『新鋭の暴君』と『神速のインパルス』   作:tig

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続いた。
加筆修正中&
12/1.18:20現在 次話20%... 遅い(確信)


邂逅

「たりぃからパス。」

 

硬直から解け、今吉の発言の意味を理解した阿含は困惑しながらも勧誘をあっさりと断わった。

 

しかし今吉もその返答は予想していたのか、わざとらしく大袈裟に驚いた様子を見せるが実際には全く驚いていなさそうな様子で続ける。

 

「ええ〜〜っ...

他の部活入ってないんやろ?」

 

「入ってねえが。」

 

「入りたい部活でもあるん?」

 

「ねえけど。」

 

「ならええやん〜!入ってくれや〜!」

 

(こ、こいつめんどくせぇ...!)

 

阿含は目の前少年ーーー今吉翔一に対してどう対応いいかわからなくなっていた。

普段の阿含ならば「うざい」と思えば即殴り、「たりぃ」と思えばキックをお見舞いすることくらいすぐにやってのけるのだろうが、今の状況からその選択肢を失っていた。

 

というのもーーー

 

「阿含君、私がいない間にバスケ部に勧誘って一体何がどうしたの!?」

 

ボールを取って戻ってきた60点の少女の存在が原因だった。

 

今阿含は知り合ったばかりの長身の眼鏡に加えて、これまた今日ナンパしたばかりの連れの少女の二人に詰め寄られているという大分混沌とした状況の真っ只中にいる。

 

(このクソ眼鏡は恐らく俺が手を出さない限りは黙ることも諦めることもないだろうし、かといって俺がこのカスを殴れば折角落としかけてる女を失うことになる...。)

 

阿含は思考を働かせるが、考えれば考えるほどにいまの状況が所謂〝詰んでいる″状況だということを思い知る。

 

「なぁ〜!!ええやろぉ!?」

 

「ねぇ、阿含君!

一体何が起きたのよぉ〜!?」

 

阿含が考えている最中でさえ、二人の猛攻は止まることを知らない。ついには二人は共に阿含の方に前から、後ろから手をかけてゆさゆさ、とゆすり始める。この2人自体には直接の関わりはないはずなのにも関わらず、大した息の合いようだ。

 

(こ....このカス共が....!

黙ってりゃ好き勝手にやりやがって...)

 

表面上は困ったような笑みを浮かべながら2人にゆすられている阿含だが、内心ではブチ切れる一歩手前だった。

 

(つうか、もしかしてこのクソ眼鏡、実は今の俺の状況に気付いてやってんじゃねえか?)

 

阿含が気付いたように今吉に目を向けるとーーーー今吉はペロ、と舌を出し、その細い目を皿に細めて悪戯が成功した少年のような微笑みを浮かべた。

 

(こいつ絶対わかってやってやがる...!)

 

ふつふつと更に怒りのボルテージを上げる阿含。

 

(ここで逃したら、多分もう入ってくれる機会なんてあらへん...!使えるもんは何でも使ってでもバスケ部に入れさせたる...!)

 

しかし揺すっている今吉の方も割と内心必死だった。

 

互いに顔には出さずに水面下で次の手を考える。頭も優れている天才金剛阿含と心理戦に長けた今吉翔一の頭脳バトルが始まろうとしてーーーーしかし、そんなカオスな状況は1つの乱入者の声で打ち切られた。

 

 

「な〜にやってるのっ、今吉さん?」

 

 

よく通る鈴の音のような声。

突然の乱入者に三人は一度動きを止め、声のした方を見る。

 

三人の視線の先には桃色の髪の少女がいた。腰まで伸びる長く、さらさらとした髪。キュッとしまった腰回りに出るところはでた完成されたスタイル。正に美少女、といった感じの少女だ。

 

今吉は知り合いなのか、少女に手を振り、60点の少女はその姿を見て女としての敗北を静かに悟る。

 

そして阿含はーーーー既に行動を開始していた。

 

「やぁ、僕は金剛 阿含っていうんだ。今吉さんのお知り合いかな?いま丁度バスケの指導をしてもらっていたところさ。今吉さんに今会いに来るってことは君はバスケ部のマネージャーか何かなのかな?」

 

阿含は人のいい笑みを携えて現れた少女へと自己紹介をしながら話しかける。今吉と60点の少女のこと等最早頭にないのか、2人の方を振り向きすらしない。

そんな阿含の様子に今吉は数瞬の間呆れを浮かべていたが何か思いついたのかニヤリとその顔に腹黒そうな笑みを浮かべ、60点の少女は失意の中圧倒的戦力差を前に立ち向かう気力を失い、静かに立ち去っていった。

 

そんな状況に困惑しつつ何か悪いことをしたのかもしれない、と頭に浮かべ、ポーっとしていた桃髪の少女だったが、とりあえずは考えないことにしたのか頭をブンブンと左右に振り、阿含にすぐに対応した。

 

「あ、ご丁寧にどうも!

私は1年の桃井さつきっていって、ご推察の通りバスケ部マネージャーをやらせてもらってますっ!」

 

「へぇーさつきちゃんって言うんだ。名前も顔もかわいいね。今吉さんに用がある風だったけど、どうしたの?」

 

さりげなく名前と容姿を褒めながら会話をすらすらと淀みなく続ける阿含。

 

少女ーーー桃井も満更ではないのか、少し頬を染めながら続ける。

 

「あ、ありがとうございます...?今日は今吉さんに大ちゃんを連れてきてって言われたから来たんですけど...あ、大ちゃんっていうのはバスケ部のメンバーの1人の青峰大輝のことです!」

 

その後に続けて阿含が更に喋ろうとするが、それを今吉の声が押しとどめた。

 

「桃井、悪いなぁいちいち呼び出してもうて!」

 

そんな今吉に眉を顰める阿含だが、すぐに元の人柄の良さ気な笑顔へと戻った。

 

「全然構わないですよ今吉さん。大ちゃん全然練習に参加しようとしないから丁度無理やり連れてきてやろうかって考えていたところです!」

 

「相変わらずやなぁ〜青峰の奴。」

 

「本当ですよ!

 

で、それはそれとして、何でそこで若松さんがすごい落ち込んだ様子で四つん這いになってるんですか?」

 

桃井の視線の先を見ると、そこには先程から全くいない扱いに等しい立場に立たされていた若松がいた。心なしか阿含に負けた直後よりも、更に負のオーラを纏っているようにみえる。

 

(そ、そうやった、若松が落ち込んでるん忘れてたわ...。だけど、これは逆に好都合...。若松、すまんがここは利用させてもらうで...!)

 

純粋に若松のことを忘れていた今吉だったが、その若松すらも利用することに決め、今吉は話し始める。

 

「いやぁ、理由は省略するけどさっきまでこの【バスケ部入部希望者】の阿含君と若松が1on1やっとったんやけど、阿含君初心者らしいのに若松負けてもうて、落ち込んじゃってるんやわ。」

 

今吉がそう桃井に【バスケ部入部希望者】を強調しつつ話す。その時、桃井には見えない角度から阿含が自分をそれだけで人でも殺せそうな程の眼光で睨んでいるのを今吉は見た。しかし、今吉はとまらない。否、もう止まることはできない。後は走り抜けるだけだ。

 

「いやぁ〜!すごいやっちゃでこの新しい【桐皇バスケ部部員】の阿含君は!阿含君ならすぐにスタメンとることになるで、多分!」

 

「え〜!そんなにすごいんですか、阿含君って!?」

 

桃井が期待を込めた目で阿含の方を見る。

 

阿含は瞬時に睨むのを止め、諦めたようにため息を吐きながら、返答する。

 

「いやぁ、そんなことないさ。

確かに運動は得意だけど、バスケはまだまだ初心者で全然。さっきそこのカーーーー若松さんに勝ったのだって、偶然偶然。」

 

カス、という言葉を飲み込み、阿含は困ったように首を振った。

 

「いや、いまのはまじで偶然やないで?ワシかて負けそうなくらいやからな、阿含君は。あの青峰でも、もしかしたら負けるかもしれへん。」

 

阿含は今吉が話の「青峰」という男を自分よりも同等かそれ以上だとみているような発言に今吉に対して威嚇するような表情を向けるが、桃井が阿含の方をふり向こうとしていたのに気付き、即座にまた顔に微笑を貼り付けた。

 

「今吉や大ちゃんにも!?

始めたばっかなのに今吉さんにそこまで言わすなんて、阿含君ってすごいんだね。バスケ部入ってくれて心強いよ!」

 

「はははは...。まあなにはともあれ、これからよろしくね、さつきちゃん。」

 

「はい!顧問の先生には後で連絡いれて、入部手続きも私がやっておくので、生徒手帳貸してください!」

 

阿含も断るわけにもいかず、

内心では今吉への怒りで一杯になりながらも、今吉の策略によってバスケへと入部することとなった。

 

(このカス眼鏡、覚えとけよ...!)

 

(なんとかうまくいったけど、これワシの身が危ななってもうたわ...。これからどないしよ...。)

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「あ、それで結局青峰はどないしたん?姿が見当たらん、てことはやっぱ来んかった?」

 

今吉が本来の要件を思い出したのか、桃井に尋ねる。

 

「ああ、大ちゃんならさっきジュースを買いに...ひぁっ!」

 

桃井が首筋に冷たい缶を当てられ、短い悲鳴を上げる。桃井が振り向くと、そこには先程までジュースを買いに購買にいっていた青髪の少年ーーー青峰大輝が佇んでいた。

 

身長は190cmを越えており、若松や今吉と同じく阿含より拳1つ分程大きい。ドレッドヘアーの阿含とは対照的に短く切り揃えられた青髪に、細身だが筋肉質で豹のようにしなやかな体。

 

阿含は何か思うところがあったのかその目に観察するような色を宿しーーー数瞬後、視線を青峰からはずした。

 

「なにするの大ちゃん!」

 

「その呼び方はやめろっつってんだろ、さつき。」

 

そういいつつジュースを桃井に渡す青峰。

 

「おー、青峰!ようやく来たか!」

 

「うっす。今吉さん、今日はまたなんで俺を呼んだんすか?」

 

「今日は若松とワシの練習相手になってもらえへんかな、と思ってよんだんやけど...」

 

「だけど、どうしたんすか?」

 

「いやー、他にやってもらいたいことができたんや。」

 

そういってチラッと阿含の方をみる。視線を向けられた阿含はというと、バスケ部に入部するということでマネージャーである桃井とラインの友達登録をしている最中であった。

 

「あのドレッドヘアーのコ、金剛阿含ゆうんやけどな?その阿含君と1on1をやってほしいんやわ。」

 

『は?』「えっ?」

 

阿含と青峰と桃井が声を漏らす。

今吉はそんな三人の様子をまるで意に介さないかのように続ける。

 

「いや〜青峰、全然練習参加しいへんから、同期の1年とも距離感あるやん。普段なら別にそれでもええんやけど、阿含君すぐにスタメンなりそうやし、同じフィールド立つ事なった時、初めてお互いの実力知る、て色々あかんやろ?」

 

それに、と今吉は続ける。

 

 

「青峰、阿含君お前よりバスケ上手いかも知れへんで?」

 

 

今吉が青峰へと言葉を放つ。

 

「ハッ!面白いこというな、今吉さん。」

 

青峰はその言葉を鼻で笑う。

中学時代から自分に並ぶような敵は居らず、『俺に勝てるのは俺だけだ。』とすら豪語している青峰だ。そんな言葉を間に受けるわけもない。実際青峰は【キセキの世代】と呼ばれた時代のトッププレイヤーの5人のうちの1人だ。その実力は折り紙付きで、名声は桐皇だけには収まらず、高校バスケに少しでも関心のある人間ならば、知らぬ者はいない程である。青峰にいたっては最早相手になるプレイヤーがおらず、自らがこれ以上上手くならないように、と練習をやめてしまった。これは青峰が傲慢なのではなく、純然たる事実である。

 

勿論そのことは目の前の今吉だってわかっているはずだ。わかっていて、何故このようなことをいうのだろうか。青峰は今吉に名を阿含、と教えられた少年の方を見る。

 

身長は180あるかないか、体格は桐皇のバスケ部の中ではそれ程優れているわけでもない。むしろ身長が大きく影響するバスケに於いていえば劣っている方だともいえる。

だが、青峰が阿含の体をよくよくみると服の上からでもわかる程に引き締まった体には無駄な脂肪が一切ついていないだろうことがわかった。正に運動することに適した体。その体は青峰と比べても勝るとも劣らないだろう。

 

だが、それだけでは【キセキの世代】でエースを務めあげた青峰大輝にはかなわない。

流石にここまでの肉体をもったプレイヤーは他にはなかなかいないかもしれないが、似たような体つきの選手は青峰の過去の経験の中に掃いて捨てるほどいた。

 

しかしーーーー青峰はその全てを打ち倒してきた。

 

そんな青峰を知っている今吉が知っていてなお対戦を進めてくる相手。

 

(見かけだけじゃ測れねえ〝何か″を今吉さんはこいつに見たのかも知んねえ。)

 

青峰は笑みを浮かべる。

 

(もしそうなら、負ける気はしねえがーーーーこいつとやってみるのは面白いかもしんねえな。)

 

「な?どうや?」

 

今吉の尋ねる声に、青峰が答える。

 

「いいぜ、今吉さん。

1on1、やってやろうじゃねえか。」

 

「おお、よかったよかった。阿含君もええよな?」

 

そういって今吉は阿含へと顔を向ける。

 

今吉の視線の先にいた阿含は、いい加減我慢の限界なのか俯きながら小刻みにプルプルと震えていた。

 

(さっきからこのカス、女がいるから俺が黙ってんのをいいことに好き放題にやりやがって...さっきのカスよりはまだマシみてえだが、何で俺がまた追加で遅れてきたカスを相手にしなきゃなんねえんだよ。)

 

だが、と阿含は続ける。

 

(さっきの60点女ならともかく、この極上の女の前で怒鳴り散らすわけにもいかねえ...。

最初のイメージってのは、後々の関係を築き挙げていく上で大きく影響する。眼鏡には後で報復するとして、今は無理な言い訳して断るよりも、こいつが自信ありげに押してきたこの青峰とか言うカスをぱぱっと潰してアピールする方が明らかに生産的だ。)

 

そこまで考えて阿含は返事をした。

 

「あ゛〜いいっすよ。」

 

阿含がそう答えた時、

桃井が声を上げる。

 

「あ、そういえば阿含くんのこと、とりあえず先生にだけは伝えにいってくるね!できるだけ早く帰ってくるようにするから、1on1するなら私が来てからお願いしますっ!」

 

それだけいって、

桃井は即座に体育館を後にする。

 

(うわ、また嫌なタイミングで桃井いなくなってもうたな...。)

 

「...んじゃ決まりやな。

ルールはさっきと同じまんま、ゴールに一発入れば終わり、ちゅうことで。」

 

ルールを話す今吉。

しかし青峰はそんな今吉の説明に異を唱える。

 

「は?1点決まれば終わりとか、俺の攻撃一発で終わっちまうじゃねーか。折角少しは楽しめそうな相手なんだから、もうちょい長くできるように決めてくれよ。」

 

青峰が素でいった言葉。そんな青峰の放った言葉に、阿含が反応した。

 

「あ゛〜?そうだなぁ。

俺の、攻撃一発で決着はつまんねえし、こいつの言う通りに長くできるようにしてやってもいいぜ?最終的な結果はかわんねえしなあ。」

 

(あ、こりゃ...)

 

まずい、と今吉が思った次の瞬間には既に青峰が阿含の挑発に食いついていた。

 

「言うじゃねえか?

だけど大口叩いてっと、後で恥ずかしいことになるからやめといた方がいいぜ?」

 

「テメエこそカスの分際で強がんのはやめといたほうがいいぞ?どうせさっきのカスと同じようになるんだからな。」

 

「さっきのカス?」

 

青峰が頭に疑問符を浮かべると、阿含は顎でクイッと若松の方を指す。

 

 

青峰は若松を見て阿含の言いたいことを理解すると、さらに笑みを深める。

 

「へぇ、若松...さんに勝ったんだな。なおのこと面白そうだ。俺を退屈させるようなことだけはしないでくれよ?」

 

そんなピリピリとした空気の中、今吉はというと

 

(こいつ、いつまでこのままでおるんや?)

 

と若松の方を見て軽く現実逃避していた。

 




※青峰登場時の容姿説明、今吉の発言に対する阿含の反応、青峰の思考部分等を加筆。

おそらくもう少しだけ
加筆修正すると思います。
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