東方怪獣録   作:怪獣好き

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木更津の幻想入り

 幻想郷の結界が外部から干渉されてから数日たった頃。博麗霊夢たちがピリピリしていると、迷いの竹林の付近ですさまじい轟音と共に巨大な何かが落ちてきた。

 一体何が起きた。とウサギたちやてゐ、鈴仙と永琳、そして妹紅がやってきて、その巨大な建造物を見る。その建造物は銀色で地上では立ちそうもない形状で半分以上がつぶれ、破壊されていた。そしてすさまじく酸い、粘性のある液体で覆われていた。

 迂闊にもそれを触ろうとする妹紅。それを永琳の厳しい声が止める。

 

「やめなさい!この臭いは消化液のものよ。見なさい。」

 

永琳はカバンから青く小さい紙を取り出すと、粘液にあてる。すると青色の紙は一瞬で赤く染まった。

 

「なんだそれ。」

「これはリトマス試験紙と言って、簡単に言うと酸かどうか調べる紙よ。これは強い酸……何かの生き物の胃液と考えられるわ。」

「とにかく、中を見てみましょう。」

 

少女達は粘液に気をつけつつ内部に入る。そこはまさに地獄絵図であった。粘液に覆われ溶けている者、機械や基地の骨格に潰されている死体、何か変な形のカプセルで死んでいる男女、様々な死体があった。

 

「これは酷いわね。」

「そこらじゅうに粘液がついています。」

「生存者は期待できないですね……」

「とりあえず、死体を確認するわ。」

 

一体一体死体を確認していく永琳と鈴仙。妹紅は手持無沙汰に周りを見る。すると、粘液に覆われているが、僅かに胸の動いている者を見つけた。

 

「永琳!生存者!」

「何ですって。」

 

永琳は急いで患者を見る。

 

「これはまずいわね、幻想郷の技術じゃあ蘇生は難しいわ。」

「くそ、せっかく生きている奴を見つけたのに……」

 

すると永琳は目の前の死ぬ寸前の男がどこかを指差そうとしている事に気がついた。

その先を見ると、メディカルルームと書かれていた。

 

「そうか、ここの技術なら分からないわ。鈴仙、内部を確認して。」

「はい。」

 

 鈴仙はメディカルルームに入る。その部屋は奇跡的にまだ使える状態であった。人工皮膚や見た事もない器具が並んでいた。

 

「師匠。何とか手術できます」

「解ったわ。何とかこの男を運ぶわよ。」

 

男は酸にまみれていたので、基地内で発見した防護服を着用して運ぶ。そして、応急措置を施した。

その間に妹紅は4人の死にかけの男達を見つけ、メディカルルームで応急措置を施し、彼らを永遠亭へと運んだ。

 

その男は技術班主任だった。MACステーションアジア本部基地では天才と呼ばれ、機体の整備から武器の製造まで何でもござれだった。だが、彼が本当にしたかった事は他にある。

それは、空を飛ぶ事。いつか自分が整備したマッキーで空高くをフライとしたかったのだ。だが、現実は厳しく、自分の飛行の腕はエリート達には遠く及ばなかった。だが、今の仕事に満足していないのかと聞かれればそうでもない。自分が、MACを縁の下から支えている感覚は気持ちがいい。だが、それもあの日に終わってしまった。

鳴り響く警報、侵入してくる触手。なんとか隊員を脱出させようと頑張るが、それも無駄に終わりそうである。失意の中、黄色い粘液に包まれた。

気がつくと、自分はベッドの上に寝かされていた。一体どうなっている。自分は死んだのではないのか。そう思い、体を動かそうとするが、一ミリも動かない。そこに、少女の声が聞こえてくる。

 

「あ、師匠!最後の人が目を覚ましましたよ。」

「そう。」

 

そして自分を見降ろす女性、なんだか変わったナース服である。と言ってる場合ではない。

 

「あ……ああ……」

「無理にしゃべらなくていいわ。あなた、消化液まみれで奇跡的に生きていたのよ。それに体も動かしてはだめ。あの基地……MACステーションだったかしら?あれに乗っていた人間で、生存者はあなたを除いて四人よ。」

 

四人しか助からなかったか。モロボシダン隊長は生きているのだろうか。

 

「四人ともあなたの事を心配してうるさかったわ。」

 

どうやら、生存者の中に隊長はいなかったようだ。無念である。

 

「さて、彼らにも説明したけれど、あなたにもしてあげるわ。ここ幻想郷について。」

 

 こうしてここが幻想郷という土地である事を聞かされた。まあ、宇宙人や怪獣がいて。妖怪がいないはずもないが、少し驚いた。

 

「さて、じゃあ健康診断と行きましょうか。」

 

それから数日たち、何とかベットから起き上がれるほどに回復した。すると、自分の周りに4人の男が集まってきた。

 

「木更津主任!」

「ああ……なんだ。」

「主任!喋れるまで回復したのですね。」

「ああ……まだ……長くは喋れんが……な。」

「よかった……ダン隊長が亡くなられたと聞き、落ち込みましたが、主任が無事なら!」

「ほらほら、病人はおとなしくベッドで寝ていなさい。」

 

ウサ耳をつけた少女……たしか鈴仙という名前だった気がする……が四人をベッドに押し込む。

 仕方がないので、ベットの上で会話をする事となった。

 

「お前達……は、どうして……生きられた。」

「俺達は主任とは違って機材の下敷きになっていただけだったので、主任ほどの怪我は負わなかったんです。まあ、1週間は絶対安静らしいですが。」

「早く治して、この幻想郷から出たいですね。MACが壊滅しちまったら、地球はウルトラマンレオ一人で守らないといけないですからね。」

「ああ。防衛軍だけじゃ不安だからな。早く帰って、新しい脅威を伝えないとな。」

「ああ。」

 

一週間が経過した。元気になった隊員達は今日、博麗神社という場所に向かうらしく、意気揚々と出ていく。だが、帰ってきたときには完全に意気消沈していた。

 

「どうしたんだ、お前ら。」

「実は……」

 

 時間は少し戻って博麗神社。そこで男四人と少女一人が対峙していた。

「外に出られないだと!どういう事だ。ここに来れば外に出られると聞いたぞ。」

「分からないわよ。」

「分からないで済むか!我らはな、外でやるべき事が山ほどあるんだ。」

「煩いわね。できないものはできないの。私だって困ってるんだから。」

「くっ、ならば、せめて外に通信はできないか。我らが生きている事を伝えたい。」

「無理。この結界は万全よ。その、何?電波とかいう奴もシャットアウトするわ。」

「ぐ、ぐぐぅ……」

 

「で、帰ってきたと。」

「はい。面目ありません。」

「まあ、お前達の対応にも問題があったと思うぞ。」

「な、なぜです。」

「まず、手見上げも持って行かなかった。それに相手は少女だろう。そんな今にもマックガンを引き抜くような勢いでまくし立てたのも減点だな。」

「う、それは……」

「まあ、それは俺が後であいさつに行くときにわびるか。で、ここから出られないならここで暮らすしかない。」

「やはり、ここで暮らすのですね。」

「当たり前だろう。ずっと入院しているわけにもいかん。とりあえず、永琳女医から聞いた話では、MACステーションの残骸は河童という種族が持って行ったらしい。彼らとコンタクトを取りたいが……」

 

木更津は四人をじろりと見る。こいつらに交渉ごとは無理だと博麗の一件で理解した。ならば、自分で行くしかない。

とりあえず、まだ松葉づえが無いと歩けないが、その体に鞭打ち、動く練習をする。いわゆるリハビリだ。

必死のリハビリの甲斐あってか、三週間で驚異の回復をした木更津。まずする事は、永琳達への礼だった。

 

「いや、皆さんのおかげで完治できました。どうもありがとうございます。」

「いえ、当然のことをしたまでですわ。」

「ですが、今の我々には払うべき物がありません。なので、しばらくつけという事にしてもらえませんか?」

「ええ。いいですよ。ですが注意してください。あなたは5人の中で一番重症だった。定期的な通院をお勧めします。」

「肝に銘じておきますよ。では!」

 

てゐに先導され竹林を出る。目指すは妖怪の山の河童居る場所。だが、妖怪の山の妖怪は好戦的と聞く。自分達は丸腰。命の危機再びである。だが、永琳からいい情報をもらった。川は意外と見張りがゆるいという事だ。なので、4人を山の下に置き、一人で川に沿ってそっと登山する事となった。

時間にして2時間かかっただろうか。粘液がきれいに洗い流された我らがMACステーションアジア本部基地の残骸が無造作に転がり、河童たちが調べていた。木更津は近くにいた青髪で緑のリュックを背負った少女に話しかける。

「あーすまないが、君。」

「え……」

 

木更津に話しかけられた少女は固まる。そして一拍置き……

 

「に、人間!」

 

 と叫ぶ。すると、作業していた河童たちも驚きの目でこっちを見る。これはまずいと木更津は胸に刺繍されたマークを見せる。

 

「俺はその基地の中にいた生き残りだ。ほら、このマーク。基地中にある筈だと思うけど?」

 

河童たちはそのマークを見ると、固まって話をし始めた。

 

「生き残り?」

「そんなのがいたのか。」

「だが、好都合かもしれんな。」

「うむ。」

 

そしてこちらを向き、さっきの少女が話してくる。

 

「すまないね盟友。人間がこんな山奥まで入ってくる事は珍しいからみんな驚いちゃったんだ。」

「いや、いきなり来た私にも比はある。」

「それよりさ、あのでっかい要塞、あれは何なの?」

「ああ、質問に答えるのはいいが、その前に、山の下にいる4人の部下の入山を許してほしいんだが。」

「分かった。おーい。川下に4人の人間がいるから連れてきてってさ!」

「分かったぜ」

 

河童が数人川の中に入り、下っていく。

 

「さて、この基地はMACステーションと言って……」

「これはマックガンだな。怪獣と戦うための武器だ。」

「これはマッキーシリーズ。戦闘機……いわゆる空を飛んで戦うために作られた機体だ。ただ、壊れているな。」

 

こうして目を輝かせている河童たちに一つ一つ説明していく。

しばらくして4人も合流したため、自己紹介をし、話しに入る。

 

「さて、河童のみなさん。皆さんに頼みがあるのですが……」

「何?」

「我々をここに住まわせてほしいのです。」

 

その言葉に、河童たちは顔を見合わせる。彼らにとって人間は盟友だ。大抵の事は聞いてやりたい。だが、いきなり来て住まわせろとはいささか図々しいのではないか。

「もちろんタダとは言いません。皆さんは住んでみたくありませんか?あのMACステーションのような基地に。」

 

その言葉に数人の河童が反応する。

 

「へえ、じゃあなんだい。あんたらならあの基地が作れると?」

「そうです。あなた達の技術は幻想郷随一と聞きました。かく言う私も外の世界では天才技術者と呼ばれた身。それが合わさればできないことなどありません。」

「ふうむ……たしかに魅力的だな。いいだろう。お前達が住めるよう天狗どもと掛け合ってやろう。」

「ありがとうございます。」

「で、早速で悪いのだが、今、間欠泉地下センターという場所で核融合という新エネルギーが研究されている。我らもそれに対抗して新しいエネルギーを作り上げたいのだが、どうだ、できるか?」

「お安いご用です。」

「よし。にとり。お前が木更津さんの下で働け。」

「い、いんですか?」

「うむ。若いお前なら柔軟に彼の技術を取り込んでくれるだろう。期待しているぞ。」

「はい!」

 

こうして、木更津の仲間ににとりが加わった。木更津は早速基地の残骸の中からある物を探す。

 

「木更津さん、何を探しているんですか。」

「ん、ソーラー発電パネルさ。」

「ソーラー発電パネル?」

「そうだ。簡単にいえば、太陽の光を電気に変える装置だ。」

 

 基地の中をくまなく探す。何とかソーラー発電に使用する材料を集めた。ここからが木更津の本領発揮である。

 

「さあ、始めよう。」

 

一日後、河童の住む場所の近くでソーラー発電の実験が行われた。結果は大成功。この功績により、木更津は河童たちに認められたのだ。

そして木更津は、河童たちの住む場所の改造に着手した。河童の住む滝の内部に基地を作るのだ。河童たちは喜んでそれに従った。

 

木更津は長い石段をある物を背負って上っていた。そしてその上には箒をもって掃除をしている少女、博麗霊夢がいた。

 

「博麗霊夢さんだね。」

「ええ、そうよ。あんたは……その刺繍、こないだのうるさい奴らの仲間?」

「ああ、あいつらは部下でね、君に不快な思いをさせたようだ。すまない。」

「ま、分かってくれればいいのよ。で、用件は?」

「ああ。この間のお詫びにこれを持ってきたんだ。」

 

 そう言って背中にしょったものを降ろす。

 

「何それ。」

「ソーラー発電パネル。簡単にいえば電気を作る板さ。」

「へえ、でも、私電気は使わないのよね。」

「今はね。でも、夏や冬になったらこれが役に立つんだ。まあ、何か欲しくなったら河童の所に来てくれ。無理な物以外は作ってあげるから。」

「ふうん。ま、覚えておくわ。」

 

この時の霊夢はあまり気にしていなかったが、後に霊夢は扇風機とエアコンと炬燵を頼むことになる。

 

そして秋から冬に季節が変わる頃には、基地の40%が完成した。

 

「木更津さん。すごい。すごいよ!」

「いや、まだだ。俺が目指すのはもっと先だ。」

「もっと先?」

「そう。俺はな、空が飛びたいんだ。」

「空?私でいいならつかまってくれれば飛ぶけど……」

「いや、そうじゃなくて、俺は、俺の創った翼で飛びたいんだ。」

「……?」

 

にとりにはまだ難しい話だったようだ。木更津の目標。それは自作のマッキーで空を飛ぶ事なのだ。だが、その前には数々の解決しなければならない問題が山積みである。それをどうクリアしていくのか。今は、誰も知らない。

 




怪獣が出て来ない……次回は出しますので怪獣を楽しみにしている方、申し訳ありません。
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