あぁ~、執筆優先だから狩りが進まないんじゃ~(´;ω;`)
今、玉座の間は静寂に包まれている。まるで誰もいないのではないかと錯覚する程に。
だが、実際そこには十を超えるシモベ達の姿があった。
彼等は、偉大なる存在の言葉を聞き逃すまいと神経を集中させていた。それ故の静寂。
神経を集中……とは言っても、シモベ達が纏うのは叱責や処罰を恐れる雰囲気ではない。
顔を伏せたシモベ達の表情は真剣その物であったが、何処か喜びを感じさせるものだからだ。
「まず、最初に礼を言いたい……。俺達四十人に代わりこのナザリックを……、そしてモモンガさんを守ってくれて有難う」
エイジやモモンガ、その他のギルドメンバーのことをシモベ達は、『至高の四十一人』と呼び讃えていた。
その内の一柱に自身の功績を誉め称えられるという、ナザリックに属するシモベならば喜びのあまり涙落するであろう一言に、各員は心を震わせた。
「守護者統括として、ナザリック各員を代表し発言をさせて頂く事を御許し下さい」
エイジはそれを許すという意味で頷く。
「私達は皆、至高の御方々に創造された者。御方々の剣となり盾となるのは当然の事。礼など以ての他で御座います」
エイジが各員を見回すと皆、当然で御座いますという雰囲気を出していた。
「だが、お前達の働きは俺もモモンガさんも大いに満足している。称賛は素直に受けるべきだ」
エイジは微笑みをもって守護者達に賛辞を述べる。
その言葉と表情に、守護者達の中に涙を浮かべる者も現れた。
「恐れ多くもお褒めの言葉、有り難く頂戴致します」
その反応を見たエイジとモモンガはアイコンタクトをすると、エイジがゆっくりと屈み始めた。
「そして、俺がこの度ナザリックを離れた事を謝罪したい……。本当にすまなかった……」
「エイジ様!? 一体何を!?」
突如アルベドが発した悲鳴に近い声を聞き、他のシモベ達が目を開き、そして目の前の光景に驚愕する。
エイジが。武神が。至高の一柱が土下座をしていたのだ。
それを見たシモベ達は半ばパニック状態に陥った。何故偉大なる御方が謝罪などするのか? 彼等には分からなかった。
玉座の間が騒がしくなった時、その状況を一人冷静に見ていたモモンガから言葉が発せられる。
「騒々しい……、静まれ」
黒いオーラを発しながら静かに声を上げる。
そこまで大きい声ではなかったのだが、それはこの広い玉座の間にしっかりと響き渡った。
それに気圧され、シモベ達は自身の感情を抑圧する。
モモンガが発した声の残響音が収まると、座する至高の存在は言葉を続けた。
「……エイジさんは仕方の無い理由があったとはいえ、お前達に黙ってナザリックを離れてしまったことに責任を感じている。故に、お前達の上位者としてナザリックに戻る資格があるのか悩んでいるのだ、自分に厳しい人だからな。……彼の言葉を、静かに聞いてやってはくれないか」
モモンガの願いに、シモベ達は無言で以て肯定の意を示す。
その様子を見てからモモンガは更に言葉を続けた。
「話を中断させてしまい申し訳なかった。エイジさん、続きを」
「感謝します」
エイジは少しだけ頭を上げて話し始めた。ここに戻ってくるまでの話を。ナザリックを離れた
「俺はある時自分の国……いや次元と言った方が正しいだろう。兎も角、自分の生まれ故郷でその世界全体を巻き込む大きな事件が起こっていることを知った。その為にモモンガさんや他の仲間達に一度別れを告げ、自分の世界に戻ったのだ」
エイジの話を要約するとこうだ。
ある日、自分の生まれた世界で歴史的大事件が起こった。
しかもそれは自分の血族、つまりは家族が巻き込まれており、それを解決する為に泣く泣くナザリックを離れたのだと。
友や師、そして家族といった大きな犠牲を払ったが、何とか事件を解決しナザリックに戻った。
だが、時空間転移の消耗は大きく、ナザリックに戻った直後昏睡していたのだと。
「詳しい内容は……」
と、ここでエイジの言葉が止まる。
エイジの持つスキルの中に知覚スキルがあり、それが多くの違和感を察知からだ。
エイジが顔を上げると皆、おいおいと泣いていた。
シャルティア・アウラ・マーレは嗚咽を隠そうともせず、コキュートスは冷気を漏らしながら震え、デミウルゴスやセバスまでもが涙を流し、アルベドに至っては。
「私は……、私は……、なんという……」
などと呟きながら大粒の涙を流していた。
内心エイジがそんなに泣く程かと思っていると、モモンガからプレイヤー用の魔法である
《そんな辛い思いをしながらもナザリックに戻ってきてくれたエイジさんに、皆感動しているんですよ》
エイジより先に転移していたモモンガには彼等の流す涙の意味が分かっていた。
決して自分達を見捨てた訳ではなく、どうしようもない理由で離れたのだと。
しかも、大切な者の死という辛い体験をしたのにも関わらず、ナザリックの為に傷付いた体を押して戻ってきてくれたのだと。
それ故の涙。
エイジは心から感動していた。
この話は全てが本物ではない。
完全な嘘は必ずボロが出る。ならば自身の体験と嘘を混ぜればいい。
そうして、自分のアバターの元になっているキャラクターの話と、自分の身の上を織り交ぜたものが今の話だった。
それなのに、シモベ達は只素直に話を信じ、自分が帰って来てくれて嬉しい、その思いで涙を流してくれている。
《俺にも、まだ居場所があったんですね……、モモンガさん……》
《……そうですよ。なのでこれからも彼等を、俺達の居場所を守って行きましょうエイジさん》
《はい》
「――お前達に問おう。
モモンガの声が再び玉座の間に響く。が、異を唱える者は皆無だったようだ。
「では、改めてエイジさんに対し『忠誠の儀』を行う。私の時と同じ順に聞いていこう。――まずはシャルティア」
モモンガの言葉に、シャルティアが決意に満ちた表情で顔を上げる。
彼女は、いや、他の者達も皆同じ気持ちであったが、この時に自身の忠誠心の全てをかけていた。
いくら戻って来てくれたと言っても、もしここで下手な事を言えば、エイジは「やはり戻って来るべきではなかった」と言ってまた居なくなってしまうのではないか?
そんな不安に駆られたからだ。
「エイジ様は強さの結晶に御座います。そして、遥かな高みにおられながらも決して歩みを止めることはせず、更なる高みを目指す素晴らしい御方に御座います」
「コキュートス」
「守護者各員ヨリモ強者デアリ、マタ、我ガ創造主トモ親交厚ク、共ニ高ミニ居ラレタ正ニ武ノ化身デアラセラレル御方。私ノ目指ス御方ノ御一人ニ御座イマス」
「アウラ」
「強さもさる事ながら、大変慈悲深い御方です」
「マーレ」
「と、とても御優しくて、か、カッコイイ御方です」
「デミウルゴス」
「武において遥かな高みに居られながらも軍略に対する知識にも長け、正に文武両道という言葉を体現される御方。軍事責任者としてぷにっと萌え様に並び、恐れ多くも目標にさせて頂いている御方でも御座います」
「セバス」
「過酷な運命を見事打ち破り、大きな哀しみの中にあっても私達の元に戻って来て下さった、大変慈悲深き御方です」
「最後になったが、アルベド」
「その大いなる力と知略を以てナザリックに繁栄をもたらし、至高の御方々の信頼を受けていた素晴らしい御方。そして私の愛するモモンガ様の御親友に御座います。是非ともナザリックへの御帰還を」
アルベドの言葉に反応し、シモベ達は真摯な顔で頭を垂れる。
「だそうですよ? エイジさん」
モモンガから声をかけられエイジは勢い良く立ち上がった。その頬には一筋の涙が伝わる。
「俺は……ここに宣言する! ニ度とこの地を離れないと! そして! お前達を含めたナザリック全ての者達を守り抜くと! この『キング・オブ・ハート』の名にかけてぇっ!」
エイジが心臓に右拳を置く姿を取ると、その手の甲にある紋章が浮かび上がる。
ハートマークに囲まれ、2本の剣を交差させながら背負う王の絵が刻まれた紋章だ。
それが光り出すと同時に、エイジの体から赤い竜を象るオーラが溢れ出す。
その姿は、正に伝承に語られる竜王の物だった。
「我等シモベ一同、偉大なる御方の御帰還を御祝い申し上げます」
「「「御祝い申し上げます」」」
偉大な死の支配者は満足気にそれを見ながら祝った。
(良かったですね、エイジさん)
──かくして、後の世にまで語り伝えられる武を極めし王が、この地に降り立ったのだった。
相変わらずのナゾニポンゴ
2016/07/31
読みやすいように大幅修正。内容はほぼ変えていません。