自己中心的な少年と魔法少女(寸前)
「おはよー!」
「おはよう!」
元気に挨拶をする白い制服を着た小学生二人の横を、僕は通り過ぎる。
…寂しいな。
挨拶できる友人の一人や二人欲しい物である。
当たり前の事であるものの、僕に挨拶を交わす友人が全くいないことを痛感させられていた朝のことであった。
その日の僕は、今日も寂しい一日を満喫しようか…とぼっちにやさしい計画を練ろうと考えていた、が
「ゴーーーンくーーーーーん!」
エネルギッシュな声が後ろから近づいてきて、今日の予定が崩壊するお知らせを持ってきた。
朝から低血圧の人が聞けば気絶するかもしれない程の大声と地鳴りの音、その声と音は人々の視線をひきつけている…僕は無視して歩いているが。
「待…ってよ…ゴン…くん」
「…ちっ」
ああ、今日も追いつかれた。
彼女と一緒に居ると、僕はいつも酷い目に遭うから苦手なんだけど…
「さあゴンくん…一緒に行こう?」
「面倒な奴だな…」
呼吸と共に肩を上下させ、頬を赤く染めることで、いかにも全力疾走してきましたと全力で表現する茶髪ツインテな彼女の登場により、僕の一日の予定は今日も壊されるのだと理解した。
「もう…なんでゴンくんはいつも私をおいて先に登校するの?」
茶髪ツインテ、高町なのはは無邪気に昨日も訊いた質問を僕に投げかける。
ゴンくんとは彼女が僕を呼ぶときに使う名称だ。
「なんでもクソもない。
学校内や登下校中、あるいはお前の家族の経営している店の中…どこでもいい、そこでお前と一緒にいる時点であいつ等が敵意剥き出しの視線で見てくる、あるいは危害を加えてくるのにそれを耐えろと?」
僕は堪えつつ、努めて無表情でなのはに昨日も一昨日も一週間前にも一年前にも答えた内容を喋る。
しかし、なのはは非情にも僕に抱きつくことで僕の意見を無視しやがった。
歩けない、重い、表現し難い視線が突き刺さるボリュームたっぷりハッピーセットはお断りしたい。
「別にいいの! ゴンくんとは切手も切れない腐れ縁だって皆に証明できるもん!」
…ん?
「いいか? よく聞け、『切手も切れない』はおかしい、『切っても切れない』にするべきだ、これは断ち切ろうとしても切れないほど強いつながりがある意味を持つから、すると『腐れ縁』と意味が重なるからどちらかに…いや、腐れ縁にしろ、切っても切れない仲よりも会う機会が少ないイメージを持ててグッドである。ところで国語の勉強をしているのか? 夢の一桁に突破した感想でも皆にぶちかませばちょっとは頭がよくなるきっかけでも…」
「あーあー聞こえないー」
なのはは僕にとりついた状態から国語の話題を出した途端に、周りの登校する生徒と同じ様な振る舞いへとなり、友達らしき人物達と合流した。かなりスムーズに逃げたな…なのは。
…まったく、国語は対なのは用虫除けスプレー的なウエポンだな。よく効く。
「ぅゎっ、ぃまだにきっぃしせんヵ゛…」
なのはの僕も真似したくなる逃げの手口(犯罪者っぽくなったな)に関心していた僕だったが、先程(なのはと会話し始めた時)から、周囲の無言の圧力が治まる気配を見せないので溜息をつきたくなった。
なのはに突き刺さるような視線が向かない。彼女には誰も負の感情を抱かないのか。
最近は小学生低学年でさえはっきりとした「面識は無いけれどコイツ嫌い」のような感情を向けるのは何故だ。
…と、僕は、向かってくる『水まわりのG』を見るような視線に対して心の中で愚痴を言い続けるのだった。
「ふざけてんのかこの野郎!」
四時間目を終えお昼の時間を越えた休み時間、鈍い打撃音がトイレに響く。
僕は殴られていて、我が小学校の誇るイケメン三人にトイレに連れてかれた。
一階にあるトイレの中には、滅多に人の訪れないトイレが存在するので、そこで僕は人道から思いっきり外れた行為を受けるのである。
「そんなみすぼらしい風体でなのはに近づくなよ、カス。」
イケメン三人組みの一人、帽子に対しての異常な執着がある『空丈成也』と言う男子に腹部を殴られる。
今の強さは加減を考えていない一撃なので恐らく幾つかの内臓が逝ってしまったかもしれないな。
「雑種ごときが我の嫁と仲良くなるなど認めぬぞ。」
見下す視線と共にイケメ三人組みの二人目、やたらと尊大な態度をとっている『石井魏瑠雅』というキラキラnameで、小学生にして王と自称する重度の中二病を患っていると推測されるかわいそうな餓鬼────に横腹を剣で刺される。
おい、銃刀法違反だろ。
取り扱い免許みたいなのが必要だとまことしやかに囁かれていた情報は嘘だったのか。
物騒な物に対しての警戒心を持たないお国に絶望した時、じっと後ろで退屈そうにしていたイケメン三人組の三人目『御徒祝冶』が、茶色いクセッ気の強い髪をクルクル指で回しながら僕を見つめる、いつ見てもコイツは家系のせいで裏切られたきざな甘えん坊に似てる…。
「おいおい、止めなよ君達。
コイツが今死んじまったらなのはとの関係が悪化する可能性を考えないと。」
御徒は空丈と石井に待てをかけて、僕への暴行を中止させる。
イケメン三人組は、空丈と石井と御徒、彼等の取り巻きで構成されたグループらしく、普段先生の話すらマトモに聞かねえ空丈と石井も御徒には大人しく従う事が多い。もしかしなくても御徒がグループを纏める存在なのがわかる。
御徒は、ボロ雑巾みたいになった僕に「回復の奇跡」と手をかざした。
すると見る見るうちに『表面上の』傷が消えていき、『普通に見ただけでは』健康で綺麗な肉体へと戻る。
何度も繰り返される、胸糞悪い子供だましだ。
「全く…いつになったら君はなのはちゃんから離れてくれるのかな?」
「知らねえな、向こうが勝手に付いて来るだけだ、寧ろテメエ等がくっつけばいい話じゃねえか。」
御徒は笑顔で僕を否定して、僕は無表情に彼を否定する。
これもまた、くだらない程繰り返した会話だ。
「…ンだと」
「ふむ、雑種は幾ら調教しようと雑種のままか。」
僕の言葉にいちいちキレる二人を、その前に出た御徒は手で制止する。僕をそこら辺に存在する有相無象の一つを眺めるような目となっていくのを見るのも、呆れるくらい繰り返している。
…そろそろか。
「ねえ。」
御徒が今日一番の聖人君子オーラを纏って話しかけてきた。
こうなると、そろそろ終わりが近づく、殆ど消化して残すところあと一つの一撃を喰らえば終わるまでだ。最後は凄く痛いけども、楽になる。
「君に、僕や僕の仲間はなのはちゃんと交友関係を持てなくてほとほと困っていてね、ただ君の居る場所を僕達に渡してくれればいいんだよ、だから…」
「っは、何度も答えてる答えだ。
────────────────────────どこにも場所なんて持っていない。」
御徒に告げ、目を瞑る。
「そうか…『巨塔』」
偽善者ぶって悲しい顔をする御徒は、小学生の身長を悠に超える棍棒に似た鉄の塊を僕に叩きつける。
強い一撃は、僕の意識をみかんの皮でも剥くように奪い取るのだった。
チャイムの音で、僕は目を覚ました。
「いつつ…」
本当に、最近の小学生は賢すぎる。
体の怪我を全て確認したが、全て上手に制服に隠れる場所にあった。
また、制服は綺麗に直してあって、先程まで僕がズッコケ三人組みのリンチに遭ったとは誰も知る事はないだろう。
…ズッコケ三人組ってアホ・メガネ・食いしん坊の三人だな、本当は王様(笑)・帽子(笑)・天使(笑)のイケメン三人組みだ、比べてみると中身は五十歩百歩だった。
…ふざけれる余裕もある、骨もあばらが二本潰れただけなので授業に出席できる。
尤も、内臓は彼等の小学生らしからぬいじめによって依然酷いダメージを受けているままなので…
「【ベホイミ】」
ばれない程度に治さないとな。
「…とまあ、今日もまた近年のガキンチョ事情が高校生ばりの発展を遂げているんだが。」
「私の知らない所でまたゴンくんに傷をつけるなんて…!」
放課後、なのはに今日のイケメンsが行った凶行を話した。
なのはが僕の話を聞き、自身が痛い目に遭ったのでは無いのに怒りを覚えている。
相変わらず、優しい奴である。
「…けれど、ゴンくんなら御徒くん達を秒単位で倒せるよね?」
私、頭にきてますと表情にあらわれているなのはが口を開いた。
…っは。
「くだらない事で、今の状況を悪化させるのにメリットなんて存在しない。
…昔っからなのはには耳にタコができるほど答えたと思うけど?」
もう、この会話を何百回も何千回も繰り返すのにな。
未だに、『やさしい』なのはは納得しないようだ。
「うん…そうだよね。」
なのはは、頷き、寂しげな顔になる。
もういいかと僕はなのはに了解を得て、教室から出て行った。
「【ダモーレ】解除。」
学校全域に発動していた幻術魔法を、解除する。
これで、自然になのはの存在が周囲に認識された。
ついでに僕の存在も。
「…行くか。」
僕の隣で歩く人物は、いない。
騒がしい教室で、なのはと二人の少女は、三人の少年と仲良く駄弁りあっているのだろう。
「【ステルス】」
通り過ぎる人々は、僕の存在に気付かなくなった。
しかし、僕はそこら辺の大きな石ころのように人から避けられるので、問題は無い。
「よし、恭也さんや美由希さんに稽古を頼もう。」
さあ。
弱小かつ矮小で自分の物差しでしか人をはかる事しか出来ない人物による、
空虚かつ粗悪な世界で過ごす日々の出来事を淡々と話す物語を、
独狂言に近く世界は捻じ曲がり改変の始まる物語を始めよう。
これより、独り善がりの少年と繋がる世界は大きく動き出す。
解説コーナー(もしも質問コメントがあったら此処で説明しようと考えていたり考えなかったり)
・茶髪ツインテ
→主人公はサイドテールでもポニーテールでもお団子でも結わえば全てツインテールと呼称する髪型を気にしない人間=髪を伸ばしているか坊主頭の二極化に。
先ずは三つぶち込んだけど、何から書いてみようか。