魔法少女リリカルなのは GEMINI   作:よね

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すみません、本当に難産で正直この話はある程度マシな形にはなってると思うんですが、ちょっと作者自身でも表現やキャラの掴み方?に違和感を覚えていて自信が無いです
そこがわからないのがまた難儀なのですが…このような駄文で申し訳ございませんが楽しんでもらえたら幸いです

そして、もしおかしいと思うところがあれば指摘をよろしくお願いいたします


第5話 ここは湯のまち、海鳴温泉なの!Another (前編)

 フェイトとなのはが邂逅した日の夜、高町家の一室ではなのはとユーノがベットの上で向かい合っていた

 

 「なのは、話があるんだ…」

 

 「…なぁに?ユーノ君」

 

 「デフテロスさんについてなんだけど…」

 

 それを聞いたなのはの顔が少し陰る。そして困ったような顔をユーノへとむける

 

 「…あ、やっぱり?」

 

 「あの時、一瞬なのはの反応が結界から消えたんだ。それだけは僕は保証できる。そういう機能が無い結界だけど、ついさっきまで感じていた気配が一瞬で消えるって違和感くらいわかる」

 

 「そうなんだ」

 

 「それに…あの人の反応なんて毛ほども感じなかったんだよ。突如現れて、フッと消えて。気配があったり消えたりを繰り返していた時もあった。だから、なのはもそれに関係あったのかなって?」

 

 「うん、私はね。もうダメだって思った時、気が付いたら宇宙にいたの」

 

 「う、宇宙?」

 

 「そう。教科書で見るような惑星や隕石がそこら中にあって…暗くて、けど、全く周りが見えないわけじゃなくて、それで、広くて果てなんてとても見えない場所」 

 

 「どうやってそこに行ったかわかる?」

 

 異次元移動魔法?けど、あの人が魔法を使えるとは思えない…

 

 「ううん、わかんない。目を瞑っちゃってたから。けど、元の場所に戻ったときはお兄さんの声で何だったかな?聞こえてきて…」

 

 「ANOTHER DIMENSION」

 

なのはの首元にあるレイジングハートが補足を入れる

 

 「そうそう、そういってから周りがガラリと変わっていったっていうか背景が切り替わって…」

 

 「元の場所に戻ってたんだね(アナザー・ディメンション…異次元?)」

 

 「うん」

 

 「そうだ!レイジングハートは何か記録してない?周りが変わったのなら記録ぐらいとってただろうし…」

 

 ユーノがレイジングハートに問いかける

 

 「Please little wait…」「Set up OK」

 

 レイジングハートはコアから光を放ち壁に記録していた映像を映し出す

 

 「わぁ、こんなことまでできるんだ!」

 

 それは土煙が晴れ始めたころの映像で確かに、視界が開けたそこにはまるで宇宙という言葉がふさわしい世界が広がっていた

 

 上下前後左右、往古来今、縦横のない空間。遠近感が狂うような光景。見渡してもどこまでも広大で天井も底も奥行も果てが確認できない。あらゆる存在や物を包容する無限の空間と時間…そう、宇宙がそこにあったのだ

 

 「こんな…こんな広大な空間を!?どうやって!?レイジングハート、ここに来るまでに何か魔力反応はあったかい?」

 

 「Nothing」

 

 ユーノは驚きを超えてこの事象を理解することすら追いつかないようだ

 

<ANOTHER DIMENSION

 

 「あ、ここからだよ!元の世界に戻るのは!!」

 

 なのはの話にあったように、まるで世界が切り替わるように周りの環境がガラリと変わっていく

 

 「…レイジングハート、この時に魔力反応は?」

 

 「Nothing」

 

 「そう…実際に目の当たりにしても信じられない…次元移動なんて…けど、僕の知っている次元世界じゃないし…うーん、わからない」

 

 「そんなに難しいの?」

 

 がっくりと項垂れるユーノに向けてなのはが尋ねる

 

 「うん。一応、次元を渡る次元間航行機や転送ポートっていうのはあるんだけど、人一人が出せる平均的なエネルギーよりずっと多くのエネルギーが必要だったはずだし、次元転送魔法も時間をかけて正確な座標や膨大な魔力を使ってするモノなんだ」

 

 「そうなんだ…」

 

 なのはは半分わかったような、半分わからないような顔で曖昧に頷く

 

 「次元転送魔法については個人で扱えるのは魔法を使える総人口の中の一握りのはずだよ」

 

 「それをあの人は魔法も使わずに…」

 

 「え?あれ?それってお兄さんは私を探しにくる直前まですずかちゃんやアリサちゃんと一緒にいたって…」

 

 「うん、時間も魔力もかけずに瞬時に空間を開き、行き来して平然な顔をしていたんだよ。デフテロスさんは…その上、自分も他人も同じように簡単に移動させられるなんて…。信じられないし、それに怖い」

 

 「怖い?」

 

 「なのはも覚えてるでしょ?彼が大怪我をしていたってこと。それにジュエルシードの影響を受けた犬を何らかの方法で撃退していたこと」

 

 「あっ!わかったよ!そんなお兄さんが怪我する程までになるぐらいの何かがあったってこと?」

 

 「そう。底の見えない人がいて、その人でさえ大怪我を負う何かがある。彼が急いている様子が無いからそれは排除されたのかもしれないけど…だから怖いんだ。そんな強大なものが来るかもしれないことも、彼が何を考えているのか分からないことも、何故そんな人が僕たちに協力してくれている理由も…」 

 

 「大丈夫だよ、お兄さんが言ってた通り、私たちをちゃんと守ってくれるよ。きっと。嘘をつくような人(・・・・・・・・)じゃないと信じてるからね。私は」

 

 「なのは…」

 

―なのはは凄いな…僕はそこまで信じることはできないや。悪人ではないだろう、けど善人であるとも思えない。こんな僕がいうのもおかしいけれど、あの人は、デフテロスは…得体が知れなさすぎる

 

 

 

 

 なのはとフェイトの邂逅から数日後、世間一般に言う連休が始まる前日、とある場所で男がたまらず漏らす

 

 「湯治とは良いものだな。極東の文化も中々のものだ…」

 

―湯治場といえば、聖闘士が傷を癒す場と言われるカノン島がそうであると聞いたことはある。しかし、そこはアテナの加護によりどんな傷であれ完治は見込めるが、聖闘士の強靭な肉体、最低でも溶岩に呑まれぬだけの小宇宙がければとても浸かっていられないとも聞く

 

―まぁ、傷ついているということは死地から生き延びたということであり、その時点である程度の小宇宙には目覚めているだろうが…

 

 「常人が傷を癒すにはこのぐらいが丁度良い。いや、神々の知恵も加護もなしによく発見したものだ」

 

 そこは海鳴市郊外にある温泉旅館 山の宿であり大浴場が自慢の地元では有名な温泉宿であった

 

 「フェイトがこの近くに微かとはいえ、ジュエルシードの反応を捉えたと聞いて先に来てみたが…やはり、未だ魔法の感覚というものが今一掴めんな。触れればわかるが、完全に知覚するにはもう少しかかるやもしれん」

 

 その男の名はアスプロス。フェイトから願いを受けた翌日から数日間そこでジュエルシードの探索の傍ら、この温泉宿で療養しているのである

 

―フェイトは別のジュエルシードの在処に目星をつけてから来ると言っていたが、まぁ、今晩か明日の早朝当たりだろうな…

 

 「ここは海鳴市の中でも郊外に位置してるからな。いつジュエルシードが暴走しても高い確率で俺たちが先手をとれる」

 

―だが、なんだこの胸騒ぎは…アイツ(デフテロス)の存在を確信したからか?それにしても、今日はやけに気が騒ぐ

 

 「そろそろ上がるか」

 

 少年は湯船から身を起こす。大浴場に設けられた大窓から差す陽の光を浴びる彼の身体はルネサンス期に制作された彫像のような美と力強さを内包し、原始的な魅力を発散していた。彼の純白の肌の上には塞ったばかりの傷や既に痕になってしまっている疵が大小様々縦横無尽に全身に刻まれている…が、彼がこの世界に墜ちた時にあった傷は全て治っており、再び開く恐れなど無いことが窺える

 

 「ここまで回復すれば十分だ」

 

 体の調子を改めて確認して呟く

 

―正直いうと数日前とはいえあの時の身体で戦ったとすれば、デフテロスの奴が万全だった場合、敗北を喫する可能性が万が一とはいえあった…

 

―だが、その一抹の不安は払拭された。いつ、奴とやることになったとしても後れを取ることはもはやあるまい

 

 彼は絞った手拭いで体についた温泉の滴を丁寧に拭き取り、浴室を出る。そして脱衣所にて浴衣を羽織っていく

 

―そろそろ、フェイトを迎える準備でもしておくか。アイツが素直に探索ついでに体を休めるとは思えんが、アイツは少し、肩に力が入りすぎてる。ここに来る頃にはもっと酷くなっているだろう。アルフは…心配せずとも良いだろう。アイツはこういうものが好きそうだからな

 

 そんなことを思いながら、彼は自室へ戻り、協力者達が来る時を待つ。

 

 運命の意図が複雑に絡み始める前兆を心の奥底で感じ取りながら…

 

 

 ◇

 

 

 「ふぅ」「あぁ…たまらんな」「おぅ、これは…」

 

 世間一般に言う連休初日、とある場所で男達がたまらず漏らす

 

 「温泉とは良いものだ。まったく、日本の文化はあなどれないな」

 

 そこは海鳴市郊外にある温泉旅館 山の宿であり大浴場が自慢の地元では有名な温泉宿であった

 

 湯に肩まで浸かる影は三つ。その主は士郎、恭也、デフテロスであった

 

 なぜ彼らが山中の温泉旅館にいるかというと、まずは高町家の連休の過ごし方と今回、デフテロスがこの旅についてきた経緯から話すことにしよう

 

 高町家では連休の折、翠屋を全てレギュラーやバイトに任せて家族水入らずで過ごし、英気を養う。そして束の間の休息を挟んだ後、再び来る日常に備えるのである

 

 その話を聞いたデフテロスは当然、高町家の留守を守るつもりでいた。世話になった彼らには家族水入らずの時を過ごし養生してほしいと思っていた。だがしかし、高町家の人々は優しく暖かかった。彼らはそんな彼を短い期間しかともに過ごしていないにも関わらず家族として受け入れていた

 

「旅先はいいところだからぜひ、君にも来てほしい」と士郎は言う

 

 恭也は相変わらず、「人の好意は素直に受け取れ」といつか聞いたことと同じことを言って、そのまま人の言い分を聞かずに向こうへ行ってしまう

 

 美由希は「遠慮することないって」と人の気も知らずに明るくに言ってくる

 

 なのはは「お兄さんが行きたくないならそれでもいいけど…できれば来てほしいかも」と目を伏せて遠慮がちに言うのだが、その小さな体からはどうしても来て欲しいという甘えるとも懇願とも判別のつかないオーラが立ち上るのが見て取れた

 

 意外だったのは高町家の中で桃子が高町家の中で一番強硬な姿勢をデフテロスに対してとり続けたことであった。なにしろ、来ないのなら高町家の一員とはみなさず、留守を任せるどころか衣食住の全ての補助を断ち切り、二度とこの家の敷居を跨がせないとまで言うのであった。流石に士郎やなのはが止めてくれたが…

 

 それ程言われたとしても高町家の家族旅行の誘いをデフテロスは固辞し続けた…が、たった一言のなのはの思い付きによってその頑なな意思は脆く崩れ去った。

 

 「うーん、それなら家族旅行じゃなかったらいいのかな?なんて…」

 

 その発言から急遽、なのはの親友であるアリサやすずかとその家族を誘った大旅行が計画されてしまう。

 

 残念ながらバニングス家と月村家の両家の親御さんは多忙だったため、断りの連絡が入ってしまったが。

 

 結果、バニングス家からはアリサ、月村家からは忍、すずかとその付き人であるノエルとファリンを含めた五人と高町家の五人にデフテロスを加えた計11人という大所帯で二泊三日を過ごす温泉旅行となったのであった。

 

 そうして、連休の初日、士郎と忍が運転する二台の自動車に乗って海鳴市郊外の温泉旅館 山の宿へとやってきたのである

 

 山の宿についてからは昼から温泉に入るのもよし、自然に湧き出す源泉を見に行くもよし、緑の豊かな山々を散策するもよしとした自由時間を各々で満喫することとなった。

 

 そして、デフテロスは士郎、恭也から折角来たのだからと大浴場まで連行され、彼らと裸の付き合いをすることとなったのである

 

 「どうだ?傷の調子は?」

 

 「だいぶ良くはなりました。そもそも日常生活をおくる程度なら既に気にならなくなってましたし」

 

 「そうか…やはり、若いな。そこまで回復が早いとは思わなかったよ。完治までは2ヶ月ほどかかると思っていたのだが…前々からその片鱗は見受けられたが、こう改めて目にするとね」

 

 「まぁ、日本には湯治という民間療法がある。ここの湯もそういった傷にはいいそうだからゆっくり入っていけ…俺はもう出るが」

 

 「む、早いな恭也」

 

 「あまり長風呂してしまうとこの後何もできなくなりそうでな」

 

 「そうか…そうかもしれんな。俺はこういうのはいくらでも浸かっていても平気だが」

 

 「じゃあ、お先」

 

 「あぁ」

 

 そういって恭弥は浴場から出ていく。その場に残されたのは二人

 

 「さて、都合よく二人きりになったところで聞こうか。何故、デフテロス君、君がそこまで頑なに誘いを固辞し続けたのかを教えてくれないかい?」

 

 「今になってどうしてそれを?」

 

 「今だからだよ。謳い文句はどうであれ君はここに来た。しかし、それが変わらなければ君は来るつもりはなかった。そして、なのはのあの言葉とその後の対応から思ったのだけれど、君がどうして高町家の家族ということが嫌だったのか。その心情と理由が知りたい」

 

 デフテロスは士郎の顔を見ようとするが湯気で隠れて詳しい表情を読み取れず、声も浴場に反響して感情を正確に読み取れない。しかし、ここまで来てしまった以上、彼の心情を隠す理由はもはや無く、彼は観念したようにその心中を吐く

 

 「家族とは血という強固で不変の絆で繋がっているものであり、その間には本来、他人である自分が入る余地も資格もないと考えるからだ」

 

 「ほう、余地と資格…か」

 

 「もちろん、血が繋がっていなくとも長い間苦楽を共にした者達のこと、夫婦や義兄弟となる程、互いのことを想い合い理解した者たちも家族と呼べる…が自分はそこまで長い間、貴方たちと同じ時を過ごしてはいないし、全てを打ち明けることも出来ていない」

 

 「なるほど、それで?」

 

 「そんな自分が高町家の一員であり家族であるとはとても烏滸がましく、不相応だと思えて仕方なかったからだ。だから家族旅行には来るつもりはなかった。正直、月村家やバニングス家まで巻き込むことになるとは思ってなかったのでな、そこは貴方たちに悪いことをしたと思っている」

 

 それを聞いた士郎は過ごしてきた時間と関わりから未だそう思われていることに深い悲しみを覚えたが、彼の背景を知らぬ為、無理にそれを否定することができなかった

 

 「家族だと一員だと認められるのに資格がいるのかい?君がなりたいといったわけでもなく、我々が君をそう認めているのだから」

 

 「その理屈だと、多数である片方が受け入れる意志さえあれば誰でも勝手に家族にされてしまう。だから双方の納得が必要なのだ」

 

 「難儀な性格をしているな」

 

 「……」

 

 「まぁいい。そういう考えがあって言ったのなら仕方ないな。我ながら甘いと思うがそんな君だから私たちも何故か君を信じたくなってくる。ま、この事は私から桃子に話させてもらうがね。まだ、少しご立腹のようだからね」

 

 「申し訳ない、俺が言うべきですのに」

 

 「いや、ちゃんと伝えてくれるだけありがたいよ」

 

 そう言って士郎も肩まで浸かっていた湯船から腰をあげ、出入り口に向けて歩いて行く

 

 「じゃあ、お先。ここにいる間もゆっくり日本の文化を堪能してくれたまえ」

  

 ハハハと笑いながら、士郎は浴場を出ていく

 

―むぅ、やはり俺は家族という言葉に過敏に反応しすぎているのか?それとも生れ出た環境が違いすぎて互いに理解できないのか…

 

 「しかし、熱い湯に浸かって治療するとは、てっきり神の気まぐれにより火山で傷を癒すことになったと思っていたのだが…理には叶っていたのか」

 

―少々温いが、常人にはこの程度がいいのだろう。むしろ、あの環境のことを考えるとあれに慣れてしまっていた俺の方がおかしいのだろう。けれど、だからこそいつまでもこの湯に浸かっていられそうだ

 

 

 ◇

 

 

 山の宿の外廊下、温泉から上がったばかりなのか浴衣を纏った少女たち、なのは、すずか、アリサが土産物や次どこに行くか等様々な話題に花を咲かせながら歩いていた。

 

 「ハーイ、チビちゃん達」

 

 その少女たちを呼び止める女いや娘がいた。その娘はオレンジがかった赤毛に額には紅い宝石を飾っており、顔から視線を下げると浴衣の下から激しい主張をする豊満な胸が目に入る。年齢は16・17歳くらいだろうか…その雰囲気、表情から明るい性格なのが見て取れるが、どこか野性味を感じる不思議な少女である

 

 「そうそう君だよね~?うちの子をアレしちゃってくれてるのは~?」

 

 そして少女たちに近づくとその中の一人、茶髪の少女なのはに対してまるで知り合いであるかのように話しかけてくる

 

 そんな彼女を怪訝そうな顔で見るなのは達。その表情からどうやら知り合いではなさそうであるが…

 

 「あの時は遠目からチラリとしか見えなかったけどあんまり強そうにも賢そうにも見えないね」

 

 少女たちの態度には気にも留めず、一人一方的に話しかけてくる謎の娘。そんな状況を見かねてかなのはの後ろにいたアリサが謎の娘となのはの間に割って入る

 

 「なのはのお知り合い?」

 

 アリサは後ろに庇ったなのはに謎の娘について尋ねる

 

 「う、ううん」

 

 それを聞いたアリサはいつも以上に強気な顔で彼女にいう

 

 「この子は貴女を知らないそうですが、人違いじゃありませんか?」

 

 そんなアリサをいや、彼女を見るアリサたちを一人一人、値踏みするように舐めるように見やる…と急にカラカラと楽しそうに笑いだした

 

 「いや~ごめんごめん、人違いだったかなぁ~?知ってる子によく似てたからさぁ」

 

 人違いしたことを恥じ、照れるように片手で頭をボリボリと掻きながら彼女は言う

 

 「そうだったんですかぁ」

 

 そうやって安心するなのはをよそになのはの脳内に声が響く。その声は紛うことなく目の前の女の声であった

 

―今のところは挨拶だけね。忠告するよ。子供はいい子にして大人しくなさい。あんまりおいたが過ぎるとどうなっちゃうか知らないからね!!

 

 その声は忠告半分、敵意半分という風に感じる。けれど、その他にも自分すらどうなるかわからないといった未知の恐怖も僅かばかり感じられた。

 

 「おい、何をしている!さっさと部屋に戻って来い!風呂に行くのは打ち合わせの後だ!」

 

 どこかで、それもとても近くで聞いたことがあるような男の声が廊下の角の向こう側から謎の少女を呼ぶ

 

 「チッ、もう少しで風呂まで辿り着いたのにバレちゃったか…わかったよ今行く!!」

 

 どこか残念そうに、どこかいらただしげに目の前の少女は男へ向けて返事する

 

 「人違いして絡んじゃってすまなかったね、チビちゃん達。じゃあね~」

 

 そして、首をくるりとなのは達に向けそういった後、外廊下をマイペースにしかし、ちょっと急いで去っていく 

 

―あの子の使い魔かな?ってことはまさかここにもジュエルシードが?

 

―多分、そうだと思う…ちょっと見かけただけっていうからあの場にもいたんだとは思うけど。

 

―ユーノ君はあの人の言うことどういうことだと思う?警告っていうのは分かるんだけど、それだけじゃなくてこっちの心配も少しあったと思うんだけど

 

―そうなの?僕が気になったのはあの場にいたってことは彼と接触もしくは目撃だけでもしてると思うのだけど、それでもなお恐れずに来るってことは何かしらの考えがあると思うんだ

 

―そうだね。お兄さんにも言っておく?

 

―だね。それまではなのはもゆっくり休んでて

 

―うん

 

 「…のは!なのは!!」

 

 反応のないことを心配そうに、返事をしないことに少し怒ったような顔でアリサがなのはの顔を覗き込む

 

 「わっ!!どうしたのアリサちゃん」

 

 ユーノとの念話に夢中になっていたなのはは急にでてきたアリサの声にビックリする

 

 「さっきから話しかけてるのにボーッとしちゃって…さっきのあの人のせい?」

 

 「うん、ちょっとね。で、何の話だっけ?」

 

 「さっき、あっちから聞こえてきた声どこかで聞いたことないかな?私もアリサちゃんも聞いたことがあるように思ったんだけど、どうも思いあたらなくて…」

 

 「うーん、そういえばそうだったかも」

 

―おい、何をしている!さっさと部屋に戻って来い!風呂に行くのは打ち合わせの後だ!

 

 なのはは脳裏に先程聞こえてきた声を再生する

 

 どこかで聞いたことがあるようなないような。とっても身近な人の声のような気もするし、そんなに聞きなれていないかもしれない。そんな男性の声

 

 「「「うーん」」」

 

 廊下の真ん中でその声の主を記憶の海から探る少女たちは思い出せそうで思い出せないそんなもどかしい気持ちになってしまい思わず唸ってしまう

 

 「みんなー、何してるの?」

 

 「こんなところにいたら湯冷めしちゃうよ。早く戻りましょ」

 

 声をかけてきたのは忍と美由希だった

 

 彼女らはなのは達と共に温泉に入り、なのは達が先に湯から上がるといった時も「いってらっしゃーい」と少女たちを送り出し、大浴場に残ってゆっくりと温泉に浸かっていたのである

 

 そんな彼女らが不思議な顔をして唸っているなのは達の身体を想って声をかけたのである

 

 「あ、お姉ちゃん」

 

 「そうだね、部屋に戻りましょ」

 

 「私はお土産をちょっと見に行きたいんだけどね~」

 

 そういう少女たちの頭には先程まであった声の主のこと等、頭の片隅に追いやられてしまう…かといって全く忘れ去られたわけではないのだが…

 

 

 

 

 「まったく…おちおち目も離せんな。起きて早々、大浴場へ向かうとは…貴様がそこまで温泉を気にいるとは思わなかったぞ、アルフよ」

 

 そこは山の宿の一室、座敷の真ん中、座布団に座る青髪の男が呆れたように部屋に入ってきた橙の娘に言う

 

 「けっ、偉そうに。ちょっと温泉に入るくらいいいじゃないか!ねぇ、フェイト」

 

 「まぁまぁ、まだジュエルシードが暴走し始める予兆もないし、少しくらいはいいと思うけど」

 

 そんな不満を垂らすアルフを少し困ったような顔で金髪紅眼の少女フェイトがフォローする

 

 「少しでいいのなら、さっさと打ち合わせを終わらせてから行けばいい。で、どうだったのだ?奴らもここに来たというのは確かなのか?」

 

 「あぁ、チビについては私は正面から見たことが無かったから確かとは断定できないけど、肩に使い魔を乗せてたし間違いはないと思う。で、アンタの弟だけどアレは間違いないよ。アンタと同じ顔同じ髪色、同じ匂い、そして浅黒い肌。アンタの弟(デフテロス)は確かにここにいるよ」

 

 「そうか」

 

 それを聞いた青髪の男アスプロスは嬉しそうに顔を歪める

 

 「では、ジュエルシードの探索収集はフェイトに任せるが…フェイト?大丈夫か!?おい!!」

 

 「……!!うん、大丈夫だよ!!」

 

 窓際のソファーに身体を深く預けた少女は少しボーッとした様子で虚空を見つめていたところを急に声を掛けられてビクリと体を震わせ彼の呼びかけに応じる

 

 「まったく…」

 

―やはり少し消耗してるな。多少、休ませれば回復するが…その程度の休息で済むと言えば、「そのぐらいは頑張れる」と言ってこいつは素直に首を縦に振らないだろう

 

 フェイトは今朝陽の昇り始めた頃にアルフと共にこの旅館に到着し、アルフと共に軽く湯浴みした後、仮眠を少し取った。が、アルフが眠りこけていた横でまたジュエルシードの反応を捉えようと意識をそれに集中させていた。それが午前9時過ぎのことであった。それから数時間経った今もそれを続けているのだから少し疲労の色が見え、彼女の顔をよく見てみると眼の下に隈がうっすらと浮かんでいる

 

 「フェイトも疲れているようだからな手短に済ませるか…ジュエルシードを発見回収する際敵対する小娘が出てきたときはフェイト・アルフが対処、そして(デフテロス)がその戦闘に介入してきた時は俺が相手にする。そうなってしまった場合はお前達は撤退すること。それはこの部屋でも海鳴市でも良いし、その判断も任せる。ここまではいいか?」

 

 そんなフェイトを一瞥すると早口で大まかな取り決めを述べていく

 

 「うん」

 

 「大丈夫だよ」

 

 「ふむ、もう少し細かいところを詰めていくか――

 

 アスプロスは懸念される不安要素の確認や緊急時の落合場所・連絡等々諸々を挙げ、それに対する解決方法を提案、二人の了承または質問を受ける。といったプロセスを幾度も繰り返していく。

 

 そうして1時間ほど経過した頃

 

 「では、これにて打ち合わせを終了する」

 

 「やったー、やっと終わったー!!おっふろ!!おっふろ!!」

 

 退屈な時間から解放された喜びを大きく伸びをすることで身体全体で表現するアルフが嬉しそうに声をあげ胸を揺らす

 

 「なら、フェイトも連れていけ。その小娘とやらに見つからんようにな。(デフテロス)は以ての外だ。まぁ、貴様の鼻ならはち合うことはないだろうが」

 

 「えっ!私?」

 

 「そんな面をされていてはこっちまで疲れてくる。俺は完璧に熟したい性質(たち)なんでな。少しでも不安材料は除いておきたい。フェイト…自分で思っているより貴様は消耗してるぞ。正直、ポカされるのではないかと気が気でない」

 

 「そ、そう?けど、貴方がそういうのなら…」

 

 「そうそう、フェイトも一緒にお風呂に入ろうよ~。あんまり寝てないんでしょ?ならその分休まなきゃ!!」

 

 ソファーに腰かけるフェイトにアルフは甘えるように抱きつく

 

 「アルフ、フェイトが湯船で溺れないようキチンと見張っておくのだぞ。フェイト、戻ってきたら軽く体もマッサージしてやる。体も少し硬くなっているからな解してやる」

 

 「あいあいさ~。さ、フェイト!お風呂に行くよ!」

 

 「アルフ、押さないで、一人で歩けるから…」

 

 そういってアルフはフェイトを半ば強引に連れて部屋を出ていく

 

 「調子のよい奴め…さぁ、デフテロスよ。我ら双子の舞台は思っていたよりも早く始まることになりそうだぞ?」

 

 そんな少女たちを見送った後、彼は楽しそうにそんなことを呟き、冷めた緑茶を口に運ぶ

 

 

 

 

 その日の深更、周りはしんと静まり返り夜闇と静寂がその一帯を支配する。

 

 そんな時間に小川のほとりの茂みに引っかかった蒼き宝石が目を覚ます

 

 旅館に滞在する少女はそれに呼応するかのように反応を感知した瞬間に閉じていただけの目を開き

 

―来たッ!!

 

 「アルフ!!」

 

 「うん!!」

 

 それに反応した少女は一人ではなく、同じ屋根の下、違う部屋でも眠りから覚醒する 

 

―これはッ!!

 

 「なのは!!」

 

 「行こう!!ユーノ君」

 

 二人の魔法少女と二匹の獣は夜の帳の中を駆けていく

 

 その裏では一人は異次元に身を潜めて、一人は森に姿を隠して二人と二匹を追う




あと、年末年始は父の実家に帰るので、これが今年最後の投稿で次話の投稿が少し遅れるかもしれません

余談ですがロンディウムの騎士はまだ序盤ですがやっててワクワクしますね
スチパンを書いていらっしゃる桜井先生ですのでこれからの展開が楽しみです
では、良いお年を…来年度もどうかよろしくお願いいたします
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