東方怪獣録   作:怪獣好き

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 お久しぶりです。怪獣好きです。このシリーズを心待ちにしておられた方には、投稿が遅れに遅れ、また別の道にも手を出してしまったことを謝罪しなければなりません。申し訳ありませんでした。
 現在リアルの方が忙しいので超不定期更新になると思いますが、電波の続く限り書いていこうと思います。


記憶の中の絵

 幻想郷縁記である求聞史記に求聞口授。どちらも稗田阿求が著した幻想郷の資料である。この著書は幻想郷の一家に一冊はある本であり、妖怪達の読み物であり、幻想郷初心者である幻想郷に住むことを決めた外来人達の必需品である。この本の魅力は、阿求が自分の能力で蓄積した豊富な知識と鋭い観察眼、そして若干の噂や思い込みと想像力に裏打ちされた危険人物、妖怪等の紹介であるが、魅力はもう一つある。それは、絵だ。求聞史記や求聞口授に添えられた絵、これが二つの資料集に載っている妖怪達の紹介に命を与えていると言ってもいい。これから紹介するのは、絵の物語。かつて絵に夢をのせた少年は、幻想の世界で何を見る。

 

 稗田阿求は長い紙に向かい、書をしたためていた。内容は、幻想郷を襲う侵略者について。幻想郷に起こった事件は何であれ彼女は記録しなければならない。それが彼女のライフワークであり、定められた運命なのだから。別に辛くは無い。そんな感情は何百年も前に捨てた。

 

 そんな彼女には数人の協力者がいる。その内の一人が上白沢慧音。彼女の能力は幻想郷縁記をしたためるにあたり非常に相性がいい。それに、人間好きな性格から、もう阿求は精神年齢的には子供では無いのだが、見た目が子供だからか色々と世話を焼いてくれる。それが鬱陶しくもあり、少し嬉しくもある。

 

 もう一人が、今自分のそばで紙に向かい、阿求の横顔を幻想郷では中々手に入らない色鉛筆で描く青年。彼は外来人の中でも古株であり、8年前に幻想入りしてきた青年だ。聞いた話だと、妖怪の山から流れる川を流れてきた所を人里の人間に救われたらしい。その時には妖怪の山で何かあったのか、記憶を全て失っていた。その時彼が持っていたのは、日常最低限の事が出来る程度の知識と、12色の色鉛筆入りの箱のみであった。当時の人里はあまり外来人の事を快く思っておらず、青年もすぐに妖怪の餌になると誰もが思っていたが、そうはならなかった。彼には、絵の才能があったのだ。彼の描く絵には何というか、命があった。そのためか、人里で彼の絵は人気になり、それでもらえる賃金で日々過ごしていた。

 

 そんな彼に、阿求は目をつけた。ちょうどそのころ幻想郷縁記に新しい風を取り入れようと思い、どうしようか悩んでいた阿求にとって、外来人の描くその絵は、まさに新しい風であった。阿求は彼に絵を描いてほしいと依頼し、それを青年は快諾した。それからの付き合いで、彼には色々な絵を描いてもらっている。彼は絵の事となるとかなり行動的で、頼めば魔法の森や迷いの竹林、果てには地底にまで足を運び、その対象の絵を描いてくる。

 

 そんな彼には今、侵略者の絵を描くように頼んでいる……のだが、なぜか阿求の横顔ばかりを描いている。それを見て、阿求は短くため息を吐くと、口を開く。

 

「権兵衛さん。私ではなく、侵略者の絵を描いてください。」

 

 この青年の事は権兵衛と皆呼んでいる。名前が分からないから権兵衛。単純すぎる命名だが、青年は別段気にする様子は無い。

 

「ん、ちょっと動かないで。もう少しで書き上がるから。」

 

 シャシャシャと気味良い音を鳴らし色鉛筆が動き、絵が完成する。

 

「できた。見て、阿求。」

 

 その絵はまさに阿求が書をしたためる様子が、まるで写真のように、生きているかのように描かれていた。だが、そんなことはいい。問題は、なぜ侵略者ではなく、阿求を描いているかだ。権兵衛は毎回頼まれなくても阿求の顔を描く。阿求は呆れた顔をした。

 

「権兵衛さん。毎回毎回私の絵を描かなくてもいいですから、依頼した絵を描いてください。」

「いいだろ?どんな絵を描いても俺の勝手さ。」

「ええ。別に何をかいてもいいですよ。ただ、今は私の依頼した絵を描いてください。」

「わかったよ。」

 

 そう言うと、権兵衛は別の絵をかき出した。今度は、化け物の絵。奇怪宇宙人ツルク星人、三面怪人ダダ、夢幻怪獣バクゴン……権兵衛にとってみた事がある侵略者、見た事がない侵略者があるが、見たことのない侵略者については、人や妖怪から聞いた情報を総合し、頭の中に浮かんだ姿を絵にする。全ての侵略者を見事なまでの筆で描く権兵衛。あっという間に絵が仕上がった。

 

「さすがですね、権兵衛さん。」

「うん。まずまずの出来栄えだね……」

 

 見事なまでの怪獣、宇宙人の絵。だが、権兵衛の顔は不満そうだ。

 

「どうしました?何かさえない表情ですが。」

「ん?ああ。なんか、違うんだよな。」

「違う?」

「なんだかな……俺が書きたいのはこういう絵じゃない気がするんだ。」

「こういう絵じゃない……人物画とかですか?」

「人物画か。人物画も書くのは楽しいんだが、何か違うんだよな。」

「じゃあ、風景画ですか?」

「いや、違う。何か、頭に引っ掛かっているんだよな……もしかしたら、消えた記憶に関わりがあるのかも。」

「そうですか……戻るといいですね。記憶。」

「ああ。」

 

 その日はそれでお開きとなった。阿求は、権兵衛の描いた絵の描かれた紙を大切に仕舞った。

 次の日、権兵衛は寺子屋に来ていた。慧音に頼まれ、絵の授業を行うことになったのだ。絵の授業と言っても、権兵衛は自分の絵は自然に手が動く物で、教えるようなものではないと断ったのだが、どうしてもと頼まれ、引き受けたのだ。とりあえず、二人一組に分かれ、お互いの顔を描かせている。皆、年相応と言うべきか、下手ながらも相手の特徴を抑えた絵が仕上がった。そして授業が終わり、権兵衛が帰ろうと支度をしていると、外で子供たちが地面に絵を描いて遊んでいた。その絵は、人里を救った巨人の絵だった。

 

「何を描いているんだい?」

 

 権兵衛は子供たちに話しかけた。

 

「ウルトラマンの絵さ。」

「ウルトラマン……」

「そう、この前幻想郷を怪獣から守ってくれた巨人だよ。柏木先生があれはウルトラマンって名前だって教えてくれたんだ。」

 

 ウルトラマン。何か、記憶に引っ掛かる名前だ。あまり良い思い出では無い気がするが。ふと、気がつくと権兵衛も木の枝を握っていた。

 

「ヒーローには怪獣も必要だな。描いてやろう。」

 

 そう言うと、権兵衛は木の枝を地面に滑らせた。すると、ハンベンを半分に切ったような怪獣の絵が出来上がった。

 

「なに、それ?」

「何って、怪獣さ。」

「なんだか弱っちそうなの~!」

 

 子供に笑われてしまった。だが、この絵には何か感じる物がある。権兵衛は家に戻ると、紙に向かい筆を滑らせた。出来上がったのは子供たちに描いたあの怪獣の絵。

 

―――――俺は、この絵を描いた事がある気がする……そう、こいつは、こいつは……

 

思わず権兵衛は外に出て、星空を見た。そこに、何かある気がして。そして、星座を一つ一つ確認する。だが、何か感じとれる星座は見つからなかった。

 そして、気落ちして自分の家に戻る。そして描いた絵を見るが、この絵も何かが足りない気がした。

 

―――――そうだ、こいつは何か、怪獣にしては凶暴そうではないな。

 

 その考えに至ると、再び紙に向かい、絵を描く。今度は、もっと凶暴な風に。

出来上がった絵を見て、権兵衛はあっと声をあげた。

この怪獣……こいつの名は……!

 

 権兵衛は頭を抱えた。頭に、いや、脳に激痛が走る。権兵衛は頭を抱え、ふらりとする。すると、絵が手を離れ、外へと飛んで行った。

 

「あ、ああ……」

 

 それを追いかけようとするが、頭に走る激痛で意識を失う。そして、紙は外へと飛んで行った。

 この時、運命の悪戯か、幻想郷に特殊な宇宙線が降り注ぐのが木更津達のチームによって観測された。その宇宙線は怪獣の絵が描かれた紙に降り注がれる。

 

 次の日、朝日が昇るのと同時に起きる男が居た。その人間が外に出て、背筋を伸ばすと、目の前に怪獣が居た。

 

「……え?」

 

 その瞬間はあっけにとられたものの、急いで大声を出す。

 

「みんな起きろー!!化け物だー!!」

 

その大声に、眠い目を擦った者達が家から出てくる。すると、彼らは人里のど真ん中に居座る巨大な生物を見てしまった。眠気など一瞬で吹き飛び、人々は慌てて避難所になっている命蓮寺へと走っていく。

 

 人々が逃げ出している人里。しばらくして、権兵衛は眼を覚ます。そして、人里に鎮座する巨大な怪獣を見つけると、思わず口が動いた。

 

「ガ……ヴァ……ドン。」

 

 権兵衛は怪獣に駆け寄っていく。

 

「ガヴァドン!!」

 

 そして、怪獣の巨体に抱きついた。そう、この怪獣こそ、かつてこいつを倒そうとしたウルトラマンが子供たちに大ブーイングを受けた怪獣、二次元怪獣ガヴァドンBである。

 

「ガヴァドン……ガヴァドン!おまえ、蘇ったのか!」

 

 ガヴァドンは答えず、目を瞑ったままで、でかいいびきをかいている。だが、嬉しかった。何故かわからないが。猛烈にうれしい。これも自分の記憶と何か関係があるのか?そう思いつつ、体をなでてやる。

 だが、ほのぼのとした時間は長くは続かなかった。何か、飛行機の飛ぶ音が耳に聞こえ、空を見ると、赤い鳥、マッキーがやって来ていた。さらに、神社の方からは巫女と魔法使いがやってくる。こいつら、ガヴァドンを攻撃する気だ……!

 権兵衛は声の限り叫ぶ。

 

「やめてくれー!!こいつは寝ること以外何もできない無害な奴なんだ!!お願いだから攻撃しないでくれー!!」

 

 その言葉は木更津達には届いた。

 

「ここからの攻撃では人里を傷つける恐れがある。あの青年の言うことも気になるな。よし、大田と木村は地上へ展開。俺も降りる。」

「了解!」

 

「なあ霊夢。あいつ何か言ってるぜ。」

「ふうん。怪獣を守る人間ねぇ……珍しい。」

「どうする?」

「問答無用……と行きたいけれど、そうもいかないわね。仕方がないわ。降りて話を聞きましょう。」

 

こうして、木更津、霊夢、魔理沙が権兵衛の所に集まる。

 

「うへー!近くから見ると山みてえだな。しかもいびきがうるさい。」

「怪獣なんてそんなもんでしょ。で、権兵衛さん。この怪獣は、何?」

「こいつは、俺が描いた怪獣なんだ。」

「あんたが描いた?」

「自分でも驚いている。まさか、絵の世界から怪獣が現れるなんて。でも、以前にもこんな事があったような気がするんだ。」

 

 木更津は首をひねり、データバンクに残っていた怪獣リストを思い出す。その中に、この怪獣が居た気がする。

 

「怪獣の実体化……謎の宇宙線……そうか、こいつはガヴァドンだな。」

「ええ。そうです。」

「ガバドン?」

「ヴァです。ガヴァドン。」

「そんなことはどうでもいいのよ。問題は、こいつをどう絵に戻すかじゃない?」

「ああ、その解決方法ならあるぞ。」

「え?」

 

木更津は、夜を待てと言った。

 

「この怪獣が実体化していられるのは、日光が存在する間のみだ。夜を待てば自然に絵に戻る」

「へー。そうだ、その絵の描かれた紙はどこにあるの?」

 

 そう言われると、権兵衛はもじもじして恥ずかしそうに言う。

 

「わかりません。」

「わからない!?」

「あの紙は風に飛ばされてどこかに飛んでいってしまって……」

「はぁ。そんな大事な物がないなんて!」

 

 そして霊夢が手分けしての紙の捜索を提案したが、権兵衛が別の案を出した。ナズーリンに頼むのだ。彼女の能力は探し物を探し当てる程度の能力。その力を利用すればあっという間に見つけられるだろうと権兵衛は考えたのだ。そして、権兵衛の案が採択された

 

 ナズーリンははじめは難色を示した。探すのが何も書かれていない紙きれではあまりやる気は起こらない。だが、それがなければ幻想郷を揺らすほどの怪獣の大いびきに悩まされる事となると言われ、しぶしぶダウンジングしてもらった。すると、すぐに発見できた。どこかの家の屋根に引っ掛かっていたのだ。それを外すと、権兵衛達は白紙を手に入れる事ができた。後は、夜を待つだけ。だが、待つ時間はかなり長く感じられた。とにかくガヴァドンのいびきはうるさいのだ。さすがは外の世界でもいびきで経済を破たんさせかけたほどの威力。

 ようやく夕方になり、怪獣はスゥっと消えて行く。そして、絵に戻った。

 

「はぁ、やっと夜になったぜ。」

「全く、この絵は燃やしてしまうか二度と日光の当たらない場所にしまっておきなさい。ただ寝ているだけでも怪獣ってだけで私達には迷惑なんだから。」

「わかりました。」

 

 三人が帰った後。権兵衛は絵をじっと見つめた。こいつの事を知っているのはわかる。なら、俺は誰なんだ?

 そして、絵は大切に取っ手の付いた箱にしまっておいた。

 

 これで絵に関した異変は終わった……かに見えた。だが、この異変の本命はまだ起こっていない。

 権兵衛がガヴァドン絵をしまう頃、誰にも気づかれぬように空が割れ、青い玉が幻想郷へとやってくる。そして、寺子屋の近くの地面に染み込む。この玉が何を起こすのか、それはまだ誰も知らない。

 

 次の日、権兵衛は阿求の屋敷に来て、日課の挿絵を描いていた。手には、日光が入らないようしっかりと閉めているガヴァドンの絵の入った箱を持って。自分の記憶が戻るきっかけになるかもしれない絵だ。肌身離したくない。

その日、寺子屋に子供が集まると、その内の一人が地面に化け物のようなシミがついていることに気づく。そして、授業が終わった後、その子供はそのシミの輪郭に沿って線を描いた。そしてその輪郭線が完成した瞬間、化け物のシミの目に当たる部分が光る。

 そしてすさまじい地響きと共に地面から紫の化け物が現れた。そう、このシミこそかつてウルトラマンタロウと戦ったらくがき怪獣ゴンゴロスだったのだ。その巨体を茫然と見上げる子供。怪獣が右足を上げる。踏みつぶされるという瞬間、寺子屋から慌てて出てきた慧音がその子供を抱えて飛び退く。間一髪であった。だが、怪獣の暴れは止まらない。次々と家屋をなぎ倒していき、人々は逃げ惑う。

 その怪獣の出現を権兵衛も見ていた。怪獣を見て、阿求が唖然とつぶやく。

 

「あれが、怪獣……」

 

 屋敷の人間も逃げ惑っている。権兵衛は、阿求に向かって言う。

 

「阿求、逃げよう。」

「は、はい。」

 

 阿求は立ちあがろうとするが、なぜか立ち上がれない。人里で暴れまわる怪獣を初めて直に見て、腰が抜けてしまったのだ。

 

「阿求!」

「すいません。腰が……」

 

 怪獣は地響きを立てながらこちらに向かてくる。権兵衛は迷わず阿求の体を抱きかかえ、走りだした。怪獣の歩幅は大きく、全力で走っても逃げきれないのは目に見えていた。そして、権兵衛の後ろで阿求邸を踏みつぶした怪獣の足が迫る。

 

「ぐ……!」

 

 ここまでか、権兵衛と阿求がそう考えた時だった。ゴンゴロスを突き飛ばし、人里の外へと押し出す巨体があった。

 

「あれは……昨日の。」

「ガヴァドン!」

 

そう、踏みつぶされ、破壊された箱の中の絵が日光を受け、ガヴァドンとして実体化したのだ。だが、昨日のガヴァドンとは様子が違う。目の前のゴンゴロスを睨みつけ、勇ましい鳴き声を上げる。

 

「ガヴァドン……おまえ、戦ってくれるのか?」

 

 ガヴァドンは権兵衛のつぶやきに答えるかのように一鳴きし、ゴンゴロスへと向かっていく。

 

 怪獣同士がぶつかり合うと爆音と地響きが起こる。だが、最初の不意打ちを受けたゴンゴロスは体当たりをしてくるガヴァドンに対し、距離をとって炎を吐いて応戦する。遠距離攻撃能力を持たないガヴァドンはその炎に苦戦する。元々、ガヴァドン自体そんなに強い怪獣では無いのだ。

 

「くそ!がんばれ、がんばってくれ!ガヴァドン!」

 

 権兵衛は応援することしかできない自分が歯痒かった。すると、昨日と同じく神社の方向から霊夢と魔理沙、そして妖怪の山の方角からマッキーがやってくる。霊夢と魔理沙は鮮やかな弾幕を張り、マッキーもレーザーでゴンゴロスを攻撃する。だが、体の表面に火花は散るが、効いた様子は無い。

 

「くそ!二日連続で怪獣騒ぎかよ。しかも硬いし!」

「文句言わない。木更津さん。あの怪獣についての情報は無いの?」

 

 霊夢の質問に、木更津は外部スピーカーで答える。

 

「今俺の部下がデータベースを漁って調べている。もうしばらく足止めしてくれ。」

「わかったわ。魔理沙、大技行くわよ。」

「おう!」

 

 そして、霊夢の{霊符「夢想封印 集」}と魔理沙の{恋符「マスタースパーク」}がゴンゴロスの顔面に命中。そして炎が弱まった所にガヴァドンの体当たりが当たり、ゴンゴロスは倒れる。そこに、木更津からの連絡が入る。

 

「奴の弱点が分かった。奴は水にぬれると元の絵に戻る。そうすればあいつのコアが現れる。」

「また絵かよ。しかも暴れるだけあのいびきのうるさやつよりたちが悪いし!」

「ここら辺であいつを水に浸けられるのは霧の湖だけど、あんなでかぶつ、どう運ぶの?」

 

 そう話していると、ガヴァドンが一鳴きした。まるで、俺に任せろとでもいう風だ。

 

「あら、あの怪獣何かやる気みたいよ。」

 

 すると、ガヴァドンは倒れたゴンゴロスを転がして、霧の湖の方角へと転がしていく。

 

「なるほど、怪獣には怪獣ってわけか。」

「よし、俺達はあの怪獣が置き上がらないように適度に攻撃するぞ。」

「おう!」

「わかったわ。」

 

木更津、霊夢、魔理沙の三人は雨のように弾幕を放ち、ゴンゴロスを地面が起き上がれないように押さえつける。そしてガヴァドンはゴロゴロとゴンゴロスを転がし、霧の湖へと突き落とした。

爆音のような水音と共にゴンゴロスの体表面が濃紺色に変わる。そして湖の中でもがくとどんどん表面が崩れていく。最後には青い玉になる。その青い玉は上空へと逃げようとするが、勿論そんなのを異変解決を生業とする二人が逃すはずも無く、必殺の{恋符「マスタースパーク」}と{境界「二重弾幕結界」}が青い球体に決まる。

霊夢達の勝利である。そして、少し経って霧の湖に権兵衛と彼に抱えられた阿求が来る。

 

「ありがとう。助かったよ。ガヴァドン。」

 

 権兵衛はガヴァドンをなでてやる。ガヴァドンはくすぐったそうな声を上げる。そして、権兵衛をじっと見た。

 

「……?どうした、ガヴァドン。」

 

 すると、ガヴァドンの体がはらはらと光の粒になり、権兵衛に降り注ぐ。

 

「……!」

 

 この時、権兵衛の脳に封印されていた記憶がよみがえっていく。かつてムシバと呼ばれ、下手くそな絵しか描けなかった自分。そして友人らと共にガヴァドンを作り上げた事。ガヴァドンを倒そうしたウルトラマンや科学特捜隊に大ブーイングした事……様々な記憶がまるで花が開花していくかの如く復活していく。

 

「権兵衛……さん?」

「阿求。思いだしたよ。全部。」

「そうですか……よかったですね。」

 

 この時阿求の胸中に不思議な感情が生まれた。何とも言い表せないが、権兵衛の記憶が復活したことについて素直に喜べない自分がいるのに驚いていた。その様子を見て、権兵衛は柔らかく笑う。

 

「そんな顔しないでくれ阿求。心配しなくても、俺はまだこの幻想郷を離れる気はないよ。」

「……え?」

「だって、幻想郷の雄大な自然、それに個性豊かな妖怪達。全て描かないとイラストレーターの名がすたるってもんさ。」

「……権兵衛さん。」

「だから、俺はどこにも行かないから。安心して。」

「……はい。」

 

 こうして外の世界でかつてムシバと呼ばれた青年は、幻想郷で記録していくことになる。幻想郷を襲う強大な怪獣達を、そして次々と現れる個性豊かな妖怪達を。ムシバ青年が外の世界に帰るのは、一体いつのことになるのか。それは、阿求も、権兵衛も知らない。

 

 

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