武の竜神と死の支配者   作:Tack

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 何とか年越し前に投稿出来ました(´;ω;`)
 今回も色々と試験的な表現が含まれております。何か意見等あれば感想にてお願いします。
 追記:今回ちょっと長めです。




第九話【武神の演武②】

その光景に、モモンガを除いた闘技場の観客達は呆然としていた。

 今しがたまで居た筈の武神と凍河の支配者が突然消え、代わりにバトルフィールドを覆う謎の半球体が現れたからだ。その半球体は中を見透すことが出来ず、二人の安否を気遣う声すら出始めた。

 

 

モモンガ「久し振りに見たな」

 

 

 貴賓席に居たモモンガの言葉に守護者達、更にはそれに釣られた他のシモベ達の視線も集まる。

 

 

アウラ「モモンガ様はアレを御存知で?」

 

 

 アウラがマイクをモモンガの口元に近付けながら質問をする。まるで解説を求める実況者だ。

 モモンガもそれを意識している様で、少し、というかかなりノリノリで答える。

 

 

モモンガ「勿論だとも、アウラ。あれこそ、今まで我等の敵対者達を震え上がらせたエイジさんの能力。その名も『地球がリングだ!!』というスキルだ」

 

マーレ「ど、どういったスキルなんですか? モ、モモンガ様」

 

 

 アウラに引き続きマーレもモモンガに質問を投げ掛ける。

 守護者にとっても謎のスキル、という事で他のシモべ達の期待度が上がる。

 

 

モモンガ「簡単に言ってしまえば、特定の対象物を自分と共に特殊な空間に隔離するという物だ。しかもこのスキルは、エイジさんが致命的な傷を負う、もしくは本人の意思によってでしか解除されることはない。……このスキルと自身の強さによって、彼は多くの屍の山を築いたものだ」

 

 

 モモンガの言葉を聞いたシモベ達は戦慄した。もし、仮に自分がエイジの敵対者であったとしたら? あのスキルを使われ、逃げる事の敵わない次元に放り込まれたとしたら? と。

 ここナザリックの中で、エイジの戦いを直接見たことのある者は殆ど居ないだろう。だが知っている。聞いている。エイジの強さを。

 

──それ故の戦慄。

 

 デミウルゴスも同じ事を考えていた。芽生えた恐怖を抑え、震える声でモモンガに言った。

 

 

デミウルゴス「……モモンガ様、私は今、……心底ナザリックに属する者で良かったと感じております。もし、私が敵としてエイジ様の前に居たことを想像すると、……震えが……止まりません」

 

 

 冷や汗を流しながら言ったデミウルゴスの言葉に他のシモベ達は喉を鳴らした。

 当然だ、戦闘力に重点を置いた者ではないとしても、デミウルゴスはナザリックにおいて強者の位置付けにある。その男がここまで怖れるのだ。一介のシモベである自分達では抗うことすら不可能だろう。

 場の雰囲気が少し冷えていた所に、半球体の上に突然謎の男が現れ叫んだ。

 

 

?「対戦者はリングに上がった模様です、応援席の皆様も宜しいですか?」

 

モモンガ「久しいな、ストーカー。今回も宜しく頼む」

 

ストーカー「おぉ! これはモモンガ様! 今回もお呼び頂けるとは、光栄の極みに御座います。」

 

 

 ストーカーと呼ばれた眼帯の男は、その身を包む真紅のスーツが似合うとても美しい礼をした。

 半球体と同じく突然現れた男にシモベ達は一瞬身構えたが、モモンガと親しげに話す姿を見て警戒を解く。

 

 

モモンガ「うむ、今回はお前の主であるエイジさんの久々の戦闘だ。全力で盛り上げてくれ」

 

ストーカー「お任せ下さい、我等が偉大なる御方よ。所で……、お初にお目にかかる方ばかりなのですが、モモンガ様以外の方々は【例の流れ】を御存知で?」

 

モモンガ「いや、恐らく初めてだろう。実は各階層にも今回の戦闘を映像として映す手筈になっていてな。この場所も今映像として出ている筈だ、皆に教えてやってはくれないか?」

 

ストーカー「そういう事で御座いましたか。不肖、この私めが皆様にレクチャーさせて頂きます」

 

 

 闘技場と各階層に居るシモベ達の為に、ストーカーは模擬戦のルールや【例の流れ】を簡潔にレクチャーした。

 

 

ストーカー「──以上で説明を終わらせて頂きます。何か御質問のある方はいらっしゃいますか?」

 

 

 ストーカーは闘技場と宙に浮かんだ各階層と繋がるモニターを見回す。彼の視界に疑問を浮かべたシモベは映らなかった。

 

 

ストーカー「エイジ様、此方の準備は整いました」

 

 

 ストーカーがそう言って半球体の中に向かって声をかける。すると、その中が途端に鮮明となり、広い荒野に佇むエイジとコキュートスの姿が写った。

 

 

エイジ「此方も説明は終わっている。後はいつも通り頼むぞ、ストーカー」

 

ストーカー「畏まりました」

 

 

 ストーカーの了承の意を示す言葉を発すると、それを合図に両者は武器を構える。

 エイジは刀を抜き放ち、それを腰で構えた状態でコキュートスに向ける。その姿はまるで魔王に立ち向かう勇者の様である。

 しかし真に見るべきはその刀だ。刀身はボロボロに錆び、今にも朽ち果てそうな見た目をしている。だが、それは違う。

 

 

コキュートス「……『東方の一振り』、久シ振リニ拝見サセテ頂キマシタ」

 

 

 闘技場に響くコキュートスの声に油断は一切感じられない。いや、寧ろ警戒しているとさえ思える反応である。至高の存在に対し不敬とは知りつつも何故あんなボロ刀を出したのか、それをシモベ達は理解出来ずにいた。

 そこへ、アウラからマイクを借りたモモンガからの解説が入る。

 

 

モモンガ「あれは『東方の一振り』と言ってな。頑丈さのみに限れば神器級の中でも上位に入る代物だ。更にあの武器には恐るべき力が備わっている」

 

 

 そのモモンガの言葉に、シモベ達は自身の考えを浅はかだったと恥じた。至高の存在である御方がただのボロ刀を振るか? ましてや武人であるあの御方が相手を侮る様なことをするか? 

 一方、アルベドとデミウルゴス、そしてセバスは気付いていた。

 

 

デミウルゴス「やはりそうでしたか、エイジ様がただの刀など出す筈は無いとは思っておりましたが……」

 

アルベド「コキュートスは強い。不敬ではありますが、幾らエイジ様の御力を以てしてもそこらの武器では少々厳しいとは思っておりました。」

 

セバス「となると、やはりモモンガ様がおっしゃられた特殊な効果目当てになる訳ですか……。成る程、至高の御方が御持ちになるに相応しい刀と言う訳ですな」

 

 

 三人が口々に意見を出し合っていると、半球体に映るコキュートスもどこからか武器を取り出す。普段のハルバード一本だけではない、複腕を含む四本の腕全てに彼が厳選した武器が握られる。

 シモベ達は、彼の握る武器の内一本の刀を見て確信する。

 

──凍河の支配者は本気だ。と

 

 それもその筈。その刀こそ、コキュートスが主にして至高の41人の一人。『武人建御雷』(ぶじんたけみかづち)がかつて振るい、後に彼に渡した名刀『神斬刀皇』(しんざんとうおう)である。

 刃渡り百八十を越え、鋭利さでは彼の持つ武器の中でトップの武器だ。

 至高の創造主より手渡されたこの刀を持ち出す時、それは彼が本気であることの証明であった。

 

 

エイジ「神斬刀皇……、いつ見ても惚れ惚れするな。そしてそれを構えるお前の姿にも」

 

コキュートス「オ誉メ頂キ恐悦至極ニ御座イマス」

 

 

 エイジから漏れる感嘆の声、これは決して世辞などではなく彼の本心であった。

 

 

エイジ「では、そろそろ始めよう」

 

 

 エイジの言葉を待っていたかの様にコキュートスも改めて武器を構えた。

 

 

エイジ「──と、ストーカー! 先程言ったことを一部訂正しておこう」

 

ストーカー「何で御座いましょうか?」

 

エイジ「ここは俺の故郷ではなくナザリックだ、後は分かるな?」

 

 

 エイジが言った言葉に対しストーカーはその意味を一瞬考え、そして満面の笑顔で答える。

 

 

ストーカー「了解致しました」

 

エイジ「すまなかったなコキュートス。今度こそ始めよう」

 

 

 微動だにしていなかったコキュートスは軽く頷き了承の意を示す。

 そんなやり取りを見たストーカーは突如勢いよく上着と眼帯を外した。ピンクのシャツ姿になったストーカーは高らかに宣言する。

 

 

ストーカー「皆様! 大変永らくお待たせ致しましたぁっ! エイジ様の記念すべき復帰第一戦! 皆様御一緒にいぃぃぃっ!!!」

 

 

 ナザリック中のシモベ達が身構えた。

 

 

ストーカー「ナザリックファイトッ!!!」

 

ナザリック一同「レディィィッ!ゴオォォォッ!」

 

 

 開始の合図と共に両者が激突する。それと同時に凄まじい剣劇が繰り広げられる。その嵐の様に荒れ狂う剣の舞いに観客達は興奮した。

 

 

デミウルゴス「これは想像以上だ…、セバスは二人の攻撃が見えるかね?」

 

セバス「かろうじて……。相当の速度で打ち込み合っているのでしょうな、コキュートス様が若干押され気味の様です」

 

マーレ「ふえぇ、コキュートスさんも凄く強いのに」

 

セバス「しかも、本来武器は持てば持つ程扱いが困難になる物ですが、コキュートス様にはその様な理屈は通用しません。」

 

アルベド「それならば、寧ろ武器を一つしか持っていないエイジ様の方が分が悪い筈……。それなのにコキュートスが押されているなんて、不敬な事だけどにわかには信じられないわ」

 

 

 守護者達が会話する間にも武器同士がぶつかり合う音が途切れることは無い。それどころか速度が上がっていく程であった。

 

 

エイジ「やはりお前は強いな! コキュートスっ!」

 

コキュートス「エイジ様モ流石ノ腕前ニ御座イマスッ!」

 

 

 尋常ならざる速度で打ち合う両者は楽しそうに会話をかわす。その様子を見ていたシモベ達は驚愕した、あれだけの攻防を繰り広げながらも普通に会話が出来るものなのかと。

 

 

エイジ「このままずっと戦っていたいが、皆を退屈させたくないのでなっ! 幾つか技を出させて貰うぞっ!」

 

 

 その言葉と共に距離を空けたエイジが、背負ったままの鞘の紐を外した。更にそれを鞘に巻き付けた後に腰にすえ居合いの構えをとった。

 

 

アウラ「エイジ様が何かするみたいだよ!」

 

 

 至高の御方が御技を振るう。その貴重な瞬間を見逃すまいと守護者達は目を見開いていた。

 エイジの構えを見たモモンガは眼窩の炎を揺らめかせ、誰にも聞こえない程の声で呟いた。

 

 

モモンガ「『秘剣』……か……」

 

 

 久し振りに見る友の戦いを上機嫌で見つめる死の支配者であった。

 

 

エイジ「コキュートス……、お前も斬撃を飛ばす技を持っているだろう? なら今回は俺流の飛ぶ斬撃を見せてやろう……。『秘剣 神斬』!!!」

 

キンッ!

 

コキュートス「!?」

 

 

 コキュートスは戦慄した。エイジが居合いを放つとその斬撃がそのまま自身に襲いかかったからだ。

 しかし、真に戦慄したのはその数だ。エイジは一度居合いを放ったそばから鞘に刀を戻しまた居合いを放つ。これを異常な速度にて繰り返し、途切れること無くコキュートスに飛翔する斬撃を繰り出した。

 

 

キキキキキキキンッ!!!

 

コキュートス「ヌウゥゥッ!!!」

 

 

 飛来する斬撃をコキュートスは四本の武器で捌いていく。

 

 

エイジ「やるな! ならば……、これはどうだあぁっ!!」

 

 

 エイジは居合いの体勢のまま身を翻しながら飛び、先程よりも苛烈な斬撃を飛ばす。

 

 

エイジ「『秘剣 神斬─空の型─』!!!」

 

 

 まるで空中に足場があるかの様に舞いながらエイジは

様々な角度で斬撃を放っていく。

 『空歩』(くうほ)。エイジが持つその常時発動型スキルは空中に一瞬だけ足場を生成するというものである。

彼はこれを使いこなし戦闘に使用していた。

 

 

コキュートス「カアァァァッ!!!」

 

 

 コキュートスはその斬撃を同じ様に捌くが段々とそのライトブルーの身体に傷が増えていく。

 コキュートスも反撃として斬撃を飛ばすが、それはエイジに当たること無く空へと消えていく。

 空歩の出現角度を意図的に変え、コキュートスの攻撃を回避しながら技を出したのだ。

 

 

シャルティア「凄い……。あんなのどう避ければいいのよ……」

 

 

 驚きのあまり普段の言葉遣いを忘れたシャルティアが呟いた。だがそれに突っ込む守護者は居なかった。皆コキュートスを自分の身に置き換えて絶句していたからだ。

 

 

モモンガ「……あれは私も避けられない」

 

 

 モモンガが何気無く言った一言に守護者達は思わず振り返る。

 

 

アルベド「モモンガ様……、今なんと……?」

 

 

 アルベドが信じられないという顔でモモンガを見た。

 

 

モモンガ「今言った通りだ。私にはあれを避けきることは出来ない、そのまま喰らい続け地に沈むだけだ。……全く、斬撃耐性とは一体何なのだろうな?」

 

 

 モモンガは自嘲気味に自らの特性を語る。そして更にという言葉と共に驚愕の事実を話した。

 

 

モモンガ「あの技を捌ききった者を私は見たことが無い。あのたっち・みーさんですら無理だったのだからな」

 

 

 守護者達は呆然とした。今なんと言ったのだ? AOGが誇る最強の戦士が受けきれない? そんなバカな。

 しかし、当のモモンガに冗談を言っている雰囲気は見受けられない。

 

 

モモンガ「何しろ、ウルベルトさんとたっち・みーさんの二人がかりでも負けなかった人の技だからなぁ」

 

 

 モモンガからしてみればギルメンとの懐かしい思い出話をしたつもりだったが、守護者達はそうは受け取らなかった。

 

 

デミウルゴス&セバス「それは本当ですかっ!?」

 

モモンガ「お、おぉ、本当だ」

 

デミウルゴス「是非、その御話を!」

 

セバス「私も大変興味があります!」

 

 

 急に身を乗り出したデミウルゴスとセバスに内心慌てながらもモモンガは答えようとした。だが、そこでアルベドが会話に割って入る。

 

 

アルベド「デミウルゴス、そしてセバスも。モモンガ様の御話を御聞きしたい気持ちも分かるけど、今はエイジ様が戦われておられるのよ?」

 

デミウルゴス「……し、失礼致しました」

 

セバス「も、申し訳御座いませんでした」

 

モモンガ「まぁまぁアルベド。私は別に構わんよ、また後程話してやろう」

 

デミウルゴス「感謝致します、モモンガ様」

 

セバス「その時を楽しみにしております」

 

 

 自身も聞きたい気持ちに駆られたアルベドだったが、統括としての任を優先させ二人を落ち着かせる。

 ──彼等が話をしている間にも試合は進み、エイジが最後の技を出そうとしている所だった。

 

 

エイジ「良く耐えたなコキュートス。しかし、次が最後だ」

 

コキュートス「全力デ受ケサセテ頂キマス」

 

 

 エイジは地に降り立ち、鞘を腰に付け再び居合いの構えを取る。そしてゆっくりと目を閉じ「明鏡止水」と唱えるとその身体が黄金の輝きに包まれ、更にそこから赤いオーラが溢れだし背後に竜の頭部を形作る。

 その姿にコキュートスはオォ……、と感嘆の声を洩らす。そして、構える前よりも数倍巨大になったと錯覚する程の気迫を出すエイジに対し、自が武器を構え直し迎撃の体勢をとった。

 

 

コキュートス(居合カ……。シカシ、ソレニシテハ柄ガ上ニ向キ過ギテイル)

 

エイジ(流石に構えを警戒したか。)「……俺の戦闘スタイルは大きく分けて二つある。本来の流派:東方不敗と俺オリジナルの技だ。そのオリジナルもまた三つに分かれていてな。刀を振るう『秘剣』。肉体を使う『竜技』。そして、その両者を併用する『竜剣』だ。」

 

コキュートス「……ト言ウコトハコレカラ放ツ技ハ」

 

エイジ「無論、強者《お前》に対する礼儀として最高の技を一つ出させて貰う」

 

──『竜剣』をな。

 

 そう言ったエイジは自身の身体を大きく覆ったオーラを刀に、そして手足に集めていく。

 やがて両手足と刀にオーラが収束されきった時、エイジが動いた。

 

 

エイジ「竜剣の一つ……、『六爪竜牙』(ろくそうりゅうが)!!」

キンッ!

 

 叫んだエイジは上向きに構えた刀を抜き放ち、全くの同時に六つの剣撃を繰り出す。

 竜の爪撃に見立てた六つの斬撃が扇状に広がった後に収束、その先にいるコキュートスを襲う。

 

 

コキュートス「コレハッ!?」

 

 

 コキュートスはその六爪を4本の手に持った武器で捌ききる、と同時に。

 

 

エイジ「カァッ!」

 

 

 その中心から神速のエイジがコキュートスに迫る。

ドゴオォォォォンッッ!!!

 

 

エイジ「ほう、初見で防ぐとは……やるな」

 

コキュートス「運ガ…、良カッタダケデ御座イマス。」

 

エイジ「だが、運も実力の内と言うだろう?」

 

 

 ぶつかった瞬間にもうもうと上がった土煙が晴れた時、二人は技の締め部分で止まっていた。

 エイジはいつの間にかコキュートスの目の前におり、

右の肘と膝を撃ち合わせる様にして攻撃を仕掛けていた。しかし、それはコキュートスのスパイク状の尾に阻まれていた。

 だがそれは、あくまで非常手段の身代わりだった様で、その尾はグシャグシャに砕かれていた。

 

 

コキュートス「カハァッ!」

 

 

 ガシャッ! と音を立てコキュートスが膝をつく、良く見れば先程の六爪を捌ききった筈の4本の腕もズタボロだった。

 

 

コキュートス「捌キキッタト思ッテイタノデスガ…、マサカソノ衝撃デココマデヤラレルトハ。マダマダ修練ガ足リヌ様デスナ」

 

エイジ「そんな事は無い、あの武人建御雷さんも初めてこの技を受けた時は似た様な状態だった。つまり……」

 

 

 エイジは満身創痍のコキュートスの肩に手を置き笑顔で言った。

 

 

エイジ「お前は武人建御雷さんと同じ高みに居る武人って事だ、誇れコキュートス。しかもだ、技が当たる直前に、お前と建御雷さんが重なって見える程だったぞ」

 

コキュートス「オ、オォ…。我ガ主ト…」

 

 

 コキュートスは、もし自分に涙腺があればこの場所を涙で満たす事だったと思う程歓喜した。

 

 

コキュートス「……参リマシタ、流石ハ至高ノ41人ガ御一人『武神 エイジ』様ニ御座イマス。」

 

ストーカー「試合終了おぉぉぉっ!! 勝者!! 武神エイジ様あぁぁぁっ!!」

 

 

 場内が歓声と拍手に包まれる。

 エイジがスキルを解除するとコキュートスの傷が一瞬にして塞がった。まるで何事も無かったかの様に。

 

 

エイジ「楽しかったぞ、コキュートス。また戦おう!」

 

コキュートス「コノ至ラヌ身デ良ケレバ喜ンデ」

 

 

 惜しまない拍手と歓声の中、二人はガッシと熱い握手を交わす。

 そうだ、とエイジは空中に出来た黒い穴に手を突っ込み、そこから一本の刀を取り出してコキュートスに差し出す。

 

 

エイジ「コキュートス、約束の品だ。受け取ってくれ」

 

コキュートス「シ、シカシ、私ハエイジ様ヲ…」

 

 

 満足させられてはいないとばかりに遠慮するコキュートス。やれやれと頭を掻いたエイジはモモンガに話しかける。

 

 

エイジ「モモンガさん! 俺は個人的に今回の戦いに満足している! それでコキュートスに褒美を取らせたいんだが、構わないですよね!」

 

モモンガ「ええ! 勿論構いませんよ! コキュートス、私も今回の見事な戦いに褒美をやろう」

 

 

 モモンガはフィールドに転移し、コキュートスに指環を差し出した。

 

 

コキュートス「マ、マサカ、コノ指環ハァァ!?」

 

モモンガ「そう、選ばれし者のみに着用を許される『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』だ」

 

 

 モモンガの言葉に場内、果てはナザリック地下大墳墓全体がどよめく。

 

 

コキュートス「シ、シカシ、コレハ偉大ナル至高ノ41人ノ方々シカ所持ヲ許サレナイ物デハ!?」

 

モモンガ「冷静になるのだ、コキュートスよ。お前も知っての通り、現在ナザリック地下大墳墓は過去類を見ない程の異常事態にみまわれている。この様な状況では何が起こるか予想がつかん、そして、その急激な状況変化に対応する為にも階層守護者には迅速に対応してもらわねばならん。だが、ここで一つ問題点があるのだ。」

 

コキュートス「……階層間ノ転移制限デスネ?」

 

モモンガ「その通りだ。故に、各階層守護者達には渡しておくべきだと私達は判断した」

 

 

 エイジが不安そうなコキュートスを安心させる様に笑顔て頷く。

 

 

モモンガ「そして、此度の戦いでエイジさんと私は非常に満足出来た。ならば最初にお前に贈らず誰に贈るというのだ? コキュートスよ」

 

エイジ「俺達の感謝の気持ちを受け取ってくれ、コキュートス」

 

コキュートス「……」

 

 

 コキュートスは黙ってしまった。忠誠心が高いのはいいが、感謝の品位はもう少し気軽に受け取って貰いたいものだとエイジは思った。

 

 

エイジ「なら、理由を変えよう。コキュートス、この刀と指環、そして立場を預かっていて欲しい、無論使って構わない」

 

モモンガ「……あ~、成る程、上手い事言いますね」

 

コキュートス「ドウイウ事デ御座イマスカ?」

 

エイジ「つまりだな、いずれ帰ってくる可能性のある我等が友の代わりにこれらを預かっていて欲しいと言う事だ」

 

コキュートス「武人建御雷様ノ代ワリニ……」

 

 

 コキュートスが震えている。偉大な主の代わりを勤めるという大役に興奮しているのだろう。

 

 

エイジ「受け取って…くれるな?」

 

コキュートス「畏マリマシタ。ソノ大役、果タサセテ頂キマス」

 

 

 コキュートスは頭を下げながら指環と刀を丁重に受け取った。

 再び場内が沸き立った。

 

 

<シモベ達>「エイジ様万歳! モモンガ様万歳! 『凍河の支配者コキュートス』様万歳!」

 

 

 特等席でデミウルゴスがゆったりとしていて、それでいて嫌味を含まない拍手と笑顔でコキュートスを祝った。

 

デミウルゴス(おめでとう、友よ。羨ましいが、素直に御祝いさせて貰うよ)

 

 

 偉大な御方々に直接品を貰った友に軽く嫉妬しながらもデミウルゴスは賛辞を送った。

 隣に座る守護者統括殿がその長い髪をワッサワッサしながら「モモンガ様からの指環~」、と唸っているのを見ない振りをしながら。 

 




 あぁ~、こころがキンキンするんじゃあ~(*´ω`*)
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