東方怪獣録   作:怪獣好き

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信じる事の難しさ・悪魔の裏切り

 人間の美徳、その一つが信じることだ。自分を信じるからこそ何か行動ができる。他人を信じるからこそ絆が生まれる。人に信じられてこそ、ヒーローは戦える。だが、当然信用を悪用する奴もいるわけで、信じた奴がばかを見ると言う事が度々あるし、様々な情報に踊らされるピエロになってしまう事もあるし、人間を信じない方が楽に生きられると思う人間もいる。何でもかんでも信じると言うのは考えものだ。だが、何も信じない人間よりも、何かを信じる人間になりたいというのが人間の心理だろう。これは、何かを信じた者のお話。彼らは何かを信じた果てに何を見る。

 

 人里にある寺子屋。そこで教鞭を振るうのは上白沢慧音なのだが、彼女の専門は歴史であり、他の事に関してはどうしても表面的になってしまう。まあ、幻想郷に生きて微分積分や化学反応式など覚えてもまず役には立たないだろう。だが、慧音は教師として知る楽しさ、興味を持つことの大切さを教えたい。だが、幻想郷で頭のいい奴と言えば八雲紫などの大妖怪、または最近話題のMAC隊員くらいだ。前者は論外、後者は忙しそうだ。どこかに頭がそれなりに良くて子供受けする奴はいない物か……そう考えに考え、至った結論は外来人に頼むと言う事だった。何でも外の人間は20歳になってもまだ勉強するほど勉強している奴が多くいると聞く。とりあえず、募ってみると結構応募が来たので個人面談の上、一人の男を新任教師に任命した。名前は柏木。知識は言わずもがな、人を信じることの大切さをわかっていると感じたので採用した。最近子供が大人を信用しないで困っているという話をよく聞くからだ。あの宇宙船で何かされたのではと訝しがる人間が多いが、恐らくは人里の人間がかつて犯し、隠してきた過ちを知ってしまったからというのが真実だろうと慧音は考えていた。偶に生徒に、

 

「宇宙人はぜんぶ本当に敵なの?」

 

と聞かれると普通は言葉に詰まってしまう。違うと言いたいが、今まで幻想郷に襲ってきたのは全て敵意のある宇宙人だった。だが、柏木は、

 

「違うよ。宇宙人の中にも良い奴はいるし、悪い奴もいる。人間と同じだ。だから、人間と同じように一度信じてみるのが大切なんだよ。」

 

 ときっぱり言える人間だ。そこに感心したのだ。少し変わっている所と言えば、なぜか両手に指輪をしているという点だ。彼には少々複雑な算数と理科を担当してもらう事にした。

今日も全ての授業が終わり、柏木と慧音は後片付けをしていた。そんな時だった。空を、宇宙船が飛行していったのは。

 

「……!いまのは。」

「行ってみましょう。慧音先生。」

 

二人は外に出る。すると、空では赤と銀の鉄の鳥……マッキー三号と言うらしい……が宇宙船を撃墜し、宇宙船が人里の外に墜落する所だった。軽い地響きと共に宇宙船が地面に落ち、そこに人が集まっていく。

 すると、墜落した宇宙船の下部が開き、中から一人の頭から血を流した少年がふらふらと出てきて、倒れる。集まった人里の人間は顔を見合わせ、どうするか話し合う。とりあえず、宇宙人の様だから捕らえておこうとその少年を自警団の人間が引きずって行こうとする。だが、慧音はそれを止めた。

 

「待ってくれ。」

「慧音先生。どうしました?」

「その少年は怪我をしているじゃないか。治療しないと……」

「何を言っているんです。こいつは宇宙人ですよ!」

「だがその少年が我らに敵意を持っているかどうかわからないじゃないか。」

「もし敵意を持っていたらどうするんですか。」

「お前達はまたあの過ちを繰り返す気か!」

「う、そ、それは……」

 

 結局人里の人間が折れ、少年は慧音と柏木が引き取った。家に戻った慧音は、その少年の頭に包帯を巻いてやる。

 

「痛かったろう。だが、もう大丈夫だ。」

「……」

「お前、名前は?」

「……シロウ。」

「シロウか、いい名だな。どうしてここに来たんだ?」

「追われていたんだ。ヤプールに。」

「ヤプールだと!」

 

 柏木は驚く。外の世界でヤプールの名を知らないのは赤ん坊くらいの物で、恐怖と絶望の象徴。柏木の子供の頃に地球に進行してきて、柏木自身、ヤプールには苦い経験がった。

 

「僕の母星はヤプールに滅ぼされたんだ。それで逃げてきた。」

「そんな、故郷を……」

「そうか、大変だったな。」

 

 柏木は優しく頭を撫でてやろうとした。だが、その手がなぜか弾かれた。

 

「……!」

「……?どうした、柏木。」

「い、いや、何でもない。」

 

 柏木は、撫でようとした右手を見る。一体どうしたというのだろう。

 

「とにかく、頼る者が居ないというのは寂しいだろうな……そうだ、君を受け入れてくれる人が現れるまで私と暮らすか?」

「え、いいの?」

「ああ。」

 

 慧音はニコリとしていった。シロウは喜んでその提案を受け入れた。

 それと同時刻、木更津達と自警団が墜落した宇宙船を調べていた。宇宙船の内部は綺麗と言うより、何もない。

 

「……なるほど、この宇宙船に乗っていたのは子供が一人、か。」

「はい。その子供は怪我をしていました。」

「そうか、悪い事をしたな……」

 

木更津の表情は晴れない。自警団や大田達はそれが子供の乗る宇宙船を撃ち落としてしまったからだと思っていた。だが、実際は違う事を木更津は考えていた。

 

「なあ、おかしいと思わないか?」

「え、何がですか?」

「この宇宙船だ。内部に何もなさすぎる。コールドスリープ装置らしきものすらない。それに、子供一人が乗っていたにしては広すぎるしな。」

「え、じゃあ木更津さんは、この宇宙船に乗っていた宇宙人を怪しく思ってるんですか?」

「ああ。まあ、防衛チームとして疑ってかかるのが癖になっているだけかもしれんが、その子供、少し注意しておいた方がいい。」

「わかりました。」

 

 そして次の日、寺子屋ではシロウの紹介が行われていた。慧音の口から、ヤプールと言う悪魔によって故郷を滅ぼされ幻想郷に逃げてきた事が伝えられた。

 

「みな、仲良くするんだぞ。」

 

 その言葉に反応する子供は少ない。まあ当然かと柏木と慧音は思った。やはり、宇宙人と言うのは今までの経験上怖いのだ。だが、一番に動いた奴が居た。日向である。日向は立ち上がると、シロウの前に来て、手を出した。

 

「俺、日向って言うんだ。シロウ、友達になろうぜ!」

「……?この手は?」

「え?ああ。これは握手って言ってよろしくって意味さ。」

 

そして、日向はシロウの手を握った。そこから、日向の友達、さらにその友達とシロウと握手する子供たちが増えていった。

 

「僕と友達になってくれるの?」

「そうさ。一人ぼっちは寂しいもんな。一緒に色んな事やろうぜ。」

「……うん。」

 

こうして、日向の行動でシロウは寺子屋の仲間に溶け込んでいった。

 日向は正直頭が悪い。なので柏木の授業が苦手だ。だが、シロウはその問題をすらすらと答えていった。そして、日向にも快く答えなどを見せてくれた。

 シロウは運動音痴だった。だが、日向の協力もあって体育の時間も何とかなった。

 日向とシロウ、お互いの長所で短所を補う友人、いや、親友と言った方がいいかもしれない。親友になって行った。

とある日、日向はレイビーク星人との戦いのあとで宿題をやってくるようになったが、間違いが多い。それをシロウが直してやっている。それを微笑ましそうに見る柏木と慧音。その時だった。空が割れる音が響いたのは。

 

「き、来た!」

「な、何だ。」

 

柏木達は外に出る。すると、割れた空から怪獣……いや、超獣が下りてくる。蝉のような頭部をした不気味な化け物、そう、大蝉超獣ゼミストラーである。そして、空から声が聞こえる。

 

「シロウを我々に渡すのだ。さもなくばこのゼミストラーによって人里を炎で包んでやる。」

 

人里の人間は逃げ惑う。慧音と柏木は急いで子供達を避難場所へと連れていく。そして上空では、霊夢、魔理沙、早苗にマッキー3号がゼミストラーへと向かっていっていた。だが、さすがは怪獣より強い超獣と言うべきか、その攻撃にびくともせず、炎を吐いて迎撃する。すると、魔法の森の方角に赤い光が上がる。そして、そこには柏木のよく知るヒーローが現れた。

 

「ウルトラセブン!」

 

 そう、アリスの家にいたセブンも参戦したのだ。さすがに偽物とはいえセブンの参戦は分が悪いと思ったのか、ヤプールはゼミストラーを空のひび割れに撤退させる。

 

「いいか、シロウを我らに渡さなければ超獣軍団で幻想郷を蹂躙してくれる!」

 

 そう捨て台詞を吐いて、ひび割れは消えた。

 

 避難所である命蓮時ではシロウをヤプールに渡そうとする大人達と、シロウを守る子供たちが対立していた。

「なぜわからないんだ。その宇宙人をあの侵略者に渡せば済む話なんだ。」

「うっせえ!シロウをあんな侵略者に渡すもんか!」

「日向、お前はまだ子供だ。大人の言う事を聞け!」

「あんたら大人なんて信じれるもんか。メイツ星人の時みたいに、結局は宇宙人が怖いだけじゃないか。」

「話しをすり変えるな。あれとこれは違う。」

 

 話しあい、と言うより怒鳴り合いは平行線をたどる。大人もメイツ星人の悲劇を引き合いに出されると弱い。が、日向達の理論は所詮子供の駄々だ。そんな中、霊夢達が来る。

 

「どうしたのよ。いい年した大人と子供が怒鳴り合って。」

「博麗の巫女様……」

「あんな侵略者の言う事なんて聞く必要はないわ。それとも何、私達が信じられないの?」

「い、いえ、そう言うわけでは……」

「はい、これでお終い。今は大人と子供が争っている場合じゃないの。ところで……」

 

霊夢は、シロウに近づく。

 

「あんた、どこかで会った事あったっけ?」

「え、いいえ。初対面です。」

「そうかしら?」

「何だよ巫女様、あんたまでシロウを差し出せって言うんじゃないだろうな。」

「威勢がいいわね。別にそんな事言わないわよ。」

 

そして、避難した者たちが家路につこうとする頃、慧音に霊夢が話しかける。

 

「あのシロウって子供、信用しない方がいいわ。」

「な……お前がそんな事言うなんて、どうしたんだ。」

「勘よ、一度も間違えた事がない私の勘がこう言ってるの。あの子供は信用しちゃだめだって。」

「……頭の片隅にでも置いておくよ。」

 

その夜の事であった。柏木は星空を見ていた。そして、自分の両手にはめてある指輪、ウルトラリングに目を移す。

 

「北斗さん……どうか俺に、子供達を守る力を。」

 

そうつぶやくと、寺子屋から家に戻ろうとした。その時、寺子屋に向かい動く影を見つけた。超獣が出たので夜間は外出禁止のはずだが……

 

「おい、待て!」

 

 柏木はその影を捕まえる。それは、日向だった。

 

「日向!夜は出歩くなと言われているだろ。」

「先生、見逃してくれ!俺は、シロウを連れてここから逃げるんだ。」

「何を言ってるんだ!」

「大人達はシロウをあのヤピールだがヤプールだかとかいう侵略者に渡そうとしてるんだ。だから……」

「日向……」

 

 ああ、日向はなんて友達思いなのだろう。そう柏木は思った。できる事なら日向かいに協力してやりたい。だが、緊急時こそ一時の感情に流されてはだめなのだ。子供二人で逃げてどうなる。すぐに捕まるのが落ちだ。

 

「日向、そんなことは俺がさせない。だから、信じてくれ。」

「先生……」

 

 その時だった、寺子屋の奥、慧音の家から激しい物音が聞こえた。驚いた二人は急いで奥へと向かう。そこでは、信じられない光景が広がっていた。

 血を流す慧音と、不気味な顔をしたシロウ。この状況を説明するには、少し時間をさかのぼる必要がある。

 少し前、慧音はあのヤプールと言う侵略者にどう対応するか頭を悩ませていた。そんな時、後ろに気配を感じる。シロウだ。

 

「慧音先生。」

「なんだ、シロウ。もう眠らなくては駄目だろう。」

「あなたにお別れを言いに来ました。」

「……え?」

 

突然の言葉に、慧音は固まる。

 

「僕はあなたのおかげで子供達の環にすんなりと入る事が出来ました。そして、子供たちとの信頼関係を構築する事も出来た。」

「なんだ、いきなり。」

「そして僕と言う存在があの愚かなメイツ星人とメフィラス星人の残した子供と大人の火種を燃やせるほどになるまでになりうる信頼関係築けた。」

「……?何を、言って……」

 

その時、慧音は気がついた。シロウは、いつもの顔ではなかった髪は逆立ち。赤く口は裂けていた。

 

「全てはあなたが子供は純真だと思いこんでくれていた事のたまものです。本当にありがとう。お礼に楽に殺してあげます。」

「……!」

 

慧音はとっさに回避した、だが、シロウの口から発射された針は左肩を貫いた。

 

「ぐ、ぐぐぅ……」

「避けないでください。痛いだけですよ。」

 

そこに柏木と日向がやってきたのだ。

 

「シロウ、お前……何やってんだよ。」

「見てわからない?日向君。慧音先生を殺そうとしてるんだよ。」

 

その言葉に、日向は気が遠くなる思いがした。信じたくない。だが、目の前で起こっているのは現実だ。

 柏木はシロウを睨みつけ、言う。

 

「おまえ、何者だ?」

「ぼく?僕はシロウ……と言うのは仮の名前。本当の名前はヤプール人バキシムって言うんだ。」

「ヤプール人……!バキシム!」

 

 なんて事だ。ただの可哀そうな宇宙人だと思っていたのが、実はヤプール人だった。同じだ。あの時と全く同じだ。

 

「日向くん。君には助けられたよ。ほどよく子供と大人の間に確執を生んでくれた。」

「ふ、ふざけんな。じゃあ、今までのは……」

「全部演技だよ。いや、子供の振りをするのは大変だった。馬鹿なクラスメイトに合わせるのもね。」

「く、くそぉ!」

 

日向はシロウ……いや、バキシムに殴りかかる。だが、逆に吹き飛ばされる。

 

「日向!」

「日向君、最後に言っておくよ。僕はねぇ……」

――――――友情ってのが大っきらいなんだ。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「日向、気をしっかり持て!」

「さて、本来なら事故に見せかけて慧音先生を殺す所なんだけれど、目撃者が多いしね、纏めて片付けてやるよ。」

 

 すると、バキシムの体が変質していく。巨大に、醜悪に。そう、こいつこそ超獣の中でも老人の心に漬け込んだ特に悪質な作戦を行った一角超獣バキシムなのだ。バキシムは、慧音の家を破壊しつつ巨大化した。そして空が割れ、ゼミストラーも現れる。

 部屋の中には、絶望感が漂っていた。日向も、慧音も下を向き、涙を流している。そして、柏木は怒りに燃えていた。ヤプールのあまりにも悪質な作戦に。

 

「……許さん。ヤプール人バキシム!貴様は絶対に許さん!」

 

柏木は両手を構える。そして心の中でつぶやく。

 

「北斗さん。僕に、力を貸してください。」

「ああ、共にヤプールの野望を砕くぞ。」

 

そして、両手のウルトラリングを合わせる。そして、柏木は光になる。

 

デァァァァァァァァ

 

 バキシムは驚いていた。なぜ、貴様がここにいる。ウルトラマンA!

 柏木は、幻想入りする前にウルトラマンAこと北斗星司と会っていた。そこで、とある世界に危機が迫っている事を聞き、一回だけウルトラマンAに変身する力をもらっていたのだ。

 ウルトラマンAはバキシムを掴むと、力一杯人里の外へと投げ飛ばした。そして、ゼミストラーとバキシムの二大超獣と二対一の戦いを挑む。バキシムとゼミストラーは炎でエースを焼こうとする。だが、エースはウルトラネオバリアを張り防ぐ。そして、アロー光線、パンチレーザーを連続で使用しけん制する。そうこうしていると、赤い光が立ち上り、セブンが参戦する。そして、いざという時のために命蓮寺で待機していた霊夢達が飛んでくる。

 

「キャー!霊夢さん、エースですよ、エース!切断技のスペシャリストですよ。」

「あーはいはい。」

 

形勢は逆転した。ゼミストラーはセブンのアイスラッガーで炎を吐く嘴を切断されると、ワイドショット、マスタースパーク、八坂の神風を連続で受け大爆発を起こす。

バキシムは頭部の針を飛ばして霊夢を撃ち落とそうとするが、エースのメタリウム光線で撃ち落とされる。そしてエースはウルトラスラッシュでバキシムの首を切り落とし、その首に霊夢が夢想封印をかけ、大爆発を引き起こす。

 エース達の勝利である。だが、勝利を喜ぶのは後だ。エースは変身を解き、柏木となると日向と慧音のいる場所に急いだ。

 

「日向。」

「先生、俺が馬鹿だったのかな。宇宙人の事を信じた俺が……」

「そんなことは無い!悪いのはあのヤプールだ。」

「それでも、俺、もう何も、信じられないかもしれないよ。」

 

そこに、いつもの元気な少年日向はいなかった。柏木は、意を決していう。

 

「日向、その気持ちはよくわかる。」

「嘘だ。」

「嘘じゃない。俺も子供の頃、ヤプールにだまされた事がある。その時はヤプールはサイモン星人と言う宇宙人に化けていてな、俺やその友達はそいつを守ろうとして、裏切られた。」

「……」

「その時は絶望したよ。もう何も信じられなくなった。だが、その時に俺達のヒーローに言われたんだ。」

―――――優しさを失わないでくれ。弱いものをいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが何百回裏切られようと。それが私の最後の願いだ

「そんな、何百回裏切られても信じろっていうのかよ。」

「ああ。俺も大人になってこの言葉の難しさを知ったよ。だがな、何か信じた物を百回裏切るよりも、何かを信じて百回裏切られた人間の方が俺は尊敬できると思う。」

「……」

「頼む、日向。お前の何者とも友達になろうとする優しさを失わないでくれ。それはお前だけじゃなく人間みんなが本来持つ美徳だ。だが、それを実行できる人間は少ない。何回裏切られたって、お前は誇れる人間だ。」

「おれが、誇れる人間……」

「ああ。お前はいるだけで周りが明るくなる、何かを助けられる人間だ。それを誇れ。」

「……わかった。先生。信じる事、辞めないよ。まあ、さすがに何百回も裏切られるのはごめんだけどね。」

「ああ。」

 

 日向は立ち直った。次は、慧音だ。

 

「慧音。」

「柏木、結局私がした事は何だったのだろうな。宇宙人を信じて、裏切られただけじゃなく、守るべき人里を危険に陥れた。」

「……」

「私は、教師としてやっていけるのだろうか。」

「慧音、気をしっかり持て!君は先生だろう?先生は子供の事を一番わかってやらないといけない大人じゃないか。信じなければいけない大人じゃないか。そんな情けない顔を見せないでくれ、君は強い女性だろう。」

「……」

「君は子供に接する時、一回の失敗をねちねち攻めるのか?違うだろう。次を信じるだろ。だから、次を信じるんだ。もしかしたら、次はほんとに助けを求めてくるかもしれない。それを見捨てられる君じゃない。見捨てたら君は一生後悔する。だから、優しい心を失わないでくれ。誰にでも優しくできる君の美徳を失わないでくれ。たとえ何回裏切られてもいいじゃないか。その時は、俺が、子供たちがお前を支える。な、日向。」

「ああ。先生、そんな悲しい顔しないでくれよ。俺まで悲しくなっちまう。先生が裏切られたら、俺が全力で支えるからよ。だから、いつもの慧音先生に戻ってくれよ。」

「日向……ああ、そうだな。こんなの私らしくない。私はお前達の先生だからな。」

「ふぅ……」

 

よかった。二人とも立ち直ってくれた。ふと両手を見ると、ウルトラリングは石になっていた。だが、外そうとは思わなかった。

 その次の日、シロウは新しい故郷を見つけたという事で子供達には納得してもらった。子供たちと大人の確執は難しい問題だ。だが、慧音や柏木はきっとわかりあえると信じている。なんて言ったって同じ種族なのだから、別の種族を信じるよりは簡単に信じられるようになるだろう。慧音も日向もいつもの笑顔が戻った。きっと、次に助けを求めてくる宇宙人を、この二人は決して見捨てない。たとえそれがヤプールの罠であろうと、彼らは信じる強さを持った。信じる強さは不可能を可能にする。きっと、別の星の星人とも友達になれる日が来るかもしれない。そう思う柏木であった。

 

 

 人を信じると言う事は本当に難しい。誰だって裏切られるのが怖いからだ。だが、その恐怖を克服してこそ、人はもう一歩進化できる。そう、信じたい。

 

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