「ガオォオオオオ!!」
テンカとサクヤを見て咆哮をあげる、猿やゴリラのような図体の中型アラガミ。『コンゴウ』
テンカは自室のターミナルで情報は知っていた。
音に敏感で群れを成す習性を持ち、戦闘ではお互いに連携するという。
まだ小型アラガミとの交戦経験しかない彼にとっては少々荷が重く、サクヤも3対1となると厳しいものがあった。
「テンカくん。」
「はい・・・。」
「私が気をひくからあなたは逃げなさい。上官命令よ。」
「嫌です。」
即答だった。
「大丈夫よ。私も後から行くわ。」
「嫌です。」
テンカの目は真剣そのもので、サクヤは説得の方法がわからなかった。
そしてアラガミも待ってはくれなかった。
「来ますよ!」
一体のコンゴウが巨体を振りかぶって、テンカに向かって突進した。
テンカはコンゴウの横をすり抜けるように躱す。
その横から別のコンゴウがゴロゴロと体を丸めて前転しながら突進してきた。
避けきれないテンカは装甲『ディソレイト』を展開するが、当然、受けきれずに吹き飛ばされてしまった。
「ぐあぁ!!」
「テンカくん!」
サクヤはテンカの方へ走ろうとするも、それをさせじと三体目のコンゴウが立ちはだかる。
「くっ!通せんぼってわけね。」
一方でテンカは二体のコンゴウが交互に繰り出す攻撃に苦戦しつつも、確実に回避し続けていた。
サクヤは自身もコンゴウに銃弾を撃ち込みながらも、その様を見て彼の動体視力と瞬発力の高さに感心していた。
三体のコンゴウ相手に2人は善戦するものの、さすがに限界が見え始めていた。
特にテンカは休むことなく大きな回避行動を繰り返しているため、すでに疲労困憊状態である。
不意に2人が背中合わせになり、再び三方をコンゴウに囲まれた。
「テンカくん。」
低いトーンで話すサクヤに、息切れをしながらもテンカは耳を傾ける。
「私がこいつらを引きつけるから、そのうちにあなたは逃げなさい。もう限界でしょ?」
「嫌ですよ・・・まだ戦えます・・・。」
「ダメよ。ただでさえ回避で精一杯だったのに、このままじゃ2人ともやられるわ。
これは命令よ。」
「・・・従えません。」
「テンカくん・・・!」
「誰かを犠牲にして生き残ることは、僕にはできません!!」
テンカのその語気に、サクヤは驚きつつもなにか切実なものを感じていた。
そして・・・
「・・・わかったわ。
でも覚悟して。
運が悪ければ、私たちは2人ともお終いよ。」
「望むところです。」
「フフッ頼もしいわね。
・・・来るわよ!」
三体のコンゴウの前転しながらの突進攻撃。
2人は飛び上がって回避し、サクヤは三体のうち一体に素早く銃弾を撃ち込んだ。
「グオオオォ!!」
ウィークポイントに当たったようで、コンゴウが怯む。
テンカはまた二体を相手することになったが・・・それでも攻撃を躱し続け、さらには攻撃直後の隙に小さな一撃を与えている。
それでも体力の限界は近く、だんだんと回避が後手後手になりだした。
「これ・・・マズいかも・・・。」
そして一瞬、テンカの動きが止まったところに、コンゴウが空気砲を発射した。
・・・しかしそれは、テンカの目の前に現れた一人の男性によって防がれ、テンカには届かなかった。
「よう、新入り。待たせたな。」
「リンドウさん・・・。」
救援の到着。それは形勢の逆転を意味した。
サクヤの方にも巨大なノコギリ状の剣を持ち、フードを被った少年が加わっており、その戦闘力はコンゴウを圧倒していた。
「さてと・・・ちゃちゃっと終わらせるかね。
新入り、援護頼むぞ。」
赤いチェーンソー型のロングブレード『ブラッドサージ』を肩に担ぎ、リンドウはテンカに目配せした。
テンカは神機を
そこからは早かった。
サクヤと少年は早々にコンゴウを一体片付け、テンカとリンドウに加勢すると、もはや二体のコンゴウの連携など微々たる抵抗に成り下がり、リンドウと少年の斬撃、サクヤとテンカの銃撃の波状攻撃で一体があっという間に撃沈。
もう一体もすぐに地に伏した。
イレギュラーの討伐を終え、アナグラへ戻ると、テンカはサクヤによって医務室へ連れて行かれた。
コクーンメイデンとの戦闘でできた左頬の傷が少し深く、避けきれなかったコンゴウの攻撃もかなりの数になっていたため、あちこちをだぼくしていたのだ。
サクヤは「報告書を書くから」と医務室を出て行ってしまい、代わりに巾着袋を持った桃色の髪をした少女が入ってきた。
右腕に腕輪を着けており、彼女も神機使いのようだ。
「任務お疲れさまです。
だいぶ怪我が多いですね。すぐ治療しますから!」
テンカはその喋り方や仕草に多少の頼りなさを感じていたが、包帯を巻く手際や薬を選ぶ速さを見て、本物の衛生兵であると認識した。
そしてあっという間に治療は終わってしまった。
「はい、できました!
ほっぺたの傷も治れば跡は残りませんよ!安心してください!」
「ありがとうございます。随分手際がいいんですね。さすが衛生兵って感じで。」
「あ、ありがとうございます!
いつもは任務でも足引っ張ってばかりなので・・・そう言っていただけて嬉しいです!」
びっくりし、はにかみながらも彼女は嬉しそうにそう言った。
「あ、自己紹介してませんでした!私、台場カノンっていいます!
第二部隊に所属してます!
えっと・・・新型さんですよね?噂は聞いてます!」
「狐野テンカです。よろしくお願いします、カノン先輩!」
「せ、先輩だなんて・・・!
今まで一度も言われたことないのに・・・!!」
感激し、目を見開くカノン。
心なしか目に涙を溜めているようにも見える。
「あ、これ。
さっきクッキー作ってて、ちょうどよかったから持ってきたんですけど、いかがですか?」
そう言って巾着袋を差し出すカノン。
巾着袋も手作りのようで、ピンクの花の刺繍がされている。
「ホントですか!?
僕クッキー大好きなんです!いただいていいんですか!?」
クールな表情から弾けるような笑顔を見せるテンカ。
それを見たカノンはほんのり頬を赤く染めた。
「は、はい!どうぞ食べてください・・・!
お口に合うかわかりませんけど・・・。」
「いただきます!」
巾着袋はまだ暖かく、中にはさらにリボンで結ばれた袋が入っており、それを開けると香ばしい香りを放つ焼きたてのクッキーが入っていた。
一口サイズのそれを一つ手にとって口に放り込むテンカ。
「あぁ〜・・・美味しい・・・。」
うっとりしながら口に広がるバニラの香りを楽しんだ。
その様子を無意識に顔を近づけながらジーッと眺めるカノン。
気づけばテンカの輝く銀髪に目がいっていた。
「綺麗・・・。」
誰にも聞こえない、テンカにすら聞こえないような小声でそう呟いた。
「・・・髪になんか付いてます?」
いきなりテンカに顔を覗き込まれ、声もあげずにびっくりして飛びのいたカノン。
「え、えっと・・・クッキーまた作ってきますね!
失礼します!!」
顔を真っ赤にして逃げるように病室を飛び出したカノン。
クッキーのレシピ聞きたかったな〜、巾着袋返さなきゃな〜とか考えつつ、テンカは休みなくクッキーを頬張り続けた。
・・・クッキーを食べ終え、自室に戻ったテンカは、巾着袋を綺麗に洗って干すと、ターミナルのメールボックスを開いた。
コウタからメールが届いていた。
〈お疲れ!
中型の群れに襲われたって?災難だったな!
今度俺の部屋に来いよ!一緒にバガラリー見て盛り上がろうぜ!あんたも絶対ハマるからさ!!〉
どうやら今日の事件はそれなりに知られたようだ。
テンカとコウタ同じ第一部隊だが実戦ではまだチームを組んでいないため、テンカは少しそれを楽しみにしていたりする。
「バガラリー・・・?」
気になってターミナルで調べてみると、どうやらフェンリルの公共放送FBSで放映されている大長編のアニメ作品らしい。
楽しみにしている旨を返信し、テンカは次のメールを開いた。
サクヤからのようだ。
〈お疲れ様。
今日は大変だったわね。
でも新人とは思えない動きだったわ。ちょっとびっくりしちゃった。
これからもよろしくね、頼りにしてるわ。〉
メールの受信時刻は5分前。ちょうど彼が巾着袋を洗っている時に届いたメールのようだ。
〈さっきは命令に反抗してすいませんでした。
これからは第一部隊の先輩方の足を引っ張らないよう精進したいです。〉
そうメールを返信し、テンカはターミナルを閉じると、糸が切れたようにベッドに倒れ、そのまま意識を手放した。
・・・ごめんなさい3000文字超えです・・・。
さて、テンカが使っている神機パーツ。
リザレクションをプレイした方ならご存知の方が多いでしょう。
・・・そう、アニメゴッドイーターの主人公、空木レンカ君の神機パーツと全く同じなのです!(笑)
あ、名前は意識したわけじゃないですよ?