作戦中のイレギュラーにより辛酸を舐めさせられたコクーンメイデン討伐任務の五日後。
思いの外打撲がひどく、神機の運用すらままならなかったテンカは、体に負担をかけずに軽いトレーニングを続けつつ、短い休暇をとって静養していたのだ。
空いてしまった時間にはサカキ博士の講義を受けつつ、コウタに誘われていた例の『バガラリー』というアニメを観たりもしていた。
ようやく痛みも治まり、戦闘に差し支えないと判断された彼は本日任務へ復帰することになった。
テンカはエントランスへ行き、いつも通りオペレーターのヒバリに話しかける。
「ヒバリさん。お疲れさまです。」
「あ、テンカさん。復帰されたんですね。
既に任務はアサインされていますよ。
同行する方々は他の任務を終えてから直接作戦エリアに向かうとのことなのでこのままお一人で作戦エリアへ向かい、チームに合流してください。」
方々・・・ということは同行メンバーは少なくとも2人以上だろう。と推察しつつ、「わかりました」と返事をするとテンカはその足で神機整備保管庫へ向かった。
整備室にはリッカや他の整備員がおり、忙しなく駆けずり回っていた。
リッカはテンカに気づくとパッと明るい表情を見せて駆け寄った。
「復帰なんだね。前回の任務で少し神機は損傷してたけど五日間で完璧に直しておいたから心置きなく戦えるよ!」
「ありがとうリッカ。助かるよ。」
「でも、無理はしないで。
今度あんなことが起こっても、また生きて帰ってこれるとは限らないから・・・。」
心配そうにテンカの顔を見上げるリッカ。
「うん、気をつける。
さすがにああいう修羅場はしばらくご免だからね。」
グッと右手の親指を立てながらも苦笑しながら答えたテンカ。
彼にとっても先の体験は肝が冷えたようだ。
リッカから冷やしカレードリンクをもらい、神機を握って嬉々としてヘリに乗り込んだテンカだった。
『鉄塔の森』
老朽化し、いたるところで廃液が漏れ出す廃工場。
錆や油で悪臭が立ち込めているこの場所での今回の任務は、複数体の小型アラガミの討伐任務。
作戦エリアには既に神機使い2名が到着しており、片方はブラストタイプの旧型遠距離式の神機を持ち、上裸に赤い刺青のようなものをいれ、赤いベストを着用した赤い髪のグラサンの少年。
他方は先日の任務でリンドウとともにテンカとサクヤの救援に駆けつけた紺色のフードにノコギリ型の巨大なバスターブレードタイプの神機を肩に担いだ少年だった。
テンカが神機を手に作戦地点に降下すると、赤髪グラサンの少年がすぐに駆け寄ってきた。
「あぁ、君が例の新人クンかい?噂は聞いてるよ。
僕の名はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。
まぁ君もせいぜい僕を見習って、人類のために華麗に戦ってくれたまえよ。」
時折前髪を掻きあげながら
そして、オウガテイルが高台からエリックに飛びかかるのと、フードの少年とテンカがそれに気づくのは同時・・・
「エリック!上だ!!」
「えっ?」
わずかにテンカの反応がオウガテイルの不意打ちよりも速く、彼は予め
「グギャアアアア!!!」
不意打ちに失敗したオウガテイルは弾丸に弾き飛ばされると放物線を描いて地面に落下した。
「ボサッとするな!!」
フードの少年がエリックに喝を入れると、その声に正気に戻ったエリックは慌てて持っていたブラスト神機からオウガテイルへ向けてモルタータイプの爆発弾を放った。
「ギャアアアアアアア!!」
爆風で胴体が抉られたオウガテイルにフードの少年が突進し、通常よりも重量があるバスターブレードタイプの刀身を
断末魔をあげ、小賢しいオウガテイルは絶命した。
「・・・ようこそ、クソッタレな職場へ・・・。」
うんざりしたという態度でフードの少年がテンカに話し始めた。
「俺はソーマ・・・別に覚えなくていい。」
自分の名を名乗り、ソーマは息絶えたオウガテイルに視線を移して話を続ける。
「言っとくが、ここではこんなことは日常茶飯事・・・今回は運良く生き延びただけだ。」
そして突然、手に持ったバスターブレード『イーブルワン』をテンカの鼻先に向けこう言った。
「お前は、どんな覚悟を持ってここに来た・・・?
・・・なんてな・・・。
時間だ。行くぞルーキー、エリック。」
神機を担ぎなおし、踵を返して歩き出すソーマ。
「・・・とにかく死にたくなければ、俺にはなるべく関わらないことだ・・・。」
最後に捨てゼリフのようにそう言い残してそのまま歩いて行ってしまった。
入れ替わりのようにエリックがテンカに近づく。
「・・・いやぁ、助かったよ。僕としたことが全く華麗じゃなかったね。
ところで君、名前は?」
「狐野テンカです。
フォーゲルヴァイデってことは・・・あの財閥の?」
「あ、ああ。
あそこのトップは僕の父親だよ。」
フォーゲルヴァイデ財閥。
フェンリル傘下の巨大企業である。
ということ以外にテンカはよく知らないが、そこの嫡子ともなると相当大事にされるはず。
なぜ神機使いになったのか、彼にはエリックの真意がわからなかった。
「まぁあまり気にしないでくれたまえよ。
ともに人類の未来のため、華麗に頑張ろうじゃないか。」
エリックはテンカの肩を叩いてそう言った。
テンカは頷きを返し、2人はソーマの後について歩き出した。
「いたね。」
数十メートル先に、討伐対象である小型アラガミの群れが見つかった。
オウガテイル4体にコクーンメイデンが8体、そして空中に浮遊する卵型のアラガミ『ザイゴート』が5体。
全部で17体。
3人は物陰に身を隠した。
「それなりにいるね。
ソーマ、どっちが華麗に多くのアラガミを倒せるか競争しようじゃないか!」
神機を構えてソーマに勝負を吹っかけたエリック。
「フン。好きにしろ。」
それだけ言うとソーマは神機を構えて飛び出した。
速い・・・!
テンカは電光のようなスピードでアラガミの群れに肉薄するソーマの圧倒的な身体能力に驚愕した。
「ちょ、ずるくないかいソーマ!?」
慌てて駆け出すエリック。
対してソーマは片手でバスターブレードを振り回し、周りのアラガミを一撃で屠っていく。
彼の討伐数は既に5体を超えていた。
テンカも負けじと銃でザイゴートを叩き落としていく。
2分後、3人の周りにはアラガミの死体が転がっていた。
討伐数は、ソーマが9体、エリックが5体、テンカが3体。
「フライングとはいえ、やっぱり速いねソーマ。今回は僕の負けだ。」
素直に負けを認め、ソーマを賞賛するエリック。だが・・・
「俺はお前と勝負したつもりはない。
仕事は終わった。とっとと帰るぞ。」
ソーマは興味ないといった風に去ってしまった。
テンカはあまりに愛想がない彼の後ろ姿に怪訝な表情を向ける。
「ああは言っているけど彼も実はけっこう仲間思いなんだよ。
あまり気を悪くしないでくれたまえ。」
苦笑しながらエリックは言う。
そこでテンカは、ある在り来たりな質問をエリックに述べてみた。
「エリックさんはソーマさんとは長いんですか?」
それを聞いてエリックはプッと吹き出した。
「『さん』付けなんてしなくていいよ!
ソーマもきっとそういうはずさ!
・・・そうだね。ソーマとはよく共に任務にも出るし、同じ第一部隊としても長い付き合いになるのかな。
君ともこれから長い付き合いになるだろうから、よろしくたのむよ。」
少しナルシストなところを除けばとても気さくな人だ。
そうテンカは思った。
そして、ヘリを誘導するソーマを見て、彼のことをもっと知りたいと思うのだった。
また3000文字を超えてしまった・・・。
でも簡潔にまとめるって苦手です・・・。
というわけで、ありがちな「エリック生存ルート」でした!(笑)