世に嫌われた少年も異世界へ来るそうですよ?   作:卍恭也卍

3 / 4
皆さんお久しぶりです。
久しぶりの更新となります。
良ければお楽しみください。


第2話 問題児達と野獣

 

「ジン坊ちゃーん!新しい方をお連れしましたよー!」

 

隣にいた黒ウサギが大手を振って声を上げた。すると先程まで石段に腰掛け俯いていたジンと呼ばれた少年が顔を上げた。

 

「お帰り黒ウサギ、お疲れ様」

 

ジンは石段から腰を上げてダボダボのローブを揺らして黒ウサギに駆け寄る。

ジンは笑顔で黒ウサギ以外の三人に目を向けた。

 

「そちらの女性2人が?」

 

「はいな♪こちらの御四人様が新たな同士でございます。」

 

笑顔で後ろを向くと黒ウサギの笑顔が固まった。

 

「あのぉ、もう一人居ませんでしたか?少し目つきと口の悪い"俺問題児"ってオーラを放っている殿方が…ってイザナギさんはどうなされたのですか?項垂れて。」

 

「いや、このパターンは初めてでな、これはキツイな。それより、十六夜なら世界の果てを見てくるって走っていったぞ向こうに」

 

立ち上がったイザナギは先程まで歩いてきていた道を指差し告げる。

 

「ちょ、何故それを止めてくれなかったのですか!」

 

「"止めてくれるなよ"と言われたのよ」

 

「では、何故黒ウサギにつたえてくれなかったのですか!」

 

「"黒ウサギには言うなよ"って言われたから」

 

「嘘です、嘘です!お二人共本当は面倒くさかっただけでしょう!?」

 

「「うん」」

 

黒ウサギの嘆きに二人はあっさり頷き黒ウサギはうさ耳をへにょらせて項垂れる。

 

「黒ウサギ!世界の果てには幻獣が…」

 

「わかっています。ジン坊ちゃんは御三方の案内をお願いします。」

 

「黒ウサギはどこに行くんだ?」

 

「黒ウサギは問題児様を捕まえて参ります。箱庭のウサギに喧嘩を売ったことを後悔させてくるのですよ」

 

黒ウサギはそう言うと青い髪を桜色に染めて猛スピードで飛び跳ねて行った。

 

「箱庭のうさぎは随分速く跳ぶのね」

 

「黒ウサギは箱庭の創始者の眷属ですから。よほどのことがない限り 問題ないです。

あ、僕はジン=ラッセルと申します。齢十一になったばかりの若輩者ですが一応コミュニティのリーダーをさせてもらってます。

お二人は?」

 

自己紹介を終え、ジンは一礼して尋ねた。

 

「私は久遠飛鳥。そしてこちらの猫を抱えているのが…」

 

「春日部耀」

 

二人は短い自己紹介をして、ジンに倣い一礼する。

 

「………」

 

唯一一人イザナギだけ無視され続けていた。

この状況に耐えきれなくなったイザナギは飛鳥に耳打ちした。

 

「悪いちょいと誤解を解いてくれないか?

 

「え?あぁ、そういうこと。わかったわ」

 

誤解の一言で意図が通じたことに安堵したイザナギは事の成り行きを飛鳥に任せ後ろで立ち尽くす。

 

「ジン君ちょっといいかしら?」

 

「はい。どうかしましたか?」

 

「彼の事なのだけど」

 

飛鳥はそう言いイザナギを指差すと

 

「チッ」

 

ジンは盛大に舌打ちをする。

 

「「………………」」

 

「ジン?」

 

「え?あ、はい。何でしょうか?」

 

「過去にイザナギに何かされた?」

 

「…ないと思います」

 

「じゃあ、何でそんな舌打ちを?」

 

耀が代弁して尋ねるとジンは首を傾げて唸り出した。

 

「どうしてでしょう」

 

「えっと…ジン君でいいか?」

 

「あ、はい。お好きに呼んで下さい」

 

「とりあえず場所を移そうか。ジン君の舌打ちの件も道すがら説明するよ」

 

四人と一匹は場所を移し、"六本傷"の旗印を掲げたカフェに来ていた。

 

「…まぁ、そういうわけだ。だから気にしてないよ」

 

「あの、それは気にしてないで済ましていいのですか?」

 

「そうね、それは気にしてないで済ましていいものではないわね」

 

「私もそう思う。イザナギは何か思い当たる原因はないの?」

 

「んー…あるっちゃあ…………」

 

「おんやぁ、これはこれは最底辺コミュニティ"名無しの権兵衛"のリーダージン=ラッセル君じゃないですか」

 

四人の会話に割り込むようにピチピチのタキシードを来た巨漢が話しかけてきた。

 

「「「…………」」」

 

(((これはないわ…)))

 

「あなたの同席は許可してません。"フォレス・ガロ"のガルド=ガスパー」

 

三人が冷めた目つきでガルドを見つめる中ジンが威圧的に対応した。

 

「黙れ!聞けば新しい人材を呼び込んだらしいじゃねえか。新人なら騙せるとでも思ったのか?」

 

ガルドは二人に卑しい笑みを浮かべた。

 

(はぁ、こいつもか)

 

ジンが俯き、イザナギが溜息をついていると今度は飛鳥が対応し始めた。

 

「同席するなら自己紹介と一言添えるのが礼儀ではないかしら?」

 

「おっと。これは失礼。私は箱庭上層に居を構えるコミュニティ"六百六十六の獣"の傘下"「烏合の衆」"のコミュニティの「エセ紳士」をしている…って待てやゴルァ。

ふざけたことを抜かしてんじゃねぇぞ小僧共」

 

ガルドの自己紹介にジンとイザナギが横槍を入れると二人の気も少しゆるんだのか、小さく笑っていた。

当のガルド本人は沸沸と怒りを溜め込んでいたが。

 

「口を慎めや。紳士で通ってる俺でも聞き逃せねぇ言葉はあるんだぜ」

 

「森の守護者だった頃の貴方なら少しは相応の礼儀で返していましたが、今の貴方は

二一〇五三八〇外門を荒す獣と変わりありません。」

 

ガルドの威圧的な言葉にジンは先程と打って変わって真っ直ぐにガルドを見据えて言い返していた。

 

(へぇ、十一でこの空気の中ここまで言い切るか…コミュニティのリーダーをするには十分肝は座ってるな。こいつは負けてられねぇや)

 

「それによぉ、久しぶりに出来た大切な友達をそんな下卑た目で見られるのはなんとも我慢ならねぇんだよ。要件済ましてさっさと立ち去ってくれねぇか?」

 

「糞ガキ共がナメた口を…まぁいい。

では単刀直入に言いますが、御二人には黒ウサギ共々私のコミュニティに来て欲しいのです。」

 

「な、何を言い出すんですか!」

 

ガルドの目的を聞いたジンが驚き、声を上げる。

 

「黙れ。そもそもお前がコミュニティを再建していればここまで没落する事は無かっただろうが。それともなにか?お前はわざわざ異世界から馬車馬のように働かせるためだけに人材を呼んだのか?それなら俺達にも通さねぇとならん仁義があるぜ?」

 

「…」

 

ガルドの言葉にジンは押し黙り、俯いて唇を噛み締めていた。

 

「で、どうですか?返事を直ぐにとは言いません。貴女達には箱庭で三十日間の自由が保証されております。私のコミュニティと彼のコミュニティを視察してからでも。参考程度にコミュニティの規模だけお伝えしますと、私のコミュニティはこの地区で最大規模の人材とコミュニティを所有しています。彼の方は…ねぇ。」

 

ガルドが曖昧に笑い、見下した目でジンを見つめた。

 

「どうかと聞かれても私達はジン君のコミュニティの状況がどんなものかも知らないわ。という訳でジン君、説明して下さるかしら?」

 

今まで黙って傍観していた飛鳥が口を開く。

 

「それは…」

 

「なぁジン君。君のコミュニティは衰退したコミュニティじゃないか?」

 

イザナギの言葉にジンは肩を震わせ目をそらした。

 

「ほぉ、よく分かったじゃねぇか。ガキの癖に頭はキレるみたいだな」

 

「てめぇは黙ってろエセ紳士。お前には聞いてねぇよ」

 

冷めた目で威圧的に対応するとガルドは気圧されて押し黙った。

 

「で、どうなんだ?違うならはっきり言ってくれて構わないよ、けど沈黙は是ととるけど」

 

「………」

 

「あぁ…一つ言っておくことがあったのを忘れてたよ。ジン君、君が仮にも俺達を騙している、もしくは隠している事があるなら俺はコミュニティには入らないよ。人を騙すようなコミュニティは"名無し"以上に信用出来ないからね」

 

イザナギの冷酷とも取れる鋭利な言葉にジンは唇を噛み締め、目尻に涙を浮かべていた。

 

(このガキは容赦がねぇな。流石の俺でもここまではっきり言葉にはしねぇぞ)

 

「…イザナギ」

 

「イザナギ君、流石にそこまでは言い過ぎよ。リーダーとは言ってもまだ十一歳の子供なのだから」

 

「組織を率いる長に年齢は関係ないよ。そんな事を言い訳にする組織は三流以下だ、三流以下のコミュニティなら尚のこと俺は入らない。周りはどうであれ俺はお遊びでギフトゲームをやるつもりは無いからね」

 

飛鳥の擁護も意味をなさず無情にもイザナギの言葉で一蹴され、飛鳥も押し黙る。

飛鳥が口を閉ざすのを確認したイザナギは目配せしてジンの表情を確認するとジンは先程までの俯いていた表情を一転させ、凛として言い放った。

 

「僕達も遊びでやっている訳じゃありません!今はまだ力のない"ノーネーム"ですが必ず名と旗印を取り戻します」

 

急に大声をあげたジンに三人は驚き、イザナギは不敵に笑った。

 

「へぇ、そうか。決心はしてるんだな。

いいぜ、手伝ってやるよ」

 

「え?」

 

「ん?なんだ?要らないのか?なら俺は別に…」

 

「あぁぁ、要ります!だから手伝ってください!」

 

「なら最初からお願いしますって言っておけばいいんだよ。で、二人はどうする?そっちの腐れ外道紳士の方に行くなら別に」

 

「おいこら糞ガキ!そろそろ改めねぇと新人でも容赦しねぇぞ」

 

怒鳴るガスパーを無視してイザナギは飛鳥と耀を見つめ返事を待つ。

 

「私は別にどっちでも。けどイザナギがジンの方に行くならそうする」

 

「あら、二人はいつの間に仲良くなったのかしら?まぁ、私もイザナギ君の選んだコミュニティに行こうと思っていたけど」

 

「り、理由を聞いても?」

 

完全に無視され、その上意味もわからず誘いを断られたガルドは額に青筋をたて、声を震わせながら訪ねた。

 

「私、久遠飛鳥は裕福な家庭も約束された将来もおおよそ全ての人が望む未来を支払ってこの箱庭にきたのよ。それなのに『小さな一画を支配しているコミュニティの末端に加えてやる』と言われても微塵も魅力なんて感じないわ」

 

「私は別にどこでも良い。けどイザナギのいる方に行けば楽しそうな気がする。それだけ」

 

「だってさエセ紳士、今なら見逃してやるから失せろよ」

 

二人の決断にイザナギは威圧的な口調でガルドに帰りを促す。

 

「ダメよイザナギくん。彼にはまだ聞きたいことがあるの『黙って私の質問に答えなさい』」

 

度々カンに触る言い方をするイザナギに再びガルドは口を開こうとしたが、飛鳥の命令の様な、呪いの言葉で口が開かなかった。

 

「!?………」

 

突如言うことの聞かなくなった自身の変化に戸惑い、ガルドは額に冷や汗を浮かべる。

 

「それじゃあ、始めましょうか。

あなたのコミュニティの悪事大暴露会を」

 

飛鳥は妖艶な笑みを浮かべ、呟いた。

 

………………………

………………

………

 

「な、なぜあの短時間でフォレス・ガロのリーダーと接触して喧嘩を売る事態になっているのですか!そのうえゲームの日取りは明日!?敵のテリトリー内で戦う!?

どうしてそんなありえないことが出来るのですか!準備をする時間もお金もありませんよ!本当にどうしてそんなことが出来るのですか!御四人方!」

 

「「「むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない」」」

 

「黙らっしゃい!」

 

ジン、飛鳥、耀の三人の見事なハモリを見せた謝罪に黒ウサギは怒り狂い、十六夜とイザナギはケラケラと笑っていた。

 

「貴方もですよ!イザナギさん!貴方は少しは謝罪をしなさい!」

 

結局イザナギも黒ウサギのハリセンで頭を叩かれ四人揃って叩かれたところを摩っていた。

 

「はぁ、決まったことはもう仕方ありません。ですがガルドくらい十六夜さんがいれば楽勝ですし問題ないでしょう」

 

「あ?何言ってんだ?俺は参加しねぇぞ」

 

黒ウサギの自慢気な宣言に十六夜は怪訝そうな顔で否定する。

 

「あら、わかっているじゃない」

 

「ちょ、ちょっと十六夜さん!そんなことを言わないでください!同じコミュニティどうし力を合わせて…」

 

「黒ウサギ、今のは十六夜の方が正しいぞ」

 

「へ?イザナギさんまで何を言って」

 

思わぬところからきた十六夜への援護に黒ウサギは目を白黒させる。

 

「あのなぁ黒ウサギ。これはこいつらが売ってあいつらが買った喧嘩だ。それに手を出すなんて無粋なだけだ」

 

「………はぁ、仕方ありません。もう好きになさってください」

 

十六夜の唐突な持論の展開に黒ウサギは匙を投げた。

 

「とりあえずジン坊っちゃんは先に帰っていてください。サウザンドアイズに行ってから帰りますので」

 

疲れきった表情で投げやり気味にジンに帰宅を促し、黒ウサギの疲労の元凶である問題児四人を引き連れ歩き出した。

 

サウザンドアイズへ向かう途中イザナギは小さく声を漏らした。

 

「へぇ、綺麗な桜だな」

 

「桜は無いでしょう。今は真夏よ?」

 

「いやいや、今はまだ初夏だろ。根性のある桜なら残っててもおかしくねぇ」

 

「………今は秋だった気がする」

 

漏らした声に三人は噛み合わない会話をしていると苦笑して黒ウサギが補足を始めた。

 

「皆さんはそれぞれ別々の世界から呼ばれていますので。歴史や生態系など、ところどころ違いが出てくると思いますよ?………」

 

苦笑して四人を見ていた黒ウサギが焦った表情で唐突に駆け出した。

 

「まっ!」

 

「待ったなしです。うちは時間外営業はしておりませんので」

 

黒ウサギが駆け出した方向に、ちょうど暖簾を下げようとしていた女性が黒ウサギには全く目を向けず適当にあしらっていた。

 

「はぁ、ではコミュニティの名前と旗印の提示を。場合によっては受け付けます」

 

「うぐ…」

 

 

先ほどまで文句ばかり言っていた黒ウサギが唐突に黙った。そこへイザナギが歩み寄り

 

「店員さん。俺は------------だからさ、ここの店長と会わせてくれないか?」

 

相手の店員にのみ聞こえる声でひっそりと耳打ちすると、店員は驚愕に目を見開きイザナギを見つめていた。

 

「いぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉ!!!黒ウサッ!!!!」

 

店の奥からドップラー効果のように声を響かせ飛んできた何かをイザナギは黒ウサギにぶつかる前に上空へ蹴りあげた。

 

「「「「「………………」」」」」

 

頭痛でもするのか、イザナギの横にいる店員が頭を押さえていた。他の四人は呆然と空に舞い上がった何かを見つめていた。

 

「美少女を問答無用で蹴りあげるとは何様のつもりじゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

先程とはまた別の内容で声を響かせながら先程上空に舞い上がった何かがイザナギの方へ飛来する。

 

「特に意味はない!っと」

 

真っ直ぐイザナギに飛来した和装の銀髪ロリを襟首を掴んでキャッチするとそっと耳元に口をよせ店員と同じように耳打ちする。

 

「久しぶりだな、白夜叉。相変わらず元気そうで何よりだ」

 

「んな!おんしは!」

 

耳打ちされた白夜叉がハッとしてイザナギを見つめ驚愕の声を上げるが、口元に人差し指を添えてウインクすると白夜叉は黙ったのだった。

 

「あのぅ白夜叉様?イザナギさんとはお知り合いだったのですか?」

 

「え、あ、いや」

 

「んにゃ、俺達は今日会うのが初めてだぞ。たぶん知り合いの誰かに似てたんじゃないか?」

 

二人の親しげな態度に黒ウサギは二人の関係を尋ねるがイザナギに否定され押し黙った。

そんな中十六夜はイザナギを見つめ、目を細めていた。

 

「はぁ、とりあえず客間へどうぞ」

 

あからさまに疲れた様子の店員が四人を店内へ促した。

 

「いや、私の私室で良いよ。その方が色々と話しやすかろう」

 

「そうですか」

 

白夜叉の言葉に店員は投げやりに答え、暖簾をしまい始めた。

 

白夜叉に案内され、黒ウサギ達一行は白夜叉の私室であるお香の焚かれた和室へたどり着いた。

 

「ふむ、それでは。自己紹介が遅れてしまったが私は四桁の門三三四五外門に本拠を構えるコミュニティ"サウザンドアイズ"の幹部の一人、名は白夜叉と言う。まぁ、黒ウサギのコミュニティ崩壊後も手助けをしている心の広い美少女とでも思っとってくれ」

 

四人を部屋の中へ促し、全員が座ると同時に白夜叉も居住いを正して自己紹介を始めた。

 

その後も箱庭についての説明から始まり、最終的には十六夜が手に入れたという水樹の苗に話が移り、白夜叉と黒ウサギは話に熱中していた。主に黒ウサギの自慢が基本だったが…

 

そんな二人の会話を盗み聞きしていた十六夜と飛鳥が目を輝かせだした。

 

「おい、聞いたか?」

 

「えぇ、これはぜひとも相手をして欲しいわね」

 

「私はどっちでも。けど飛鳥が混ざるなら私も」

 

耳聰く聞いていた三人は東側最強のプレイヤーである白夜叉に勝負を挑んだ。

 

「なぁ、白夜叉。あんたが東側最強のホストなんだってな」

 

「ふむ、そうじゃが………ふふふ、そういうことかの」

 

十六夜の一言と目を見た白夜叉は思惑に気づき、妖しく微笑んだ。

 

(ふぅ、この問題児達は血の気が多いなぁ)

 

まるで他人事のようにぼんやりと三人を見ていたイザナギだったが、考え事をしているうちに三人の会話が進み、気づいた頃には視界に映るすべてが豹変していた。

先程まで座っていた座布団と畳は氷へと変わり、部屋を仕切っていた壁はどこかへ消え失せその代わりと言わんばかりに白夜叉の背後に巨大な氷山と大きな湖、そして水平に廻る太陽がそこにはあった。

 

イザナギは特に気負うことはなく、マイペースに三人を見回すと三人とも顔を引き攣らせ、拳を強く握りしめ、手の甲には汗と薄らと逆立つ毛が見えた。

 

「さて、今一度名乗るとしよう。私は白き夜の魔王、太陽と白夜の星霊白夜叉。しておんしらが望むのは"試練への挑戦"か?それとも"対等な決闘"か?」

 

強者が放つ圧倒的な覇気を纏い顔に笑みを貼り付けた白夜叉が三人に問う。

 

「水平に廻る太陽…そういうことか。

白夜と夜叉、この太陽と土地はお前を表現しているというわけか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原そして世界を永遠に薄明に照らす太陽こそ私の持つゲーム盤の一つじゃ」

 

自力でこの世界の回答にたどり着いた十六夜に白夜叉は優しく微笑んだ。

 

「して、挑戦か決闘かどうするのだ」

 

「参った。降参だ。今回は黙って試されてやるよ」

 

「私も降参だわ」

 

「右に同じ」

 

三人のささやかな抵抗とも取れる言動に白夜叉は再び微笑んだ。

 

「イザナギと言ったか?おんしはどうするのだ」

 

「俺はパス。元々乗り気でも無かったからな」

 

イザナギの返答に白夜叉は僅かに安堵の息を漏らした。が、視線に気づきそちらの方を向くとイザナギがニヤニヤと白夜叉を見つめていた。

 

(この悪魔めが)

 

白夜叉を見つめるイザナギに白夜叉は睨み返すが、唐突に山脈の方から大きな鳴き声が響き白夜叉は睨むのを中断した。

 

「何この鳴き声。聞いたことない」

 

一番最初に反応を示したのは耀だった。

 

「ふむ、あやつか。まぁ、おんしらの相手をするなら丁度良かろう」

 

白夜叉が言葉を切ると同時に鳴き声の主が白夜叉の隣に降り立った。

 

「嘘………本物?」

 

「へぇ、まさかグリフォンまで居るとはな。流石は人外魔境の箱庭ってところか」

 

耀は驚愕し、十六夜は感嘆の声を漏らす。

飛鳥に関しては絶句していた。

それよりも酷かったのは黒ウサギだった。

両手で耳を押さえながら倒れて気絶するというなんとも奇妙な姿勢だった。

 

「では、こんなゲームでどうじゃ?」

 

『ギフトゲーム名:鷲獅子の手網

プレイヤー一覧:

逆廻十六夜

久遠飛鳥

春日部耀

クリア条件:グリフォンの背に乗り、湖畔を舞う

クリア方法:"力""知恵""勇気"のいずれかでグリフォンに認められる。

敗北条件:降参、またはプレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合

宣誓、上記を尊重し、誇りと御旗、ホストマスターの名のもとにギフトゲームを開催します。

サウザンドアイズ 印』

 

白夜叉の言葉とともに白い羊皮紙が現れ、三人の手元に降りた。

 

「私からやりたい」

 

三人はルールに目を通し顔を上げると、一番最初に耀が名乗りを上げた。




改めてお久しぶりです。
この度は勝手な都合により更新を止めてしまって申し訳ございませんでした。
俺は悪くねぇ!悪いのはハーメルンに投稿している他の作者様だ!あんな魅力的な作品があればつい手を止めて見ちまうじゃねぇか!
はい。ごめんなさい。自制心の弱い作者が悪いです。唐突な暴言をしてしまい申し訳ございませんでした。
そして、読者の皆様に悲報がございます。
今後も私の投稿している二作品ですが更新が遅くなると思います。ですが完走はしようと思っていますので、よろしければ読者の皆様には暖かい目で気長に見守っていただければ作者は泣いて喜びます。
長々と最後までお付き合いありがとうございました。
それではまた次回お会い出来ることを心待ちにしております。
ありがとうございました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。