灰色の空。閉ざされた楽園(ケージ)。行き詰まっ(行き着い)てしまった人類。
 息の詰まるような世界の中で、僕らはそれでも夢と浪漫を抱いた。
 逸脱した(イカれた)メンバー空に舞うぜ!


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 せっかくだから俺はこの投稿サイトを選ぶぜ!
 というわけでせっかく登録しているので何かしら出してみようと言うテスト。どうも元ネタ色が濃いのでハーメルンが良いかなと思った次第です。

 誰かこんな話、書いたら教えてね。



第1話

 戦いは止まない。いつまでも降り注ぐ弾丸の雨と、いずれは限界が来るであろう、都市(アルカディア)を保護するシェルタ。勝ち目は端から見えていて、現代戦では防衛の方が遙かに難しいと、そう言う判りやすいケース。

 過去にこんな争いがあった。誰々が主導し、何処何処が戦い、どこかが滅んだ。これはそんな風に語られることすら怪しい、けれど良くある話なのだろう。

 敗残兵にろくな末路はない。仮初めの統治機構すら亡き殻となった世界に、慈悲など当たり前のように存在しなかった。

 世界は、時代は、技術はこうまで発達しているのに、何故人は変わらないのか。歴史の流れの中に人は取り残されて、玩具と化した戦略兵器で赤ん坊が癇癪を起こしている。

 時代が進めば幸せになれるというのは幻想だ。生まれ出る以前より無垢なる楽園から墜とされた人類は、存在しているだけの幸福を甘受できない。

 

 デザイナーズ。遺伝子から歯車として加工された人間に、自由はない。ディストピアとも、完全駆動都市――常に最適に調整された、考え得る限り最も人類の進歩するよう設計された人という種の設計図――人類全てを結集した箱船ともいえるこれらは、進化の先というただ一点を求めて突き進んでいく。

 

 そのはずだったのだ。

 

 人が人であるための因子。

 闘争本能。

 環境適応。

 社会構造。

 際限なき欲求。

 優越による支配意識。

 嗜虐欲求(サディズム)

 生存本能。

 多様性の先にある、コントロールからの逸脱。

 

 誰かは言った。

 歴史の必然に革命がある。

 既存の殻を脱ぎ捨て、新たな存在へと進化しようとする、その劇的な先駆けが。

 

 高度に最適化された人間は、それでも生き物だった。

 死ねば死ぬ。それは当たり前のことで、いくら機械化(マシンナイズ)した改造をしても、根幹が肉体であることには変わりない。

 存在と無の境界が著しく曖昧になったこの世界でも、最後の寄る辺となったのは、生まれ持った原初の肉体(オブジェクト)だ。

 精神は容易に変容する。

 魂は此処にあってここにない。

 対して肉体は最も判りやすく、変わりにくく、そして最も触れられる存在証明(Raison d'etre)だ。

 昔、自身の存在が脳に全て収まっていると言われていた時代。その幻想は絶対的なもので、いわゆる神秘的(スピリチュアル)なものは異端、異常とされていた。

 今でもその考えはほとんど変わっていない。

 肉体から離れた精神は原型をほとんど留めないレベルで劣化する。多様性を喪った、電子筐体の中でしか生きられないオウム。

 精神とは肉体をベースに形成されるコンテンツでしかない、ということ。

 

 そしてソーシャルネットワークに醜いスラングが飛び交うが如く、他者とより近く、絶対的な隔たりに置かれた精神は、このことに気づくや否や酷く歪な形で進化を迎えた。

 

 後はおきまりのコースだ。

 電子の海を泳ぐ思想(コマンド)。ネットワークの被支配。ずさんな管理によるセーフティの脆弱性。あらゆるSF作品でやり尽くされた、人の不完全性による構造置換。

 かくして最早人類と呼べるかすら危うい、なれの果てとの戦争が、圧倒的不利な状況から始まる。

 初めの福音は、核を含めたミサイルのカーニバルだった。某国を中心とした軍事施設から、祝祭(フェスタ)の如く幾億もの予算を掛けた戦略兵器が、白い線を空に描きながら全球を飛び交っていく。

 後に残ったのは長い冬と、草木の生えぬ荒涼とした砂漠。そして何かのモニュメントのように聳え立つ、幾ばくかの人工建造物。

 

 

 * * *

 

 

 その後どうなったかって?

 馬鹿を言っちゃいけない。もちろんそんなことはとっくの昔に承知済みで、僕らは独立稼働した都市にそれぞれ防衛戦を敷きながら圧倒的物量の敵と戦っている。

 互いに独立した都市は、芋づる式に襲撃されるリスクを廃するためにリンクを切断し抹消した。

 今では何処にどのくらい都市が残っているのか、それすらも判らない。

 唯一の救いは、僕らの住んでいるこの都市は、とある実験施設も兼ねていたと言うこと。軌道上の人工衛星より送られる、太陽エネルギーを利用した光波転換シールドと自己修復機能を備えるナノマシン防壁、その空隙にある思念膜により鉄壁を誇る都市の防御。

 最早都市の外には出られない。一時間も耐えられないであろう汚染された大気。何より効率化されたサイクルは一人の欠員も許されない。多少の修正幅があるとはいえ、永久欠員は修正が不可欠だ。

 それは此処の住人が最適化された故の当然の思考。

 有限の都市では人々は攻撃性を可能な限り廃し、尊重と譲り合いの精神を形成する。

 極めて牧歌的な風景。故にアルカディア。元々の設計思想にそのような項目があったことから、設計者は極めて先見の明があったのだな、と皮肉げに笑ってしまう。

 

 現状にはあまりにそぐわぬ環境だ。彼らは防衛本能が致命的な程に欠けている。戦う、と言う選択肢を意図的に剥ぎ取られたのだから至って当然の帰結ともいえるのだが。

「どう思う、アリアドネ」

「それは、現状に対する住民の状態でしょうか」

 亜麻色の長髪。異様なほどに整ったシンメトリの相貌。モノトーンを基調とした、露出の少ないクラシックな侍従姿の自動人形(オートマタ)が、小首を傾げながら主に問う。

 相変わらず妙に機械じみているようで人間くさいな、と僕は思った。それに対する返答を、防壁のダメコンを脳波制御しながら行う。

「ああ。数世紀もたたずして平和呆けってのは、まあ人類史上まれに見る()()()非戦争状態だったから仕方ないとして。それにしたって血みどろの歴史をたどった人類がたった数世代の品種改良でこうも弱々しくなるものなのかね」

「テーセウス様。それは仕方のないことかと。元来どう猛であった牛や猪を家畜にした結果、どうなったかは目に見えて判ることでしょう」

「人の本質は肉体に在り、か。ならアリアはどのような本質を備えているのだろうな」

 自動人形アリアドネ。彼女は端末の一つに過ぎない。主体はもっと別のところ。システムとして全域を統括管理する、都市そのものと言っても過言ではない、膨大な生命維持装置なのだ。

 彼女がもし壊れれば。もし狂えば。一瞬にして都市を死滅させうる危うさを常にはらんでいると言うことに、住民は気づいているのだろうか。

 恒常性を得た代わりに、その構造が変化することに。急激な多様性を求められる状況に、歯車となった(アルカディア)住人が耐えうるのか。

 

 既に状況は変化している。時はいつも一方通行で、振り返る暇など与えてはくれず、それが出来たときには何もかもが台無しになった後だ。

 

 軌道衛星上の、エネルギープラントが破壊された。十七時間前のことである。

 日を跨がずして、ICBMの発射を確認。七発の着弾確認と同時に、戦闘用ドローン、電子戦車大隊が一斉に交戦区域に侵攻。規格外の大きさを持つ、採掘用の巨大ドリルを備えた攻壁兵器を確認。

 どう見ても積みだ。試算では後七十四時間後に現状の勢力に突破される。都市全域にスクランブル要請、全人類の統一思念による防護膜も、人であるが故に限界がある。電子制御された無人機に、休息という文字はないのだから。

 これまでの戦闘では、こちらに圧倒的アドバンテージがあった。レベルの違う技術。尽きぬエネルギー。最も効率的に進化する、その過程で経た第六感。

 自己進化の修正を受けなかった不完全な人工知能とそのなれの果てでは、決して通し得なかった強固な壁。

 もし彼らが、その知能を進化させたというのなら――彼らもまた、大きな変革を迎えたのだろう。

 巨大なドリルが思念膜に触れる。弾力を持ちゴム風船のように伸縮性を持つソレを、ドリルの先端付近に取り付けられた小型のドリル群が抉るように掘削していく。ナノマシン防壁が修正しようとするも、物理的に押し込められた圧倒的質量ははねのけるには至らない。防衛機能に従って、金属の分解が始まる。高熱を発しながら融解するドリルは、それでも前へ前へと進もうとする。徐々に細くなっていく通路。だがそこから後続の兵器がぴったりと張り付くようにして進んでいく。元々が巨大な兵器だ。暴力的な質量は洗練された技術の粋すらものともせず蹂躙していく。止まぬ砲撃を気に掛けながらも、進入口に思念膜を集中させて侵攻を遅らせる。わずかに開いた隙間を埋めるように、ナノマシン群体が修復し、結果として僅かな進入を許すだけで侵攻が一段落する。

 そのような戦況が全方位で三十二カ所の同時進行。確実に消耗していく人々の精神と供給を上回る損耗のナノマシン。

 

 退路は、なかった。

 

「私は」

 アリアドネが言葉を発する。最高級の人工声帯を兼ね備えた、人と違わぬ以上に優れた躯を持つ彼女は、特に何の感慨を表すこともなく告げた。

「閉鎖循環型都市アルカディアをベースとしたセーフキーパーです。その本質は至ってシンプル――そう、都市の恒久的存続。それ以外にあり得ないのです」

 ですから、とアリアドネはこちらを見やり、くすりと笑みを漏らした。

「貴方には期待しているのです。都市に侵されず個を保ち、力を尊び野卑で奔放。効率化など何一つ考えはしない、偏執的な気質の持ち主」

 文面だけ見れば侮辱と捉えられてしかるべき文言。何か言うべきか、と口を開きかけたとき、ああ、けれど。と彼女は感嘆するように宣う。

「それこそが人の本質。貪欲に、強欲に、逸脱しながら前へ前へと。間違いながらも進む貴方達は、踏み間違えるからこそ決して定められた彼らでは届かないものを獲得する」

 ひたとこちらを見据えるラピスラズリの瞳。

「それは進化。変革をもたらす、執念の生み出した規格外(ブレイクスルー)。そう、人という種のもたらす、新たな可能性(ちから)――」

 ゴゥン、と二重に閉じられた隔壁が開かれる。目の前に映るのは、かつて存在を渇望されながらも、様々な理由から現実的ではないと批判された架空の兵器。

 男達のロマンと血と汗の結晶。

 鈍色に光る鋼鉄の巨人――ROBOTがそこに立っていた。

 全長十メートル。足はガッシリと全体を支えるように太く、背部、脚部下にスラスタが取り付けられている。全部で九体並んだうちの一体に、リーダー格と思われる純白の機体が異様を見せつけるように屹立している。

 肩にはミサイルポッドと折りたたみ式のレールガン。右腕には盾のようなものから出し入れ可能なブレードが、左手にはアサルトライフルと言うにはあまりに口径のでかい銃が握られている。

 頭部には260度の視界を得られるカメラ、そして何よりほかの機体とはあまりに違う、巨大なスラスタ。それは背部に計八個付いており、そのせいで全体のバランスをとるため一回り巨大な機体となっている。

 機動特化のワンオフ。そんな印象を与える、あまりに扱いづらそうな機体だった。

「初陣だな。《イーリアス》」

 美しい。何度見てもそう思う。戦うためのフォルム。本来なら、非効率なために生み出されるはずのなかった人型兵器。僕たちは、この息苦しく狭い世界の中で、ただ一つの希望を抱き進み続けた。

 手に触れるひんやりとした硬質の感触。ソレが何よりも勇気と昂揚をもたらしてくれる。武者震いに似も似た疼きを押さえながら、何もかも知り尽くしたコクピットへと僕は座り込んだ。

 

 均一化された人々に慣れない自分が居た。けれどそれは一人ではなく、無駄をこよなく愛するロマンと夢と希望。分かち合う仲間は残されていた。

 多くの仲間が天寿を全うした。だがそれは悲嘆ではなく、確かな未来を切り開くための、一助となった誇りに満ちていた。

 かつての仲間はもう自分だけになってしまった。けれど都市から排斥された僕たちは歩みを止めなかった。そしてたどり着いたのがこの機体。

 プラトーン型機動兵器、正式名称はその名もずばり『ROBOT』だ。考えることを諦めなかった、僕たちの最後の希望だ。

 

「みんな、準備はいいか?」

『いつでもOKだ。派手にいこうぜ!』

『システムオールグリーン。メンテナンスは完璧よ』

『思念共有システム、稼働率73パーセント。悪くないんじゃねぇの!?』

『『リーダー、号令を!』』

 

 皆はやる気に満ちていた。自らの努力がどれほど実を結ぶのか。危機的状況にもかかわらず、興奮を抑えきれないのは、きっとこんな状況をどこかで夢見ていたからで。

 すう、と深く深く、数百年の時を噛みしめるように息をする。

 きっと長くはない。今なら判る。きっと、僕はこのために今日まで生きてきたのだ。これまでに出会った仲間の魂が、まるで自身の内へと火を灯すよう。ここ数十年で間違いなく一番調子がいい。視界もクリアで、これなら万全の状態で最良の日を望めそうだ。

 ならば言うべきは一つしかない。

「みな、これが我ら意志ある人類の、そして我らの全ての決算であるROBOTの初陣となる。気負うな。されど冷静に火を燃やせ。目標は希望(アルカディア)を取り巻く無人の敵性戦力、全ての殲滅だ。

 どう転ぶかは判らん。だが全身全霊を持って挑むだけだ」

 

 だろう? とにやりと口角を吊り上げる。SOUND ONLYにも関わらず、メンバーの皆は彼が極上にどう猛な笑みを浮かべて居るであろうことを、容易に想像した。

「さあ、諸君。――派手にいこう」

 

 魂の雄叫びが機体の無線から、共有した思念から、轟くようにこだまする。

 

 九機の巨人は空を翔け、シェルタの外へと飛び出した。

 それは人類にとって数世紀ぶりの外。何処までも伸びるかのような地平線に、埋め尽くさんばかりの敵の群れ。

 機体のオートロックが限界数まで敵機を補足する。百以上のミサイルがカーニバルの始まりを告げるかの如く盛大に発射し、弧を描く白線の中、鈍色の銀光が宙を舞った。

 埋め尽くさんばかりの戦車や戦闘用ドローンが瞬く間に沈んでいく。テーセウスの駆る《イーリアス》が、右腕のブレードを突き出すと、高熱の振動ブレードは念波によるエネルギー圧縮によりより深くを貫き通す。溶けたバターを切るようななめらかさでブレードはドリルを上から下へと通り抜け、蹴り上げるようにして上昇した《イーリアス》のとどめにより、巨大な兵器は崩れ落ちた。

 爆風により周囲の兵器を巻き込みながら、純白の武姫(イーリアス)は明光にその勇姿を輝かせる。吹き上がるスラスタの吐息がまるで翼のようにすら見えた。

 こと、戦場において、それは味方を鼓舞する何よりの存在。

 抗いし力の結晶。自らの意志の体現。

 未来を切り開く力は此処にあったのだと、現界した鋼鉄の魂が唸りを上げながら大地に吠える。

 

『よし、このまま殲滅する! 一人も欠けるなよ、いくぞッ!』

『『応ッ!!!』』

 

 九機の巨人が圧倒的な物量をことごとく駆逐していく。信じがたいような光景であり、またどこか踊るような軽快さがあった。

 退屈な檻から解き放たれた妖精(シルフ)が、夜を徹し夢中で踊り明かすかのような。

 スクリーンから見ていた人々は、胸の内に何か熱いものがこみ上げてくるのを感じる。

 どこかに置いて行ってしまったもの。心の、遺伝子の奥底にしまい込んでいた、大切な何か。

 あるものは食い入るように、あるものは知らず頬に雫を流しながら、定められた子供は、ただ純粋にかっこいい、とつぶやきを漏らした。

 

 

 何かが変わる、そんな予兆。誰もがそんな思いを抱いていた。

 革命というものは一夜とかからず、大きなうねりを持って訪れるもの。本来、存在し得ないはずのロマンと言う名の希望の光。

 恒常性を尊ぶはずのアリアドネ(アルカディア)は、しかしどこか嬉しそうにしている。

「人とは常に変わるもの。良きにしろ悪くにしろ、我が子の成長はなんと喜ばしいものか」

 理想郷。この言葉が本当の意味で呼ばれるのも、そう遠い話ではないのかもしれない。

 だがまずは目の前の驚異を退けなくてはならないだろう。アリアドネは都市全域へと声を響かせた。

「皆さん、現在都市を守るために戦っているもの達が居ます。皆さんの思念、彼らを助けたいと願うならば、その思いを届けてください。これは闘争のための闘争ではない。守るための戦いなのだから――!」

 

 

 その日、都市は記録上最高の思念波を観測する。その力は都市(アルカディア)を通じて《イーリアス》らROBOT(プラトーン型)に届けられた。

 

 戦闘開始より三十九分。

 無人兵団と都市の戦闘は、僅かな損耗を残して都市が圧倒的な勝利を手にすることとなる。

 

 

 

 だが戦いは終わらないだろう。反撃の狼煙は上がったばかりなのだから。

 

 

 






 イーリアスは後半になるとオデュッセイアに改修されます。主人公機のてこ入れ的な意味で。


 参考(オマージュした)作品で思い当たるもの

・アーマードコア
特にAC4fa。アルカディアはコロニー・クレイドル(安定性マシマシ)。主人公機はホワイトグリント。ほかのプラトーン型はクレストっぽい。

・蒼穹のファフナー
アリアドネは島のコア。皆城乙姫らを参考。これらに女神属性を付けて、年齢をアップさせました。プラスメイド要素。これは完全に趣味。
 ちなみに思念共有はジークフリートシステム参考。ともあれロボットアニメでは謎のシンクロは日常茶飯事だと思うのは私だけでしょうか。

・遊戯王5D's
 主人公はZONEさんを漠然とイメージ。活性ナノマシンにより表面は壮年の男性ってところですが、内部はもうぼろぼろ。多分数度の出撃で『どうせみんないなくなる(最初期メンバーが)』。

・天元突破グレンラガン
ドリル。それは進化の螺旋。これだけです。人工知能もロマンを理解したようですね。俺のドリルは天を衝く!

・戦闘妖精雪風

 これは何というか描写・イメージに近いもの。何となく戦闘シーンはこれをイメージしてました。もろにシルフィードなんて書いてますし。

・ハーモニー
故・伊藤計劃氏の著作。漠然とした妄想(イメージ)がはっきりと形を成し始めたのはこの作品のおかげ。
 モノトーンの文庫本はイラスト全盛の時代にインパクト大でした。安易なハッピーエンドじゃないのがSFしてて素敵。っていうか長編(となる予定だった屍者の帝国も含む)のテーマが確実に次のステージへと進化しているので、生きていたらどうなっていたのだろう、とすごく気になります。
 映画化もされるようで、どうなるのか気になります。ただ時間とお金が無い……。

・ギリシャ神話的な何か

 どうも中二病的にはドイツ語が人気ですし、ファフナーは北欧神話。ならギリシャで良くね? という安易な発想。
 ぱっと思いついたのが、戦いに向かう英雄を導くアリアドネの糸だったので(世界樹の迷宮感)。



・この世界の技術事情

 自己進化が不完全な人工知能は、劣化した複製人格によって方向性をゆがまされ、技術的革新(ブレイクスルー)を行うことがないまま、既存の技術による圧倒的な物量作戦をひたすらに行っていました。これにより壊滅した都市は六割に及ぶとしており、圧倒的な火力・物量は基本的には非常に有用であったことは今更語るまでもありません。
 その代わり戦略としてはお粗末の一言。宇宙開発計画が中継基地のデブリによる損壊によって凍結してから、宇宙に関しては消極的な姿勢をとっており、今回の人工衛星破壊までの人工知能勢は全く考慮に入れていませんでした。
 ブレイクスルーが起こったのは、人工知能を司るメインコンピュータがバグったからです。
 そのうち歌によって感化される模様。俺の歌を聴けぇ!


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