったとしか言えないのだ。

 

 ダダ356号は紅魔館の地下に侵入していた。上司の話では、ここに悪魔の妹と呼ばれる妖怪がいるらしい。その標本を送れとのことだ。全く、あの上死はいつも無茶な事を言う。だがやらなければ飯が食えない。仕方なしに壁の内側にワープする。そこでは、一人の少女が体育座りしていた。

 

「あなた、だあれ?」

「ダァ……ダ……」

「ダァダ?ダダって言うの?」

 

 それにダダは答えず、ミクロ化機を使い、光線を浴びせた。だが、それは簡単に避けられる。そしてフランは少し距離を置き、手を伸ばす。

 

「遊んでくれるの?じゃあ……」

―――――簡単には壊れないでね?

 

 その後少しの間、ダダはこの世の地獄という物を味わった。そして、仕上げにギュッとしてドカーンを食らい、ミクロ化機を犠牲にして何とかそこを離れることに成功する。

 

再び異次元にあるダダの基地。そこにダダは転送されてきた。体中余すところなくボロボロになって。

 

「だ、だめだ……フランドール・スカーレットはまずい。あれは、あれを捕らえるのは……不可能だ。」

 

 その必死の言葉にもダダの上司は全く意に介さない。

 

「直ちに妖怪標本を捕らえ、本星に転送せよ。ミクロ化機を送る。これを使い、早急に作戦を遂行せよ。」

 

 その言葉に、理不尽さを感じながらもダダ356号は幻想郷へと戻る。

 

 幻想郷最強の妖怪とは何かと聞かれた場合、意見は分かれる。八雲紫、フランドール・スカーレット、風見幽香などなど……。だが、幻想郷最強の種族は何かと聞かれたら、皆が口をそろえて言うだろう。それは、鬼だと。地底界の旧都に住まう星熊勇義はそんな鬼の中でも最強クラスの実力を持つ。その二つ名は怪力乱神。理屈抜きにこの妖怪は強い。それこそ、挑むなら搦め手で挑むしかない。この勇義にスペルカードルール抜きで戦おうなどよほど自分に自信があるか、ただの愚か者のする事である。そんな愚か者がここに一人……

 旧都が震え、一人の愚か者が吹き飛んでいく。それを見て、勇義は呆れたようにため息を吐く。

 

「ハァ……何年振りかの挑戦者だからどれくらい強いかと思ったら。まさかこれで終わりじゃないだろうね。」

 

 ダダは、何とか立ち上がり、ミクロ化機を勇義に向けようとする。だが、勇義は一瞬で肉薄すると、拳がダダの顔を捕らえる。再び大きく吹き飛び、家屋をいくつか破壊しつつその下に埋もれる。だが、まだダダは立ち上がる。ダダは一応頑丈だ。たとえ高い所から足払いされ落とされようと、スペシウム光線を受けても一応生きていける程度には。

 

「ははは。そんなからくりに頼るようじゃ私には敵わないね。顔を洗って出直しな。」

 

 そして勇義は興味を無くしたように後ろを見せ歩いて行く。それを隙だと思い、ダダはミクロ化機を向ける。だが、その時、ダダの本能が警鐘を鳴らす。今、この引き金を引けば、自分は徹底的に叩きのめされ、殺されると。

 その本能に従いダダは地底界から逃げる。その本能に従って正解だっただろう。鬼は、卑怯な手を嫌う。もし後ろから光線を打っていたらダダの命は無かっただろう。

 

 鬼との戦いからほんの数時間後、ダダ356号は地底界に舞い戻って来ていた。本心を言えば戻ってきたくなどなかった。だが、敗北ならともかく逃げ帰ってきたとなれば今月の査定に響き、最悪首だ。なので、一匹でもいいから妖怪を捕らえなければならない。そう思いつつ、地底界でも有数の大きな屋敷にワープする。

 

 最強の妖怪は誰かという質問に対する答えは多岐にわたる……というのはさっきも言った通りだ。だが、最恐の妖怪は誰かと聞かれれば、その答えは一人しかない。地獄に落ちてきた怨霊すら恐れ、怯む少女、覚り妖怪の一人、古明さとりである。力で叩きのめすのが鬼だとしたら、彼女は心を踏みいじり、潰す力に長けている。それが、覚り妖怪特有の能力である心を読む程度の能力。その能力ゆえに人や妖怪から忌み嫌われ、恐れられ地底界に隠居しているのだが、そんなこと知らないバカな侵入者が一人……

古明地さとりは動じない。たとえ怪しい存在が部屋にいきなり現れ、自分に銃らしき物を突き付けていようと。

 

「ダァ……ダ……」

「……なるほど。私を捕らえ、その、別の星ですか?あなたの故郷に連れ去る気ですか。」

「ダ!?……ダァ……」

「なぜそんなことが分かった。まさかこいつ、俺の脳内を読んだのか。いや、あり得ない……ですか。御名答ですよ。」

「ダ、ダダダ……」

「ふふふ、動揺していますね。心を読まなくても分かりますよ。さて……」

―――――――――あなたのトラウマは何かしら?

 

 その後、ダダには幽香、フランドール、勇義の攻撃が直撃し、地霊殿から大きく吹き飛ばされる。

 

異次元にあるダダの基地。そこに体中ボロボロとなったダダ356号が転送されてきた。ダダは、何とか起き上がり、クラクラする頭で報告した。

 

「申し訳ありません。地底の妖怪は……」

「もういい。」

「は?」

「もういい、と言ったのだ。356号。」

 

 やっとこの地獄のような仕事が終わるのか。そう思い少し浮いたダダの心は、次の言葉でたたき落とされる。

 

「お前には失望した。これからの作戦は別の者に依頼することにする。お前は、くびだ。この世界で朽ち果てるがいい。」

 

 その言葉に慌てるダダ356号。その言葉はダダが一番恐れていた言葉だ。

 

「お願いします。次はきっと成功させますから。どうか、くびは、くびだけは……」

「ふむ、その言葉に偽りは無いな。」

「は、全身全霊を懸けて作戦を遂行させる所存です!」

「ならば最後のチャンスをやろう。次の作戦を確実に遂行せよ。」

「は!」

 

 今度のダダは、死ぬ気で作戦を遂行しようとしていた。まあ当たり前だろう。この星に取り残されれば、確実に待っているのは死だからだ。

 ダダに与えられた最後の任務。それは、博麗神社の破壊、及び博麗霊夢の捕獲、あるいは抹殺である。ダダは巨大化すると、空を飛び博麗神社へと向かう。

 だが、ダダは知らなかった。博麗神社にも鬼が住んでいる事を。

 博麗神社に着いたダダは拳を振り上げ、神社を破壊しようとする。そして、今までのうっ憤を込めて力一杯振り下ろす。だが、その腕は途中で止められる。たった一人の、小さな存在によって。

 

「ダァ……!」

 

 ダダは驚愕した。ただの人間サイズの存在が、自分の攻撃を止めた?さらにその人間サイズの存在は、巨大化してきたのだ。

 

「ダ……ダァ?」

「全く、博麗神社をたたき壊そうだなんて不届きな事を考える奴があいつの他にもいたとはね。」

「ダ、ダァ!」

 

 だが、驚いてばかりもいられない。こいつを排除しなくては自分の命が危ない。ダダはその存在に向かっていくが、その存在が放った一撃で山肌を削りながら下山する事となる。

 

「ふん。あんたもこの頃幻想郷を騒がせている侵略者って奴だろ?じゃあ、容赦はしないよ!」

 

そしてその存在……もう読者の皆様はお気づきだろうが、二つの角に丸三角四角の飾り、小さな百鬼夜行こと伊吹萃香である……は、ダダに掴みかかると、何度も地面に力一杯叩きつけた。

 

「{鬼符「大江山悉皆殺し」}」

 

 である。そして、幻想郷の強豪達の攻撃を受けてきたダダの体にも限界が来た。

 ダダの最後の思考は、

 

「ああ、次生まれ変わったらもう二度と幻想郷何か来ないぞ!あと上司、あんたもここに来てみろ。そして俺みたいに絶望して地獄に堕ちろ!」

 

 であった。ダダ356号は考えつく限り汚い言葉で上司と、幻想郷を罵りつつ爆死した。

 

 

 ダダ本星。そこでダダ356号の上司は画面に向かい話しをしていた。

 

「では、これより作戦実行権をお前達に譲る。その代わり……」

「分かっている。我々は人間よりも丈夫な奴隷となりえる妖怪が欲しい。貴様らも実験用動物として妖怪が欲しい。我らが捕らえた妖怪の一部はお前達ダダに流してやろう。」

「うむ。」

 

 そしてダダ上司は通信を切る。本来ならあんな奴らに頼みたくは無かったが部下の無能さゆえ仕方がない。

 全てはダダ本星の発展のため。356号はその礎になったのだ。まあ、後は吉報を待つことにしよう。

 

「頼んだぞ、レイビーク星人ども。」

 




 なんだか幻想郷サイドを強く書きすぎかな。次はちゃんと侵略させられるかな……
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