「うわ、実際に見るとすごい光景だ…」
画面に映る映像と実際に眼球で見える景色は迫力が違う。日は分厚い雲で隠れ薄暗く、空気は加熱され、フィルター越しでもかすかに熱気を感じるほどだ。すこしあたりを見渡していると、通信音声が来た。
{魔理沙、早苗。聞こえる?}
「ああ、聞こえるぜ。」
「聞こえます。」
{いい、こっちで時間はカウントしているけど、出口はここしかないから、迷わないようにね。}
「おう!」
「はい。」
{あと、怪獣へはマッカーが先導しているから、マッカーを見失わないで。じゃあ、検討を祈るよ。}
そして、霊夢と咲夜が操縦するマッカーを先導に、魔理沙は駆け出し、早苗は飛んでいく。すると、すぐに離れた場所に小山のような巨体が見えてきた。
「で…でかい…。」
「……」
{それ以上近づくと服が限界に達する。そこから攻撃して。}
「わかったぜ。」
「わかりました。」
二人は、互いの弾幕をパワードザンボラーの体に集中砲火した。しかし、かなり遠めの攻撃だからか、パワードザンボラーは全く意に介した様子がなく、相変わらず結界沿いに歩いている。
「くっそ!効いていないのかよ!」
「魔理沙さん!目です。目を集中的に撃ってみましょう。」
「わかった!」
二人は放つ弾幕をパワードザンボラーの顔に集中し注いだ。そして顔の中でもかなり柔らかい部位である目に攻撃があたると悲鳴を上げ、魔理沙たちの方向を向いた。
「効いたようだな。」
「魔理沙さん。ここは二手に分かれて両目を潰しましょう。」
「おう!」
魔理沙と早苗は二手に分かれ、マッカーもそれを追うように移動する。そして、パワードザンボラーの顔を挟み撃ちにしようとする。が、パワードザンボラーもやられてばかりではない。
「くそ、これを着てても暑いぜ…」
目を攻撃された怒りからか、角を光らせ、魔理沙たちの周囲の温度を急激に上昇させたのだ。そして、空を飛んでいる人間より倒しやすいと判断したからか、魔理沙の居る方向へ突進し始めた。そのスピードはそこまで速くないが、動く巨大な熱源である。一歩一歩歩くたびに火柱と爆風が上がる。しかも、魔理沙は防護服の重さから素早く移動することができない。
{早苗!怪獣は魔理沙に向ってる。魔理沙から奴の注意をひきつけるんだ。}
「やってます!でも、効果がないんですよ!」
早苗もぐんぐん上がる気温の中、スペルカードなどを駆使して気を引きつけようとするが、防護服の効果ぎりぎりの距離からの攻撃なので、中々弱点らしき部位に当てることができないでいた。
「魔理沙さん!急いで逃げてください!」
「わかってる!蒸し焼きはご免だぜ!」
魔理沙は尽力で怪獣の突進から逃れようと走ったが、ここで思わぬ事態がおきた。なれない防護服を着て全力疾走したため、前のめりに転んでしまったのだ。
「うわっ!」
{魔理沙!何やってんのよ。急いで起き上が……魔理沙!!}
「へ……?」
魔理沙に起こった悲劇はこれだけではなかった。炭化した木が魔理沙に向って倒れてきたのだ。
「あああああああああああああああああああああああああああ!」
倒れてきた木は魔理沙の下半身を下敷きにし、背中の空調設備を狂わせた。魔理沙に殺人的な気温の外気が伝わってくる。防護服のおかげで完全につぶれてはいないが、両足とも折れたのだろう。その激痛も伝わる。まさに生き地獄である。
「熱い、熱い!あついいいいいいいいいいいいいいいい!」
{魔理沙ぁ!}
「そ、そんな……」
早苗は呆然となった。目の前で知り合いが親と同じように潰されたのだ。そのショックはイヤホンから聞こえる声をしばらくシャットアウトした。
{早苗!急いで木をどかせ!}
「……ぁ、あぁ、あ……」
{早苗!}
「…っは、はい!」
早苗はショックから抜け出し、急いで魔理沙の所へ向かい、木をどかそうとする。だが、炭化した木自身も恐ろしく熱く、手では直接どかすことができない。
「・・・っつ。魔理沙さん、魔理沙さん!」
その呼びかけにこたえる声はない。どうやら気絶しているようだ。
{どきなさい早苗、マッカーの光線で木を吹き飛ばすわ。}
{そ、そんな乱暴な!}
{でも、他に方法が…}
そんなとき、不思議な事が起こった。結界内を移すレーダーに巨大な影が映り、気温が急激に下がっていったのだ。
{待ってください、結界内に、侵入するものあります。}
{何だと…新しい怪獣だというのか!}
{はい。ですがこれは……}
{木更津さん!結界内の温度、急激に低下します。}
{これは…一体?}
結界内に何か低温の生命体が侵入してきたのだ。その何かは猿のような顔と全身を包む白い毛が特徴的な怪獣、そう、かつて初代ウルトラマンと戦った伝説怪獣ウーであった。
ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォ!!
{……っ!来るわよ!}
「は……はい!」
そのいきなりの出現により、前は伝説怪獣、後ろは灼熱怪獣と絶体絶命のピンチに陥った。
だが、予想外のことが起こった。ウーが魔理沙たちを無視してパワードザンボラーにつかみかかったのだ。その瞬間、まるで熱した鉄板の上に水をかけたかのような音が聞こえた。そして、パワードザンボラーの巨大な体を横倒しにしたのだ。
{へ?}
パワードザンボラーの体系からして、横倒しされると非常に起き上がりにくいと言える。ウーはじたばたともがくパワードザンボラーを後目に早苗たちのほうへと向かう。そして、魔理沙を押しつぶしていた木をどけてやる。
{怪獣が私たちを助けた?}
{そんなことより、魔理沙だよ!早苗、魔理沙はどう?}
「…!そうでした。魔理沙さん、魔理沙さん!」
{紫!見てるんでしょう!魔理沙をこっちに送りなさい!}
早苗たちが魔理沙を救出しようとしているのを確認し、ウーは横倒れになっているパワードザンボラーにのしかかった。その瞬間にウーの体から冷気が発生し、パワードザンボラーを冷やした。無論、パワードザンボラーの体は超高温。ウーの体はシュウシュウと焼け、溶けて消えそうになっている。だが、ウーはパワードザンボラーから離れない。まるで、ウーの体が溶け、消えてしまうのが先か、パワードザンボラー凍死するのが先かの我慢比べである
熱と冷気の戦いが繰り広げられる中、魔理沙が目を覚ました。
「ぁ……うぅぅぅ…さなえ。」
「魔理沙さん、しっかりして!死なないで!」
「バカ……かってに…ころすなよ……」
激痛をこらえながらも口を開く魔理沙。
「気が付いたんですね!よかった……」
「さなえ…かいじゅう…は?」
「はい、あっちでもう一体の怪獣と戦ってます。」
「もう、いったい?」
「はい、あののしかかってるほうが魔理沙さんを助けてくれたんですよ」
早苗達は怪獣たちのほうに目をやる。
「ほう…そうかい。」
怪獣の我慢比べは五分のようで、ウーはすでに半透明になってしまい、パワードザンボラーの動きは弱まって緩慢になっている。そんなとき、ウーが魔理沙たちのほうを向いた。そして、何か思念的なものを二人は感じた。
討て!俺ごと怪獣に止めをさせ!
「……!魔理沙さん。今のは…」
「ああ、ばっちし…聞こえたぜ!」
そういうと、魔理沙は八卦炉を構えた。どうやら、マスタースパークを撃つつもりらしい。だが、魔理沙は腹這い状態から起き上がるのも難しい状況だ。
「魔理沙さん!無茶ですよ。」
「ああ、お前や…あたし一人じゃ……無茶化かもな……」
「え?」
「手伝ってくれ、早苗。あたしの体を…支えてくれ。一緒に…怪獣を倒そう。」
「魔理沙さん………わかりました。倒しましょう。一緒に。」
魔理沙の八卦炉を構える手を早苗は支えてやる。
そして、八卦炉に二人分の魔力が流れ込む。
「いくぜ、これが私の魔法と早苗の奇跡の力だ!食らいやがれザンボラー!!」
「{恋符 マスタースパーク}奇跡を込めて!フルパワーだ!!!!」
その瞬間、八卦炉から最大火力のマスタースパークが放たれた。
その威力は普段の弾幕ごっこの比ではなく、大地を削りながらパワードザンボラーへと向かい、命中する直前にウーはパワードザンボラーから離れ、ザンボラーはそれを顔面で受けた。ここからは二人と一体の我慢比べである。方やミサイルやメガスペシウム光線に耐えるほどの皮膚をもつパワードザンボラー、方や山を吹き飛ばす威力の光線にさらに奇跡の力が加わったもの。傍から見れば、ぼろぼろの早苗たちが圧倒的不利だが、実はウーの冷気によって極度の低体温にされたザンボラーは意識もうろうとしている。その点に、かすかな勝機があるといえる。
マスタースパークが放たれてから数分の間、神社にいる者たちは一言も交わせないような緊張感に包まれていた。だが、皆がこのマスタースパークで怪獣が息絶えることを願っていた。そして、7~8分たっただろうか、戦いに変化が起きた。
「まずいわね。マスタースパークが弱まってきている。」
「ええ、だんだん細くなってるわね。」
そう、魔理沙たちに先に限界が来たのだ。八卦炉を持つ手は焼け、がくがくと震えている。そして、マスタースパークの反動に耐える体も限界のようだ。
「くうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
そして、マスタースパークの光もどんどん細くなってゆき、最終的に十数分ほど放たれたマスタースパークは消え、少女二人もばったりと倒れてしまった。
「魔理沙!早苗!」
「限界が来てしまったのね…」
「まずいなこれは…おい、結界内の気温はどうなってるんだ」
「は、はい、気温42度。もう一体の怪獣の冷気によるものかと」
「行けなくはないな。救出の準備だ。」
「了解。」
木更津達男集は防護服に身を固め、結界内に入ろうとする。だが、
「待ってください、怪獣が、怪獣が起き上がりました!」
「なっ……!」
それは最悪の知らせだった。怪獣はマスタースパークに耐えきったのか?そう皆が絶望した。
だが、パワードザンボラーは一歩、二歩ふらりと歩くと、白目をむいて倒れた。そう、ウーの力で極度の低体温となってしまった所に山をも砕くレーザーが顔面を直撃したのだ。奇跡のようだが、魔理沙たちは怪獣に勝利したのである。
「やったわ!。」
「急いで救助に向かうぞ。」
「応!」
男集は担架を持ち、スキマから無縁塚へと突入し、霊夢たちもそれに続く。そして、倒れこんだ早苗達を見つけ出した。
「魔理沙!早苗!大丈夫なの?」
「ああ、どうやら、気絶しているらしい。すぐに永琳先生のところに運ぶぞ!」
そう言うと、男達は魔理沙と早苗を担架に乗せる。すると、目の前に永遠亭への隙間が開いた。紫はちゃんと観戦していたようだ。それと同時に、無縁塚を包む結界も崩れていく。気温が急激に低下しているので、もう大丈夫であろうと紫は判断したのだろう。
そして、ザンボラーは隙間へと消えていく。白目をむいて倒れたとはいえ、まだ気絶しただけの可能性もあるのだ。恐らく、そのままウルトラゾーンの怪獣墓場あたりへと放りだされるのだろう。
そして、もう一体の怪獣、ウーはその姿をいつの間にか消していた。
それから一週間がたった。外では冬まっ盛りに雪が降り、ウサギたちが遊んでいる。その病室の一つに魔理沙は入院していた。全身大やけどで肺は焼け焦げ両足は粉砕骨折。生きているのが不思議なくらいの大けがも八意永琳の手にかかれば何とか命をつなげることができた。全治3カ月だが、すでにベッドから起き上がることができるようになっている。
「いやーあのときは死んだと思ったね。正直なところ。」
「ま、生きてたからいいじゃない。心配して損したけど。」
魔理沙がいるベットの横では、霊夢がリンゴをむいていた。
「お、心配してくれたのか。お前に心配してもらえるとは感謝感激だな。」
「まあ、死んだら死んだで盛大な葬式をしてあげたわよ。」
そして、むいたリンゴを丁寧に六分割して、自分の口に運ぶ巫女。
「一瞬でも感謝したあたしがバカだったぜ。」
魔理沙も負けじとリンゴを奪い、口に運ぶ。
「で、結局あの怪獣は何だったんだ。」
「さあ?紫は何も言わないし、分かんないわ。まあ、過ぎたことはいいから、あなたはゆっくりと傷をいやしなさいな。」
「ああ、分かってるぜ。」
ちなみに、早苗の怪我はそこまでひどくはなく、すでに退院していた。そして、父と母の墓前で勝利を報告していた。
「父さん、お母さん。あたしね、勝ったよ。怪獣に。だから、もう大丈夫だから、ゆっくり眠ってね。」
場所は変わってここは紅魔館。永遠に赤い幼い月、レミリアス・カーレットら一派の住む館である。
「で、その怪獣ってのは早苗と魔理沙の活躍で倒れた……というわけか?」
「はい、お嬢様。」
そこでは、咲夜が自分の主に今回の結果を報告していた。
「ふむ、まあ、この結果は当然ね。でも……」
「どうされました?」
「いや、何でもない。下がっていいわよ。」
「はい。」
そして、自分の従者の気配が消えると、軽く息を吐き、自分の見た夢のことを思い出していた。
彼女の能力は運命を操る程度の能力。なので、何かの運命を夢として見ることがある。そして、最近、ある夢を見たのだ。
燃え盛る妖怪の山、何か巨大なものに蹂躪される人里、干上がった湖、焼け落ちる紅魔館。全て、咲夜の言った怪獣という存在がが侵入していれば全て起こりえたことだ。
そして、また違った夢も見た。自分のそばから、何か大切なものが無くなってしまう夢、その大切なものが何かはわからない。だが、何かが無くなってしまうような夢を見た。これが、現実となったら……
「ふ、まさかね。」
だが、レミリアはその考えを一笑に付した。自分が何かを失うことなどあり得ない。そんな自信あふれる笑いだ。
こうして怪獣と幻想郷の住民のファーストコンタクトは終わった。しかし、これで外部からの侵略が終わったわけではない。これから幻想郷がどうなるかは、レミリア・スカーレットの能力ですら見ることはできない…………
いかがだったでしょうか。まだ至らない駄文ですが、皆さまの暇をつぶせたら幸いです。