武の竜神と死の支配者   作:Tack

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第二十三話【シュウジとモーガン~白と黒①~】

 

 

 場末の酒場。

 そう表現しても差し支えない、そんな場所にその三人組は現れた。

 

 

「おい見ろよあれ、凄ぇな。へっへっへっ」

 

「見慣れねぇ奴だな……。立派な全身鎧(フルプレート)なこって!」

 

 

 その酒場……、にしか見えない宿屋の一角で昼間から酒を飲んでいた男達は、その三人組の先頭を歩いていた人物を挑発する言葉を吐く。

 それもはっきりと聞こえる声量でだ。余程の間抜けでもない限り、それがわざとだとすぐに分かるだろう。

 

 では何故そのような挑発をしたのか。答えは非常に簡単なことだ、要はこの酒を飲んでいた男達は値踏みと脅しをしかけたのだ。

 

 まず値踏みをした理由だが、実はこの二組は同業者である。それは両組の各人が胸元にぶら下げているプレートが証明している。

 このプレートはこの酒場がある街、城塞都市エ・ランテルにある冒険者組合という場所で登録……。即ち冒険者としての手続きを終えた者が受け取る証である。

 このことから男達はこの見慣れぬ三人組を同業者と考え、自分達の仕事上のライバルになり得る存在かを確認していたのだ。

 

 それは同時に、「自分達の邪魔をすると後が怖いぞ?」 そういう脅しも兼ねていた。

 

 

「……」

 

 

 三人組の先頭を歩く漆黒の全身鎧(フルプレート)を纏った、ゆうに二メートルを超えるであろう大柄な人物は、まるで意も介さぬ。そんな態度で挑発を仕掛けてきた男達を通り過ぎて行った。

 

 

「ちっ! 無視かよ。図体とおんなじでデケェ態度しやがって!」

 

 

 またもや聞こえる声量で悪態をつく男。それもその筈。

 男のプレートの色は(アイアン)、対して三人組のプレートは(カッパー)

 このプレートの色にはちゃんとした理由があり、それが意味する所は強さのランクだ。つまるところ、男は自分の方が格上と分かった上で挑発していた。

 

 色についての補足だが、プレートの色は冒険者組合が定めたもので、最初のランクである(カッパー)から(シルバー)(ゴールド)白金(プラチナ)、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトと順に強く、また待遇が良くなっていく。そして同時に、言うまでもないことだろうが名声も得る。

 

 具体的に言うのであれば、(ゴールド)白金(プラチナ)辺りから貴族や王族、つまるところの権力者から直接依頼を受けたりすることがある。

その中には、国家権力と不可侵を保っている冒険者、正確には組合を引退した後にお抱えになる者もいる。

 

 無論、死んだり二度と戦えない身体になったりする者が殆どなので、先述のような縁から身を立てる者は先ずいない。

 だが、それでも冒険者になりたいと組合の門を叩く者は絶えない。

 いつの時代、どんな世界でも、夢──もとい財を求める人間はいるものだ。

 

 

「一泊お願いしたい……」

 

 

 店の奥まで進み、そこにいた主人に対して静かに響く低音。それを聞いて、酒場にいた男達を含めた客はその全身鎧(フルプレート)の人物が男だと判断出来た。

 普通ならば身の丈二メートルを超える人物は男と考えるのが妥当。だが、この界隈では逆だ。

 ある有名人の存在のせいで、それは嘲笑の的となる。

 

 

(カッパー)か……。三人だな? ならば相部屋で……」

 

 

 どう見ても用心棒と言われた方がしっくりとくる、そんな見た目の主人が金額を伝えるよりも早く全身鎧(フルプレート)の男は言葉を発した。

 

 

「個室を頼む。この三人だけの部屋がいいんだ」

 

「……あのな、言っとくが新米は相部屋で顔を──」

 

 

 主人は相部屋にすることでのメリットを親切に教えようとした。実はこの主人も元ではあるが冒険者。

 怪我が原因で引退した後この宿屋の主人となったのだ。

 ぶっきらぼうだが根は面倒見の良い人物で、この宿に宿泊する新米冒険者にやや……、というかかなりの迫力をもったアドバイスを送っている。

 

 

──少しでも長く生きて貰いたい。

 

 

 かつて戦闘で仲間を失い、大きな絶望を経験した男故の言葉。

 ツンデレもここまで来ると立派なものである。

 そんな不器用ながらも優しい男の言葉を、全身鎧(フルプレート)の男の後ろにいた男が遮った。

 

 

「あー、悪いんだがそういうのはなしにしてくれ」

 

「あ?」

 

 

 主人が声の方向に視線を向けると、そこには白の外套を身に纏い、口元まで布で覆う男が立っていた。

 全身鎧(フルプレート)の男より背は低いが、何処と無く強者の風格を漂わせていた。

 

 

「んだお前ぇ? 俺の親切心が……!」

 

「だから言ってるじゃねぇか。そういうのは要らねえって」

 

「てめっ……!」

 

「シュウジ……、その辺にしておけ」

 

「だがよぅ、モーガン」

 

 

 全身鎧(フルプレート)の男モーガンに静止を受けた白い外套の男、シュウジがバツが悪そうに舌打ちをした。

 仲間の行動に溜息を吐いたモーガンが再び主人に話しかける。

 

 

「連れが失礼な物言いで済まないな、主人」

 

「ったく! これだから(カッパー)の新米は! 礼儀とか諸々なってねぇんだ! ……んで? 結局どうすんだ」

 

「話が戻るようで済まないが、三人が泊まれる個室を頼む。因みに食事は不要だ」

 

「…………はぁ、勝手にしろ。……生憎四人部屋しかねぇから少しばかり高ぇぞ。一日十銅貨、前払いだ」

 

「感謝する」

 

 

 込みあがる怒りを飲み込んだ主人がすっと差し出した手、そこにモーガンは十枚の銅貨を落とした。

 

 

「ん……、部屋は二階の一番奥だ。んで、こいつは鍵だ」

 

「あぁ」

 

 

 首をくいっと動かし主人は部屋へ行くよう促す。年季を感じる錆び付いた鍵を受け取ったモーガンは、短い了承の言葉を発した後階段に向かって歩を進めた。

 それに残りの二人も着いていく、が。

 

 

「へへへっ」

 

 

 モーガン達がこの宿屋に入った時に挑発してきた男達……、その中のスキンヘッドの男が堂々と進行方向に足を投げ出したのだ。

 それもやはりわざとであり、顔はニヤついていた。一緒のテーブルで酒を飲んでいた他の二人の男達も笑っていた。

 

 

(予想はしていたが、いざ実際に起こると面倒だな……)

 

 

 面倒と感じたモーガンが取った対応は。

 

 

ドカッ!

 

「いったぁっ!」

 

 

 男の足を軽く蹴り飛ばすことだった。

 待ってましたと男は立ち上がりモーガンを睨み付ける。

 

 

「いってぇなぁ、オイ! どうしてくれんだぁ!?」

 

 

 まるで街角で肩がぶつかったチンピラのように男は突っかかる。自分より頭が一個以上大きい相手にガンを飛ばせるのは見事だが、これにも訳がある。

 先程の話で出たように、モーガン達のプレートは(カッパー)、対して喧嘩を吹っかけてきた男達のプレートの色は(アイアン)

 端的に言うならば、自分達の方が上で負ける筈がないという、そんな小物特有の考えからの行動だった。

 

 

「ふむ、ではどうすれば良いのかな? 先輩殿」

 

「そりゃあ……って。おいおいなんだよ、良い女連れてるじゃねぇか!」

 

 

 スキンヘッドの男がモーガンから視線を逸らした先には、モーガンとシュウジの後ろに控えていた黒髪の美女がいた。

 絶世の美女。そうとしか言い表せない程の美女。

 しかしその顔は無表情で、瞳からは冷たさしか感じられない。

 

 

「私達の仲間が何か?」

 

 

 自分達の仲間がどうしたと言うのだ。そういった気配を出すモーガンに顔も向けず男は平然と言った。

 

 

「いやぁ、さっきので足が折れたかも分かんねぇ。そこの女に酒でも注いで貰いながら介抱して貰わねぇといけねぇなぁ……。そう思っただけさ」

 

 

 余りにも下種な発言をする男に仲間はおろか、店にいた他の客、更には主人までもが静観を決め込んでいた。

 別にスキンヘッドの男が恐ろしいからではない。少なくとも客の中には(アイアン)級の冒険者が同数以上おり、戦力的には圧倒出来た。

 

 ならば何故仲裁をしないのか。それは、冒険者同士のいざこざが厄介である、仲裁によるメリットがない。

 中には通過儀礼だと考える者さえいたからだ。

 

 結論としてその程度のトラブルは日常で起こり得ること、だからこそそれを自分達だけで対処出来なければ、これから冒険者としてやってはいけないと言うことなのだ。

 

 

「ほぅ、つまりお前の遺言は、俺の妹であるナーベに酒を注いで貰いたかった……。で、いいんだな?」

 

「はぁ? なんつったテメェ?」

 

 

 今迄沈黙を保っていたシュウジが、突然横から割り込んできた。

 

 

「何度も言わすんじゃねぇよ、このタコ。……遺言はそれで良いのかって親切にも聞いてやってんだよ」

 

「テメッ……!」

 

 

 ナーベと呼ばれた三人組最後の一人は、無表情のままそのやり取りを見ていた。

 

「兄様、こんな輩を相手にしているのは時間の無駄では?」

 

「……っ!」

 

 

 同時に(けな)され、スキンヘッドの男は正に茹で蛸のように顔を紅潮させていく。

 

 

「……っのクソアマァ!」

 

 

 男が拳を振り上げ、そのままナーベの顔に直行させるべく加速させた。

 

 

ガシィッ!

 

「テメェ……、今俺の妹になにしようとした?」

 

 

 それをシュウジが止め、凄まじい握力で握る。

 

 

「いでででっ! 痛い痛い! 折れる折れる! はっ、放せクソ野郎!」

 

 

 相当な力で握られているのか、スキンヘッドの男は必死で逃れようとするがビクともしない。

 

 

「そうか? なら放してやんよ、そらっ!」

 

「おぉぉぉっ!?」

 

 

 シュウジが握っていた手を軽く捻ると、男の身体は重力から解き放たれたように宙を舞い。

 

 

「へへへー、ようやく手に入っ──」

 

 

 向こう側の席で、なんとも愛しそうにポーションを見ていた女冒険者のテーブルに激突した。

 

 

「天罰! ってな」

 

「シュウジ……」

 

「先輩だからって何やってもいいって訳じゃないぜ? モーガン」

 

 

 モーガンとシュウジが軽い会話をし、階段を昇ろうとした時。

 

 

「おっきゃあぁぁぁっ!!!」

 

 

 鳥を絞め殺したような女の悲鳴が響き渡った。

 

 

「なんだ?」

 

 

 モーガンが後ろを振り向くと、半泣き状態の女冒険者が怒り心頭といった表情で迫ってきた。

 

 

「ちょっとアンタ達! このポーションどうしてくれんのよ!」

 

「?」

 

 

 何のことだといった雰囲気で女冒険者の手を見ると、そこには無残に砕け散ったポーションの瓶。

 

 

「それがどうしたんだ?」

 

「どうしたんだ? ……じゃないわよっ! アンタのお仲間がやったんでしょっ!」

 

 

 そこでモーガンはやっと気付いた。

 先程シュウジが絡んできた男を投げ飛ばした時、向こう側から木製の何かが砕ける音が聞こえたのを。

 つまり、投げ飛ばした男が飛んだ先にこの女冒険者の席があったのだ。

 

 

「……これは、アタシが一切の贅沢と縁を切ってようやく手に入れた治癒のポーションだったのに……」

 

 

 女冒険者の握り拳が震えており、その様子は手に入れるまでの苦労を物語っていた。

 

 

「だが、今回私達はあくまで被害者だ。請求ならそいつらにしたらどうだ?」

 

 

 モーガンは顎を動かし、仲間が軽くあしらわれたのを驚いている男達を指定した。

 

 

「アンタ達……、いっつも酒ばっかり飲んでるからろくに持ってないんでしょ?」

 

「へ、へへへ、まぁ……」

 

 

 確認をとった女冒険者はモーガンの方に向き直し迫る。

 

 

「……と言う訳よ。見た所アンタ立派な装備してるんだからお金持ってんじゃないの? なんなら現物でもいいからさ? ね?」

 

 

 本人にしてみれば示談のつもりだったのだろうが、モーガンからしてみればそれは悩む所だった。

 

 

「あるにはあるが……」

 

 

 モーガンが渋っていると、彼の目に苛立ちを抑えきれず、腰の剣を抜こうとしているナーベの姿が映る。

 モーガンが慌ててポーションを取り出そうとした時。

 

 

「いやぁ~! すまんすまん先輩、ちょいと力加減間違えちまったよ! 迷惑かけて悪かったな、ほい現物」

 

 

 横からシュウジが割って入り懐から出したポーション。赤い色のポーションを女冒険者に握らせる。

 それを女冒険者はじっと見つめた。

 

 

「あ……うん。確かに……」

 

「じゃ! 俺達はこれで。行こうぜモーガン、ナーベ」

 

 

 ポカンとする女冒険者を他所に、モーガンとナーベを背中を押してシュウジは去った。

 

 

//※//

 

 

「ここだな」

 

 

 ミシミシと音の鳴る階段を登り、二階廊下の端まで着いたモーガン達は、主人に指定された部屋へと入る。

 

 

「ふむ……。こんなものか」

 

 

 部屋に入るとシュウジは直ぐに盗聴対策の呪文などを唱え、それを部屋全体に幾重にもかけていく。

 

 

「これで……良し、と。モーガンさん、もう大丈夫ですよ。ナーベも楽にしてくれ」

 

「有難う御座います、シュウジさん」

 

「御手間をかけさせてしまい、大変申し訳御座いません」

 

 

 シュウジの言葉を合図に、モーガンは面頬付き兜(クローズド・ヘルム)に手を当てた。

 すると魔法的な光と共に兜がかき消え、代わりに世にも恐ろしい骸骨の頭部が現れる。

 

 そう、漆黒の全身鎧(フルプレート)を装備していたモーガンはアインズ。

 スキンヘッドの男に介抱を迫られた黒髪の美女は、戦闘メイド(プレアデス)の一人であるナーベラル・ガンマ。

 そして、その男を投げ飛ばした白い外套の男はドモンであった。

 

 何故彼等が変装などをしてここエ・ランテルにいるかと言うと。

 

 

「情報の収集とナザリック外での活動資金。それとシュウジさんが考えた計画の為に、俺達の偽装身分(アンダーカバー)を作るんでしたよね?」

 

「そうですね。更に言うならば、他の強者とも言うべき存在。そこからプレイヤーの情報にも繋がります。まぁ、身分についてはモーガンさんが考えた案を拝借したに過ぎませんが……」

 

 

 ドモンとアインズは、今後の活動についての確認を取り合う。

 

 

「御話中申し訳御座いませんが。一つ……、御質問をさせて頂いても宜しいでしょうか?」

 

「ん?」

 

「どうした? ナーベ」

 

 

 それを、自分の中にある気持ちが抑えきれないナーベラルが割って入る。

 

 

「何故、至高の御方々であらせられるアインズ様とドモン様が、こんな下等種族である人間の住む、更に言えば汚らわしい場所に宿泊せねばならないのでしょうか?」

 

「下等って……」

 

「汚らわしいって……」

 

 

 ドモンとアインズは同時に溜め息を吐きながら首を落とした。

 まるで落胆されているような気がしたナーベラルは、至高の存在を交互に見ながら慌てた。

 

 

 

「ナーベよ……、先ず一つ目だが。このように身分を偽っている時は、それぞれ与えられた名前で呼び合うと決めただろう。お前はナザリック地下大墳墓の戦闘メイドの一人、ナーベラル・ガンマではなく冒険者ナーベ。そして俺達はその仲間のモーガンとシュウジだ。……まぁ、俺は兎も角シュウジさんはお兄様と呼ぶのだ」

 

「も! 申し訳御座いません! アインズ様!」

 

「モ・ー・ガ・ンだ! 全く……」

 

 

 既にテンションがだだ下がりのナーベラル、そこにドモンが追い打ちの一言を放つ。

 

 

「それに、人間を下等生物とか言うなと言っただろう? それともあれか? この間集会で言った俺達の言葉聞いてなかったのか?」

 

「い、いえ! 決してそのようなことは……!」

 

 

 とうとうナーベラルは臣下の礼をとってしまい、それを見た至高の存在は目元に手を当てることになる。

 

 

《やっぱナーベラルは失敗だったんじゃないですか?》

 

《でも、アインズさんも賛成したじゃないですか》

 

《うー、確かに。でも、色々な条件を加味した場合ナーベラルが適任なんですよねぇ……》

 

《そうなんですよねぇ……》

 

 

 伝言(メッセージ)内で至高の存在にダメ出しされるナーベラル・ガンマ。なんとも不憫である。

 

 

「あ……あの……ドぉ、お兄様」

 

「ん? 何だ? ナーベ。ドぉお兄様ならここにいるぞ」

 

「……申し訳御座いません。先程人間の女に、随分あっさりとポーションを渡されていましたが……。あれにはやはり意味が……?」

 

「あ、そうそう! あれ俺も気になってたんですよ!」

 

「あぁ、あれはですね……」

 

 

 ドモンが指を擦り、部屋に綺麗に音が響く。

 するとドモンの影が伸び、それが異形を形作っていく。

 

 

「確か、複数体護衛につけた影の悪魔(シャドウデーモン)ですよね?」

 

「そうです。その内の数体に、さっきの女冒険者を尾行させてます」

 

「そりゃまた何で?」

 

 

 女冒険者に尾行をつけた。その命令を出した意味が分からないアインズとナーベ。

 頭の上に疑問符が浮かぶ。

 

 

「まず先に話しておきたいんですが、あの女冒険者が持っていたポーションの色、青だったのって気付きましたか?」

 

「……あぁ、言われてみれば」

 

「確かに……、宿屋に入った時に私も見ております」

 

「……ならばこう思いませんか? 何で俺達が持つポーションと色が違うんだろうって」

 

 

 ドモン達が持つポーションは赤色をしており、女冒険者が持っていたポーションとは確実に違う色していた。

 

 

「? 意味が分からな──。待てよ…………あっ! 分かった!」

 

「え? え!? 何が分かったのですか!?」

 

「流石モーガンさん」

 

 

 未だ答えの分からぬナーベにモーガンは説明をした。

 

 

「いいか、ナーベ。今ナザリックが急務として行っているもの、その中に消耗品の確保が項目としてあるのは分かるな?」

 

「はい。私もデミウルゴス様の御手伝いをさせて頂いております」

 

「だろう?」

 

 

 アインズがナーベラルに伝えたいことを要約すると。

 

 まずナザリックだけでポーションを作ることは困難を極める。ユグドラシルでポーションの素材としていたものと同じ素材が手に入るとは限らないからだ。

 

 更に言えば、ポーションは精製に際して別の職業(クラス)が必要であり、その職業(クラス)を持つ者はナザリックにはいない。

 ならばどうするか? ユグドラシル流の方法で出来ないのなら、この世界流の方法で同じ物、もしくは近い物を作ればいい。

 

 だが、ここで問題が一つ。

 この世界で何を手に入れ、またそれをどうすればポーションになるかが不明なのだ。

 それの最も簡単な解決法は、この世界での職人……もしくは薬師を探せばいい。それも腕の良い者なら尚更良い。

 

 ポーションを渡した時、あの女冒険者はポーションを見て不思議そうな顔をしていた。

 ドモンの態度に疑問を持ったと言う線もあるが、それならばポーションをじっと見つめたりはしないだろう。

 

 つまり、見慣れない(・・・・・)ポーションを見ていたということが考えられ、行き着く先は鑑定出来る人間……ポーションを扱う場所に辿り着くことになる。

 

 

「成程……と言うことは、先程ド……。コホン、失礼致しました。……お兄様があの女冒険者のテーブルに愚か者を投げ飛ばしたのは……」

 

「無論、計算してのことだろう。ね? シュウジさん」

 

「はい。更に言うと、もしあの女冒険者が自力で鑑定出来る術を持っていたとしても、俺達がアイテムや魔法使えば筒抜けですから」

 

「あれ? でも……」

 

 

 アインズはその話の穴に気付き、それをドモンに伝える。もし見逃していれば後々大変なことになると。

 

 

「あの女冒険者が鑑定も何もなしに、そうですね、例えば売りに出しちゃったりしたらどうするんですか?」

 

「それについては御心配なく」

 

「そりゃまた何で?」

 

「考えてもみて下さい。自分が苦労して手に入れた物を他人に壊され、それの代替品を渡されました」

 

「ふむふむ」

 

「まず同じ位の価値があるのかどうか気になりませんか?」

 

「それもそうだ」

 

 

 アインズは手をポンと叩いて納得する。

 

 

「だから最初に鑑定自体はすると思うんですよ。更に言うなら、もし売りに出したのなら尾行の対象を変えれば済む話ですから」

 

「さすド……、シュウジさん」

 

「そこまで見透されていたとは、流石は至高の御方に御座います」

 

 

 学習したのか、ナーベラルは臣下の礼はしなかった。代わりに至高の御方というキーワードを抜くことが出来ないナーベラルであった。

 

 

「他にも十数通りはパターンを予想してますが、全て対策済み、又は可能です」

 

「本当に凄いわぁ……」

 

「何言ってるんですか、モーガンさんの方が凄いですよ」

 

 

 互いに褒め合う二人だったが、ドモンの言葉を聞いたアインズは、「今度こそ言ってやる」と意気込んで伝言(メッセージ)を送る。

 

 

《あの、前も言ったかもしれませんが。俺ドモンさんが言う程の人間じゃないですよ? ……小卒だし》

 

《……はい? 何? 小卒?》

 

《そうです。だからドモンさんは俺を過大評価し過ぎなんてすよ》

 

 

 ドモンは記憶を中を手探りし、目的の言葉を見つける。

 

 

《あ……、確かに言ってた気が……》

 

《でしょ? 守護者達の裏切りがほぼないのは分かりましたから、そろそろ俺は楽になっても……》

 

《いや! 駄目ですよアインズさん!》

 

 

 突然頭に響いた大声に驚き、アインズは身体を仰け反らせる。

 ナーベラルが心配そうな目で見詰めてきたので、それをアインズは軽く手を振りジェスチャーで問題ないと返す。

 

 

《な、何が駄目なんですか?》

 

《アインズさん、貴方守護者達の期待を裏切るんですか? 皆の子供ですよ?》

 

《うっ! 確かにそれは……》

 

《優しい貴方には出来ない筈だ。仮に、どんなダメな奴でも従う。そんなスタンスを守護者達がとっていたとしても努力はすべきだ。俺も全力でサポートしますから》

 

《……分かりました。……パンドラ(ウチの子)にもカッコ悪い所見られたくないですからね》

 

 

 アインズはこれからも頭痛の種が増え続けるのか、そう思いながらも承諾した。

 

 

(まぁ……守護者達があれだけ頑張ってるのに俺だけ楽は出来んか)

 

 

 その後暫くの間話を進めていると、監視に出した影の悪魔(シャドウデーモン)から連絡が入る。

 

 

《御方々、御話し中に失礼致します》

 

 

 ドモンは手を上げ、二人に連絡が入ったことを悟らせる。

 

 

《首尾はどうか?》

 

《はい。シュウジ様の思惑通りにことが運んでおります。先程の女冒険者、名をブリタと言うらしいのですが、宿屋の主人の紹介によりこの街一番の薬師の元へ向かっております》

 

《御苦労、引き続き監視にあたってくれ。発言を聞き逃すな、それが無理そうなら俺に連絡するんだ》

 

《ハッ! 有り難き御言葉と使命、承りました。では、これにて》

 

《うむ、頼んだ》

 

 

 そうして、ドモン達はエ・ランテルにおける最高の薬師の情報を得たのだった。




 今回全く話進まずに申し訳御座いません。
 ちょっと欲を出してそれっぽく書こうとしたら文字数オーバーしましたorz
 やはり私には才能がないのだろうか……(´;ω;`)
 そんなことを考えるTackでした。

 御意見、御感想などありましたら宜しくお願い致します。
 感想欄に書きにくいことでしたらメールでも大丈夫です。ではまた(*≧∀≦*)ノシ

2016/6/16 修正。すいません、ナンバリング忘れてました。
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