我想う故の悪あり   作:クトウテン

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これ書く暇あるならあっち書けよなんて声は聞こえません。ただ言い訳させてもらいますと書いてはいるんです。はい。モチベーション維持のために鼻歌まじりに書いたら出来てしまったので勢いのまま投稿してるんです。上記の通り言い訳ですごめんなさい。

初めてダンまちの二次に手を染めたわけですが。
なんだか想像を絶するほどちょっと書いてる本人でも引く感じの内容になりました。かなり人の好き嫌いが別れてしまう作品だとは思いますが、気分が乗ったらぜひ読んでやって下さい。


我想う故の悪あり

アンラ・マンユ。

 

この世すべての悪と称される、有名な悪神である。

言うなれば最も汚らわしき、神。

世の悪という悪をすべて煮詰めて、集めて、混ぜて。

グチャグチャのどろどろになった、そんな最も悪いその悪神に。

 

どうしようもない程終わってしまったその神に。

 

『……アナタ■ら、ワ■シを■■■く■る……?』

「あぁ……君が望むのなら、俺は死んでも叶えよう」

 

俺は、どうしようもない程終わった恋をした。

 

 

 

 

「起きてください、起きてください」

「だが断る。おやすみ」

「……そうですかぁ。リリの言う事、聞けないんですかぁ。うふふ、わかりました。じゃあ何してもおかしくないですよね? 今から拘束して、監禁して、もう身動き取れなくして、リリのものにしちゃってもいいですよね? ね? うふふ、エイジさん。大好きですよ、だぁい、すき。すき、すきすきすきすきすきすき。わかりますか、ほら、胸がドキドキ言ってるんです。エイジさんのこと考えるだけで、こんなに。えへへ。えへ、えへへへへへへへへへへ―――って、どこ行くんですかエイジさん」

「イヤほんとそういうのまじ勘弁なんで。正直ヤンデレとかまじないっすわ」

「鏡見ましょう」

「俺はヤンデレじゃねぇ。愛する人のためなら何でもするだけだ」

「うわ重……きっつ……」

「マジトーンやめてくれるかなぁ!」

 

朝。とある木造の家ではそんなやり取りがひとつ起きていた。

片や赤褐色のくすんだ様な色を持つ青年に、もう一人は柔らかく跳ねた茶色の髪を持つ幼女―――にも見える種族“小人族(パルゥム)”の女の子。

 

そして。

 

「おはよ、リリ、エージ」

 

もぞもぞ、と。一糸纏わない姿で上掛けのタオルから顔を出したのは光も移さぬ漆黒の髪にたわわかに実ったその双丘。

なんというか、まるでその様子は“事後”にも似たものがあり、

 

「――――」

 

エイジと呼ばれた男の鼻の穴は、自然と膨らむ。

 

「……あはっ」

 

無論、恐怖によって。

逃げる訳ではないが、着替えるという名目の元離れようとした俺のシャツを謎の怪力によって離さぬようガッチリとつかむ。それはもう、ガッチリと。

 

…………いや。

 

「あの、リリさん? 聞いてくださいます? 分かるでしょ、ほらこの駄神まじこんなんだから、ていうか、俺まだ童貞だから。これまじな。ほんとまじで。いや俺も捨てたいんだけどどうしてだろうね。いやー困るわー! 童貞まじ困るわー!」

「……ホントですか? マユ」

 

若干の殺意を滲ませながら、リリと呼ばれた女の子は黒髪の女の子へと問う。

エイジも思わず視線を向けた。本当に悪いことはしてないが、が。万が一ということもある。寝ぼけながら、とか。

恐怖と、若干の期待によって、またしても鼻が膨らむのを自覚しながら、エイジは喉を鳴らす。

するとマユもそれに答えるようにうんうんと大きく頷いてから、サムズアップ。

 

自信満々(にも見える無表情を保ったまま)に、言った。

 

「うん、エージ、昨日は凄かった」

「よっしゃエイジさんもぎましょーかー!」

「いやぁああああああ!」

 

ドコを、ナニを、なんて聞く意味がない。もがれるのだ。

朝の緩やかな時間なぞは、そんな喧騒で吹き飛ばされる。

一見明るく、楽しくも見える―――救いようのない退廃としたその《ファミリア》は、迷宮都市オラリオの中今日も生きるように死んでいた。

 

 

 

 

「―――シッ」

 

鋭く、息を吐く。その音と共に繰り出されるのは風さえも断ち切る剣戟だ。

 

ズォ、という音を響かせながら目の前にいるソレ―――オークを一撃で唐竹割りし、糸を引く断面を覗かせながらその巨体は重力に従って地面へと左右に落ちた。

 

「あー、やっべ興奮して魔石のこと忘れてたやっべ」

「あ、ギリギリでしたね。割れてませんよ」

「やったぜ」

 

軽口を叩くように二人で笑みをこぼすのは―――漆黒の大剣を肩に担いだエイジとその身の丈以上もの大きさのある鞄を担いだ小人族、リリだ。

 

「しっかし随分手応え無くなってきたなこの層も。何階層だっけ」

「15階層ですねぇ」

 

15階層。

まだ一桁を少し超えたばかりと嘲る事なかれ。

15階層まで行くと言われる冒険者は一般的に中級と呼ばれる冒険者であり、かくいうエイジもその一人であった。

 

この都市―――オラリオに来て早10年。冒険者になった日数を言えば五年。

そして。

彼のレベルは相変わらず―――1のままであった。

 

勿論これは当たり前のことではない。

一般的に言う自殺行為だ。格安自殺名所巡りと言っても過言ではない。

 

1レベル―――俗に低級と呼ばれる部類にカテゴライズされるその冒険者達は一般にこの階層に来ることはない。あったとしてもそれは中位の冒険者のサポーターとしてだとか、何かしら保険のある状況下でしか成立しない程度には、まずあり得ない。

 

つまりこのレベルと呼ばれる神にもたらされる恩恵は、ただ単純に己の力の底上げということ以外にもこの都市では一種のステータスとして、レベルという概念を用いられるのだ。

 

「うーん、というかエイジさんはどうしてレベルアップしないんですか? 正直エイジさんの熟練度と総合経験値を考えたら……」

「だろうなぁ。多分、少なくとも二レベは上がると思うぜ」

「人が聞いたら卒倒モノですね」

 

その通り。命がけのやり取りをする迷宮においてわざわざ自力を上げられる行為を疎かにしてまで経験値をとっておく馬鹿など世の中広しといえどこの男ぐらいである。

 

「まぁ俺もそうできんならそうしたいが……困ったことに“師匠”のやり方なんだよなこれ」

「随分トチ狂った師匠がいたもんですね」

「あぁ、あいつはキチガイだよ。“レベル上げ? 経験値? 馬鹿言うんじゃねぇ。自分の最大限のスペックも知らないで殺しあいなんてやれると思ってんの? ねぇねぇ馬鹿なの? 死ぬの?”とかよく煽られ―――殺意湧いてきたぁ……!」

「よーしよしステイステイ」

 

小柄なシルエットに160は超えている身長の男がわざわざ屈んでまで頭を撫でられている光景はシュールと言わざるをえない。

 

「まぁ今じゃ慣れちまって随分と楽なもんだけどな。逆に今からレベルアップして自力上げちまうと体と脳が追いつかなくて一気にダメになるな、うん」

「もう脳筋とキチガイでわけ分かんない事になってますね」

「言うなよ。気にしてんだよ」

 

そう言う間にも、狩りは続く。

迷宮の前にあった曲がり角から唐突に眼前を覆うほどの質量を持って現れたのは―――大きいクモ。

 

殺戮蜘蛛(キリングスパイダー)

 

中層でも深い位置に生息し、無音で獲物に近づいてくることで有名。過去多くの冒険者たちがこのモンスターの餌食となっている。

 

と、そんな情報を思い出す。あぁいたなぁ、なんて思いながら、その無音での行動にほぅ、と息を吐きつつ。

 

「消すんなら殺意まで消せよ、こンの――蜘蛛野郎がァ!」

「わぁ脳筋」

 

まず一番に、大剣を片手で持ちクモのその男の腕ほどもある前足を受け流し、もう片手でバランスを崩したクモの頭を離さぬように握り込み、硬いと評判の迷宮の壁へブチ当てる。

勿論こんな事で死ぬようなモンスターではない。ダメージも僅かだ。

だが、動揺を誘うのには―――。

殺すまで(・・・・)の間をとるには充分過ぎる程の時間であった。

 

「死ねよ」

 

昆虫型のモンスターの死亡判定というのは、なかなかに難しい。タイプによっては心臓、脳の様な生きるために必須の機関を複数所持した存在もいれば、もとよりそんなものが無いものだっている。

 

だからこそ取る判断としては、殺す。

徹底的、圧倒的、残虐的なまでに、圧殺する。

何度も何度も何度も、蹴り、刺し、叩き込み。

そして砂に還る大型蜘蛛を見届けて、ため息を漏らした。

凝りはじめた首をコキリと1つ鳴らし、一度剣を収めて少女へとエイジは声を漏らした。

 

「今日はこんなもんにしとくか」

「っはい!」

 

そうして、彼は地上へと向かう途中にその物語は動き出すことになる。

それはまるで英雄譚の様に、序章が始まる。

臆病で仕方のない一匹の兎が、一人の英雄へと昇華する、その瞬間まで。

もうめくられたページは、止まらない。




一話自体は3000-5000までに収めたいと思うんですが……短くて申し訳ありません。多分続きやります。
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