お楽しみください
少年急降下中。
その頃ほかの三人は。
「信じられないわ。問答無用で引きずり込んだ挙句空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃあその場でゲームオーバーだぜこれは。これなら石の中に呼び出された方がまだましだ」
「…石の中に呼び出されては何も出来ないでしょう」
「俺は問題ない」
「そう、身勝手ね」
「にゃあ〜…」
「大丈夫?」
湖から出て各々自由に行動していた。
「で、聞きたいんだがお前らにもあの変な手紙が届いたのか?」
唐突に切り出した金髪の少年の言葉に黒髪の少女は睨みながら答えた。
「そうだけど、お前なんて呼び方をしないで頂ける?私にはちゃんと久遠飛鳥という名前があるの。以後気をつけて。それで、猫を抱えたあなたは?」
「春日部耀。以下同文」
飛鳥の質問に耀は素っ気なく答えた。
「そう、よろしく春日部さん。でそこの野蛮で凶暴そうなあなたは?」
「高圧的な態度をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜だ。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃ったダメ人間なんで用法用量を守った上で、適切な対応をしてくれ。」
「取扱説明書があれば考えてあげるわ」
「マジかよ。今度用意しとくから覚えとけよお嬢様」
三人は目の笑っていない笑顔で言葉を交わしあっていた。
「で、いつになったら案内役は現れるんだ?」
「そうね、遅れるにしては遅すぎるわ」
「この状況で落ち着きすぎてるのもどうかと思う」
三人は笑顔が一変して明らかな怒りが露わになった。
十六夜に関して言えば苛立ちが既に体の方にも出ていた。
「仕方ねぇか、そこに隠れてる奴にでも話を聞くとするか」
「あら、あなたも気づいていたの?」
「当たり前だろ。かくれんぼじゃ負け無しだぜ。春日部も気づいてたんだろ?」
「風上に立たれたら誰でもわかる」
「へぇ」
耀の言葉に十六夜の瞳が鋭く光り、面白いものを見つけたと言わんばかりに笑う。
三人がジリジリと歩みを進めると
「やだなぁ、皆様。そんな狼のような怖い顔で黒ウサギを見ないでくださいまし。古来より孤独と狼はウサギの天敵なのでございます。ですからここは穏便に………」
黒ウサギと名乗った少女が草陰から飛び出しそう言いかけた時、黒ウサギの耳が異様な音を捉えていた。そしてその方向に黒ウサギは目を向け、黒ウサギを眺めていた三人もつられて空を見上げると、人らしきモノが上空から落下していた。四人が呆然と見つめる中人らしきモノは十六夜達が落下した湖に立ててはいけない衝撃音と共に巨大な水柱を立てて落下した。その衝撃音はさながら最高速度に達したスポーツカーがコンクリートの壁にぶつかった時のような音だった。
「「「「…………」」」」
四人の呆然とした沈黙が続く中高く上がった水柱が雨のように降り注ぐ。
水柱が晴れて湖面に浮かぶ少年を目にした四人の目の色が変わった。
真っ先に動いたのは十六夜だった。
「死にやがれ!」
十六夜は地面にクレーターを残し、人間が出せるとは思えないほどの速度で駆け出すと、湖面に浮く少年の頭を勢いよく殴りつけた。
殴られた少年は意識の無いまま勢いよく空に打ち上がり、追撃するように耀が駆け出し空中で回し蹴りを決めてまた吹き飛ばす。
吹き飛ばされた少年は背後の木に叩きつけられ意識を叩き起された。
「…なんだ?」
少年が目を開き、最初に目にしたのは怒り狂ったように見えた金髪の少年とノースリーブのジャケットを羽織った少女だった。
「え、え、何?何が起こってんの?」
理解出来ずに少年は木にめり込み身体を浮かせた状態で首を忙しなく動かし、状況把握に務めていた。その時、視界の端で光が放たれた。光を追うように少年は発生源に目を向けると、焼かれた。
「穿て───"擬似神格・梵釈槍"───」
幾千万の雷を手に携え槍と成した光をうさ耳の少女が握り、第六宇宙速度という人知を遥かに超えた速度で少年へ投擲する。
(あれは…必勝の槍か…あぁこいつは確実に死んだな)
自分に向け放たれる光り輝く槍を加速する意識の中眺め、この後の自分の有様を想像し、自嘲気味に笑った。
うさ耳少女の隣で立つ少女の声を聞くまでは…
「槍よ、敵を穿ち尽くし殺しなさい!」
飛鳥の咄嗟の言霊に槍は再び強く輝き、六つに別れた。
六つに別れた必勝の槍は少年の頭蓋、心臓、両掌、両腿の一箇所ずつを穿ち、木に貼り付けにするかの如く深々と突き刺さり、少年を絶命へと誘った。
「はぁ…はぁ…やったか?」
乱れた息を整え十六夜が尋ねるように呟く。
「必勝の槍ですから確実かと思われますが…」
「…あの刺さり方なら確実だと思う」
「そうね、あれなら確実に死んでると思うわ」
「「「「え、………」」」」
飛鳥の呟きに飛鳥自身も含め四人が反応する。
「し、…しん…でる…?俺達が殺ったのか?」
四人の顔が驚愕と困惑に染まる。
全員が静まり困惑する中、背後からぐしゃりと肉の裂ける生々しい音が響く。
「だぁ、…ほんとに今日は何回死にゃあいいんだよ。マジで嫌になってくるわこの体質」
先程まで全身に深々と槍が突き刺さっていた少年が何事も無かったかの如く無傷で立っていた。
「てめぇ、まだ生きていやがったのか!」
十六夜は少年の顔を見るなり憤慨し、駆け出そうとする。
「ちょ、ちょっと待て!俺が何をした!」
「そりゃあ、てめぇが………てめぇが…何をしたんだ?」
最初は威勢が良かったものの最後の方は意気消沈し、戸惑っていた。
「そっちのうさ耳のあんたも猫抱えてる子も、明らかにお嬢様です感出してる君も、含めて全員に俺が何かした?」
捲し立てる様に喋り続ける少年の言葉に全員が戸惑っていた。
((((私は(俺は)こいつに何をされた?))))
「俺が無意識のうちに何かしたのなら別に死んで詫びてもいい。いくら殺されても何も文句は言わない。けどな、何もしてないのに殺されるのは流石に今日は勘弁してくれ」
「い、いえ。黒ウサギ達は何もされていないのですよ。」
「俺も何もされてねぇな。今まで会ったこともねぇし」
「私も何もされていないわ」
「…私も今まで会ったことが無いから別に」
十六夜達の否定に少年は安堵の息を漏らす。
「なら良かった。何かやらかしてたとしたらマジで死ぬことになるところだったよ」
「というよりあなたさっき死んでいたわよね?私の見間違いじゃなければ」
「…私も見てた。ちゃんと心臓に刺さってた」
「ん?あぁ、さっきのは流石に死んでたよ。頭蓋に心臓まで刺されたら誰でも死ぬって」
飛鳥と耀の問いかけにあっさりと答えると四人の顔が徐々に青ざめていく。
「私は人を…」
「…どうしよう。人殺しちゃった」
「黒ウサギも初めて人を殺しました…どう償えばいいのでしょうか………」
「俺が…人を…殺しちまったのか」
「別に気にしなくていいって!実際に俺は生きてんだから。それより場所変えようぜ」
少年の促しに四人は暗い表情のまま湖畔から少し離れた場所で腰を下ろし落ち着いた。
「まぁ、とりあえず自己紹介といこうぜ。
俺は…そうだなぁ…いいか。イザナギ。俺のことはそう呼んでくれ」
「悩むってことは本名じゃねぇのか?
あぁ、俺は逆廻十六夜だ」
「あぁ。本名じゃねぇよ。何も知らずに本名語って何度か酷い目にあったからな。よろしく十六夜」
「酷い目というのは詐欺とかそんな類のものかしら?私は久遠飛鳥よ。よろしくイザナギ君」
「詐欺なんてそんな生易しいものなら何十回、何百回と遭ってるよ。こちらこそよろしく久遠さん」
「では、イザナギさんの言う酷い目というのは何なのですか?あ、黒ウサギは黒ウサギと言うのですよ」
「魔女との強制契約とか、吸血鬼への強制隷属だな。あれは大概名前を使って契約するとより強固になるから面倒なんだ。黒ウサギか、変わった名前だな」
「…参考程度にその強固な契約はどうやって破ったの?私は春日部耀。よろしくイザナギ」
「大概が親側の死亡で解除されるからな。それまで待つか、殺すかだな。まぁほとんどの魔女が契約内容に死亡した場合親と同時に子も死ぬって付け加えるからそん時は強引に契約を壊す。よろしく春日部さん」
自己紹介を兼ねた質問をその後も小一時間ほどした後、黒ウサギの箱庭解説があり、コミュニティへ移動することが決まった。
はい、今回はここまでです。
投稿期間少し空いてしまい申し訳ないです。
色々とリアル事情が重なってしまい全く内容が思いつかなかったです。
それにメインで悲報の方を進めると言っておきながらのこの体たらくですから、今後も投稿期間は安定しないと思います。よろしければ気を長くしてお待ちいただければ幸いです。
ここまでの閲覧ありがとうございました。
それではまた次回お会いしましょう。