武の竜神と死の支配者   作:Tack

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第二十話【神となった日⑧】

「話……、で御座いますか……?」

 

 

 食事会もそろそろ御開きという頃、ドモンは動き始めた。

 アルベドと二人きりで話をする場を設ける為だ。

 

 

「そうだ。ちょっと聞きたい事があってな」

 

「……畏まりました」

 

(これで良し。もう一つは……)

 

 

 ドモンが見つめた先に、守護者達と他愛のない会話を楽しむアインズの姿があった。

 

 

「ほぅ、それは初耳だなアウラ」

 

「えっ! そうだったんですかモモンガ様! なら、今度私が御案内しますよ!」

 

「そうだな、時間を見付けてお願いするとしよう」

 

「はい! お任せ下さい!」

 

「ぼ、僕も御一緒させて頂きたいです!」

 

「はっはっはっ。それではマーレにもお願いするとしようか」

 

 

 以前、ドモンはアインズに提案した事があった。

 もう少し気軽に守護者達と、友人の子供達と接してみたらどうだろうかと。

 アインズは未だ忠誠心絡みの事を心配しており、当初は渋っていた。だが、その心配は杞憂となった。

 

 喋り方はまだ時間が必要だろうが、この様子だと問題はないだろうな。

 ドモンは楽しそうに会話するアインズを見ながらそんな事を考え、頃合いを見計らって伝言(メッセージ)を送った。

 

 

《アインズさん、そろそろパンドラの所行かないと》

 

《あ……。はい……》

 

 

 アインズはあからさまに肩を落とし、アウラ達に心配されていた。

 

 

(アインズさん、そこまでパンドラと会うのが嫌なのか……)

 

 

 親である存在に、例えその自覚が無いとしても、意図的に避けられているというのはやはり悲しいことではないのか? ドモンはそう思った。

 

 

(やれやれ……、どうアプローチするべきか)

 

 

//※//

 

 

 食事会を終え、後に重要な集会を開くとだけ伝えたドモンとアインズは、ある人物に会う為に宝物殿へと足を運んでいた。

 

 【パンドラズ・アクター】

 様々な貴重品などが保管されている、ここ宝物殿の領域守護者であり、また強さや頭脳もアルベドやデミウルゴスに匹敵するナザリックの財政管理者である。

 

 

《うー、やだなぁ……》

 

《まだ言ってんですか》

 

《だってぇー》

 

 

 そのパンドラズ・アクターに会う為に来たのだが、その創造主は見た目にそぐわぬ駄々っ子っぷりを発揮していた。

 

 

《子供じゃないんですから。ほら、シャキッとして、シャキッと》

 

《うー、帰りたいよー》

 

《大体、何でそんなに会うの嫌なんですか?》

 

 

 ドモンは、以前から気になっていたパンドラを避ける理由を聞いた。

 

 考えてもみれば不自然だ。あんなにもユグドラシルを、このギルドを愛していると豪語していた人物が自分の作り上げたシモベ(NPC)を避けるなど。

 何か深い理由があるのではないかとドモンは考えた。

 

 駄々をこねていたアインズはピタッと動きを止め、暫しの間を置いた後、ゆっくりと話し出した。

 

 

《……だって、想像して下さいよ》

 

《何をです?》

 

《自分が作った設定の通りに動き回る存在がいたら、ドモンさんは嫌じゃないですか?》

 

《いや、別に》

 

 

 ドモンはアインズの質問をバッサリと切った。

 アインズは溜め息を吐いた……、とは言っても実際に呼吸をしている訳ではないので、あくまで溜息風(・・・)の行動にはなるが。

 

 

「あー! もう! 分かりました! 分かりましたよ!」

 

「うぉっ!?」

 

 

 突如伝言(メッセージ)ではなく、実際に大声を出したアインズにドモンは驚いた。

 そしてそのまま、アインズは遠い目をしながら話だした。

 

 

「あいつは、パンドラズ・アクターは俺の黒歴史なんですよ……」

 

「黒歴史? ってことは……」

 

「ええ、あいつの設定や服装とかは、俺が昔超格好いい! ……って思って制作したものなんです」

 

「……成る程。つまりは、他の守護者達を見て、自分が作った守護者もその通りに……。痛い行動をするだろうと思ったから会いに来なかったと?」

 

「う……、はい。触らぬ神になんとやらですよ」

 

 

 アインズの話を聞いてドモンは考え込んだ。

 自身の作った守護者(シュバルツ)は問題無い、寧ろ誇りとさえ思っている。

 けれども、封印したい過去等を込めた存在が動き出すのは勘弁願いたい。

 ドモンはアインズの気持ちになって考え身震いした。

 

 

「でも……、それじゃああんまりですよ」

 

「……」

 

 

 ドモンの言葉にアインズは黙ってしまった。

 沈黙から少し経ち、どちらがという訳でもなく再び歩き始める。

 様々なアイテムなどが保管されている場所を通り過ぎ、目的地である宝物殿の一室へと着いた。

 

 この場所は、かつての仲間達(ギルメン)との談話などにも使用した、云わば待合室の意味合いを持つ部屋である。

 そこに彼はいた。

 

 

「ようこそ、おいで下さいました」

 

 

 黄系統の色を基調とした軍服。胸付近には様々な勲章。そして肩にかけたコートを翻し大袈裟に手を振り御辞儀をする。

 軍服とのバランスを考慮されたのか、同じ系統の色ではなく、黒っぽい配色のなされた帽子を目深に被っている。

 

 

「このナザリック地下大墳墓の支配者……」

 

 

 御辞儀から姿勢を正し、踵を打ち付け心地好い音を鳴らし敬礼をする。

 

 

「我が敬愛なる創造主、モモンガ様っ!!!」

 

 

 紫のサラサラヘアーを持つ、イケメン(・・・・)

 彼こそが、この宝物殿を守護するパンドラズ・アクターである。

 

 

「お、お前も……元気……そう……だな。パンドラズ・アクター……?」

 

「はい! 元気にやらせて貰っております」

 

 

 そう言ってパンドラは再び大袈裟に御辞儀をした。

 だが、アインズの心の中ではある疑問が生まれていた。

 

 

(えーっとぉ……、誰だこいつ?)

 

 

 アインズは自身の記憶との違いに悩むが一向に答えは出てこない。

 確かにパンドラはナーベラルと同じ種族の二重の影(ドッペルゲンガー)であり、変身能力を有している。

 しかし、この姿に覚えはなかった。

 

 

「何か、私の顔に付いておりますか?」

 

「い、いや……」

 

 

 いや、だから誰だよお前。そう混乱するアインズの横から、ドモンが前に一歩踏み出し普通に挨拶を交わす。

 

 

「久し振りだな、パンドラ」

 

「おぉ! これは武神エイジ様っ! お戻りになられたことは耳に挟んでおりました、御挨拶が遅れてしまい申し訳御座いません」

 

 

 気にするなと手を軽く振るドモン。それを見て不思議に思ったアインズは伝言(メッセージ)を送る。

 

 

《あれ? 何で普通に挨拶してるんですか?》

《は? いや、何でって……》

 

《だって見た目が》

 

《え……?》

 

《あれ……?》

 

 

 始めは何言ってんだコイツ。そう書かれていたドモンの顔が、徐々に不機嫌な物へと変わっていく。

 

 

《アインズさん……。もしかしてとは思いますが、ペロさんとの約束忘れたんですか?》

 

 

 その言葉にアインズは、一瞬考えた後、大声で叫んだ。

 

 

「あっ! 思い出したっ!」

 

「ど、どうかなさいましたか。モモンガ様……?」

 

「あぁ、いやいや気にしないでくれパンドラ。さっきモモンガさんと今後の事について話したんだが、その時色々あってな」

 

「はぁ……。左様でございましたか」

 

 

 ドモンのフォローによってその場は収まった。

 しかし、フォローされた本人は罪悪感に苛まされていた。

 

 

(何で忘れてたし俺ぇっ! よりよってペロさんとの約束をっ!)

 

 

 アインズがぐぬぬと言った空気を醸し出していると、パンドラがドモンの側まで近寄り小声で話し掛けて来た。

 

 

「状況は芳しくないのでしょうか?」

 

 

 ドモンもそれに合わせ小声で話す。

 

 

「何故そう思う?」

 

「いえ……。どうやらモモンガ様が色々と御抱えになっているものかと思いまして」

 

 

 それを聞いたドモンはフッと笑い、心配要らないさと答えた。

 

 

「それは良かった」

 

「……パンドラ。……モモンガさんの事好きか?」

 

「はい? ……どういった旨の質問か分かりかねますが、先程御挨拶させて頂いた口上に私の全てを込めております」

 

 

 期待通りの言葉が聞けたドモンはニッコリと笑った。

 それを見たパンドラは、自身の返答が間違っていなかったことを察した。

 そしてドモンは話を進める為、未だ罪悪感に苦しんでいるアインズに声を掛ける。

 

 

「モモンガさーん、そろそろ帰ってきて下さいよー」

 

「ぶつぶつ……。ハッ!」

 

「もう……大丈夫ですかね?」

 

 

 アインズがドモンの方を向くと、腰に手を当てやれやれと言った感じのドモンの姿が目に入った。

 

 

「す、すいません。何か、色々と……」

 

「まぁ、ショックだったのは分かりますが。今はやることがあるでしょう?」

 

「あっ、はい……」

 

 

 ドモンに促され、アインズはパンドラの側まで歩み寄った。

 

 

「パンドラズ・アクターよ。今回私達が来たのは二つの用件を伝える為だ」

 

「ハッ! モモンガ様!」

 

 

 美しい敬礼をするパンドラ。その姿にアインズは無い筈の眉をしかめる。

 だが、今はそういったことをする時ではないと自らに平常心に活を入れる。

 少し落ち着いた後、人指し指を立てアインズは話し始めた。

 

 

「一つは、この後開かれる方針集会でお前のことを皆に紹介すること」

 

 

 敬礼をしたままの体制で、パンドラは軽く頷く。

 

 

「そして二つ目は……」

 

 

 中指も立て、二つを意味する形を取ろうという所でアインズは一瞬躊躇った。

 

 

「モモンガさん?」

 

 

 ドモンの声に反応し、アインズは言葉を続けた。

 

 

「お前に……、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを預けることだ」

 

「お……、おぉ……! かの偉大なる指輪をこの私めに……!」

 

「あぁ……」

 

 

 至高の四十一人しか持つことを許されない指輪(ギルドの証)

 それを所持することが許されたパンドラとは対称的に、アインズの持つ雰囲気は少し暗かった。

 自分の黒歴史にナザリック中を歩き回られる、それが心底嫌だったのだ。

 

 

「では、その指輪はモモンガ様から直接手渡して頂けるのですか?」

 

 

 パンドラは期待に満ちた眼でアインズに尋ねた。

 勿論指輪を貸し与えて貰えるという事もそうだが、何よりもパンドラが喜んだのはそれを、自身の創造主から直接渡して(・・・・・)貰えるのだろうという事だった。

 しかし。

 

 

「いや……、後でアルベドに渡しておく。それを受け取るといい……」

 

 

 思わずドモンはなんじゃそりゃと口に出しそうになった。

 だが、当の本人(パンドラ)はそれを聞いた後も至って普通に返事をする。

 まるで気にもしていないといった風に。

 

 

「……左様で御座いますか。では、後ほど統括殿から受け取らせて頂きます、モモンガ様」

 

「うむ。それと、今度から私のことをアインズと呼ぶ様に。アインズ・ウール・ゴウンだ」

 

「おぉ……承知致しました。アインズ様」

 

「更に、エイジさんのことはドモン・カッシュ。ドモンと呼ぶ様にな」

 

「畏まりました」

 

 

 二人の会話を横で聞いていたドモンは、その一連の流れに頭が痛くなる感覚を覚えていた。

 

 

《それでいいんですか? アインズさん》

 

《これで……、いいんですよ。幸い、パンドラも了承してくれましたし》

 

 

 ドモンはアインズの胸ぐらを掴んでそうじゃねえだろう! と叫びたかった。

 しかし、今この場でそれは避けねば。理性がそう働き掛ける。

 

 せめてパンドラに自分がしてやれることはないかと考え、一つの案を閃く。

 

 

「アインズさん」

 

「ん? なんですか?」

 

「宝物殿を今まで護り続けてきた褒美をやりたいんですが、どうですか?」

 

「パンドラに? ……そうですね、パンドラも文句一つ言わずやってくれてますから」

 

「偉大なる御方々よ、どうぞ私めなどのことは……」

 

 

 パンドラがやんわりと否定の言葉を口に出そうとする前にドモンが言葉を発する。

 

 

「何かアインズさんの手持ち品から渡すなんてどうですか?」

 

「ドモン様……」

 

 

 パンドラが何かを察した様な顔でドモンを見る。

 ドモンは軽くウィンクをした後、アインズに提案を続けた。

 

 

「どうです? 何もレア物って訳じゃなく、何でも構わないんですけど……。駄目ですかね?」

 

 

 ドモンの提案を聞いたアインズは、顎に手を当て少し考え込んだ。

 そして、こう言った。

 

 

「後で考えておきましょう」

 

 

 ドモンはズッコケそうになった。

 アインズのこの場から早く立ち去りたいという感情が、あまりにも露骨だと感じたからだ。

 

 

「アインズさん、アンタ……!」

 

「ドモン様」

 

 

 ドモンがいい加減声を荒げそうになった時、パンドラが笑顔でそれを止めた。

 

 

「パンドラ、お前……」

 

「良いのです。元より私めは褒美など望んではおりません。……強いて言わせて頂くのであれば、この先もお仕えさせて頂くことなのですから」

 

 

 パンドラは優しい笑顔をしていた。

 だがその笑顔は、ドモンにはとても悲しい顔に見えた。

 

 

「本当に……、いいのか……?」

 

「勿論で御座います。ドモン様こそ、この私めのことを案じて下さり、感謝の言葉も御座いません」

 

 

 そう言って、パンドラは先程までの大袈裟な振舞いを行わない、とても素直な御辞儀をした。

 

 

「パンドラ……」

 

 

 ドモンは喉まできている言葉を無理矢理飲み込んだ。パンドラがここまで言うのだ、自分がこれ以上口を出すのは筋違いだと、そう言い聞かせて。

 そして、アインズと共にこの場から去ろうとした。

 

 

「では……、また後でな」

 

「……」

 

「はい、このパンドラズ・アクター、創造主たるアインズ様の御力になれる様、誠心誠意を以てことにあたらせて頂きます」

 

 

 パンドラは二人がここに来た時と同じ、大袈裟な振舞いで御辞儀をした。

 それを見たアインズは内心悶え、ドモンは胸を締め付けられるものを感じた。

 

 そして歩き出す二人。

 待合室を抜け、通路を歩く。

 ドモンは姿勢を戻すパンドラを背後で感じ、つい振り返る。

 

 

「……っ!!!」

 

 

 そこには、先程まで見えなかった蒼いオーラに身を包まれるパンドラの姿があった。

 それは、かつてアルベドに見えたものとは違ったが、系統は同じだった。

 即ち、負の感情。

 

 パンドラに見えたの悲しみのオーラだった。

 今まで欠片も見ることがなかったのは、彼の守護者としての意地だった。

 偉大なる創造主にしてこのナザリックの頂点。自身の親とも言える存在に気を遣っていたのだ。

 

 

──構わない、あの方のお役に立てるのであれば。

 

 

 アルベドの時と同じものだとドモンは直感した。

 強い意志、あるいは想いと言うものが、パンドラの背中に言葉として浮かび上がっていた。

 それを見たドモンは、もう止まろうとは微塵も思わなかった。

 

 

「アインズさん……」

 

「はい? なんです──かーっ!?」

 

 

 アインズの肩を掴みズルズルと引き摺る。そしてそのままパンドラのいる場所まで戻った。

 二人が再び近付いて来るのを、パンドラはシモベ特有の感知能力とその聴力で感じ振り向いた。

 

 

「如何なされましたか? 何かまだ連絡事項が?」

 

「いや……」

 

「ドモンさん! 痛い! 真面目に痛いですか……らっ!」

 

 

 ドモン(前衛)の握力によって肩を掴まれていたアインズは、その痛みから怒り気味にそれを振りほどきドモンに食って掛かった。

 

 

「急になんですか! 結構痛かったですよ!?」

 

「アインズさん……」

 

「何ですか!」

 

「パンドラと……、ちゃんと話をしましょう」

 

 

 その言葉は、アインズには混乱を招き、パンドラには驚きをもたらした。

 事実、彼の顔は驚きの表情を浮かべている。

 

 

「ドモン様……」

 

 

 パンドラはその表情のままドモンの名を口にし、固まる。

 対して、名を呼ばれたドモンは怒りの表情でアインズを睨んでいた。

 その表情は中々に強烈で、アインズを軽く後退りさせる程のものだった。

 

 

「な、何ですか急に……、そんな怖い顔して……。話ならもう終わったじゃないですか」

 

 

 自身がその表情を向けられる理由には大いに心当りはある。だが、それでもここは引けない、引きたくない。

 その気持ちでアインズは踏ん張っていた。

 

 

「アインズさん……、貴方言ってましたよね? 昔の仲間達に守護者達と逢わせてやりたいって。」

 

「そ、そんな事も言いましたね……。それがどうしたって言うんですか?」

 

 

 アインズはドモンの言いたい事を既に理解していた。けれども身体が、心が拒否反応を起こしていた。

 

 

「親と子が離れ離れなのはいけない事だって。悲しい事だって。そう……言いましたよね?」

 

「……そう、です。はい」

 

 

 ドモンの圧力に負け、どんどん小さくなっていくアインズ。

 元々両者の体格は圧倒的にアインズの方が大きい。だが今は違う。

 まるで逆だ、説教する大人とされる子供の図だった。

 

 

「そんな貴方なら分かる筈でしょう? 自分の創造主が、親が、只の一度も会いに来てくれないというのがどれだけ寂しい事かを」

 

「……」

 

 

 アインズはとうとう黙りこくってしまった。

 何の反論も出来ないからだ。

 

 

「ドモン様。御気持ちは有り難いのですが、どうか……」

 

「お前もお前だ! パンドラ!」

 

「は! はいっ!」

 

 

 急に怒鳴られたパンドラは、最早癖である敬礼の体勢をとり、そのまま硬直してしまう。

 

 

「何処の世界に親に甘えない子供がいる! ……少し位甘えたっていいじゃないか」

 

 

 ドモンが力無く言った最後の一言はアインズの胸を抉った。

 

 

(そうだ……、ドモンさんは奥さんが妊娠中だった筈。なら子供も……)

 

 

 ドモンの家族の一件。それを失念していたアインズは自分に腹が立った。

 

 

「俺にも実は子供がいたんだ……」

 

「そう……だったのですか。ドモン様の過去の件は以前、シュバルツ殿が持って来て下さったアイテムを通して拝見させて頂いてはおりましたが……」

 

「あの映像には写ってない。妻と共に逝ったよ……」

 

 

 あれ程怒っていたドモンの姿はもう無い。

 雨に濡れた仔犬の様に小さくなっていた。

 

 

「パンドラ……」

 

「はい……」

 

「俺は、親と子は仲の良いのが当たり前と思っている。それを聞いた上でもう一度答えて欲しい」

 

「……」

 

 

 ドモンの次の台詞はパンドラには予想出来た。

 故に悩んだ。正直に言ってしまって良いのだろうかと。

 

 

「パンドラ、お前に褒美を取らせたい。何か望む物は無いか?」

 

 

 沈黙。パンドラは帽子のツバを下げ、黙ってしまった。

 そして暫しの沈黙の後、ドモンが諦め掛けた。その時。

 

 

「わ、わた……」

 

「何だ……?」

 

 

 先程までの彼とは違い、自信無さげに言葉を綴るパンドラ。

 その唇は震えていた。

 

 

「わ、私……を。私を……あ」

 

 

 ドモンとアインズはそれを黙って見ていた。

 パンドラが何を言うか聞き漏らさない様に全神経を集中させた。

 答えは、既に出ていたが。

 

 

「私を、私を……。……アインズ様、私の我儘を……どうか御許し下さい」

 

「……構わないとも。パンドラズ・アクター」

 

「……私を、愛しては下さいませんでしょうか!」

 

 

 アインズはその言葉を聞き、無い筈の心臓を撃ち抜かれる錯覚を起こした。

 そして、その言葉に対してアインズがとった行動は……。

 

 

「……勿論だとも。我が息子よ……」

 

「ア、アインズ様……」

 

 

 息子(パンドラ)を、優しく抱き締める事だった。

 

 

「すまなかった……、本当にすまなかった。パンドラズ・アクター」

 

「ア、アインズ様。アインズ様……」

 

 

 アインズの腕の中でパンドラは泣いた。今までの凛々しくも残念なキャラからは到底想像も出来ない事だった。

 

 

「……これからは、親子としての時間も作る努力をする。……それと、普段は父と呼んでくれ、息子よ」

 

「はい……! 父上……!」

 

 

 ドモンはその光景を見て少し辛い気持ちになったが、今は只、素直に友人の大切な瞬間を見届ける事にした。

 宝物殿に、パンドラの泣き声が静かに響いた。

 

 心からの喜びを告げる、嬉し泣きの声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 如何でしたか? お涙頂戴の回(やっすくて、くっさい三文芝居)
 パンドラを表舞台にだす為にはアインズ様との和解(?)が必須と考えたのが始まりでした。
 
 因みにまたまたキャラのモデルがいるのですが、パンドラの姿分かりますかね?
 ヒントは、あの後パンドラは無事アインズ様から指輪を受け取ったのですが、その時のリアクションです。


「パンドラ、これをお前に預ける。……これからも忠義に励んでくれ、息子よ」

「ハッ! 謹んでお受け致します、父上っ!」


 ドモンとアインズが去った後。
 指輪の匂いを嗅ぎながら、少し、と言うかかなり危ない顔。
 所謂ヘブン顔である。
 そしてその表情のまま。


「アインズ様のっ! 父上のっ! 芳しい香りっ!」


 と興奮の度合いを上げていき、そしてとうとう。


「フォルティッッッッッシモッ!!!!」


 そう奇声を発し、果てた。


 ……バレバレですねwww
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