魔法少女リリカルなのは GEMINI   作:よね

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7月からはもっとペースが上がるといったな?あれは嘘だ
本当に申し訳ないorz
いや、執筆スピードはめちゃくちゃ上がったけど取り掛かるまでがごたごたし過ぎていたというかなんというか(言い訳)

まぁマイペースにやっていきますのでこんな拙作であってもお付き合いいただけたら幸いです



第11話『最悪』の事態 なの

「ようこそ戦艦アースラへ。そして、改めてましてこんにちわ。私はこの戦艦アースラの艦長であり時空管理局提督のリンディ・ハウオランです」

 

「僕は時空管理局執務官のクロノ・ハウオランだ」

 

 アースラの中へ転送された三人をリンディという女性、クロノという少年が案内した先は棚にはいくつもの盆栽、部屋の一角に緋毛繊の茶台が用意された部屋であった

 

「さぁどうぞ、楽にしてちょうだい」

 

 そういって二人は靴を脱ぎ、緋毛繊の台へ上がり三人にも同じようにするよう勧めると茶釜に火をかけ始める

 

「は、はい」

 

「わ、わかりました」

 

「……」

 

 その言葉に従いなのはとユーノも同じようにして茶席に上がる。黄金聖衣を未だに身に纏うデフテロスは座ることを疎ましく思うのか壁に背を預けることを選択した

 

 そしてそれを見届けたリンディがにっこりと優しく微笑むと口を開く

 

「じゃあ、詳しい事情を聞かせてもらおうかしら」

 

 

 リンディとクロノから事情を聞かれつつ、栗毛の少女にレイジングハートに収められた今までの映像やデータが欲しいという要請になのはとユーノは素直に応じた

 

「なるほど…そうですか。彼はロストロギアを発掘し、それを送っている最中に起こった事故により散逸したジュエルシードを回収しようとあの次元に行き、そして貴女は彼の求めるジュエルシードの回収を手伝っていたというわけね」

 

「「はい」」

 

「立派ではあるが同時に無謀すぎる」

 

 今までの二人の行動をしてクロノはそう評価を下した

 

 当然だ。相手は少人数とはいえ組織だって行動しているに対し、こちらには才能だけの素人である少女なのはと傷つき無力な小動物へと姿を変えるしかなかった少年…その評価は妥当としか言いようがない

 

「まぁまぁ、クロノ。そこまでにしなさい。なのはちゃん、ユーノくん、貴女たちの状況と境遇は分かりました。ではデフテロスさん、あなたの素性を教えてください」

 

 リンディが黄金の甲冑を着込んだ男、いや、少年に対してなのは達以上に丁寧な対応をしながらもその問いに対する返答を強制する

 

「俺がなのはとユーノの二人に合流したあらましは伝わったようだな」

 

「えぇ」

 

「よろしい。ただ、俺の素性について話す前に一つ、俺の故郷で伝説となっていた話をしよう」

 

「伝説って?」

 

 そういってなのはが首をかしげる

 

「あぁ」

 

「それは伝説でありながら俺が生きていた時にまで現存していたある存在を伝える話だ」

 

「その存在の名を聖闘士という」

 

 ・・・

 

 この世に邪悪がはびこるとき、必ず現れるという希望の闘士

 

 その名を聖闘士という

 

 彼らの拳は空を裂き、蹴りは大地を割る

 

 彼らは神話の時代より女神アテナに仕え、武器を嫌うアテナのために素手で敵と戦い、天空に輝く88の星座を守護としてそれを模した聖衣と呼ばれる防具を纏う

 

 彼らが望むのは女神の勝利、地上の平和、人の愛

 

 それを脅かすは女神と同格の存在、即ち神

 

 神が従えるのも彼らと似て非なる存在である尖兵・精鋭達

 

 神と神、戦士と戦士

 

 神話の時代より幾度となく繰り返されてきた彼らの争いをいつからかどちらともなく聖戦と呼ぶようになった

 

 聖戦が始まる理由は無数にある

 

 地上の支配、地上の浄化、そして、全人類の救済

 

 戦神アレスとその尖兵・狂戦士は闘争こそを目的とし凄惨を聖戦と呼ぶことを憚られるような戦争、ギガノマキアと呼ばれるものもあった

 

 だが、彼らは幾度となく闘い

 

 幾度となく聖戦に勝利してきた

 

 地上の平和こそ揺るがぬ証拠

 

 彼らが勝利し続けられたのは常勝の戦女神アテナがいたからだ

 

 彼女の愛と美しき御心に聖闘士達は心を奮わせ、力の限りを尽くした

 

 だが、犠牲が無かったわけではない

 

 女神アテナが約束するのはあくまで勝利

 

 女神アテナはその過程に生じる犠牲を無しとした勝利を約束するわけではなかった

 

 そう、聖戦が始まる度に聖闘士をはじめとした犠牲は必ず生まれた

 

 数人であれ、数十人であれ、数百人であれ

 

 教皇であれ、黄金であれ、白銀であれ、青銅であれ

 

 訓練生であれ、雑兵であれ、協力者であれ、無辜の民であれ

 

 切られて、殴られて、焼かれて、裂かれて、刺されて、撃たれて

 

 聖戦の度に地上の住民・戦士達は冥界へ送られた

 

 仇敵冥王ハーデスの領地であり永遠の処刑地である冥界へと

 

 それでも尚、それを覚悟の上として戦い抜いた者たちがいた

 

 それが聖闘士。戦女神アテナの名の下に集い闘う勇士

 

 これは平和の名の下に骸を積み上げてきた戦士の伝説である

 

 ・・・

 

「……聖闘士、それがあなたの素性という訳ですか」

 

 神妙な顔をしてリンディがいう

 

「あぁ」

 

「でもおかしい!管理局にもこの次元出身の者は少ないがいるが彼らからは聞いたことが無い。万が一、そんな伝説が知られていなくともその痕跡は必ずあったはずだ!そして、それを管理局が見逃すはずはない!」

 

「そうだな。しかし現実だ。他ならぬ俺がそうなのだから」

 

 抗議するクロノに対しこともなげにデフテロスが言う

 

「ッ……」

 

「やめなさい、クロノ。分かりました、では今回はここまでに―」

 

「失礼します!!艦長」

 

「あらエイミィ、どうしたの?」

 

 和のエッセンスが散りばめられた部屋に息を切らせて駆け込んできたのは栗毛の可愛らしい女性だった

 

「……先程のアンノウン二人の観測・解析結果が出ました」

 

 エイミィと呼ばれた女性はちらりとデフテロスを見やるとリンディの元へ行き、手に持った端末を渡す

 

「これが彼らの結果です」

 

「こ、これは…いえ、ある程度そうだろうと思っていましたが、やはり魔力反応が…デフテロスさん。もう一つお伺いしても?」

 

 手元にある端末のディスプレイを見たリンディの顔色がサッと変わる

 

「かまわん」

 

「先程の貴方達の闘いをこちらは観測し、録画しました。その結果あなた方が起こす現象に魔力反応が一切検知されなかったのですが…その上で改めて聞きます。貴方は魔法を使うことが出来ますか?」

 

「いや、使えん」

 

「ではどのようにしてあのような現象を起こせたのかを教えていただくことは出来ますか?」

 

「…あぁ、構わん。どうせ、貴様等では真似しようとしてできるものではないからな。秘密にしようが伝えようがそう大差ない」

 

 ゴクリとその場にいる誰かが固唾をのみ、その場にいる全員の視線がデフテロスに集中する

 

「俺たちの力の源とは小宇宙と呼ばれるものだ」

 

「コ、コスモ?」

 

「俺たちの闘技いや力は全てそれだけで説明がつく」

 

 ・・・

 

 小宇宙とは体内に存在する宇宙的エネルギーのことをいう

 

 人間も含めて、この宇宙に存在している全てのものはビッグバンによって生まれた

 

 人間は誰しもビッグバンで飛び散った宇宙の一部であり、身体の内に宇宙(=小宇宙)を内包している

 

 聖闘士はその体内にある宇宙を感じとり、宇宙開闢のビッグバンのように燃焼・爆発させることによって、超人的な力を発揮する

 

 それを極めると小宇宙の爆発により星々をも砕く破壊を生み、肉体のみならず精神にまで干渉・破壊し、冥界・異次元等の異空間へ相手を放逐するといった事も可能にする

 

 ・・・

 

「つまり魔導士の言う魔力みたいなもの…でしょうか」

 

「まぁ、そうだな。そう考えてもらった方が分かりやすいか」

 

「では何故、先程あなたは真似しようとして出来るものではないと仰られたのでしょうか」

 

「これを会得するには一部を除き、厳しい修行を行わねばならん。極限状態の中、自分の中でただ燃える小宇宙を感じ取るためにな。その修行も人によっては無駄になる…そして、見たところその一部の例外に当たる者はこの場にはおらん。だから真似できるようなものではないといったのだ」

 

「なるほど」

 

「それって私でも体得できるんですか?」

 

「な、なのは…」

 

「可能性は万人にある。可能性だけは…な」

 

「そう…ですか」

 

「まぁ、過去最大数がいたといわれる俺たちの時代の聖闘士の数も79人しかおらんのだ。小宇宙に目覚めることがいかに困難かそれだけでわかるだろう」

 

「小宇宙を体得した者は超人になる。常人が何人かかろうが物の数にもならん程の力を得ることになる」

 

「黄金聖闘士のような小宇宙の神髄を極めたものの一手がこれだ」

 

 そういってデフテロスの足元から空間に亀裂が入ったかと思うと、暗黒の中に色彩を放ち浮く星々に一面が囲まれた宙空間へ変貌する

 

 クロノにもリンディにも臨戦態勢をとる間を与えずにその場を異次元へと移動させたのだ

 

「これは小宇宙を世界に作用させることにより異次元との行き来を可能にした技だ。俺達はこの技をアナザーディメンションと呼んでいる」

 

「こ、これは…!!」

 

「本来は異次元に追放、放逐し静かに怨敵の命を絶つ残酷な技でもある。いくらその身に神の加護を受けようと所詮は人だ。飯も喰らわねば生きていけぬ。そして…」

 

 辺りから暗黒を薄く照らしていた星々の輝きが消え、正真正銘明かり一つすらない闇が彼らを包む

 

「この通り、光を断ってしまえばいずれ正気も失い発狂する。なまじ強靭な肉体と精神を持っている分、飢えて死ぬにも時間がかかることがここでは裏目に出る。肉体的な死が訪れる前に精神的な死を下すというわけだ。精神的に死なずとも肉体の方が限界が来る。どちらにしても待つのは死という訳だ。殺しても冥王の加護のせいで生き返るような不死身には特に有効とされた技だ。蘇生されるまでの時間を延ばす為に餓死を強要でき、精神も壊してしまえばその聖戦の間は無力化できるからな」

 

「も、元の部屋に戻せ!これ以上は敵対行動とみなすぞ」

 

 クロノがそう言い終える前にまたパッと世界が切り替わる。見回してみると先程までいた部屋である

 

「わかるか?ここまでせねばならない超人共を相手取ってきた存在なのだ。聖闘士というものは…いや、正確には小宇宙に辿り着くことができた超人と言った方がいいか」

 

 リンディ、クロノ、エイミィのデフテロスを見る目が明らかに先程までと変わっている

 

 不審、畏れ、脅威そういった様々な負の感情がその眼には浮かび、その頭の中では与えられた情報を理解・整理しようと思考をめぐらせていることだろう

 

「だがな超人もあくまで人間だ。人間は善にも悪にも転ぶ。尊き理想も、貴き人格も腐敗し、堕落することもある」

 

「貴方の話を聞くにまるで堕落した人間が今まで何人もいたかのような口ぶりですが…」

 

「あぁ、残念ながらそういう記録がいくつか残っている。堕落した存在の一例には貴様らの知る者もいるぞ」

 

「……貴方と共に観測されたアンノウン」

 

「そう、それは前任の双子座の黄金聖闘士であり、仁・智・勇の全て兼ね備え、教皇の最も座に近いと言われた男…我が兄アスプロスよ」

 

「きょ、教皇ってお兄さんのところで一番偉い人じゃないですか!」

 

 以前フェイクが交えてあったとはいえデフテロスの口から教皇の存在を聞いていたなのはとユーノが反応する

 

「頂点には女神が立つから正確にはNo.2ではあるが、聖闘士の頂点という意味では正しい。話が逸れた…貴様らはそんな人間を相手取ろうというのだ。一応聞いておく。貴様らにその覚悟があるか?アレは無駄な殺しこそせんが、殺しを厭うような人間ではない。頭も回るし、腕も立つ。先程も言った通り、常人では束になっても歯が立たん。貴様ら魔導士でも例外なくな。それでもこの戦艦一隻と船員だけで奴に立ち向かう気はあるのか?」

 

 デフテロスの問いにリンディは長らく考え込み、しばらくして閉じた口を開く

 

「……その前にお聞きします。聖闘士という存在に弱点は存在しますか?」

 

「!!」「!?」

 

 その発想はなかったとなのはとユーノは声に出さずとも反応を見るにそう思ったのだろう。クロノも二人ほどあからさまな反応はしなかったものの内心そう思っていただろう。実際、黄金聖闘士の実力を手加減されたとはいえその身に受け、本気を目の当たりにした。その巨大さから弱点などあるはずもない無欠の存在だと無意識に感じていたのだろう。先程、デフテロスの口から超人であると同時にただの人だと言われたばかりであるのに

 

「ある…他と比べれば人間のままというだけだが」

 

「それは…!?」

 

「この肉体そのものだ。聖闘士が身に付けるのはあくまで小宇宙を用いて原子ごと物質を破壊するという闘法だけだからな。その肉体は限界まで強度は上がっているとはいえ鍛えあげた人間のソレでしかない」

 

「なるほど」

 

「だが、それを補うモノがある」

 

「その鎧というわけですか」

 

 半ば残念そうに半ば予想していたかのようにリンディは言う

 

「あぁ、こいつは聖衣といい。88星座を模した防具だ。聖闘士はすべからくこの聖衣を授かり、身に着け戦地に赴く。そして、この黄金聖衣はその中でも頂点に位置する。その強度は神話の時代から幾度となく聖戦を経てもなお一度も完全に破壊されたことが無いほどだ」 

 

「けれど、アンノウン。いや、アスプロスは貴方の前任と言えど聖衣が二つもない限りそれを持っていないはず…けれど、貴方の話しぶりからするとその線はひどく薄い」

 

「あれは冥衣と言って冥王軍に属するものが身に着けるモノだ。冥闘士も神も、寝返った聖闘士も等しくな。聖衣とは似て非なる存在だと言っていい」

 

「なるほど、それでは貴方の兄は貴方たちを裏切り敵方に回ったという認識でよろしいのですね」

 

 デフテロスにとって酷な話だと思ったのだろう。リンディはデフテロスの瞳を最後まで見続けることは出来なかった

 

「その通りだ」

 

 だから、その事実を突きつけていた時、彼がどんな顔をしていたのかをリンディは知ることはなく。その表情からその内面を読み取る機会も彼女は逸した

 

「わかりました」

 

 一通り話が終わったと判断したのか彼女は僅かに息を吐く

 

「俺からは以上だ。さぁ、返事を聞かせろ。艦長、貴女に命を賭す覚悟はあるのか?」

 

 デフテロスは問い、リンディは固唾をのむ

 

「聖闘士という存在を理解した今も。双子座の力を目の当たりにした今も。アスプロスという人間を知った今も」

 

 試すように管理局側の人間を睨む

 

「あります。我々は次元宇宙の秩序を守るため行動することを職務とし、そして私も艦長として行動に付随する一切の責任を背負う覚悟があります」

 

「了解した。といっても状況が変わるわけではない。未だに俺たちも奴らもジュエルシードを蒐集する段階だ。あとは奴らが俺の前に現れるかどうか…」

 

―奴の口ぶりから察するにもう既にこの事件の芯に迫っているように思えるがな

 

「そうね…ただ、管理局が接触した今、向こうはこれから私たちを避けて蒐集を続けるでしょう。しばらくはこの基本的な動きが変わることはないでしょうし、蒐集自体は今まで通りなのはちゃんとユーノさんがメインでそれを我々がサポートをする形で作戦を進めていきましょう」

 

「………そうか」

 

「デフテロスさん?どうかしましたか?」

 

「いいや、何でもない」

 

「そう、ですか。では、今度こそこの話は終わりです。3人ともお疲れさまでした。ではクロノ、なのはちゃん達を転送ポートまでエスコートしてあげなさい」

 

「はい、艦長。じゃあ、ついて来てくれ。元の場所へ君たちを送り届けるから」

 

「「よろしくお願いします」」

 

「……」

 

 三人はクロノについて行き、来た廊下を改めて歩き出す。

 

 

 

 

「ふぅ」

 

 そして、彼らが見送り自動扉が閉まるところまで見届けたリンディは一気に息を吐き出す

 

「お疲れ様です。艦長」

 

「ありがとう、エイミィ。事件自体はよくある…とまでは言えないけれどロストロギアが絡む事件としては今のところ考えられるだけの様相は超えてはいないのだけれど」

 

「彼ですか。あの人の周辺だけ空気とか世界観とか違ってましたもんね。よく言えばユニーク、悪く言えば超時代錯誤的というか」

 

「けれど、様になっていて彼単体で言えば何も違和感のない。それどころかそうあることが自然であるような風体っていうね。しかし、触媒もなし、魔力もなしなのに次元震を起こせるような人間。それも二人」

 

「私はあの異次元に移動したときが一番肝が冷えましたね。死の存在をはっきりと感じ取れましたもん。まさか、正常に運行しているアースラの中で死ぬことを意識したのは流石に初めてです」

 

 光のない昏い世界を思い出したのか彼女は身体を抱いて小さく身を震わせて見せた

 

「彼をこの艦に招いたことが一種のトラブルだったと考えましょう」

 

「ははは、正直言えばあの人とはもう会いたくはないですが、そうも言ってられないのでしょうね」

 

 それが彼女の本音なのだろう。無理もない。彼は一瞬にしていきなりその場にいた全員の生殺与奪権を手中に収めてみせたのだ。自分の命が自分から離れたところで自由にされる。それに恐怖を抱かない方がどうかしてる。そんな手段をとった方の感性も同じく

 

「彼の協力がないと恐らくこの事件が終息を迎えることは難しいでしょうからね。問題は如何にしてアスプロスを対処するかにかかっていると言ってもいいでしょうから」

 

「わかりました。では業務に戻りますね。もう少し何か反応が出ないか精査してみます」

 

 では失礼します。といって栗毛の少女は一礼をしてその場を後にする

 

「お願いね、エイミィ」

 

 一人になった茶室でリンディは今回の事態の重さについて真剣に考え込んだ末にポツリと漏らす

 

「本当に、頭が痛くなってきたわね」

 

 正直、なのはとユーノ、金髪の少女フェイトだけがこの事件に関わっていたとしたら、リンディはなのは達をこの件から手を引かせるつもりでいた

 

 しかし、デフテロスとアスプロスの存在がそれを許さない。それに、最大限の警戒をもってあたるべき脅威であるアスプロスに唯一対抗できる存在であるデフテロス自身がこの件に大して興味が無いことも頭を抱える一因になっている

 

 なのはとユーノの弁からするとデフテロスはあくまでなのは達を守るために行動しているのであって、アスプロスの相手をするのもその延長線上でしかないと思っている節がある

 

 なのは達をこの事件から退かせるということはつまり、デフテロスがアスプロスの相手をする理由がなくなることを意味し、正真正銘、戦艦アースラとその船員のみでこの事件に対処することになる。あの鬼のような強さを誇るアスプロスと少女と思えない程の精度・威力で魔法を操るフェイトのチームを相手にだ。

 

―管理局としてはそれこそが正しい傾向であることは間違いないのだけれど…

 

 彼女にも管理局に属する人間として誤った方策をとっている自覚はある。先ほどの一瞬の沈黙。示した指針に対してデフテロスはそれを察し、我々に不信を持ったのだろう。けれども、現場指揮官としてはこの方策こそが被害を最小限に抑えられる確信も持っているのだ

 

 命を賭けると言っておきながら、前線に立つのは少年少女とデフテロス。我々は後方で支援又は待機。倫理観を除けば、前線で人的被害が出ようと痛む腹はない。

 

 「嫌になるわね」

 

 思わず愚痴が漏れ出る

 

 しかし、なのは達が現場にいなければ、デフテロスというアスプロスへのカウンターもその場に存在しないことになる。無抵抗の内にロストロギアいや、ジュエルシードを引き渡すことは出来る限り避けなければならないし、かといって、武装職員どころかリンディを除けばアースラ内で最高の魔導士であるクロノでさえも歯が立たないだろう。現に不意打ちとはいえ敗北を喫しているだけでなく、気紛れで見逃されたようなものなのだ

 

― 一応、まともな頭を持っているのなら相手側は管理局を避けるような行動指針にシフトするはずだと思うのだけれど。なのはちゃん達には私達が接触し協力している。もしくは蒐集を引き継いだと考えるだろうし、クロノの存在も知っただろうしね

 

 彼女がデフテロス達を納得させるために言った言葉自体も嘘ではなく十分に考えられることであったし、実際そうなると考えている。実際問題、その方針が真であると思われなければデフテロスから協力を得ることが出来なかった可能性もあったのだから。彼から協力を取り付けて見せたことからリンディのその思考は彼を納得されられるほどの説得力を有していた証明でもある

 

― 一番『最悪』なケースはデフテロスのいない状況下でアースラの持つ戦力を投入し、その全てが機能停止すること。それだけは避けなければならない。逆にデフテロスさえいればこちらの方が優位に立つことは出来る可能性が高い。かといって最大戦力に対し最大戦力を充てるっていうのもリスクは高いし、万が一、デフテロスが破れた場合のことを考えると最悪のシナリオが浮かんでくるし……

 

「ダメね。思考がループしてきたわ。お茶でも飲んで一服しましょうか」

 

 結局リンディはそこで思考を打ち切り、未だに火にかけられてる茶釜から湯を汲み、茶をたてる。そして、口元へ運ぶ…前に砂糖をたっぷりと入れる。そうして好みの甘みと苦みの調和に至ったことを確認すると一人、旨そうにそれを啜り、ささやかな休息と糖をとる

 

 

 ◇

 

 

「おーい、デフテロス。これから父さんと走りに行くけどどうするー?」

 

 自然公園での衝突、戦艦アースラでの事情聴取が行われた日の晩。高町家で恭也が士郎と共にランニングに行こうとする直前、デフテロスも誘おうと思い彼に宛がわれた部屋のドアにコンコンコンとノックしながら声を掛け続ける

 

「?」「おい、デフテロス。いるのか?」

 

 返事がないことを奇妙に思い、ドアノブを回し扉を押して入るがそこには誰もおらず、相変わらず物の少ない閑散とした空間があるだけだった

 

「なんだいないのか」

 

 拍子抜けといった顔で肩を落とす

 

「あっ!デフ君はさっき散歩に行くって言って出てったよ。後、私も行くからちょっと待ってて」

 

 準備のため自分の部屋へ小走りで向かう美由希が思い出したかのようにデフテロスの直前の行動について言及する

 

 

 

 

「じゃあ、行ってくる」

 

 士郎が恭也、美由紀を連れてランニングに行こうとする。夜にしては騒がしい日常の一幕、けど、高町家ではよくある賑やかな光景。それを玄関先まで見送るのは妻であり、母である桃子。その桃子はリビングをへと向かう。大事な話があるとなのはに言われていたからだ。桃子は席に着くと洗い物の手伝いをしてくれていたなのはが丁度台所を出てリビングに入ってくるところだった。なのはが席に着くと桃子はなのはに向き直る

 

「それで、大事なお話って何かしら?なのは」

 

「うん、えっとね」

 

 ・・・

 

 お母さんにはユーノ君と出会ってから今日までのこと

 

 魔法のことやユーノ君の正体については言えなかったけど、言える限り全部伝えた。

 

 そして、本当に私がしたいことのために、少し家を離れること

 

 危ないかもしれないけれど、これを逃してしまうと本当に後悔するような気がしてしまうということ、それも大切なことだから最後までやり通したいということまで伝えた

 

 ・・・

 

 そんな話を最後まで聞いてくれたお母さんは心配そうな顔をしたけれど、その後は笑顔で後悔しないように、いつも私のことを想ってくれていることを忘れないでと言って背中を押してくれました

 

 「ありがとう、お母さん」

 

 「いってらっしゃい。お兄ちゃんとお父さんは私がちゃんと説得してあげるから」

 

 そういって優しく頭を撫でてくれました

 

 

 

 

―ん?

 

 夜道を走る中、恭也はすれ違うある人物の顔を見て一瞬違和感を覚えた

 

「今、すれ違った人の顔見たか?」

 

 そこは境内へと続く長い階段の麓、その違和感が形になる前に前を走る父、士郎も同じ事を疑問に思ったのか士郎はおもむろに後ろに続く二人に走りながら声をかけた。走りながら喋ったため、少し息が乱れくぐもった声になってしまったが二人にはちゃんと届いたようだ

 

「見なかったよー、どうしたの?」

 

「…俺は見たよ。けど、とても身近に感じたけど何に対して違和感があるのかわかんなかったが」

 

「そうか…」

 

 士郎はそれを聞いて何か確信したかのような顔つきになる

 

「何かわかった?っていうのもおかしいけど、そこまで言うのには何かあるんだろう?」

 

「あぁ、見間違いかもしれんと思ったのだが、デフテロス君と同じ顔をしていたんだ。ただ、肌の色が違っていたが」

 

「そうだ、色が白かったんだよ。それだけでだいぶ印象が変わるから気づかなかったな」

 

「見間違えとかじゃなくて?」

 

 美由紀がそう言う

 

「前から歩いてくるときに本当は彼だと思っていたぐらいだ。体格だけじゃなくて体の運び方や歩く時の癖まで一緒だったんだから」

 

「ふぅん、父さんがいうならそうなんだろうけど…不思議なことがあるんだね。もしかしてドッペルゲンガーってやつとか?」

 

 美由紀は面白がってそんなことを言い出す

 

「生き別れの双子とかかもしれないぞ」

 

 恭也もそれに乗っかって散歩に出ているというこの場にいないデフテロスについて思いついたまま冗談を口にする…が

 

 

「俺の双子がなんだというのだ?」

 

 

「「うぉっ!?」」

 

 まさか話題の張本人が声をかけてくるとは思ってなかったのか、動じることがあまりない恭也でさえ声をあげて驚いた

 

「さすがの俺も化け物が出たかのような反応されると困る」

 

「いや、すまん。本当に、悪かった。」

 

 恭也が運動と驚きによりいつもよりずっと心拍の上がっていた跳ねる心臓を抑えながら、息もたえたえにデフテロスに向き直る

 

「デフテロス君。君はどこから?」

 

 士郎はデフテロスに尋ねる

 

「そこの神社の境内にまで行ってただけです。階段を下りてくればあなた達がいただけで…あなたたちは何を?日課のランニングのようですが」

 

「その通りだよ。いや、なに。君によく似た顔をした人を見かけたというだけさ」

 

 デフテロスは目を細めて聞き入り、ただ、「なるほど」とだけ返した

 

「ドッペルゲンガーはあうとよくないことが起こるっていうからね。君も気をつけようね、君に関しては自分で何とかしちゃいそうだけど」

 

 美由紀が冗談交じりに言い、デフテロスも軽く笑い返す

 

「そうだな。そんなろくでもないことは避けられるに越したことはない」

 

 その様子を見ていた士郎は微笑みながらもキリッと表情を締めていう

 

「じゃあ、そろそろ行くよ。これ以上立ち止まってたら体が冷えてしまうからね。君も早く帰るといい」

 

「えぇ、そのつもりでしたから。では」

 

「ん。お前も気をつけろよ。襲われることを心配してるんじゃなくて補導されるなよってことだぞ。この時間に少年ってところもアウトだし、老けて見えるから外国人として職質されるのもアウトだしな」

 

 恭也もそう言い残して士郎と美由紀を追って走り去っていく

 

「そういうことはもっと早くに言うべきだろうに…まぁいい」

 

 彼らを見送りながら自身に問う

 

―ろくでもないことは避ける。か。それができばもっと楽だったろうに。それが避けられない時、どう身を振るかでその本性が暴かれる

 

―俺は…

 

 

 

「いってきます!」

 

「では、行ってくる」

 

 それから桃子が説得してくれた士郎や恭也に見送られ夜の帳が落ちた街へとなのはとデフテロスは出る

 

 アースラへと本拠を移し、万全のサポートと迅速な対応を受けるためである

 

「なのは」

 

 先を行く少女に呼びかける

 

「うん?どうしたの?」

 

 先を行くなのはが振り向く

 

「改めて言う」

 

 呟くように独り言のように、しかしそれは確かに少女へと向けられていた

 

「俺はお前を守ろう」

 

「?」

 

 一瞬きょとんとした後、花が咲いたような笑顔を彼に向け少女は言う

 

「はい!よろしくお願いします!!」

 

 彼も少女に感化されたのか意識することなくその巌のような表情から笑みをこぼし、言う

 

「あぁ、こちらこそよろしく頼む」

 

 

 ◇

 

 

 彼は心中で誓う

 

 

―俺はなのはを守ろう

 

―命を助けてくれた少女のために

 

―居場所を与えてくれた彼らのために

 

―俺はそれを何よりも優先しよう

 

 

 

 

 その日から十数回目の黄昏時

 

 荒れた海上で黒衣の少年が天上を睨み付けそこにいる少年を糾弾する

 

「どうして…どうしてお前がそちらに立つ!!いや、いつからだ!!いつから僕たちを裏切った!!」

 

 荒れた海上で獣耳の少女が同じく睨めつけながら激昂し、叫ぶ

 

「捨てるのか!?この子を!?裏切るのか!?私たちを!!」

 

 彼らは何も言わない

 

 黄金と闇色の甲冑に身を包んだ男たちは答えない

 

 下から見上げても男たちの顔色は窺えない

 

 善と悪の面をあしらった(マスク)の陰にある眼に何が映っているのかすら少年少女にはわからない

 

 彼らを見下しているのか、何の感情もう抱いていないのか、そもそも眼中にないのか、それとも…別の何かがそこには映っているのか

 

「答えろ!!デフテロス!!!」

 

「答えろ!!アスプロス!!!」

 

 

 

 

 彼は決意した

 

 

―どんな手を使ってでも

 

―誰に何と言われようとも

 

―守ろうとした者から何を言われようと

 

―俺が

 

―俺たちが

 

―どんなリスクを背負うことになろうと

 

―どんな末路を辿ることになろうと…だ

 




しかし、水着イベは最高だな!六章も最高でしたけどね!!
うちにはモーさんとアンメアがお越しになられました
特にアンメアは並べて使いたかったのでかなりうれしいです

ちょっと前の六章お布施ガチャでは太陽王が二人も、確定ガチャは獅子上、カルナさん、モードレッド狙いで歩く文明破壊ウーマンがいらっしゃいました

最近のガチャ運は中々よろしいのが少しうれしかったり
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