Tale of Fox 〜神を喰らいし狐の物語〜   作:甜狐

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ん?サブタイトルで話が見え見え?

・・・隠すの下手なんすよ(^_^)


Tale.1 メディカルチェック、機械好きな少女

 

適合試験を終えた少年は、フェンリル極東支部、通称『アナグラ』のエントランスへ歩を進めた。

 

 

 

ロビーには先客が一人座っていたが、少年は気にすることなく「先客」の横に座った。

 

 

不意に「先客」が少年に話しかけた。

 

 

「ガム食べる?」

 

 

唐突な質問に戸惑う少年だが、答えを言う前に「先客」が再び口を開いた。

 

 

「あ、切れてた。

今噛んでるので最後だったみたい。ごめんごめん。」

 

 

勧めておいて悪びれる様子が微塵もない「先客」だったが、少年は微かに笑みを返して気にしていない旨を伝えた。

 

 

「先客」は次の質問を少年へ投げかけた。

 

 

「あんたも適合試験受けたの?

俺と同い年かちょっと年上っぽいけど。

俺は藤木コウタ。あんた名前は?」

 

 

初対面にあんた呼ばわりで少々面食らった少年だが、自己紹介された手前、名乗らないわけにもいかなかった。

 

 

「テンカ。

狐野(この)テンカ。」

 

 

静かだが、芯の通った声で少年、テンカは答えた。

 

 

「そっか。テンカってんだ。

まぁ一瞬とはいえ俺のほうが先輩ってことで、よろしく!」

 

 

「え、あ、うん。

・・・よろしく!」

 

 

見事に滑ったコウタのジョークを受け流し、テンカは満面の笑みでコウタと握手を交わした。

 

 

 

そこへ、長い黒髪の女性が薄いタブレット型端末を片手に歩いてきた。

 

 

そして静かにこう呟いた。

 

 

「立て。」

 

 

「は?」

 

 

突然のことにコウタが間抜けな声をあげた。

しかし次の瞬間、

 

 

「立てと言っている!さっさと立たんか!」

 

 

いきなり檄を飛ばされ、テンカは慌てて、コウタは仰け反りながらも直立不動の体勢をとった。

 

 

女性が話を続ける。

 

 

「まずは適合試験、ご苦労だった。

私は雨宮ツバキ。お前たちの指導教練担当を任されている。

早死にしたくなければ私の命令には全てイエスで答えろ。いいな?

 

 

 

・・・返事はっ!!」

 

 

「「はいっ!」」

 

 

この人に逆らわないほうがいい。

二人はこの時点で直感したのだった。

 

 

「よろしい。

今からお前たち二人にはラボラトリー区画でメディカルチェックを受けてもらう。

狐野テンカ、まずはお前からだ。

あいにく適合試験が遅れた影響で時間が押している。

速やかにラボへ行きメディカルチェックを受けろ。」

 

 

「了解です。」

 

 

短く返事をするとテンカはツバキに敬礼してから区画移動用エレベーターでラボラトリー区画へ向かった。

 

 

 

 

 

 

ラボラトリー区画の奥、研究室に入ると、眼鏡をかけた男性が目の前に座って何やらコンピューターで作業をしており、傍には先ほど適合試験の時に窓からテンカを見ていた声の主の男性が立っていた。

 

 

眼鏡の男性がコンピューターのディスプレイから目を離さずに口を開いた。

 

 

「ふむ・・・予想より530秒も早い。よく来たね、『新型』君。

私はペイラー・サカキ。アラガミ技術開発の統括責任者だ。

以後、君とはよく顔をあわせることになるだろうけど、よろしく頼むよ。」

 

 

自己紹介をしながらも、彼、ペイラー・サカキの手は止まることなくキーボードの上で踊っていた。

 

「さて、見ての通りまだ準備中なんだ。

ヨハン、先に君の用事を済ませたらどうだい?」

 

 

サカキは傍に立つ男性を一瞥するとそう言って尋ねた。

 

これに対してヨハン、と呼ばれたその男性は短いため息をひとつつき、それに答えた。

 

 

「サカキ博士、そろそろ公私のけじめを覚えていただきたい。」

 

 

そして次にテンカのほうを向いた。

 

 

「適合試験ではご苦労だった。

私は、ヨハネス・フォン・シックザール。

この地域のフェンリル支部を統括している。

・・・改めて、適合おめでとう。君には期待しているよ。」

 

 

そしてヨハネス支部長の話を遮るように、サカキ博士が口を挟んだ。

 

 

「彼も元『技術屋』なんだよ。

ヨハンも『新型』のメディカルチェックに興味津々なんだよね?」

 

 

先ほどの『公私のけじめ』とやらを気にもとめずに自分を()()()()する博士に少々呆れつつも、支部長はそれに答えるようにこう言った。

 

 

「あなたがいるから、技術屋を廃業することにしたんだ。・・・自覚したまえ。

さて、本題に入ろうか。

 

我々フェンリルの目標を、改めて説明しよう。」

 

 

『人類最後の砦』と呼ばれるフェンリル。

その極東支部長であるヨハネスは、語り部のように話し始めた。

 

 

「君の直接の任務は、ここ極東地域一帯のアラガミの撃退と素材の回収だが、それらは全て、この前線基地の維持と、来るべき『エイジス計画』を成就s「この数値は・・・!?」・・・なる。」

 

 

最後の方がサカキ博士の声でかき消されたが、支部長は気にせず続ける。

 

 

「『エイジス計画』とは、簡単に言うとこの極東支部沖合い、旧日本海溝付近に、アラガミの脅威から完全に守られた『楽園』をt「ほほぉ〜!」のだが。」

 

 

またもや最後の方がサカキ博士にかき消されたが、支部長は少し顔をしかめつつも説明を続ける。

 

 

「この計画が完遂されれば、少なくとも人類は、当面の間絶滅の危機を遠ざk「んすごいっ!!これが『新型』か・・・!」

 

 

・・・・・・。

 

 

「ペイラー、説明の邪魔だ。」

 

 

「あぁゴメンゴメン!

ちょっと予想以上の数値で舞い上がっちゃったんだ!」

 

 

キレた自分の一言にも全く悪びれることのない博士に、ついに支部長も匙を投げ、無視してテンカに向き直った。

 

 

「ともあれ、人類の未来のためだ。

尽力してくれ。

 

 

じゃあ私は失礼するよ。

ペイラー、あとはよろしく。終わったらデータを送っておいてくれ。」

 

 

そう言ってラボをさる支部長に手を振り、サカキ博士はキーボードのキーを弾いた。

 

 

「よし、準備は完了だ。そこのベッドに横になって。

少しの間眠くなると思うが、心配しないでいいよ。

次眼が覚めるときは、自分の部屋だ。

戦士の束の間の休息というやつだね。

予定では10800秒だ。ゆっくり、おやすみ。」

 

 

テンカが横になると、すぐに眠気が彼を襲い、そのまま彼は眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

数時間後、自分の部屋で眼が覚めたテンカは外が真っ暗になっているのに驚き、枕元の時計を手に取った。

 

 

「・・・9時半・・・。」

 

 

10800秒、つまり3時間どころか実に8時間も寝ていたことになる。

幸い、本日のテンカにはメディカルチェック以降の予定が入っていないため、どれだけ寝ていても問題はなかったのだが・・・。

 

 

「もう眠れないな〜。」

 

 

そう言いため息をつくと、テンカはベッドから立ち上がり、自室を出てエレベーターでエントランスへ向かった。

 

 

エントランスロビーはゴッドイーター、通称神機使いやフェンリルの職員だけでなく、一般人にも開放されている場所なので、昼間ならばそこそこ人も多く、活気のある雰囲気なのだが・・・

 

 

「さすがに人はいないか・・・ん?」

 

 

ガランとしたロビーのソファーに1人だけ、灰色の髪に赤いゴーグルをつけ、タンクトップに肩だけ脱いだオーバーオールを着た少女が座っていた。

かなり疲れているのか、こっくりこっくりと船を漕いでいた。

 

あたりにはほんのりカレーの匂いが漂っている。

 

テンカは少女に近づき、肩を叩いて話しかけた。

 

 

「こんなところで寝たら風邪ひいちゃいますよ。」

 

 

すると少女はピクッと体を震わせ、半開きの目をこすりながらテンカのほうを向いた。

 

 

「ん〜?

あ〜ごめんね〜ありがと〜。

仕事が長引いて疲れちゃってさ。

あれ?君、見ない顔だね。でも腕輪着けてるし・・・あぁ、今日入ってきた新人さん?」

 

 

「はい。狐野テンカっていいます。」

 

 

「私は(くすのき)リッカ。

このアナグラで神機の整備の仕事をしてるんだ。」

 

 

「よろしくお願いします、リッカさん」

 

 

「堅くならなくていいって。呼び捨てしてくれたほうが接し易いからさ。ね?」

 

 

「え、あ、はい。じゃあ・・・リッカ?」

 

 

「なに?」

 

 

「このカレーの匂いは・・・?」

 

 

面食らったテンカの意外な質問にリッカはクスッと笑いながらも、そばに置いてあった空き缶を手に取って答えた。

 

 

「これ、『冷やしカレードリンク』っていうんだ。

すっごく美味しいの。もう一本あるからテンカ君も飲んでみない?」

 

 

冷やしカレードリンク・・・おかしな名前の飲み物に顔を引きつらせながらも、テンカはリッカに差し出されたそれを受け取った。

 

 

「えっと・・・じゃあ・・・いただきます。」

 

 

「召し上がれ!」

 

 

栓を開け一瞬考えたテンカだが、意を決したように缶に口をつけてゴクッと喉を鳴らした。

 

 

「どう?」

 

 

期待に満ちたリッカの表情を横目に、テンカはもう一口飲んでこう言った。

 

 

「・・・おいしい。」

 

 

「ホントに!?やっぱわかる人にはわかるんだな〜。」

 

 

実際、テンカの答えに偽りはなかった。

長い睡眠で空腹だったこともあってか、まるで食事のような味の高カロリーなこの飲み物はテンカの舌を満足させるに足りうるものだったのだ。

 

 

「いい物教えてもらったよ。お腹空いた時にちょうどいいかも。」

 

 

「そう言ってくれると愛好家としては嬉しいな!

・・・あれ、もうこんな時間か。私はそろそろ戻るね。何か困ったことがあったらいつでも声かけてね!」

 

時刻はすでに10時をまわろうとしていた。

リッカは空き缶や筆記用具を手に取り、ソファーを立ち上がった。

 

 

「おやすみ、テンカ君。」

 

 

「おやすみ、リッカ・・・あ、ちょっと待って。」

 

 

テンカはポケットからハンカチを取り出し、首を傾げるリッカの頬を優しく拭った。

 

 

「オイル、ついてたよ。綺麗な顔が台無し。」

 

 

いきなり顔を近づけられ、思わず赤面するリッカだが、直後にテンカの髪を見て、無意識にこう呟いた。

 

 

「・・・綺麗・・・。」

 

 

テンカの銀髪は、光が当たるとまるで磨かれた純銀のように反射し、まるで輝くように柔らかい白光を発するのだ。

 

 

虚空を見つめるようなリッカの表情を不思議に思ったテンカは彼女の顔を覗き込んで名前を呼んだ。

 

 

「リッカ〜?リッカさーん?」

 

 

はっと我に返ったリッカはテンカを見て再び赤面し、顔を背けながらこう言った。

 

 

「綺麗な髪だね。」

 

 

「え?あぁこれね。

僕はあんまり好きじゃないんだけどね。この髪。」

 

 

「え、もったいない!」

 

 

予想外の答えにリッカは目を丸くした。

 

 

「でも褒めてくれて嬉しいよ。ありがとう。」

 

 

ニコッと笑顔を返され、リッカは耳まで真っ赤になりながら声を絞り出す。

 

 

「も、もう寝るね!おやすみ!」

 

 

早口でそう告げると、走ってエレベーターに乗り、行ってしまった。

 

 

「・・・なんか悪いことした?」

 

 

いきなり逃げられてしまったテンカはしばらく唖然と立ち尽くすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・冷やしカレードリンクを飲みながら。




戦闘がないじゃないかって?

・・・サーセンw

長すぎるって?

フヒヒwwサーセンwwww


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