あまり長くなるのもなんなので続きをお楽しみ下さい。
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氷河の支配者→凍河の支配者
二人で闘技場に転移すると、直後にモモンガさんは《伝言》で誰かに連絡を取っていた。
恐らくは守護者の誰かだろうとは思いつつも、一応聞いてみる。
エイジ「誰と話してたんですか?」
モモンガ「アウラとマーレに大まかな進行役を頼もうと思っていたので、そのことで連絡を入れたんですよ」
別にそこまでしなくても。と言葉を出しかけたが、モモンガさんなりの気遣いだと考えて、言うのを止めておいた。
モモンガ「では、俺が席に着いたら入場コールをかけますので、エイジさんはそれを合図に入場して下さい。それと……」
そこで言葉を切ったモモンガさんは、何か言いたいことがあるらしく、急にモジモジし始めた。
その姿を見て、俺は少しだけ意地悪な事を言う。
エイジ「どうしたんですか? 何かあるなら言ってくださいよ。……モジモジしてる魔王様とかぶっちゃけ少し引くんで」
モモンガ「エイジさんヒドイ!」
ハハハ、冗談ですよと俺は笑った。
モモンガ「いや、出来れば…。OPの時みたいにマントを綺麗に羽織って登場…ってして貰えませんか」
エイジ「別に構いませんが、どしたんですか?」
モモンガ「えっとですね、最初のOPの絵の構図がドつぼでした」
エイジ「あぁ、確かにあれはカッコいいですよね。何か決意を秘めた男って感じで」
でしょでしょ?とモモンガさんが子供の様にはしゃぐ。それは見た目と相まって、今の彼の姿を非常にシュールに見せた。
モモンガ「それで、……お願いしてもいいですか?」
エイジ「勿論ですとも、我等が偉大なるギルドマスターよ。お願いされましょう」
モモンガ「やった! それじゃあ俺は席に行きますね!」
そう言ってモモンガさんは席に向かった。心無しか、その後ろ姿からはスキップをしている子供の雰囲気が漂っていた。やれやれ、モモンガさんもああいう子供っぽい所あるんだな。と思ったが、別に他意はない。
寧ろ、Gガンを好きになって貰えたみたいだから嬉しい位だ。
そして、一人になった俺は、薄暗い通路の中で軽く幾つかの型を取りながら素振りをした。まぁ、所謂準備運動だ。
ぶっつけ本番にはなるが、恐らく大丈夫だろう。
何故なら、俺は拳で突きを繰り出した音と、異常なまでの身体の軽さで確信していたからだ。
──これなら闘える、と。
確信、とは言っても、実際にこちらに来てから戦いを経験した訳ではないから、ただの憶測に過ぎない。当たり前だ、なにせほとんどの時間を皆と過ごしていたのだから。
それに、今自分が感じているモノも、これから戦う相手にしてみれば大したことのないレベルかもしれない。
そんな不安もある。何しろ相手はコキュートスとシュバルツ、どちらもナザリックにおいて屈指の実力者であろう者達だからだ。
こんな事ならちゃんと検証しときゃ良かった。今発動出来ないと困るスキルの内、片方は何とかなるだろうが、もう片方はないと無理だ。
そんな事を考えてると、暫くして俺の入場を知らせるコールが響いた。
アウラ「御来場の皆様、大変長らくお待たせ致しました!」
マーレ「わ、我等が偉大なる御方の御登場です! 盛大な拍手と歓声でお、御迎え下さい!」
あいつらあんな台詞いつ練習したんだよ、とつい苦笑してしまった。だが、俺は直ぐに模擬戦へと頭を切り替え、静かな闘志を燃やす。
エイジ「さぁ、……行くか!」
俺は開いていく鉄格子の方を見ながら、誰にとでもなく言った。
//※//
入場すると凄まじい歓声と拍手が俺の全身を叩いた。
正にはちきれんばかりと表現するのが適切だろう。
その正体は、闘技場を埋め尽くすあらゆる種族・身分のナザリック配下の者達。
一瞬圧倒されかけたが、モモンガさんとの約束があるので堂々としていよう。
それにしても……、モモンガさんは精神作用無効化ついてるから分かるけど、俺は良く平気だな。付いてるの減少の筈なのに。それとも体が変わったせいなのか?
現実世界に居た時から仕事柄、大勢の前で指南していたので、一般人よりは耐性がある方だったとは思う。だが、今の状況はあまりにも規模が違いすぎる。にも係わらず平然としてる自分の変化に少し戸惑ったが、今は検証している時ではなかった。
歩を進め、中央付近まで行くと、対戦相手が控える反対側の入場口が開かれ、そこに第5階層守護者コキュートスが現れた。
と、俺はそこであるものに気付いた。
コキュートスの横に何か黒い物がある。コキュートスの身長から考えると30㎝程だろうか、しかも手(?)を振っている様にも見える。
もしやと思い、マントの間から少しだけ手を出し、その黒い物体に手を振り《伝言》を送る。
エイジ《来てくれたのか、恐怖公》
恐怖公《おお! エイジ様! 直接の御挨拶無く御身の前に現れた事、御許し下さいませ》
彼は王冠を取り深々と御辞儀をした。そんなに畏まらんでもいいんだが。
恐怖公だけに言えることではないが、本当にここのNPC達の忠誠心は凄い。こりゃ下手な命令出せんな。
エイジ《構わんさ、応援ありがとうな。飯はどうだった?》
恐怖公《慈悲深き配慮感謝致します。料理は勿論大変美味にございました。私も長いこと眷属達と共にありますが、彼等があそこまで食が進んでいるのを初めて見ました。重ね重ね感謝致します》
エイジ《そりゃ良かった、確か恐怖公の眷属達は人間も食うんだったよな。代わりの物が見つかった様でホッとしたよ》
恐怖公《代わり、と申されますと?》
エイジ《その事については直に方針会議で発表があると思うから待っててくれ。それと、ついでに言う形になってすまないが、その見た目のせいで、皆と同じ席に着けない事を仲間の代わりに謝罪する》
この黒い物体、もとい巨大ゴキブリは名を恐怖公と言い、第2階層にある『黒棺(ブラックカプセル)』を守る領域守護者だ。
大変礼儀正しく頭も良いのだが、如何せんその見た目のせいで昆虫系以外のあらゆるシモベ、特に女性型の者達に恐れられていることが分かっていた。
そして、彼の役職(ユグドラシル時代)は嫌がらせトラップ。女性アバターを優先的に送る仕掛けになっており、その嫌われっぷりが凄まじかったのは言うまでもない。
だが、今彼は現実の存在としてここにいる。無論居住区である黒棺もだ。これは使える。
何に使うかと言うと、拷問。寧ろこれ以外に何かあるのだろうか?
そんな時ふと思う、平和にするという考えを持つ一方、彼を拷問に使える人材だと判断する自分もいることに。
あれ? 俺こんなこと平然と考える人間だったか?
それとも、これがモモンガさんの言っていた倫理観の変化ってヤツか。実際に人間とかに会ってみないと分からんが、この考えは正直不安だな。
因みに、俺自身は、現実のディストピア化している世界でもしぶとく生き残る彼等を道場でよく見る。そのお陰でかなり耐性があった。
…流石に眷属達に囲まれるとキツいが。
恐怖公《それについては御心配無く。この身体・能力は、偉大なる御方によって御創造頂いた物。感謝を感じた事は星の数程あれど、迷惑と感じた事は一度もありませぬ》
助かるよ、じゃあそろそろ時間だから。と俺は《伝言》を切る。恐怖公が再度王冠を取り御辞儀をする姿はまるで、「御武運を」と言っているかの様に見えた。
世界征服と一言で言っても問題は多い、デミウルゴスやアルベドもいるが、出来れば恐怖公の頭脳も借りたい、何かいい方法を考えなきゃな。
今の姿のままでは恐怖公を会議に出せないだろう。《伝言》で済むと言ってしまえば終わりだが、それではあんまりだ。
ここまでして恐怖公の知恵を借りようと思っているのにはちゃんとした理由がある。
それは、世界征服活動時の外部の者に対しての考え方だ。
確かにここには先程も言った通り、アルベドやデミウルゴスといった頭脳担当は居る、だが俺達の期待した通りの考えを出してくれるだろうか?
というのも、NPC達と少し会話をして気付いた事だったのだが、どうやら彼等は人間や亜人、聞く者によってはナザリックに属していない全てを卑下する傾向にあった。
設定によってカルマ値がマイナスの者達ばかりで構成されているので仕方がないとしても、その卑下する考えを世界征服の際に出して貰っては困るのだ。俺達の世界征服は、いずれこの世界を平和に向かわせる為の手段なのだから。
彼等を信用していない訳ではないが、出来れば相手側のことも自然と考えられる者が好ましい。
そこで出てくるのが、限りなく中立の恐怖公という訳だ。
大体、平和にするとは言ってもやることは結局世界征服だ。メリットに対してデメリットの方が大きい。…前途多難ってやつだな。
俺がそんな事を考えてる内にコキュートスの入場が終わり、一歩進んで話しかけてきていた。
コキュートス「偉大ナル御方ノ対戦相手ニ選ンデ頂ケルトハ…。コノコキュートス、感動ノアマリ言葉モアリマセヌ」
エイジ「もう少し楽にしてくれコキュートス。これはあくまでも模擬戦だ、戦いを楽しもう」
コキュートス「ハイ、胸ヲ御借リルスルツモリデ参リタイト思イマス」
何か堅苦しいんだよな。俺としては楽しみながら、確かめながらって感じでやりたいんだが。
その時、俺の脳内で名案が閃く。そして、自分の背中にある刀を指差しこう言った。
エイジ「コキュートス、今回の模擬戦で俺を満足させたら褒美をやろう。コレと同じ刀をな」
コキュートス「ソレハ真デゴザイマスカァ!?」
コキュートスが声を荒げながら冷気を大量に噴き出す。
俺は心の中でしめた! と思った。
エイジ「あぁ、二言は無い。更に刀の箔をつけるなら、この刀はお前の創造主である武人建御雷さんも欲しがった程の一品だ」
コキュートス「何ト!? 武人建御雷様ガ!?」
よっしゃ! かかった! 上手に釣れました~♪ ってね。
俺はNPC達の凄まじい忠誠心とコキュートスの武具への好奇心、更には自身の主が欲しがったという言わば血統書まで突き出したのだった。
しかも、この刀は元々3本持ってるんだよねー、俺とシュバルツ、んで普段御世話になってた建御雷さんに渡す予定だったけど。それが出来なかったからコキュートスに渡すつもりだった、タイミングがなくて困ってたんだが、こうも上手く行くとは…
自分の頭がコキュートスを半ば嵌める形で働いた事に軽く自己嫌悪しながらも、俺はコキュートスに握手を申し出る。
エイジ「兎に角、これは殺し合いでは無く互いの武技を高め合う試合だ。互いに楽しみながらも精一杯やろう!」
コキュートス「ハイ!宜シク御願イ致シマス!」
エイジ「それと、念の為聞くがルールとかは大丈夫か?」
コキュートス「事前ニ聞イテオリマス故、問題アリマセヌ」
俺はそうかと笑ってコキュートスに背を向け少しだけ距離を空けた。
エイジ「コキュートス、更にお前のヤル気をあげてやろう」
コキュートス「何デ御座イマショウカ」
エイジ「これはまだモモンガさんにすら言ってない事なんだが。ある程度情報が集まり、世界征服について動き出したら、俺個人の少数精鋭部隊を組もうと思っている」
コキュートス「マ、マサカ…」
エイジ「あぁ、お前を俺からの推薦枠に入れよう」
そう告げた瞬間、コキュートスの全身から凄まじい冷気が溢れ出した。
歓声によって俺達の会話を良く聞き取れていない者達からすれば、単純に至高の存在と崇めている俺に挑むコキュートスが張り切っている様に見えたことだろう。
コキュートス「我ガ主ト同ジ高ミニ居ラレル御方ノ懐刀トナレルノナラバ!!!」
エイジ「そうだ、その気迫を纏ってこそ武人だ! 凍河の支配者よ!!!」
コキュートスの足下が凍り、その冷気が俺の足にも襲いかかろうとするが、それは一瞬で蒸発した。
俺の属性は火と神聖属性であり、俺のヤル気が引き金となり、勝手にオーラのスキルが発動した。
そのオーラに火属性が込められており、足下の氷を溶かしたのだ。
いや、まさかテンション上がってスキルが勝手に発動するとか。
エイジ「では、始めようか」
俺がわざとニヤリと不敵な笑みを浮かべてから、空に向かって叫んだ。
エイジ「ガンダムファイト国際条約第7条!!地球がリングだ!!」
次の瞬間、俺達は闘技場から消え異空間へと飛ばされた。
如何だったでしょうか?
次回から戦闘描写が入る回となりますが、尺の都合上かなりアッサリ目となります。ご了承下さい。