変な表現、気になった表現があればぜひ報告してください
すぐさま修正しますので
サンタオルタが可愛くて未だに手に入らないこの状況がもどかしいです
「ロスト・ロギアはこの辺りにあるんだよね」
「そうだ、形態は青い宝石」
「確か、一般呼称はジュエルシードだっけ?」
「一人で行くのか?」
「うん」
「ねぇ、本当に大丈夫?」
「大丈夫、だから安心してて。ね?」
「私はフェイトの使い魔なんだよ?」
「そうだね。でも頑張ってすぐ手に入れるから。はじめくらいは私一人にやらせて。お願い、これぐらいできないと…母さんに、顔向けできないと思う。私は母さんの子供だから」
「……なら俺もやりたいことがあってな。勝手にさせてもらって悪いがフェイトに付いて行かなければよいのであれば、少々好きにさせてもらうぞ」
「アンタ…!!フェイトに助けてもらったくせに勝手なことばかり…!!フェイト?ホントにいいの?」
「いいの、アルフ。大丈夫。ちゃんとジュエルシードを回収して戻ってくるまで買い出しとかお願いね?」
「う、うん。フェイトがそういうなら……お前!!余計なことするなよ!!もしそれがフェイトのためにならないなら…!!」
「分かっている。分かっているさ。これはこれで俺にとっても大事なことなんでな。命の恩人の悲願を無碍にするようなことはせん」
「じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
「ああ」
・
・
・
「で、結局付いて行くのか」
「当たり前だ!!あの子を助けるのが私の役目だ!!買い出しくらいお前がやっておけ!!そのくらい時間あるだろ!!」
「わかったわかった。俺に任せておけ。そう大した時間がかかる用でもないのでな」
「なんでアンタはそう偉そうなんだ!?あぁ、もう!!本当に腹が立つ!!分かってんの!?フェイトのこと!!」
「わかっているさ」
「ホントに!?」
「さっさと行け。俺は何も言わん」
「ふん!!もういい!!私はもう行くからね!!」
「さて…」
◇
「恭也、お前やなのははよくすずかの家に招待されるのか?」
「まぁ…そうだな。すずかちゃんやアリサちゃんが店にくるのと同じかちょっと少ないかぐらいには良く行くな」
「どんなところなんだ?」
「すずかちゃんの家にはね猫がたくさんいるの。猫天国なの」
「まぁ、後、とてつもなく広い」
「敷地がか?邸宅の大きさがか?」
「両方だ。だから、街中にはそんな家があるはずもなく。街からは少し外れたところに立っている」
「なるほど」
恭也、デフテロス、なのはは月村家へ行く道中、バスの中でこんなとりとめのない話をしていた。
「しかし、それ持っていくとはどうしたんだ?」
恭也が目で聖衣箱を指していう
「一昨日の帰りにすずかやアリサ、なのはから俺のことを聞かれてな。様々な質問の中、なのはがこれがうちの国ではこれが当たり前なのか質問し、それにほかの二人が食いついたというわけだ。そして今日招かれたのは、一昨日の続きと言うわけだ…」
「なるほどなるほど、俺もその話には興味があるな。俺も相席しても?」
「三人から許可を得られたらな」
「私はいいと思うの」
「後は二人というわけだ」
「あ、けど忍さんにも許可をもらわなくっちゃね」
「いずれにせよ三人だったな」
「そうみたいだが…うーむ、微妙だな」
「いずれ、コイツについても俺についても話すつもりではある」
…それにアイツらには多少フェイクを入れるからな。と、恭也にだけ聞こえるよう言う
「なら、今日聞く必要はないわけだな。…おっと次で乗り換えだぞ。準備をしておけ」
「わかった」
「はーい」
そう返事すると二人はそそくさと財布を取りだしたり、荷物をいつでも背負えるよう準備をする。
・
・
・
「聞いてはいたがまさかここまでとは…」
月村家についたデフテロスが思わず声を漏らす
「言ったろ、とにかく広いと」
デフテロスの様子を見てそういうと恭也は呼び鈴を押す
「お待ちしておりました」
数秒もおかずに玄関の扉が開く。彼女はこの家のメイド長であるノエルだという
「お招きに預かったよ」
「こんにちわ~」
「今日は世話になる」
「なのはお嬢様、恭也様、デフテロス様。ようこそいらっしゃいました。では、こちらへ」
各々が彼女に挨拶すると大きな吹き抜けが設けられたエントランスへと通される。ノエルが言うにはアリサやすずか、忍は既に温室に集まって茶会を始めているらしい。そして広い月村家の邸宅をノエルの下、案内を受けるが、敷かれている絨毯や飾られている調度品や絵画を始めとした美術品を見ると素人目に見ても、上等だとわかるものばかりあり、月村家がどれほど裕福であるかを語られずとも推し量ることは十分できた。
「こちらのお部屋が皆様がいらっしゃいます部屋です、どうぞ」
ノエルの傍らにはガラス張りの扉があり、そこからすずかやアリサ、忍が茶を楽しんでいるのが見える。
部屋には鉢や花壇に植えられた観葉植物がいくつか置かれており、壁一面に張られたガラスから陽光を目いっぱい浴びることができると同時に外の景色が楽しめるようになっている。温室とテラスを合わせたような造りの部屋であった。また、すずか達の膝上や、足元には無数の猫が気ままにのびのびと過ごしていた。
「あ、なのはちゃん、恭也さん、デフテロスさん」
すずかが彼らに気付いたようでこちらに声をかけてくる
「なのはちゃん、いらっしゃい」
忍の傍らにいたもう一人のメイドもなのはに声をかける。ファリンと言ってすずかの専属メイドであるらしい
「恭也、いらっしゃい」
「あぁ」
忍も恭也の姿を認めると傍らまで寄り、彼の腕に抱きついた
「あ、それがなのはの言っていた箱?」
アリサが彼の背負っている被せ布が掛けられた聖衣箱に気付く
「そうだ」
「おぉ~、なんか楽しみだね」
「なのはちゃんもその中を見たことがないんだよね」
「うん」
「俺は見たことがあるぞ」
「あら、そうなの?何があったの?」
「なかなか興味深いものだったなぁ…まぁ見たのは少し前だし、ここにいれば見せてもらえるだろ」
「ふーん、それはちょっと興味あるわね」
部屋にいた皆が彼に詰め寄りそうな雰囲気の中、それを断ち切り、ノエルが三人に席に座るようすすめ、さらに尋ねる
「なのはお嬢様、恭也様、デフテロス様、お茶はこちらにお持ちしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ」
「はい、お願いします」
「どうする?」
「うーん、それの中身を見るまではここにいようかな」
「じゃあ、こっちに持っていただけますか?」
「ご用意するお茶は何がよろしいでしょうか?」
「なんでもいいよ」
「私も~」
「任せる」
「はい、かしこまりました。ファリン」
「はい、お姉さま」
オーダーを受けたノエルがファリンを呼び、主人とその客人に向けて礼をして部屋を後にする。
「じゃあ、見せてもらっていい?」
待ちきれないようにアリサが言い、何も言わないすずかもなのはもその意識を聖衣箱に集中しているのがわかる
そんな彼女らの様子を見て彼は被せ布を取る
そこから現れたのは黄金の重厚な箱。その各面には十字や太陽を思わせるレリーフが施されており、背面には肩にかけるための革のベルトが取り付けてある。その中でも特に目を引くのが翼を持つ二人の子供の彫刻である。その精巧なディティールと輝き、材質から見るものにそれが宝物を収める宝箱でありながら、それ自体も宝であるかのような印象を与える
「…凄いね」
「うん」
「へぇ…」
「早く中を見せて!」
「あ、ユーノ君?そうだね、ユーノ君も見たいんだね」
なのはの鞄に入れられていたユーノも肩から床に降りてきて聖衣箱の傍らに座り込んだ。
「では、お願いします」
「私も気になる」
「お兄さん、お願いします」
「……」
彼はその視線、その声を受け、意を決したように聖衣箱に手をかける。
すると、聖衣箱が四方に展開し、その中身を露にする。
そこに鎮座するは四つの腕を持つ黄金の彫像
善の面、悪の面を持つ二人が背中合わせに佇む黄金のオブジェ
その姿は決して相容れないことのない人の
黄金の輝きを、陽光の煌きを放つ全88星座の頂点の座す最高の聖衣
「これは…?」
「
「ジェ、ジェミニ?」
「トゥエルブ・エクリ…ティ?」
「言われてみれば…そう、見えるかな?」
彼の説明についていけない幼少組は疑問符を浮かべて彼を見る
「星座はわかるな?」
「うん」
「はい」
「はいなの」
そんな彼女らを見やると彼はおもむろに語り始める。
「星座には88星座あり、その中でも占星学上、特に重要視される星座が12星座ある」
「何故かと説明すると…まず、地球から見た空を一つの球体とみなして天球と呼ぶ。この天球を太陽が一年かけて天球を一周する通り道である黄道が関係してくるので重要視された訳だ」
「その12星座は黄道上に存在する13星座のうち、
「それらをまとめて通称、黄道十二星座と呼ぶ」
「黄道十二星座の名はそれぞれ
「あっ、ジェミニって」
「そうだ。日本語では双子座というのか…星座の織りなす形が双子が並んで座っている様に見えることから双子座と呼ばれている星座のことだ」
「つまりそれは…双子座をモチーフにした彫像ですか?」
「その通りだ」
「もしかしてこれと同じようなモノがこれの他に12個あったりするの?」
「いくつか種類がありその総数は88個ある。これは3種類存在し、
「…どうしてデフテロスさんがこれを持っているんですか?」
「俺が過ごしていた場所は少々特殊でな。ギリシャ神話に伝わるオリンポス12神の1柱・女神アテナを信仰していた。そこでは代々、伝統として教皇から守護星座を模した彫像を与えられ、それを守護することになるのだ」
「で、君が与えられたのがその双子座の彫像ってわけだ」
幼少組に向けて話していたところ横から恭也が入ってくる
「そうだ」
「なるほどな」
「ほぇ~」
「これって…いつ頃、造られたとかって分かってるんですか?」
「正確には分からんが俺が聞いている限りでは神代と聞いている。神代と言っても神話が吟じられた時代なのか神話の元となった出来事があった時代に作られたのかは知らんが…おそらく前者だろうな」
「神代って…もしかしてこれとんでもない価値があるんじゃないの?」
「そうかもしれんが…芸術的、歴史的価値というのなら俺は知らん。ただ、これを守るだけだ。本来ならここまで話すことはないのだが…隠していてもキリがないと思ったのでな。お前たちを信用してここまで話した」
「うぅ…思ってたよりずっと凄かったの」
「確かに箱って聞いてこんなのが出てくるってわからないわよ…」
「本当に…ビックリしたね…」
「さて、ここまでだ」
そういうとデフテロスは展開した聖衣箱を組み立てる。双子座の聖衣がその輝きが段々聖衣箱に覆われていき、最後に蓋が閉じられる。
「えっ!?」
「なんだ?不満か?」
「もうちょっと見たかったっていうか…」
「お前たちの気になっていたモノの正体を教えたのだ。これで義理は果たしたぞ」
「それはそうだけど…」
「まぁまぁ、今日はお兄さんといっぱい話ができるんだからそっちを楽しもうよ?ね」
「そうだよ、アリサちゃん」
「はーい、お待たせしましたぁ~」
「お待たせしました」
ファリンとノエルがお盆にクッキーとティーポッド、カップにソーサーといった茶菓子や茶器を乗せてやってきた
「ごめん、ノエル。これから部屋に戻るから、そちらに持ってきてくれないかしら?恭也もいいでしょ?」
「あぁ」
「かしこまりました」
「じゃあ、行きましょう。恭也」
そういうや否や忍は恭也と腕を組んで温室から出て自室へと歩いて行ってしまった。
一方、ユーノは聖衣箱から目を外した先で部屋に放たれていた猫と目を合わせてしまい、悟る。あれは自分のことを獲物としてみていると…そんな気配を相手も察してか後ろに歩を進めるユーノにじりじりと歩み寄る。
「見るだけ見て、行ってしまったな」
部屋から出ていく、恭也と忍、そのあとに続くノエルを見送りながら呟く
「まぁ、お姉ちゃんは恭也さんと少しでも長く居たいみたいですから…本当に、恭也さんと一緒にいると幸せそうなんですよ」
「本当にラブラブだね、なのはのお兄ちゃんとすずかのお姉ちゃんは」
「お兄ちゃんも忍さんと会ってからとっても優しくなったんだよ」
「優しくなった…か」
そうやって恭也達を見送る足元ではユーノが己の命を懸けた生存競走を猫と繰り広げ始め
「はい、お待たせしました、こちら苺ミルクティーとクリームチーズクッキーでーす。ってキャッ!」
なのはたちが囲むテーブルにトレイの上に用意したものを持ってくるファリンの足元を走り回り、その様子を見て本能を刺激されたほかの猫もこぞってハンティングゲームに参加するという何とも楽し気な事態に陥る。
走り回る猫たち(とフェレット擬き)の中心にいるファリンは、足元で走り回る猫たちを踏まないよう歩を進めようとするが、結局進めないまま足踏みを繰り返すことになり、ハンティングゲームの参加猫が増えるにつれその足元が覚束なくなっていき、仕舞にはバランスを崩し大きくふらつく
「ファリンッ!!危ない!!」
ついに転げそうになるファリンに向けてすずかが叫ぶ。
淹れたての紅茶と陶器のカップとソーサー、砂糖瓶にクッキーを乗せた皿が
彼女の持つトレイの上に載っているのだ。
彼女が倒れたら、盆の上の物が全てぶちまけられることとなる。
そうなってしまえば、ファリンを始めにすずかやアリサ、なのはも紅茶を被り火傷や陶器の破片で肌を切ってしまう可能性がある。しかも、それを想像することは今の状況を見た者には予想することが余りにも容易であった。
「わっ、わわ!!」
完全にバランスを崩した彼女を見て、もう駄目だとそこにいた少女たち全員が目を閉じ、身を強張らせる…がいつまで経っても何も聞こえない
「あ、ありがとうございますぅ」
ファリンの誰かに向けられた礼を言う声を聞いてやっと、少女たちは恐る恐る目を開く
少女たちが見たのは左手の上に茶器と茶菓子の置かれたトレイを持ち、右腕をメイドの腰に手を回し彼女を抱く少年であった。
「何をやっているのだ。お前もユーノも。全く…見ておれんな」
「キュウ…」
「ごめんなさい…」
少年はいつの間にかなのはの肩に乗っていたフェレットを見やりながら、溜息と共にそんな言葉を吐く。そうして、ファリンがしっかりと立たせてから、彼はすずか達が囲むテーブルに茶器と茶菓子を手際よく並べていく
「あっ、それは私が…」
「……」
「うぅ…無視しないでくださいよぅ」
「……」
自分の仕事を取られた形にあるファリンが彼に向けて自分がやると声をかけるが、それが聞こえていないかのように彼は黙々と配膳を進めていく
「あ、ありがとうございます」
「おぉ~、結構様になってるわね」
「そういえばお兄さんはもうすぐお店を手伝ってくれるらしいからその練習がしたかったのかも」
「あら、そうなんですか」
「へぇ~そうなんだ」
「さて、こんなものか」
配膳終えたデフテロスはトレイをファリンに返し、今まで空けていた自分の席に着く
「客人の身分で勝手して済まんかったな」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりも…あの時、結構離れてましたよね?デフテロスさんとファリン」
「もうダメかと思ったの…」
「でも、やっぱり不思議だよね。ま、今日はそういうのを含めて聞く会だからね。そろそろ始めない?」
「そうだね」
「わーい」
「そうだな、まずは…この間、答えることが出来なかった事から答えていこう」
・
・
・
「あらかた、質問は出尽くしたみたいだな」
「うーん、そうですね」
「ちょっと待って、今考えてるから」
「私はもう満足したかな」
少年少女が談話を楽しんでいるのは最初に通された温室ではなく、門から玄関まで続く大前庭に用意された茶会場であった。
用意された紅茶を切らした時、もっと日当たりの良い気持ちいい場所に移動しようというすずかの提案に皆が賛同した為である。
少女たちは紅茶やクッキーに手を伸ばしたり、膝に猫を乗せ撫でたり、じゃれる様子を愛でたりと彼の話を聞きながら思い思いに過ごしていた。
そんな中、何かが膨らんでいく気配を、それもかなり近くに感じ、なのはとユーノの方を見やる。なのはとユーノも互いに目配せをしていることから彼の感覚に触れたモノが彼女たちの求めるモノと同じだと確信する
―ジュエルシードか!!
なのはは表には出していないが内心狼狽えているだろう。ユーノを抱きながらどうしたらいいのかユーノと念話してどうにか切り抜けようとしているのだろう。すると、ユーノが彼女の手からスルリと抜け出し敷地の奥の方へと走り去っていく
「あっ、待ってよ。ユーノ君!」
なのはもユーノの意図を察したのであろう。アイツを追うことを口実にジュエルシードの元へ向かおうとする。それを見て
―俺も行くか
そう思い立ち、彼は席を外そうとするが、少し離れた場所から振り向いたなのはが彼に「大丈夫だよ」と目で語り掛けてくる。その眼は強い意志が映っており、それを見て上げた腰を下ろす
―大方、俺のために用意された席だから楽しんでほしいとでも思っているのだろうな
・
・
・
それから約10分の後、ジュエルシードの影響を受けたモノを見つけたのだろう。少々、離れた空間に違和感を覚える。周りへの影響、被害をユーノが結界を張ったのだろうか…
デフテロスはなのは達とずっと行動を共にしてきたためか、魔法というものの放つ特有の気配をはっきりと認識できるようになっていた。手伝いを始めた当初は身近にあったとしても靄がかかったかの様なあるのだか、無いのだか判別できているともできていないともいえる程しか知覚できなかった。それをなのはとユーノの二人だけしかその気配を感じたことがないとはいえ、二人の内どちらかが魔法を使っているのか、どのような魔法を使ったのかも、もはや彼には手に取るようにわかる
だからこそ感じる、今まで感じていたなのはやユーノとは違う第三の魔導士の気配を、それも明確な目標を持った魔導士の気配を。
―おそらく、ジュエルシードを狙う不埒な輩か…ユーノが言うにはなのは程の魔導士はそういないというが、どう見積もっても同格以上。もし、実戦経験や魔法の扱いがなのはよりも上だとしたら…
「すずか、アリサ」
同じテーブルを囲む少女たちに呼びかけ、そして席を離れる断りを入れる
「少し、なのはを探してくる。ついでにユーノもな」
「はい、どうぞ。あっ、ファリンを付いて行かせましょうか?デフテロスさんはここの勝手がわからないでしょうし」
「ここのお庭は広いからそうしてもらった方がいいんじゃないかな?」
「私も今は手が空いてますし、お手伝いできますよぉ~」
すんなりといくと考えていた彼の思惑は思わぬ伏兵によって拒まれる。彼女らは善意から手伝いを申し出ているのであり、その上、その提案自体は至極まっとうなものである故、断る理由として使えるカードはどれも弱く、その数も少なかった。
結局、切る札の無くなった彼は彼女たちの好意を「いらん」の一言で一蹴し、押し通し、無碍にしてしまうのだが…
◇
「Photon Lancer Full Aut Fire」
「Wide Area Protection」
ジュエルシードを巡って少女が杖を挙げる。一人は金色、一人は桃色の魔力を放ち、互いの矛と楯をぶつける
「魔導士?」
金色の少女は巨大化した猫を足場にしているなのはを認識し、彼女の防御範囲にかからないジュエルシードの恩寵を受けた猫の足元を撃つ
その閃光の槍を受けた巨猫はその痛みからバランスを崩し、砂煙を巻き上げて倒れる。
「Flier Fin」
なのはは足元に桃色の翼を広げフワリとそれの前に降り立つ。レイジングハートを正眼に構え、樹木の枝先に佇む斧槍を持つ少女を睨む。金色の少女も無機質な瞳で視線を返す。
「どうしてこんなことするの!?」
「同系の魔導士…ロスト・ロギアの探索者か」
金色の少女が呟く
「あなたもジュエルシードを集めているの!?」
「バルディッシュと同じインテリジェントデバイス」
なのはの言葉など届いていないかのようにただ彼女はなのはを分析する
「バル…ディッシュ?」
なのはもまた、彼女の持つレイジングハート以外に初めて目にするデバイスに目を奪われる
「ロストロギア…ジュエルシード!」
「Scythe Form」「Setup」
明確な敵意を発し、彼女の手にした斧槍が変形・展開し金色の刃を持った鎌と化す
「申し訳ないけど…頂いて行きます!!」
そういうや否や、なのはへ向かって鎌を振りかぶり突進する
「Evasion」「Flier Fin」
少女の足へと迫る凶刃を空へと回避する
「Arc Saber」
追い打ちをかけるように上空へと大鎌を振るい金色の魔力刃を飛ばし、弧を描いて彼女へ高速で襲い掛かる
「Protection」
その刃は少女の元で爆煙を上げて炸裂するもレイジングハートが展開する防御壁に阻まれ衝撃も威力も一切、届いていなかった
なのはは煙によって視界が曇ることを嫌い、さらに上空へ舞い上がる。体勢を整えて、緑の生い茂る地上を見下ろす。
―あの子は…!?
未だに烟りの晴れないなのはの真下から急接近する黄金の閃光。大きく振りかぶられた大鎌の凶刃が迫る
「キャッ」
すんでのところで黒い柄のサイスを受け止める
「……」
鍔競り合いをする形となり、互いの顔と顔、眼が、視線が交差する
金色の少女はその刃をなのはの体に届けるために、なのはは迫る凶刃から少しでも身を離す為に、力を籠め続ける。ジリジリと少女の刃が迫り、グググッとなのははそれを持ちこたえる
無機質な紅い瞳がなのはの眼を見据え、強い意志と疑念を持った青い瞳が少女の眼を睨む
「なんでっ!急にこんな…」
なのははその目に圧倒されぬようしかと睨み返す
「答えても…多分、意味がない」
その言葉を皮切りに拮抗していた力は弾け、両者は距離を取る
「Device Form」
「Shooting Mode」
無機質な電子音声が響き、黒白の愛機が形を変える
「Photon Lancer Get set」
「Divine Buster Stand by」
なのはは砲身を向け、少女はその矛先を向ける
決着をつける技を放つ一瞬、勝負の決するウィニング・ショットをすぐにでも撃てる状態で僅かの間、膠着した時間が訪れる
―この子は…綺麗な瞳をしてる。けど…何にも見せてくれない。語りかけてくれない。ただ…秘めた強い意思しか感じない
なのはは、張りつめた空間の中でそんなことを思う
少女たちが構え、照準を合わせ、互いの眼にお互いの姿しか映らないような緊迫した状況を作り出して数十秒が経つ
金色の少女の背後、何かが蠢くのが見える。それはなのはと少女のターゲット。ジュエルシードの力を一身に受けたモノ。そして、すずかの寵愛を受けた子猫
―あっ、あの子…!!
一瞬、けれど確かになのはは子猫に気を取られ、集中を欠いた
なのはの一挙一動を見逃さぬよう集中していた少女がそんな隙を見落とすハズが無かった
「ごめんね」
少女がなのはに向けて呟き、必死の一撃を放つ
なのはがそれに気づくも既に遅く、すでに放たれた砲撃に対して遅れながらも迎撃する判断を下す余裕も、そんな状況を打開する術もなかった。
黄金の凶弾が弾け炸裂する。その威力を示すかのように多くの砂埃、土煙を巻き上げ着弾点にクレーターを残す。
「なのはっ!!」
草葉の陰から二人の勝負を見守っていたユーノが思わず声を上げる
その声には気付くも十分な手ごたえを感じていた少女はそんなユーノを一瞥して、背後を向く
その目的はもちろんジュエルシードの封印・収集
「…バルディッシュ」
「Sealing Form」「Set up」
その声に応え斧槍は三度、形を変える
「捕獲!」
電撃を纏った魔力弾を地面に撃ち、大地を削りながら目標へと到達。封印の機能を組み込まれた雷撃に打たれ、巨大な獲物からジュエルシードが宙に排出される
「Order」
「ロストロギア、ジュエルシード、シリアル14。封印。」
「Yes sir」
黒杖から天に雷撃が放たれ、暗雲をもたらす。その暗雲から無数の光の槍が地に降り注ぎ、青き宝石を光の檻で囲う
「Sealing」
そう電子音声が言い放つと暗雲に魔法陣が浮かび上がり、檻へと極太の光柱が落ちる。周囲に白い閃光が満ち、それが晴れると宙には封印処理の施されたジュエルシードが、地には倒れた子猫が残されていた
少女は青き宝石に杖を向ける
「バルディッシュ」
「Captur「スマンな、それは貴様が遊んでもいい代物じゃない」
突如、少女の面前の空間が割れ星海が目の前に広がる。そこから陽によく焼き込まれた腕が伸び、青き宝石をその手に掴む
◇
―来るっ!!
なのははこちらに向かってくる黄色い閃光をずっと見続けることができずに目をつぶってしまい、いずれ来る衝撃に身を強張らせる。
―……
轟音を響かせ、大地の土砂が巻き上げられていくのを肌で感じる。しかし、自分の身に伝わるはず衝撃がいつまでたってもこない
―……?あ、あれ?
おそるおそる、うっすらと瞼を上げる。目の前は、いや、目の前に限らず周囲は土色の煙幕によって覆われている。
―何も見えない?違う
黒い、いつか見た影がうっすらと煙幕に映る
「少し休め、集中を切らした貴様の負けだ」
そんな声が聞こえると同時に影は目の前から消える
「ま、待って!!」
なのははその影に向かって手を伸ばす。しかし届かない。それどころか周りの景色に違和感を覚え始める
―まだ明るい林にいたはずなのに…
残っていた煙も完全に晴れ、なのはが目にした光景
それは黒地の宙に様々な星々が彩を放つ空間であった
「お、お兄さん…?」
信じられられない光景を目の当たりにしたなのはは、直前に見た影の人物の名をこぼす
◇
―次元跳躍魔法?次元干渉魔法?
「何者だッ!!」
星海に浮かぶ腕の奥の暗闇に向かって叫ぶ!
「どういう意味だ!!私が遊ぶだと!?それは、私に必要なモノなんだ!!」
―怖い、こんな魔法は初めて…おそらく私よりずっと強い人
圧倒的優勢による競争者からの勝利、つつがなく成功した封印、あとは目標を回収するだけだったはずの予定から現れた未知。それが少女を恐怖させる
未知に相対する恐怖を悟られぬためか己を鼓舞するためか声を張り上げて叫ぶ
「姿を現せ!!」
星海から腕から先の体が、異次元空間を均された道を歩むように穏やかで規則的な歩調で少年が姿を表す。
その肌は腕と同じく浅黒く、その髪は鮮やかな群青色をしていた。その顔は陰ってよくは見えないがその奥から光る眼は鋭く少女を射抜く。
ジュエルシードを少女に見せるように掌を広げながら問う
「では、何に使うというのだ?こんなモノを。叶えたい願いでもあるのだろうが、こんなモノには頼らぬ方がいい」
―この人が…
「私は使わない…けど」
「けど?」
「どうしても必要なんだ!バルディッシュ!」
「Scythe Form」「Setup」
黒杖が展開して大鎌になる。それを振りかぶり、なのはに向かっていった時よりもずっと速く、まるで雷光のように…少年、デフテロスへ迫る
「話にならんな」
広げていた手を握り、もう一方の腕を振り上げようとする
その腕を始めとした四肢に橙色の光輪が嵌りそれ以上の動きが封じられる
「グッ!?」
茂みの中から爪の長い狼のような獣が顔を出し、叫ぶ
「やっちゃえ!!フェイトォーーー!!!」
「アルフ!?」
― 一人で大丈夫だって言ってたのに……ありがとう!!
少女は自分の使い魔の思わぬサポートを受け、少年へと突撃する
「ほう、貴様らの名はフェイトとアルフというのか」
星海の広がる宇宙、陽の差し込む明るい雑木林の境界に立つ少年は余裕を含んだ声で言う
―何か…何か、嫌な予感がする!!けれど…これが最大のチャンスだから、逃すわけにはいかない!!
「安心しろ、異次元を永遠に彷徨えとは言わん」
少年はいとも容易く四肢に嵌められた軛を砕く
そんな様子を見て狼が信じられないと言うように叫ぶ
「そんな!!」
―あれは単純がゆえに速度、硬度に特化しているのに…
何事もなかったかのように彼は再び腕を振り上げる。それは目に留まらぬほどの速さだったに違いない。少女の眼にはその動作がやけにゆっくりと感じられた。まるで避けられぬ死の恐怖を目の当たりにした時のように…その動作が緩やかに、しかし、強烈に目に焼き付く
―もうッ、止まれないッ
少女は勢いのままに少年へ大鎌を、凶刃を振り下ろす
「共に異次元の星海に呑まれよ」
真上に伸ばした腕を少年は振り下ろす
「
―体の…自由が…!!
少女の刃は彼に届くことなく宙を裂き、少女が息を呑む間もなく、そのまま少女の体ごと異次元空間に吸い込まれていく
アルフは信じられなかった。あのタイミング、あのスピードにいとも容易く反応し、苦も無く反撃に転じたこと。その反撃が未だに目にしたこともない未知の魔法、しかし、異次元に干渉するほどに高度なものだとはわかる。そんなものをデバイスも使わずに…いとも容易く!!
―ごめんよフェイト。私、フェイトを…守れなかったよ
必死に抵抗をしていたアルフも耐え切れず異次元の裂け目に呑まれていく
◇
―私は目の前で起こったことが信じられませんでした。
「
―そんな声が聞こえると私を包んでいた星々の浮かぶ黒い空間は一転して、背景のフィルムが切り替わったかのように、ついさっきまでいた雑木林に変わっていました
―目の前にはお兄さんがいました。広場でお茶を飲んでいた時のまま髪も服も全く乱れていません。何も変わっていませんでした。けれど、纏う雰囲気がどこか別人のように感じられて仕方ありませんでした
―お兄さんの目の前には扉のような形の穴?がぽっかりと開いていました。そこにはさっきまでいた宇宙のような夜のような世界が広がっていました。
―お兄さんは扉の両淵に手をかけて、中を覗き込み、その奥へ話しかけていました。
◇
―フェイトとアルフといったか…異次元を彷徨った先、貴様らが行きつく先は海鳴市という都市だ。そこの一番高い建物の屋上に送り込んでやる。そうすれば、だれにも見つかるはずないだろう。そこからは空を飛ぶなりなんなりして帰るがいい
異次元の奔流に流され自由に身動きできないまま、フェイトは首と眼を動かして声の主と思われる少年の方を見る
―頭の中に声が聞こえる…念話?
―やっぱり、顔が、よく見えない
長方形型にぽっかり開いた異次元の境界に手をかけ、こちらを見下ろすデフテロスの顔は、明るい陽光が暗い異次元に差し込む間に彼が立っているため逆光になって見えない
―ジュエルシードのことなど忘れて達者に暮らせ。俺ともう一度争いたくなければな…それでも、もう一度、貴様がジュエルシードを追い求め、俺と相見えたその時は…覚悟しておけ!!
彼はそう言い残すとくるりと背を向け、ちらりとこちらを見やると光の中に消える
しかし、その一瞬、フェイトは確かにその顔を見た…!!
「そんな…!?」
彼の後を追うように次元の裂け目も暗闇に馴染むようにスゥッと消えてなくなる
◇
なのはの方を向いたデフテロスが彼女の顔を見て声をかける
「なのは、何か言いたげだな?」
「う、うん」
「だが、それは後にしろ。すずかやアリサが待っている」
「ユーノ、貴様もだ。さっさと来い。もたもたするな」
「……はい、わかりました」
とぼとぼと彼の後ろを歩く、なのはとその肩に乗るユーノ
明らかに落ち込み、動揺し、恐怖している
謎の少女に一方的にやられたこともあるが、それ以上に自分達の先を歩く未知に…
「そんな顔をして戻るつもりか?すずかやアリサを今まで以上に心配させてしまうぞ?」
「えっ!?」
その言葉に弾かれたように俯いていた顔を上げる
「お前がいなくなってから相談されたのだ。最近、お前が疲れているような顔をしていると、親友だと思っている自分たちに何も相談もせずに一人で抱え込んで…自分たちをどう思っているのか?と。そんな様子を見て何もできない自分たちがどれだけお前のことを心配しているのかと」
「そんな…」
―すずかちゃん、アリサちゃんが…そんなことを
「お前は今、ジュエルシードの回収に失敗した。が、今日、お前は親友の家に招かれているのだ。全てを話せとは言わん。だが、この時間ばかりは素直に楽しめ」
「…はい」
「この事はあいつ等からも口止めされていたわけではないからな。もっと欲張れ、我儘になれ。一人と一つだけの世界は狭く寂しいぞ。顔をあげろ、前を見ろ、友と思う存分語らい、楽しめ。ほら、見えてきたぞ。あいつらの顔を見ろ。あんなに心配してくれている友がいるのだ。大切しろ」
鬱蒼とした木々が立つ敷地を抜けた先、こちらを見る少女たちがいる
「うん!!」
アリサとすずかがこちらに駆け寄りなのはに抱きつかんばかりの勢いでなのはに詰め寄る
「なのは!どこまでいってたの?何かあったんじゃないかってとっても心配したんだからね!?」
「そうだよ、もしかしたらユーノ君を追っている間に迷ったんじゃないかなって…」
「ごめんね、すずかちゃん、アリサちゃん。ユーノ君が木に登ったきり、降りてきてくれなくて…ほら、ユーノ君も二人に謝ろ?」
「きゅう…」
「それでね、私が困ってたらお兄さんが来てくれて、ユーノ君を捕まえてくれたんだ。多分、お兄さんが来てくれなかったらもっと遅くなってしまってたかも」
「デフテロスさん、大活躍ですね」
「まぁ、男の子で私たちより年上ならそれくらいできて当たり前よね」
「さて、もうそろそろ時間が無くなってきたな。どうだ?何か聞きたいことでも増えたか?」
彼はなのはに詰め寄った形になっている二人の背中を押しテーブルの方へ誘導する。並んでそちらへ歩く。そして、なのはに聞こえないよう小声で、
「なのはにはお前たちの気持ちを伝えておいた。あいつはその気持ちは嬉しく思っているし、お前たちを大切にしている。だから、もう少し待ってやってくれ。不満が溜まれば俺に当たってくれて構わんから。な?」
「うっ、言っちゃったんだ…恥ずかしいな」
「けど、本当にありがとうございます」
「このぐらいどうってことはない。お前たちとなのはの間に勝手に入って勝手にやっているだけだ」
そういって少女たちは前庭に用意された席に着き、茶会を再開する。彼女たちは時間になるまで、少しぎこちないながらもそれを精一杯楽しみ、満面の笑みを咲かせた。
◇
―バチッバチバチッ
閉じたカーテンを引くように満天の星の浮かぶ宙空間が裂かれ、星海に浮かぶ金色の少女と橙色の狼に向けて
「奇遇だな、フェイトにアルフ。こんなところで貴様らに会うとは思わなかったぞ」
そんな言葉を投げかける男がいた。
男はマンションの一室に備え付けられていたのであろうソファーに深く腰掛け、少女とその使い魔を見下ろしている。口元には笑みを浮かべており、その言葉が心にも思っていないものだとわかる。
「……どういうこと?」
そんな彼をいつもは無機質な紅い瞳に動揺とも怒りとも悔しさともいえぬ、それらの混じり合った色を浮かべ、キッと睨み問いを投げかける
「どういうこと…とは?」
「私の邪魔はしないっていってたのに…!!肌の色まで変えて、顔を見せないようにして!!わたしのやってることを遊びって言って!!収集の邪魔して!!こんなところに閉じ込めて!!」
異空間に閉じ込められていたせいか少女は若干錯乱しているようだ。彷徨っている間、育てた不信感を、溢れ出る感情を少年にぶつける
「落ち着け」
彼と少女を隔てるセンターテーブルを避けて一歩一歩少女へと歩み寄る。彼が一歩フローリングを踏みしめる度、異世界空間がマンションの一室へと模様を変える
「落ち着いてなんか…!!」
「とりあえず、座れ。ここがどこだかわかるか?」
男はピタリと少女の額に人差し指をあてる。焦点のあっていなかった瞳は光を取り戻す。そのまま少年は少女を、いつの間に用意したのだろうか、背後にあった椅子にストンと座らせる。少年のその肌色は穢れたことがないかのように白く、その髪色は群青の夜空の思わせる。
「う…うん。ここは…私たちの部屋」
少女があたりを見回していう
「いいだろう」
少女が平静を取り戻したのを見て、またソファーに腰かけ、テーブルの上にあるティーポッドからカップへ紅茶を淹れ、フェイトの前に置く
「飲め、体が温まるぞ?」
「えっと…」
フェイトは事情を呑み込めないまま、あの空間に放り込まれた経緯を説明しようとするが、考えがまとまらず、言葉に表すことができない
「話を聞かぬともわかる。俺をお前を邪魔した輩だと勘違いしたのだろう?肌の色以外、容姿、身長、体型がそっくりでよくよく思い出してみれば、声すら同じだった。だから、どう考えても俺だと…」
「なんで!?」
「簡単なことよ。あれは俺の半身、双子の弟だからだ。」
「ふた…ご?」
彼はフェイトの顔を見て、心底、愉しそうな笑みを浮かべる。彼の声には心が浮き立つのを隠しきれていない
「名はデフテロスという。どうだ?あいつは?無口だが良い奴だったろう?」
「いい奴なもんか!!」
気が付いたアルフがフェイトの足元から吠える
「どうしてだ?」
「フェイトが勝ち取ったジュエルシードを奴は奪い取ったんだぞ!?それに偉そうに講釈たれた後、私たちを異次元に放り投げやがった!!」
「命が奪られなかっただけマシだな。アイツがその気になればお前たちなど塵も残らぬだろうし、永遠に異次元に閉じ込めておくこともできただろうに……わざわざ、出口を設けてやるなど、中途半端で甘いやつよ」
「というか、お前!!アイツと同じことができるのか!?」
「もちろんだ、アイツにできることは俺にできぬはずが無い」
「なっ…!!それに、あのチビにアイツが付いていることを知っていたのか!?」
「しかし、お前達の競争者にアイツが付いていることなど俺が知るはずもないだろう?アイツがこの世界に墜ちていることは確信に似た予感があったのは事実だ…が」
「まさか、私たちの競争者に付いているとは露とも思っていなかった…?」
「その通りだ」
フェイトが彼の言葉の続きを述べる
「まさか、この世界でも
「あなたにお願いしたいことがある」
フェイトがカップを手に彼の顔を、目を見て言う
「俺はお前の願いを叶えてやると言ったな?あれは今も有効だ。さぁ、俺に命令を寄越せ」
「分かりました。あなたには今後ジュエルシード探索・収集に同行してもらいます。そして…貴方の弟さん、デフテロスが介入してきた時、その相手をしてください」
「了解した。貴様の命令を、願いを、この俺が叶えてやろう」
「……本当に…いいの?」
フェイトが恐る恐る、彼の顔を伺う
「……お前は本当に甘いな。そんなところも
「お前!!ガキのくせに偉そうに…!!」
彼の傲岸不遜ともいえる態度にアルフが噛み付く
「大丈夫だから、アルフ落ち着いて…」
「年長者として一つお前に助言をくれてやる」
「……」
「簡単なことだ。自分の願いに対してどこまでも突き進め。どんな手段をとってでもだ!!」
「……」
「さっきの相手が俺の弟と聞いてデフテロスに俺をぶつけるという案は中々良かったぞ?合理的で容赦がない。その後躊躇したのはまだまだ心が、我が弱いな。もっと己の輪郭を強く持て」
「覚えておく…これからお願いね、アスプロス」
「あぁ、頼まれた」
「そういえばさぁ、お前の後ろにある黒い箱はなんだ?」
アルフが鼻先で少年の座すソファーの傍らにあるモノを指す
「これか?これはな、俺が墜ちた場所にあったモノでな。ここに来たとき、もしかしたらと思ってそこに戻ってみたのよ。俺の予想が当たっていたわけだ。コレがあれば、奴には負けることはない」
そういって月明かりに照らされるソレは赤紫がかった、まるで冥界の鉱石を思わせる冷たく暗い金属の箱が鎮座していた