東方怪獣録   作:怪獣好き

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かつての過ちは子にめぐる

人は、美しい花を作る手を持ちながら、一旦その手に刃を握るとどんな残酷極まりない行為をする事か……とはMATの伊吹隊長の言葉である。人は自分と違う者を受け入れ、慈しみ、優しさを持つ事が出来る。だが、自分と違う者を恐れ、迫害し、排除しようとするのも人間だ。その人間の傾向は外の世界だろうが幻想郷だろうが変わらない。いや、むしろスペルカードルール導入以前の人里の人間に、自分達の違う存在であり、はるかに強く自分達に恐怖と死を与える妖怪を……慧音のような自分達を守ってくれる側の例外を除いて……愛し、優しくできる存在がいただろうか。白蓮のような存在は極稀なのだ。これは、幻想郷の人間の罪のお話。そして……

博麗霊夢、いや、博麗の巫女は中立である。霊夢はよく人外と宴会などするので妖怪側に傾いているのではという考えを持つ者がいるが、異変が起きれば顔見知りだろうが知らない存在だろうが、人間妖怪幽霊妖精とその存在の種族が何だろうが、そもそもその異変に関係してい無かろうが問答無用で攻撃し、退治するので過激派な中立と言うのが正しいだろう。

そんな霊夢も人間に変わりは無い。なので差別的な感情が全く無いと言ったら嘘になる。だが、霊夢は決して差別しない。人間だろうが妖怪だろうが、散々な目にあわされている宇宙人にさえ差別はしない事に決めている。博麗の巫女が中立だからとは関係なく、差別が、人間をどこまでも醜くできるという事をある事件で知ったからである。

霊夢は月に一度会いに行く人間がいる。霊夢は村人が持ってくるコメや肉、幽香に頼んで摘ませてもらった花を持って人里から少し離れたボロ小屋に飛んだ。その小屋の周囲には無数の穴が掘ってあり、小屋の中には、ボロ布団に寝転がる、一人のボロボロな服を着た男がいた。霊夢はその男に話しかける。

 

「金山さん、一月ぶりね。」

 

 その金山と呼ばれた男は目を開けると、かすれた笑みを浮かべ答える。

 

「やあ、霊夢ちゃん。」

「ちゃんと食べてる?一か月前よりやつれてんじゃないの。」

「いやぁ、最近は食べても吐いちまってね。碌に食えんのさ。」

「そんなんじゃ駄目よ。さあ、今日は肉を持ってきたから、ちゃんと食べなさい。」

「ふふ、霊夢ちゃん。俺はもうだめらしい。」

「……!」

「この間、調子がいいときに霊夢ちゃんに言われた医者に診てもらったんだ。」

「……」

「ガンがもう致命的なまでに広がっていて、あと1週間生きられるかどうからしい。」

「そんな……」

「最後に霊夢ちゃんの顔を見れてよかった。コメや肉は要らないよ。どうせ吐いちまうんだ。」

「そんな事言わないで。あなたには死んでほしくないの!」

 

 霊夢は珍しく声を荒げる。それほどまでにこの男には思い入れがあるのだ。

 

「お願い。あなたが死んだら、良君の宇宙船は誰が見つけるの?」

「宇宙船、か。俺には無念な事が2つある。霊夢ちゃん、聞いてくれるか。」

「ええ。」

「良の宇宙船を見つけられなかった事、そしてあの子の両親に子供の死を伝えられなかった事だ。」

「金山さん……」

「頼む。死ぬのは怖くない。どうせ十数年前に捨てようとした命だ。だが、あのこの宇宙船を見つけてくれないか。そして、あの子の両親に、あの子の遺骨を……ぐ、グググぐぐ……」

「金山さん!」

「く、薬を……」

 

 霊夢は急いで薬を金山に飲ませる。

 

「ふぅ……」

「金山さん。」

「霊夢ちゃん。そう言えば、お母さんに似てきたな。」

「え、そ、そうかしら?」

「ああ。顔とかじゃなく、雰囲気が。だんだんとお母さんに近づいているよ。君のお母さんには世話になりっぱなしだった。君達の優しさは、死んでも忘れないよ。」

「そんな、優しさ何かじゃないわよ。ただの勝手。私も、母さんも自分の勝手でやっているだけよ。」

「ふふふ、一つ、無念な事が増えた。」

「え?」

「君の花嫁姿を見られなかった事だよ。」

「もう!そんなこと言える元気があるならまだ生きられるわよ。さあ、お粥でも作るから待ってなさい。」

「ありがとうな、霊夢ちゃん。」

 

 霊夢は金山に粥を作ってやり、家を出る。そして、家の外にある何の名前も書かれていない墓に花を供、帰路につこうとする。すると、何者かの気配がして札を構えた。そして木の影から魔理沙が出てきた。

 

「よう、霊夢。」

「……なんだ、魔理沙か。」

「何だとは失礼だな。」

「はいはい、で、何の用。」

「霊夢、お前このボロ小屋に住んでいる人間を知っているのか?」

「ええ。母さんの代からの付き合いよ。あなたこそ知っているの?」

「いや、たしか一度会っただけだ。後は人の噂でだな。」

「へえ、どうせ碌でもない噂でしょうね。」

「いや、碌でも無いを通り越してるのか今は誰も何も言わないんだよ。子供の頃は耳を塞ぎたくなるほどの悪評だったのにだぜ?まるで腫れものを触ってるかみたいだ。親父はここに住んでいるのは人間の醜さを嫌というほど味わった人間だって言っていたな。」

「そう。魔理沙のお父さんが言ってる事は的を得ているわね。金山さんは……」

 

その時だった、空が割れる音がした。急いで二人が空へと飛ぶと、宇宙船が人里上空に居座っている。

 

「霊夢、宇宙船だぜ!」

「ええ、人里の上空に現れるとはいい度胸じゃない。」

 

すると宇宙船の下部から光が照射され、人里が照らされた。。

 

「何かしているぜ。」

「どうせ碌でもない事よ。急いで落とすわよ。」

「おう!」

 

霊夢と魔理沙は宇宙船に向かい飛ぶ。そして、魔理沙と霊夢がダブルでペルカードが発動しようとしたその時、下から声がする。慧音の声だ。

 

「待てお前達!」

「何だぜ慧音、邪魔すんなよ。」

「あの宇宙船に、子供たちが連れ攫われた。恐らく、子供達はその内部にいるんだ。」

「何ですって!」

 

すると、宇宙船から声が聞こえる。

 

「幻想郷の人間諸君。私はメイツ星人オービ。子供達は我らメイツ星人とメフィラス星人が預かった。円盤への攻撃はお前達の子供の死につながり、さらに……」

 

 円盤の下部が開き、地上に魚の様な怪獣が現れる。巨大魚怪獣ゾアムルチである。

 

「この怪獣を暴れさせお前達人間を皆殺しにする。」

「そんな、子供をさらうなんて卑怯だぜ!」

 

その言葉に、別の声が反応する。

 

「卑怯もラッキョウもありませんよ。人間。これから我々は交渉するのですから。」

「なに?八雲紫とか?」

「いいえ、私達は妖怪に興味はありません。興味があるのは人間だけです。交渉相手は、子供たちです。」

「なんだと!」

 

人里に、家から出てきた人間があふれる。その人たちは口々に子供を返せという。

 

「煩いですねぇ。別に我らは武力であなた方を侵略しようとは思っていません。ただ、それを子供たちにゆだねようと言っているのですよ?」

「武力を使わないだと。じゃあその怪獣は何だ!」

「これはあくまで保険。あなた方には怖ーい妖怪や神々がついていますからね、むしろ、一体だけだと言うのに感謝していただきたい。このオービは十匹のゾアムルチで侵攻しようと言うほどの過激派で、それを抑えるのに苦労したのです。」

「メフィラス、最後に俺に言わせてくれ。」

「ええ、どうぞ。」

「人間ども、十年前の蛮行を我らメイツ星人は決して許しはしない。覚えておけ。」

 

そして通信が切れる。魔理沙は、十年前の蛮行と聞いてもいまいちピンとこなかった。

 

「十年前?何かあったっけな。霊夢……霊夢?」

 

 魔理沙は霊夢の方を見る。すると青い顔をした霊夢がいた。霊夢の顔色が変わるとは何事だろうか。

 

「十年前……メイツ星人……ああ、そんな。」

「霊夢、どうしたんだぜ!」

「魔理沙……私、あのメイツ星人に会わないといけないわ。」

「なんだと。そんなの無茶だぜ。」

「無茶でもやらないといけないの。」

「霊夢、十年前、何があったんだ。お前が取り乱すなんて只事じゃないぜ。」

「……わったわ。話すからあなたにも協力してほしいの。」

「わかった。」

「そう、あれは十年前の事だったわ……」

 

 

 霊夢が魔理沙に十年前の話をしようとしている頃、円盤内では子供たちが目を覚ました。

 

「どこ、ここ?」

 

 子供達は事態が把握できていないようで、茫然としている。そこに、一体の化け物が現れる。

 

「やあ、おはよう。」

 

 そう、メフィラス星人とメイツ星人オービである。その姿を見た子供達は叫び、部屋の後ろに逃げていく。

 

「逃げなくてもいい。私は君達に危害を加えようと言うのではない。」

 

 子供達はおびえた表情で二体の化け物を見る。そしてその内の勝ち気そうな少年が口を開く。そう、日向だ。

 

「おまえら、何だ!こないだのなんたら星人の仲間か!」

「なんたら……ああ、レイビーク星人の事かな?我らは君達を奴隷になどしない。私はメフィラス星人。こっちのがメイツ星人のオービだ。私はただ、交渉したいんだ。」

「こ、交渉?そんなの大人にやらせろよ!」

「大人は心が複雑で中立的立場をとりにくい。純粋な心を持つ君達子供こそ真に交渉に向いているんだよ。」

「そんな……」

「さあ、交渉開始だ。ジュースでも飲むかい?」

「要るかよ、そんなもん!」

「おやおや、残念だ。さて、君達への要求はシンプルかつただ一つ。」

―――――人里を、私にくれないかい?

 

「……は?」

 

 メフィラス星人のいきなりの人里をくれないかという要求に再び唖然とする子供達。そして口々に、

 

「ふざけんな!」

「誰がお前達なんかに!」

「お家に返して!」

「怖いよー!」

 

 と叫ぶ。そして、彼らを代表し日向が言う。

 

「ほら、みんな嫌だってさ。交渉終了だ。」

「そんな事言わずに、私は別に君達に人里から出ていけと言っているんではないよ。ただ、私に人里を管理させてほしいと言っているんだ。」

「そんな事言っても答えは変わらないぞ!」

「君達はわかっていない。幻想郷の人里の人間の醜さを。そして知らない。かつて犯した暴挙を。」

「な、何だよ、それ。」

「これから、このオービ君が語ろう。人里の人間が犯した罪を。」

 

 そして、オービは語り始めた。かつて幻想郷で起こった悲劇を。

 

「十年前、この幻想郷には一人に宇宙人が居たんだ。名前はリョー。彼はまだ地球の年に換算して10年も生きていなかった。だが、宇宙船の事故でこの星に不時着し、この幻想郷に来たんだ。そして、幻想郷の人間に殺された。」

「な……」

 

日向は言葉が一瞬出なかった。そんな話は聞いた事がなかった。

 

「メイツ星と地球の間に交流はほとんどない。なのでその子は誰にも助けられず、孤独と、絶望の中で死んだのだ。」

「そんなの……出鱈目だ!俺、聞いたこともないぞ!なあ。」

「あ、ああ。」

「そうだよ、聞いたことないよ。」

「それに、宇宙人なんて退治されて当然じゃないか。」

 

 後ろの子供も同調する。最後の言葉にメイツ星人は反応する。

 

「きっと惨い話だから君達に伝えなかったのだろう。だが、証人が居る。」

「証人?」

「この私だ。」

「……え?」

「人里の人間に、君達の親に殺されたメイツ星人は、私の息子だ。」

「そ、そんな……」

「後ろの少年、君は宇宙人は退治されて当然だと言ったね。」

「え、あ、あ……」

「だが、まだあの子は十歳にもなっていなかったんだ。何もしていないただの子供を、野蛮で暴力的な君達の親は殺したんだ!」

「……そ、そんな」

 

部屋の中がシンとなる。さすがの日向も何も言えない。

 

「オービ、それくらいにしておきなさい。子供たちが怖がっている。」

「……ああ。」

「さて、君達の親がこのオービ君の子供を殺したという話はわかったかな?」

「う、うう……」

「酷い話だと思わないか?惨い話だとは思わないか?誰かに管理されていない無知な人間は子供さえ殺すんだよ。」

「……」

「だが、私が管理したらそんな悲劇は繰り返させない。誰もが手を取り合って生きていける人里を作ってあげるよ。」

「……ほんかよ。」

「ほんとだとも。私の友人はザラブ星人、バルタン星人、ケムール人と多彩だ。その誰もが手を取り合っている。さてもう一度……」

 

 その時、部屋に通信が入る。

 

「何だ。」

「メフィラス様。博麗の巫女が、メイツ星人と話し合いたいと。」

「こちらにはメリットの無い話ですねぇ。」

「十年前殺されたメイツ星人について話したいとのことですが。」

「……!メフィラス。」

「わかりました。行ってきなさい。」

 

そして、メイツ星人オービは部屋から姿を消す。

 

「さて、少し話がそれた。もう一度聞こう。君達、人里を私に譲る気は無いかい?」

「……俺は……」

 

 

 宇宙船の外にメイツ星人オービはでる。そこには博麗の巫女が居た。

 

「言っておくが、私を攻撃してもゾアムルチは動くぞ。さあ、話せ。十年前の話だろう。」

「ええ。十年前、人里の人間の一部は取り返しのつかない事をしたわ。その話をしようと思ってね。」

「……」

 

 十年前の人里。そこは今よりも殺気だっていた。何時妖怪に家族が殺されるかわからなかったのだ。そして人里の人間にある噂が流れる。人里から少し離れた場所に妖怪を飼う人間が居ると。しかもその人間は外来人で、妖怪は弱ってるらしい。その時点で人里の人間の攻撃対象となってしまった。彼ら二人は石や糞が投げつけられるならまだいい方で、刃物で切りつけられたり、殴られ、蹴られ、人が使えるのかというほどの罵詈雑言で攻め立てられた。

 彼らを差別しなかったのは、そう言った事に寛容な博麗の親父さん、慧音や霖之助、そして先代の巫女だった。特に先代の巫女はよく霊夢を連れてその人間の家に行って、食糧などを分けたり、簡単な治療を施したりした。何故そんな事をするのかと聞くと、

 

「私のわがままよ。私はね、彼らに希望を持っているの。人と妖怪が手を取り合って生きている。それって素敵な事だと私は思うのよね。」

 

霊夢はと言うと、一生懸命穴を掘る妖怪を眺め、偶に気が向いたら手伝ったりしていた。何でも、地下深くに宇宙船が埋まっているらしい。その頃の霊夢は特に宇宙船がなんだかわからなかったが、とりあえず手伝った。そして偶にその妖怪をいじめる少年達を追い払っていた。

 だが、人間は恐ろしい。人里の自警団が動き、彼らを殺そうとしたのだ。

 

「待ちなさい!」

「どいてください博麗の巫女!奴らは妖怪と外来人ですよ。どうせそのよそ者は妖怪に操られている。そいつを退治して何が悪いんです。」

「あなた達は誤解している。彼らは決して人間に害を与えるような……」

「煩い!俺は妖怪に母ちゃんを殺されたんだ。その妖怪を殺すだけだ!」

 

 そして、自警団に加え人里の人間も集まってくる。

 

「博麗の巫女が妖怪の味方をしていいのか!」

「そいつらは人里の異物なんだ。それを排除するだけだ!」

「博麗の巫女に任せてたら何時まで経っても退治できねえ、みんな、やっちまえ!」

 

そして、暴徒と化した人々が小屋に殺到する。先代巫女も霊夢も抑えようとするが、人の数が多い。そして、妖怪とされている少年と外来人が引きずり出される。

 

「やめなさい!」

「やめてくれ、良!良!!殺すなら俺を殺せ!」

「煩い!」

 

 一発の銃声が鳴る。妖怪とされた少年は胸から緑色の血を流し倒れる。そして、それを悲しむかのように雨が降ってきた。

 

「良、りょおおおおおおおおお!!」

「次はお前だ。一緒にあの世に送って……」

 

 その時だった。地面が揺れ、割れる。内部から魚の様な大きな化け物が出てくる。巨大魚怪獣ムルチである。

そう、妖怪と言われていた少年は、小さな力で必死でムルチを封印し、幻想郷を守っていたのだ。

人々は混乱した。いきなりどんな妖怪よりも大きく、強そうな化け物が出てきたのだ。人々は逃げ惑い、助けを先代巫女に求める。だが、先代巫女は膝をつき、顔を下に向けたまま動かない。この時、博麗の巫女の胸の内には憎悪と嫌悪であった。こんな奴ら、守る価値があるのか。一瞬その考えが去来すると、動けない。

 その博麗の巫女を動かしたのは、妖怪の死体に抱きつき、泣いていた男が口を開く。

 

「博麗の巫女さん。頼む、あいつをやっつけてくれ。」

「金山さん……」

「あの化け物は良が必死で封印いていた奴だ。あいつが暴れても、良は悲しむだけだ。だから……」

 

そして、博麗の巫女は……

 

 

「ま、まて。」

「……なに?」

 

霊夢は、話を途中で区切る。

 

「私は聞いていないぞ、私の息子と一緒に人間が住んでいたのか?」

「ええ。その事なら……ほら、来た。」

 

そこには、魔理沙に支えられよろよろと歩く金山が居た。

 

「お、お前は?」

「あんたか、良の親父さんは。」

「そうだ。じゃあ、お前がさっきの話で出てきた……」

「そうよ。」

 

 しばらく、オービと金山は見つめ合う。そして、金山が口を開く。

 

「なるほど、似ているな。」

「な、なに?」

「良に似ている。悲しいくらいにな。」

 

そして、金山はついてこいと言って魔理沙に支えられながら名の彫っていない墓へオービ連れていく。

 

「この下に、お前の子供の遺骨がある。」

「遺骨?」

「この星の風習でな。死体は焼いて骨にして祭るんだよ。」

「そうか……野蛮な地球人らしいやり方だ。」

 

オービは周囲を見る。

 

「この穴は何だ。」

「その穴は良が掘っていた穴だ。宇宙船を見つけて、母星に帰るんだと頑張っていたよ。」

「そうか……金山とか言ったな。」

「ああ。」

「リョーは幸せだったか。」

「……幸せだったとは言えない。だが、あいつは気丈に生きた。どんないじめや攻撃を受けても、こんなさびしい星にたった一人でも彼は泣かなかった。彼は本当に強い子供だった。」

「……」

 

 オービは、金山の方を向いた。

 

「俺はヤプールから自分の子供の死を聞かされた時、頭が真っ白になった。しかも孤独に、野蛮な人間に無残に殺されたと聞いて酷く人間を憎んだ。だが、お前の様な人間もいるのだな。」

「今の幻想郷に人間と妖怪の差別はあんまりないぜ。」

「あの化け物魚を倒した後、母さんは人間達に言ったわ。あの怪獣は私達の罪が生み出した物だと。差別が生んだ悲劇だと。だから、もう二度と繰り返してはいけないと。私達幻想郷の人間は二度と同じ過ちを繰り返さない。これは、博麗の名にかけて誓うわ。」

「……金山とやら、お前、体が死にかかっているな。」

「ああ。一週間ともたないらしいな。」

「メイツ星に来てみればどうだ。我らの医療技術はかなり進んでいる。」

「……!ほんと?金山さん、よかったじゃない。」

「あ、ああ。いいのか?」

「お前は我が息子を救ってくれたいわば恩人だ。悪いようにはしない。」

「……ありがとう。」

「礼を言うのはこっちだ。俺の息子の支えになってくれて、ありがとう。」

 

そして、金山とオービは固く握手をした。

 

 

宇宙船の中、そこでは日向が言いきった。

 

「人里は、やらん!」

 

 その言葉に一瞬驚くメフィラス。

 

「ほう、なぜかね?あんな残酷な事をする人間達なんだよ。」

「たしかに人って言うのは間違いを犯すさ。だけど、人は過ちを正す事も出来るって先生が言ってたぜ。」

「……」

「俺は難しい事はよくわかんないけれど、メイツ星人に俺達の親はずいぶん酷い事をしたんだってことはわかった。なら、俺達はそんなことしない。」

「ほう、君達子供なら種族間の緊張を解決できると?」

「ああ、俺達は昔に学んでいく。そして未来をよりよいものにできるって先生も言ってるし俺もそう思う。メイツ星人の事件から俺達は、差別の恐ろしさを学んだ。いつかきっと、妖怪だろうがあんたら宇宙人……だっけ?とも差別が無くなって友達になれる日が来ると思うぜ。」

「なるほど……さすがです。」

 

メフィラス星人は拍手する。

 

「100点満点とはいきませんが、まあ、想像以上の回答ですね。いいでしょう。此処は君達の過去に学ぶ力とやらを信じてみましょう。ですが、これで侵略を諦めたわけではありません。今度はもっと難しい問題を作って君達に挑戦しましょう。今度は、大人も交えてね。では……」

 

宇宙船の下部から光が降り注ぎ、外に子供たちが出る。

 

「さて、オービ。そろそろ逃げますよ。」

「ああ、一人人間を連れていくがいいか?」

「……ま、問題ないでしょ。君が責任を持つならね。」

 

そして、ゾアムルチは回収され、宇宙船は魔理沙たちが反応する前に空の割れ目へと入って行った。

 

 その後の事を話そう。まず、金山の話は聞かないが、霊夢はきっと元気になって戻ってくると信じている。良の墓だが、そこに字が掘られ、子供たちが手を合わせるようになった。あの悲劇を二度と繰り返さないために。そして、良の円盤だが、木更津に頼み、周辺を調査すると手彫りでは決して届かないほどの深さに円盤の反応があった。いつかドリルが完成したら掘ってもらうつもりだ。

 差別をなくせるのは、新しい考えを持つ子供だけだ。そしてそういう子どもを育てるには親の技量もいる。差別はいけない。差別する側は醜くなり、される側は悲劇を生む。だが、差別は無くならないだろう。我々人間が心を進化させない限り。

 

 




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