東方怪獣録   作:怪獣好き

9 / 23
半人前の剣豪

 これから始まるのは刀の物語。最強の剣豪と半人前の剣士の物語。死した剣豪は幻想の中に何を見るか。

 

 ここは冥界。死者たちが閻魔の裁判を受け、成仏転生するまで待つ場。そこの管理を任されたるは

天衣無縫の亡霊こと西行寺幽々子。その彼女が住まう白玉楼につながる石の階段の下に男は座っていた。

その男、姿はまるで昔の武士のような服装で、一本の刀をさしている。

この男の名は錦田子十郎景竜。物の怪を見極め、妖怪退治を生業とした剣豪である。

だが、とうの昔に肉体は滅び、自らが振るった刀に宿り、自らが封じた者たちが復活しないよう見張っていたはず。

 

 「ぬぅ、ここは…どこだ。」

 

 男は首をひねる。彼の最後の記憶は、光の巨人とともに鬼を倒し、その力を身に宿す男に未来を託し

未練なく成仏したように思ったのだが、なぜが石造りの階段の下にいる。

しかも周りには妖気が蔓延しており、危険な場所であることに間違いない。

 

「ふむ、もしや別の世に飛ばされたか。」

 

 この男、平然と言ってのける。

 

「久しいものよ。別の世に行くとは。」 

 

 男は考え耽る。自分は生前の旅の中で、様々な魑魅魍魎や鬼、妖怪を退治してきた。

その人生の中で、たまに灰色の歪みをくぐる時があった。はじめて見た時こそ驚いたものの、

一度くぐれば今までいた場所とはまったく違う空気と妖気の世、しかも人々が強大な人外の魔物に苦しめられる世に着くことが分かり、それ以降はその歪みを進んでくぐった。今回もそうなのかと。

 

 とりあえず考えても埒が明かぬと、石段を登り始めた。

 

 そして、何事もなく上りきることができた。だが、本来なら弱い妖怪や亡霊たちに攻撃を

受けるはずだが、男が放つただならぬ気配を恐れ、近づけなかったのだ。

石段の上にあったのは日本屋敷の門だった。それ自体は驚くに値しないが、

門の向こうから、恐ろしく強い妖気がにじみ出ていた。

 

「ぬ、これはいかん。」

 

錦田は気を引き締め門をたたく。経験上、強力な妖怪は大抵の場合は人に仇をなす。

それを止めるのが最強の剣豪である自分の使命だと考える錦田にとって、この妖気は見逃せなかった。

 

「たのもう!たのもう!誰ぞおらぬか!」

「はい、今開けます。」

 

 そして、扉が開くと、中から白髪の少女が出てきた。この少女は半人半霊の庭師こと魂魄妖夢。

この少女は人と幽霊のハーフであり、一応は主人である西行寺幽々子の剣術指南役だ。

 だが、そんなことはつゆ知らない錦田の目には、なぜか人の気が半分しか感じられず、

もう半分は死者…いや、霊魂の気をもつ妖夢はかなり異様に映った。

だが、錦田はこの感じをはるか昔感じたことがある気がする。かつての懐かしい記憶。

だが、それよりもまずこの強大な妖気だ。

 

「あの…どなたですか?」

「わが名は錦田小十郎景竜。いきなり失礼だが邪魔するぞ。」

「ま、待ってください。」

 

 錦田は少女の制止を振り切り、屋敷の庭へと向かう。

 

「ぬぅ…この桜か。なんと恐ろしい妖気か。」

 

 錦田は恐ろしいほど濃密な妖気と殺気を放つ桜の前に立った。

まるで、死を誘うような気配に剣の柄を握る手に力が入る。

だが、なぜかこの桜からもほのかに懐かしい気配が漂っているのが気にかかる。

とにかく、この桜がこの屋敷の人間を死に誘う事がないよう切り倒すため、刀を抜き、一閃した。

 

だが、その斬撃は桜ではなく、後ろから切りかかってきた二刀をはじいた。

 

「お主……何のつもりだ?」

「だまれ侵入者!貴様こそいきなり侵入してきて西行妖に切りかかるなど何のつもりだ!」

 

そして、その少女は二刀を構える。だが、錦田はやはりその姿に見覚えがある気がする。

少女の構えはかつて戦った、自分が同格と認める数少ない異世界の剣豪によく似ていた。

そして手にある二振りの刀は間違いなくその剣士が持っていた刀、白楼剣と楼観剣だ。

そこから、錦田はある可能性を思いつく。

 

「お主、もしや…」

「うるさい。侵入者に語る口など無い!」

 

 そして、激しい刀の打ち合いとなった。だが、打ち合いといっても少女の攻めを錦田が防ぐ、

はたから見れば一方的なものであった。

だが、実は少女は攻めあぐねているのだ。

どう刀をふるっても、まるでその太刀筋を知っているかのごとく防がれる。

 

「どうした、この程度か。」

「…っく!」

 

さらに、錦田の余裕に満ちた表情が妖夢の神経を逆なでする。

ならばと妖夢はいったん相手から離れ、半霊を飛ばす。

もちろんそれを錦田は驚きつつもかわすが、それは予想済み。本命は別にある。

 

「魂符{幽明の苦輪}」

 

そう、半霊は妖夢の姿をコピーできる。つまり、実質的に二対一、四刀対一刀となるのだ。

そして、位置的には挟み打ちとなる。しかも、錦田はそれに気づいていないようで、

こちらに向かってくる。妖夢は、すべてが自分にとって有利となっているように感じた。

そして、錦田の首と胴は前と後ろから切り裂かれる……はずだった。

が、強い衝撃を感じたのは妖夢だった。

 

「え…?」

 

 気づけば、妖夢の腹部には刀の柄が、半霊の腹部には鞘の先端が埋まっていた。そして、

そのほんの一瞬の後、妖夢とその半霊は前が暗くなるほどの激痛と共に大きく吹き飛ばされた。

だが、妖夢は気絶しなかった。片足は付いたが、強く相手を睨みつけ、殺気を衰えさせない。

 

 それに対し、錦田は妖夢との戦いで頭に浮かんでいた可能性が実際のものであったことを確信した。

 

「ふふ…太刀筋はあの魂魄妖忌に似ているが、すべてが半端、未熟だな。」

 

錦田がかつて灰色の壁を通り抜けた向こうの世で出会った剣豪、魂魄妖忌。

その太刀筋は堅実で質実剛健。一瞬でも気を抜けない凄まじい剣豪だった。

 

「…!な…なぜおじいちゃんを……知っている!」

「お主は恐らく奴の娘か孫であろう。いや、懐かしいな。まさかこの数百年で子供をこさえていたとは。あの堅物が子供をなぁ……」

 

 錦田はかつての懐かしい記憶を思い出した。

 

かつて、灰色の壁を抜けたところにあった世の一つでの体験。

その世にいた強大な物の怪を三人がかり…いや、正確には二人と半分がかりで倒した後の酒宴でのこと。

あの亡霊の提案で始まった魂魄妖忌と自分との腕比べ、

恐らく、博麗のに止められなければ百日手となったであろう。

だが、そうならなかったのをほんの少し残念に思えた、そんな強く、素晴らしい剣豪であった。

 

が、そんなことは妖夢には関係ない。

もしかしたら、消えた祖父の消息がわかるのかもしれないのだ。

痛む腹を抑えつつ、刀を構える。

 

「おじいちゃんは…どこにいる!」

「まだやるつもりか。だが、今のお主の体と腕では無理だ。」

「うるさい!何が何でも聞きだしてやる!」

 

そう言うと、錦田に飛びかかる……前に、それを止める声がかかった。

 

「そこまでよ妖夢。刀を引きなさい。」

「幽々子様!ですが…」

「引きなさい。彼には今のあなたの腕では絶対勝てないわ。」

 

主にそう言われ、かなり悔しそうに刀を納める。

そして錦田も刀を納め、妖夢の主である西行寺幽々子に向き直った。

 

「西行寺ではないか。また懐かしいな。ということは、やはりここは白玉楼とかいうところか。」 

「ええ。久しぶりね景竜。大体……五百年ぶりかしら。ここに来るには遅すぎないかしら?」

「五百年か。時がたつのは早いものよ。だが、お主は少しも変らんな。ところで…」

「ああ、妖忌は悟りを開いて出て行ったわ。」

 

その言葉に内心驚く錦田。

 

「……なんと。お主から離れていくとは奴らしくないな。」

「………まあ、そこらへんの積もる話をしましょうよ。妖夢、あなたは下がっていなさい。」

 

妖夢は少しぶすっとしていたが、さすがに主の命には逆らえない。

 

「…分かりました。」

 

そう言うと、フラフラと屋敷に戻る。

 

「ところで、あなたはなんでここに来たのかしら?」

「ああ、この桜の妖気に引かれてな。」

 

そう言うと、桜のほうへ向きなおる。

 

「お主…こんな桜がある屋敷に住んでいたのか?」

「ええ。綺麗でしょう。まだ蕾だけだけど、八分咲きがまた美しくてね。」

「フム……お主は死んでいるからわからんのよ。まだ蕾の段階でこの妖気。

 満開になったら何が起こるかわからん。ここで切り倒すことを勧めるが……」

「いやよ。それに、私も満開を見たことがないわ。かつて幻想郷中の春を集めても満開にならなかった…今でもちょっぴり残念。」

 

 錦田は軽くため息をついた。彼としてはこんな物騒な妖怪桜は切り倒して封印してしまいたいが、

どうもこの亡霊のお気に入りのようだ。彼女を説得するのは湖面の月を持ち上げるがごとく

難しいだろう。

 

 錦田は屋敷に上がらしてもらった後、幽霊から酒を出され、それを西行妖を肴に幽々子と

飲みかわすこととなった。

 

「しかし、こう立派な屋敷で酒を飲むとは何年ぶりか。」

「へえ、じゃああの後にも戦い続けたの?」

「無論よ。それが俺の務めだからな。」

 

そう話していると、襖が開き、部屋に妖夢が入ってきた。

 

「あら、妖夢。どうしたの?」

「いえ…その、景竜様。先程はご無礼をいたしました。まさか幽々子様のご友人とはつゆ知らずに…」

「いや、構わぬよ。私も無作法が過ぎたのだ。すまない。」

「そうだわ。妖夢、あなた景竜に剣を教わったら?」

 

その主のいきなりの提案にポカンとする妖夢と、やれやれと首を振る錦田。

 

「景竜はね、とってもつよい剣豪なのよ。その彼に剣を教われば、きっと半人前から一歩前進できると思うわ。」

「は、はあ。」

「まて西行寺。俺は他人に剣を教えられるような器用な人間じゃないぞ。」

「いいのいいの。最近妖夢ったら少し緩んでるから、鍛え上げて頂戴。」

「はぁ……まあ、お主がそう言うなら何かしてもかまわんが……」

 

錦田は妖夢を見る。そして真剣な目で目を見る。

 

「肝心なのはお主がついてこれるかだ。どうだ、妖夢とやら。」

 

その眼力にやや気押されている妖夢であったが、負けじと目を見返す。

 

「もちろん、ついていけます。」

「そうか……」

 

錦田はにやりと笑う。

 

「とりあえず、今日はもう遅い。早朝一番に始めるから、寝坊はするなよ。」

「馬鹿にしないでください。寝坊なんかしませんよ。」

「あらあら、楽しみだわ~。」

 

次の朝、妖夢は武士スタイルで気合を入れてきた。だが、錦田は至って普通の服装だ。

 

「じゃあ始めるが、その前に言っておく事がある。」

「何ですか?」

「俺の剣はいわば戦いの中で自然にできた物。とてもじゃないが教えられるようなもんじゃない。」

「教えられない?」

「そうだ。だから盗め。俺はお前にひたすら打ち込む。それをお前が盗むのだ。」

「は、はい。」

「とりあえず防具はつけとけ、木刀でも、当たり所が悪ければ死ぬぞ。」

「分かりました。」

 

妖夢は急いで剣道で使用されるような防具に着替え、再び対峙する。

 

「よし、では行くぞ。まずは小手調べだ。」

 

そう言うと、錦田の姿が、消える。妖夢が気がついた時には既に目の前に迫っていた。

 

「っく!」

 

妖夢は1歩下がって体制を整えようとするが、そんな暇はなかった。錦田がまるで嵐のように木刀を振ってきたからだ。それを二本の木刀で裁く妖夢。だが、まるで防げない。上、右、左斜めと自分の祖父の太刀筋とはかけ離れた、いわば力の攻撃についていけず、妖夢は膝をつく。

 

「どうした、その二本の刀は飾りか!ちゃんとさばき切って見せろ!」

 

 錦田の一太刀一太刀はとにかく重かった。一撃受けるたびに腕がしびれる。だが、自分だって祖父に剣術を学んだのだ。祖父の誇りにかけて、こんな所では躓けない。

 

「ヤァァァァァァァァァァァ!!」

 

妖夢は気迫と気合で何とかさばき切る。

「ふむ。」

 

そして錦田の攻撃が終わり、次は妖夢の番だ。

 

「では、行きます!」

 

妖夢の太刀筋はかなり基本に忠実、かつ素早い。だが、錦田は片手で木刀を持ち、かるく防ぐ。

 バカにされていると感じ、僅かにイラつく妖夢。だが、そこを突かれる。

 

「ふん!」

 

 ゴンと鈍い音がして、妖夢の面の上に木刀が叩きつけられる。

 

「だめだな。そんなへなちょこ剣じゃ実戦ではまるで役に立たん。妖忌はお前に何を教えたのだ!」

「何!」

 

祖父の悪口を言われたと思い、僅かに怒る妖夢。だが、次の言葉で沈黙する。

 

「お主の弱点は妖忌だ。」

「弱点が、おじいちゃん?」

「そうだ。お前は中途半端に妖忌の剣をまねているだけだ。それではお前の剣が作れない。まずは、妖忌を捨てるとこから始める。今日はここまでだ。明日からはもっと厳しくやるからな。覚悟しておけ。」

 

そう言うと、錦田は館へと入っていく、妖夢は薄れゆく意識の中で、錦田の言葉の意味を考えていた。

おじいちゃんを捨てる……?剣のすべてであったおじいちゃんを?そんな事が出来るのか?

そして、妖夢は倒れた。

 

気がつくと妖夢は布団の中に寝かされていた。起きようとすると、全身に激痛が走る。

「あらあら、寝てなきゃだめよ。」

「ユ、幽々子様。私は……」

「どうだった。景竜との稽古は。」

「……私の弱点はおじいちゃんだと言われました。」

「そう。」

「私は今までいくつもの異変を解決してきました。ですが、それが井の中の蛙である事に気がつかされました。景竜様の剣は、まさに戦いの剣でした。」

「ふふ、そこに気がつけただけでも大収穫よ。ほら、料理番の幽霊に頼んで一杯ごちそうを作ったから、後で食べましょ。」

「はい。」

 

次の日、その次の日と錦田と妖夢の稽古は続く。稽古といっても、錦田が一方的に妖夢を打ち、妖夢がそれを防ぐというものだった。だが、激しい攻撃の中、妖夢は、何かをつかみ掛けている気がした。

 

 

妖夢と錦田が稽古をしている中、三途の川の彼岸では大変な事態が起こっていた。突如空が割れ、彼岸やそこに運ばれてくるはずの幽霊たちがその割れた空から出てきた謎の空飛ぶ船によって、全て連れ去られたのだ。そして迎撃に出た死神や鬼達までも魂を抜かれ、灰色になり倒れる。その船こそ、かつてネオフロンティアスペースでウルトラマンダイナと戦った強豪怪獣の一体、幽霊船怪獣ゾンバイユである。

 そして、ゾンバイユはさらなる餌を求め、冥界を目指す。冥界が壊滅するのは、時間の問題かと思われた。

 

 

激しい稽古の後、妖夢は息を荒げ、砂利の上に倒れこむ。錦田はかなり余裕そうである。

 

「どうだ妖夢。何かつかめそうか。」

「は、はい。もう少し、もう少しなんです。それがつかめれば、何か変わる気がするんです。」

「そうか。お前が何かつかめた時が楽しみだな。」

 

錦田はにこりとしている。どうも妖夢は上達が早い。だが、妖夢がぶつかっている壁は予想以上に高いようだ。

その時だった、錦田は、邪悪な気配を察知し、虚空を睨みつける。

 

「どうしたんですか?」

「何か来る。邪悪な何かが。」

 

すると、虚空が音を立てて割れ、中から船が出てくる。

 

「あれは、空飛ぶ船……」

「いや違う。うまく船に擬態しているが、あ奴は魔の存在だ。」

 

すると、船の下部から黒い光が降り注ぐ。そして、それがこちらに向かってきているではないか。

 

「いかん。妖夢!」

「え、きゃ。」

 

錦田は妖夢を小脇に抱え、そこから飛び退く。そして、一瞬前までいた所に黒い光が降り注ぐ。すると、その場にいた幽霊たちが消えてしまった。

 

「奴め、恐らく霊体を食物としているに違いない。」

「ど、どうしましょう。あんな大きな船、刀じゃ勝ち目なんて……!」

 

その言葉に、錦田は反応し、妖夢の頬を叩く。

 

「妖夢。だからお前は半人前なのだ!」

「景竜様?」

「刀で勝ち目が無いだと?お前は俺の剣と妖忌の剣を見てきたのだろう。なのになぜそんな弱気を吐く。」

「そ、それは……」

 

錦田は、妖夢の頭に手を置く。

 

「妖夢。今まで教えてきたことを生かすんだ。そして、今掴みかけている物をつかめ。そうすれば、敵が自分の何百倍大きかろうと倒せるようになる。」

「景竜様……」

 

錦田は白玉楼に妖夢を降ろすと、刀を持ち、ゾンバイユに向かっていこうとする。

 

「景竜様、私も……」

「だめだ。お前は私の戦いを見て、掴むんだ。今掴めそうな何かを!」

 

そう言うと、錦田は刀を抜き、ゾンバイユの青い発光体に刀を突きさす。そしてそこからゾンバイユの頭へと切り裂いていく。錦田の刀とゾンバイユの皮膚が火花を散らす。錦田は何度も発光体を切り付け、ゾンバイユは苦しむ。だが、ゾンバイユもやられてばかりではない。錦田が刀を振ろうとすると、目の前から消え、錦田の上空に現れる。そして、黒い光線を浴びせようとする。だが、錦田は刀を投擲し、下部の発光体に突き刺す。すると、その発光体が爆発を起こし、ゾンバイユは落下していった。

 

その様子を妖夢は固唾を飲んで見ていた。錦田はとにかく攻勢で相手に隙を与えない。そして地上戦でも何度もゾンバイユの皮膚を切り付けている。その光景を見て、妖夢は何かをつかみ取ろうとしていた。

 

「どう、何か掴めそう?」

「幽々子様。」

 

そんな妖夢に、幽々子が話しかけてきた

 

「景竜様は力強いです。とにかく攻撃が激しくって、おじいちゃんとは……」

 

その時、妖夢は自分の中にある何かの姿を見た。そうだ、景竜にはおじいちゃんのような技が無い。とにかく切るのみの力技だ。なら、二つを組み合わせたらどうだろう。景竜の力を、おじいちゃんの技に組み合わせる。

やってみよう。そう妖夢は思った。気がつくと白楼剣と楼観剣を握っていた。そして、ゾンバイユへと駆け出す。

ゾンバイユと戦う錦田は走ってくる妖夢を見て、叫ぶ。

 

「掴めたか、何かを。」

「はい!見ていてください。私の、力と技を!」

 

妖夢は二振りの刀を抜き、構える。そしてイメージする。自分がかつて学んだおじいちゃんの技に、景竜から学んだ力を加える。

「{六道剣「一念無量劫 -Lunatic-」}!」

無数の斬撃が、ゾンバイユを切り刻む。そして、その皮膚に穴をあけることに成功する。そこから、どんどん幽霊たちが逃げていく。

 

「うむ、お前の力と技、見せてもらったぞ。ならば俺も見せよう。俺の最強の斬撃を。」

 

錦田は腰を低く構える。錦田の剣の周りの空間が歪む。そして、一気に振り下ろす。

この技に名は無い。ただ、相手を全ての力で持て一刀両断するのみの技。

この技を食らい、ゾンバイユは真っ二つとなり、爆散した。

 

 

白玉楼。そこでは灰色のカーテンを背にした錦田と、妖夢、幽々子がいた。

 

「もう、行かれるのですか。」

「もう少しゆっくりしていけばいいのに。」

「あはは、そうもいかん。まだどこかの世界が俺を呼んでいるようだからな。」

 

そう言うと、カーテンに向かう錦田。そして、カーテンに入る寸前で足を止める。

 

「妖夢よ。」

「はい。」

「力と技の剣。見事だった。」

 

そして振り返り、優しく言う。

 

「俺の剣でもない、妖忌の剣でもない、お前の剣をみつけろ。そうすれば、妖忌はきっとお前の所に帰ってくる」

 

そう言い残し、錦田はカーテンに入って行った。

 

最強の剣豪が鍛えた半人前の剣豪。彼女はこれから、無数の侵略者との戦いに巻き込まれてゆくが、それは別の機会に語ろう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。