ただの青年の話
少しある青年の話をしよう。
青年が子供のころ、ヒーローのテレビを見ていた。青年はヒーローの様になりたいという夢を抱いていた。自ら傷つきながら人々を守るヒーローに。
青年が小学生のころ、交通事故に遭った。原因は青年自身の飛び出し。その日に彼の頃の中にある感情が芽生えていた。これが後の青年の将来になりたいものに関係してくるのだ。
青年は小学四先生の頃から六年生のころまでクラスのほぼ全員からイジメを受けた。余りのイジメに耐え兼ね一度は無断早退をしようとしたが、偶然にも校長先生に呼び止められた。
中学生になると青年は何かが変わることを期待した。だが変わらないものがあった。青年がある朝、学校に早く来ている日のことだった。青年が暇つぶしに絵を描いているとある女子生徒がバカにした。青年は怒り、女子生徒を追いかけた。追い詰めに追い詰め足を掴むと顔に消臭スプレーを掛けられた。青年は自分の感情を落ち着かせるためにロッカーに入ったが女子生徒は調子に乗り、ロッカーの中にも消臭スプレーを掛けた。余りの行動に青年は机を投げた。するとそれをただ傍観してみていた生徒たちからリンチにされた。
しかし、そんな時間も終わりを告げた。どこの生徒かは知らないが先生に報告し、青年をその場から力づくで離れさせた。結局、その問題は学校朝会で取り上げられ、学校内での消臭スプレーの禁止が言い渡された。
それから時は過ぎ、高校生になった。青年が高校二年生になると将来について考える時間が授業で設けられた。青年はなりたい職業を考えたが、見つからなかった。青年は何が向いているのか考えるのではなく、何になりたいかを考えた。すると最初に出てきたのが警察官であった。そこで青年は思った、“何故”と。青年はなぜ警察官になりたいか、そのきっかけを探すと少年の頃の交通事故が脳裏に浮かび上がった。小学生に事故の体験が青年の“警察官になりたい”と言う思いを引き出した。
青年が警察官になってやりたいのは、交通課に入り、交通事故被害者、そして加害者を減らすことだ。そして笑顔を守りたいのだ。
“目の前の笑顔を守ることで、その先の、未来の笑顔を守りたい”それが青年の思いであった。
高校三年生になり青年は警察官の試験を受けた。結果は二次試験で不合格だった。だが青年は”次がある“と思っていた。丁度その頃には公務員の専門学校に入ることを保険としていた。
そして青年は専門学校に入り公務員の供用に必要な勉強をした。一年目で三次試験、面接にまで行った。結果は不合格。青年自身は緊張して上手く受け答えできなかった、と言っていた。
二年目に入り一回目の試験を受けたがその時は一次試験で不合格になった。青年は勉強不足だと思い曜日ごとに科目を変え、苦手克服に努めた。体力の方も筋トレをアウターマッスルだけでなくインナーマッスルも鍛えるようにした。
そして二回目の試験で一次、二次と試験は合格し、ついに一年ぶりの三次試験を受けた。
青年は先生からたくさんの指導を受けながらも、ちゃんと面接試験の対策をした。荒削りではあるが上出来だった。
そして試験当日、青年は緊張していた。しかし試験が始まるとその緊張はどこかに消えてしまっていた。練習ではあれほど緊張していたのにいざ本番になるとそれが無くなるとはおかしな話だ。
そして11月末、青年の試験結果が出た。
“不合格”
青年はショックを受けたが、涙は流さなかった。いや、流せなかった。何故流せなかったのかは青年自身にもわからない。私にもだ。だが唯一の救いは、全てにおいて平均以下ではなかったことだ。それが青年にとっての救いだった。
青年は故人の祖父に報告すると、一気に悲しみが来た。泣きたいほどにだ。だが青年は涙を流さなかった。そして青年は、その場で立ち止まらず、前に進むことを選んだ。
これはどこかの誰かに当てはまるかもしれない話である。