助けてデミえもん!
途中何度か休憩を入れようと提案した所、守護者達には「お気になさらず」と言われ、モモンガには「今良いところなんで」とやんわり拒否られた結果、ぶっ通しで行われた上映会は大盛況(?)で終了した。
だが、それは上映終了と同時に別の意味での地獄を生み出した。
──その場に居た者達が全員号泣し出したのである。
涙を堪えるシュバルツにエイジが分身を通して確認させた所、ナザリック各階層で同じ惨状になっているという。
そしてシュバルツはとうとう堪えきれなくなり涙を流すが、「また腕をあげたな」と謎のサムズアップをしてくる始末。
<エイジ>(何の腕だよ、…ってかヤバイな、流石に色々と盛り過ぎたか…?)
<シャルティア>「エイジ様、何と不憫なお方でありんしょう」
<デミウルゴス>「くっ! エイジ様の決意の裏側にある悲しみを、私は何故気付けなかった!」
皆がオーイオイと表現が合う位に泣いている、そんな地獄(?)の中、ある1人の人物のせいで状況が一変する。
<?>「うおぉぉぉっ!ししょお~~!!」
食堂に居た全員がピタッと泣き止む。
聞き慣れない声が響いたからだ。
その声の主は先程前までテーブルの一番奥の豪華な椅子、モモンガの座っていた席でテーブルに突っ伏して号泣していた。
一同が誰? と困惑している中、エイジだけはその謎の人物に近付き、驚きの名前を呼ぶと共に慰め始めた。
<エイジ>「モモンガさん、皆が心配してるからそろそろ泣き止んで下さい。」
食堂内部一同「「「えっ!?」」」
顔を上げた青年は泣きじゃくりながら答える。
<モモンガ>「でも、師匠が…、師匠がぁぁぁ…」
泣いている自分に皆の視線が集中している事に気付くと慌てていつもの魔王声で取り繕う。
<モモンガ>「……あ~、ウォッホン! …皆、自ら見るのも辛いであろう記録を私達に見せてくれたエイジさんに感謝する様に」
だが、皆の不思議な物を見る様な視線はそのままだった。
<モモンガ>「…? おい、お前達…。一体どうs…」
そこまで言ってモモンガは自分の身に起こった異変に気付いた。
伸ばした手が何時もの骨剥き出しのものでは無かったからだ。
<モモンガ>「骨じゃ…ない…? 生身だ…」
何時の間にか違う姿になっていた己に、思わず素声に戻ってしまう。
しかし、今のモモンガにはそれを気にする余裕はない。
急いでインベントリから手鏡を取りだし、それで自分の顔をまじまじと見ていた。
<エイジ>「さっき渡したアイテム凄いでしょ? コレは装着者にあらゆる法則を無視して変身させられる物なんですよ。…随分と忙しかったみたいなので息抜きも必要かなと思ったんで」
守護者達はモモンガの首元に1つだけ見慣れないアイテムに気付く、そしてそれを物珍しそうに見つめていた。
この首飾りは昔、エイジがとあるダンジョンに潜った時に何時の間にかドロップしていた物で、その名をズバリ『偽りの首飾り』という。
所謂脱着不可の呪いがかけられていたのだが、最低位の物で簡単に解除出来た。
しかし、効果自体は残っていたので何か使い道があると思い残しておいた物の1つだった。
そして、転位した後にモモンガから己の体の変化の話を聞いたエイジは、大量に保管していたデータクリスタルを使い変身後のビジュアルを変更し、それを上映直前にモモンガへと渡していたのだ。
今のモモンガの姿は、エイジがモモンガに対するイメージを自分の知っているアニメの主人公と被せた物だった。
上下が紫のピッタリ目スーツの様で上から黒のマントを羽織り、セミショートの黒髪に凛々しい顔。
全てを見通す紫の双眼は鳥が羽根を広げた様な赤いマークが映る。襟は不必要なまでに大きい物で、横から見ると顔が見えない程だった。
<デミウルゴス>「という事はやはりその御方は…」
<エイジ>「勿論モモンガさんだ、特殊なアイテムで一時的に生身を持った…な」
エイジは笑顔でデミウルゴスの質問に答えた。
<アルベド>「何て麗しいお姿なのでしょう!」
アルベドは席を勢い良く立ち上がりモモンガの傍まで走り寄る。
<モモンガ>「おぉ、お、落ち着け!アルベド!」
<アルベド>「くふーっ! そのお声も普段の威厳溢れるものとまた違って可愛らしいですわあぁぁぁ!」
アルベドの暴走は素で反応してしまったモモンガの声によりヒートアップ。まるで確変中の様に止まらない。
<エイジ>「落ち着けアルベドッ!!!」
<アルベド>「ハッ! も、申し訳御座いません! こ、この不敬は命を以て償いを…」
<モモンガ>(助かった)「いや…、良いのだアルb」
<エイジ>「いや? 今はまだイベントの続きかあるから止めとけってだけだぞ? 別にモモンガさんとイチャイチャするのは構わないし、俺は寧ろ賛成だ」
食堂に電流走る!
<モモンガ>「ちょっ!? おまっ!? いやいや! 何言ってんだアンタ!?」
モモンガが慌てて訂正させようとするが時既にお寿司、いや遅し。
またしてもアルベドが此方に向かって来ようとしていた、今度は紫のオーラを纏って。
そして非礼を侘びる為にモモンガから1度かなり離れたのだが、その距離を人外の速度で詰めて来た(実際に人外だが)
<アルベド>「モモンガs!」
<エイジ>「あいや待たれよ、美しい人」
その時、一瞬金色の風が吹き、テーブルの反対側に居た筈のエイジがいつの間にかアルベドをモモンガの手前で押さえていた。
<コキュートス>(馬鹿ナッ!全ク見エナカッタダトッ!?)
コキュートスの驚きは他の守護者達も同じだった様で、皆驚愕の表情をさせている。
シュバルツ一人を除いて。
<エイジ>「まぁまぁ、アルベド。モモンガさんがイケメンで興奮するのは分かるけど、今はちょっと我慢してくれ。さっきも言ったが、俺のサプライズイベントはまだ終わって無いって言ったろ? それとモモンガさん、装備はそのままの筈なんでそこら辺は安心して下さい」
<モモンガ>「は、はい、分かりました。ということは種族特性のみが無くなっていると考えていいんですかね?」
<エイジ>「恐らくその筈です。一応後で確認しておいて下さい」
エイジはモモンガが気にするであろう点を話し、落ち着いたアルベドから手を離す。
アルベドがまたしても先程の流れをしようとしたのを制し、自分はまだやる事があると言って他の者を第6階層の闘技場まで行くよう促した。
<モモンガ>「プレアデスや他のメイド達も来るのだ」
モモンガには何をするのか分かっている様で、結局メイド達も付いて行き大名行列の様に第6階層に向かった。
円形闘技場に着き、アウラとマーレが先に行って案内しようとするが突然ブレーキをかける。
<アウラ>「何コレ…」
<モモンガ>「すまんな、マーレ。お前達を玉座の間に待機させている間に色々と弄らせて貰った。無論後で元に戻せるから安心してくれ」
普段ならば闘技場として機能し、下は全て土や砂が敷き詰められている筈の場所が、今は一面美しい白いタイルに覆われ、豪華なテーブルセットが用意されていた。
<マーレ>「い、いつの間に?」
<シュバルツ>「これも先程、諸君が待機をしている間に私の分身にやらせた。といってもアイテムを使っただけだがな」
それでもあの短時間で各階層に映像機を回し、ここの用意までするのは凄い。と思っていた守護者達をよそにシュバルツは皆に席を進めていた。
<シュバルツ>「皆席に着いてくれ、名前の書かれた札が立っている筈だ。ささ、モモンガ殿はこちらへ…」
皆自分の名が書かれた札の席へ着き、モモンガはその席の最奥の豪華な椅子へと促される。
<シュバルツ>「アルベド、お前は此方だ」
自分の名前の席を探していたアルベドに、シュバルツはモモンガの隣の席を用意した。
喜ぶアルベドにシャルティアは不満を漏らす。
<シャルティア>「なら私も隣に…」
そう言って移動しようとしたシャルティアの前にシュバルツが立ちはだかった。
<シュバルツ>「いいや、シャルティア。お前の席はそこだ。この並びはエイジが決めた物でな、悪いが従って貰おう」
シュバルツの言葉に異を唱えようとしたシャルティアだったが、至高の存在の言葉であれは仕方ないと渋々席に着く。
そこへ、その場に居た者達の鼻腔を刺激する香りが漂ってきた。
何の匂いかと周囲を確認すると、エイジが凄まじい量の炒飯を盛った特大皿を持って門をくぐってきた。
<エイジ>「待たせてすまない、皆。どうぞ、召し上が…れっ」
ドンッ!!!
そしてテーブルにドスンと置くと、途端に辺り一面いい匂いが立ち込める。
<アウラ>「うーん、いい匂ーい。さっきのはコレの匂いだったんだ!」
<マーレ>「お、美味しそうだね。お姉ちゃん」
アウラとマーレは見た目相応の反応をし、二人でキャッキャとしている。
<デミウルゴス>「これは見事な…! まるで米が黄金を纏っているかの様です!」
<コキュートス>「デミウルゴスノ言ウ通リダナ。コレホドノ輝キヲ放ツ物ガコノ世ニアルトハ…」
デミウルゴスとコキュートスは料理番組の解説者と化し。
<アルベド>「私がこれをモモンガ様にあーんしてあげるのですね!」
<シャルティア>「何言ってるでありんすか! その役目は私にこそ相応しいでありんすぇ!」
アルベドとシャルティアはどちらが愛するモモンガにあーんして食べさせるかバトルしていた。
<エイジ>「これは俺の故郷に伝わる料理で炒飯というんだ。そして」
と言い残しまたもやエイジは何処かへと転移した。
そして戻ってきた時にはまたしても巨大な皿に大量の餃子を乗せ現れた。
<エイジ>「こいつが餃子だっ!」
餃子の皮の焼けた香ばしい香りに一同が蕩けている間にも、エイジはその二つの巨大な皿をその場に居る全員が食べられるだけ持ってくると冷めない内に食べる様進める。
<エイジ>「さぁ! ジャンジャン食ってくれ! 勿論、プレアデスとメイドの者達も食べてくれよ? お代わりは幾らでも作るぞ!」
<モモンガ>「さぁ皆、エイジさんの手作り料理を有り難く頂くとしよう」
全員が食べ始めようとした時、何かに気付いたのか、エイジはコキュートスの傍に寄る。
<エイジ>「すまんな、コキュートス。お前の口だと食べ辛いだろう」
<コキュートス>「御心遣イ感謝致シマス。デスガドウゾオ気ニナサラナイデ下サイ」
<エイジ>「そうもいかんさ、俺の大事な家族なんだから皆と同じ様に食べてくれ」
そう言ってエイジは中空に手を伸ばす。
すると、手が黒い靄の様なものに入り、戻ってきた時にはモモンガの物と同じ首飾りが握られていた。
<エイジ>「これを着けてくれ」
<コキュートス>「デスガ私ニハ装備適正ガ…」
<エイジ>「その事については気にするな。これはちょっと特殊な物だからな」
そう言われコキュートスが首飾りを着けるとその姿が変化した。
旧時代に存在したと言われる番長ルックスの大男の姿になったのだ。
<コキュートス>「これは、一体…」
<エイジ>「これは俺がとあるダンジョンに潜った時見付けたんだ。特性は2つ、『予めセットされた種族になる』『アイテムではあるが装備品扱いにはならない』だ」
モモンガに渡した物と同じ物をエイジはいくつか手に入れていた。
本来使い道の無いものなのだが、勿体無いオバケに取り付かれているエイジには簡単に捨てられなかった。
だが、結果として残しておいて良かったということとなった。
正に人生何が起こるか分からない。
<コキュートス>「まさか、偉大なる御方に料理を振る舞って頂けるだけでなく、この様な御心遣いまでして頂けるとは。このコキュートス、感謝の言葉も御座いません」
<エイジ>(あ、声は変わらないんだな。心無しか聴きやすくなった気はするが)
跪こうとするコキュートスを手で制し、気にするなと一言だけ言うと。
<エイジ>「皆は先に食べていてくれ、俺は各階層の者達に同じ物を振る舞ってくるから」
と言い残し転移していった。
残された者達は料理に舌鼓を打ちながら、下位のシモベ達にも同じ様に慈愛を向ける至高の存在への敬意のランクを上げていた。
モモンガ様の姿は…あえて触れません。
まぁバレバレですけどね(о´∀`о)
コキュートスたんは分かる人居るかなぁ…。
ヒントは中の人です。