「それではギフトゲームが明日ということですので、〝サウザンドアイズ〟に皆さんのギフト鑑定をお願いしませんと」
「〝サウザンドアイズ〟?コミュニティの名前か?」
十六夜・飛鳥・耀は首を傾げて聞き直すと、極夜姫はそのコミュニティの名を聞いて声を上げた。
「〝サウザンドアイズ〟ですか!?ふふ、早くも白夜姉様と会えるんですね!」
「は、はいな。〝サウザンドアイズ〟は特殊な『瞳』のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。極夜姫様が言うように白夜叉様はそのコミュニティに所属しています」
「ギフト鑑定というのは?」
「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の
十六夜・飛鳥・耀の三人に同意を求める黒ウサギ。彼らは複雑な表情を見せるが拒否する声はない。
その一方で上機嫌すぎる極夜姫は独り突っ走っており、黒ウサギ達に振り返って叫ぶ。
「皆さん、早くしないと置いていきますよ!」
「ちょ、極夜姫様!―――って行っちゃいましたよ………」
「極夜さんはお姉さんに何千年もの間会っていないんだもの。早く会いたいのは無理もないわ」
黒ウサギの苦笑いに飛鳥が極夜姫の気持ちを代弁する。
すると十六夜がへえ、と興味深そうに聞く。
「何千年、ねえ。姫ロリというよりロリババアじゃねえか」
「な、十六夜さん!?いくらなんでもそれは失礼なのですよ!」
「そ、そうよ!たしかに極夜さんの年齢は幾億歳だと聞いたけれど、見た目は愛らしい子供よ!」
「十六夜………最低」
黒ウサギ・飛鳥・耀の女性陣に叩かれる十六夜。
それに十六夜は
★★★★★★★★★★
一方、極夜姫は一足先に〝サウザンドアイズ〟のお店に到着していた。
そこには看板を下げる準備に取りかかる割烹着姿の女性店員がいた。
極夜姫は女性店員に歩み寄って声をかけた。
「すみません」
「はい?何かご用でしょうか?」
「はい。白夜姉様を呼んできてもらえませんか?もしくは店内に入れて戴けませんか?」
女性店員ははい?と首を傾げる。
「白夜姉様とは、白夜叉様………つまりオーナーのことですか?」
「はい。白夜姉様は白夜叉様であってます!―――それで、今会うことは可能ですか?」
「………はあ。これからお店を閉めようとしていたところなんですが。もしお会いしたいのでしたら後日」
「嫌です。今日やっと箱庭に帰ってこれて、凄く久しぶりに白夜姉様に会えると思って此処へ来たわけですから。閉店がどうとか知ったことないです!」
礼儀正しい子供かと思いきや、自分勝手な子だったようで痛い頭を抱える女性店員。
極夜姫は頭を抱える女性店員を見て小首を傾げる。
「………どうしたんですか?頭を抱えていますが、痛いんですか?」
「ええ、貴女の迷惑行為に頭が痛いです」
「え?私の………せいですか?」
女性店員は落ち込む極夜姫を見て可哀想だと思ったがこれは仕事なので心を鬼にしてなお彼女を責めた。
「はい、貴女のせいで私はとても迷惑していて仕事に手をつけられません。お引き取り戴けると助かります」
「お引き取り………ということは私は邪魔、なんですね」
「はい、ハッキリ申し上げますと―――邪魔です」
「―――――っ!」
グサリ、と女性店員の鋭い言葉のナイフが極夜姫の胸を抉った。
暫く極夜姫は無言で俯いていると、顔を上げて女性店員に泣きそうな表情を見せた。
「………分かりました。本当は今日白夜姉様に会ってお話がしたかったのですが―――諦めます。お仕事の邪魔してすみません。私は帰ります………」
「え?あ、はい。またのご来店をお待ちしております」
トボトボと残念そうに肩を落として来た道を引き返していく極夜姫。
女性店員は小さくなっていく彼女の背を見てなんだか申し訳ない気分になっていた。
すると、店内から聞き覚えのある声が女性店員の耳に入ってきた。
「―――どうしたのだおんし?そんなところで突っ立って」
「あ、オーナーお疲れ様です。聞いてください。先程オーナーと同じくらいの子供のお客様が来ていたのですが」
「ほうほう、してその客は?」
「帰っていきましたよ。迷惑な子供のお客様かと思いましたが、中々礼儀正しい方でした。―――ただ」
「………ただ?」
オーナーと呼ばれた白髪の頭に黒い二本の角を生やし、黒い着物風の服を着た金色の瞳が特徴な幼い少女だった。
白髪の少女は小首を傾げる。
「はい。ただ、オーナーの事を『白夜姉様』とお呼びして
「!?白夜………姉様とな!?しかも凄く久しぶりに………だと?そやつの格好はどんなのだった!?」
「え?えーと、夜を思わせるような黒髪に赤い瞳、顔は色白でお姫様を彷彿させるような子供のお客様でしたよ」
「………ッ!!?」
白髪の少女は絶句した。女性店員が説明したその少女に心当たりがあり、なおかつこの箱庭にいては可笑しい存在だった。
「な、どうしてあやつが―――私のたった一人の妹がこの箱庭に………!?」
「オ、オーナー?」
「………その客はどちらに行った?」
「え?あ、はい。向こうの方へ行きましたよ。なんだか凄く落ち込んだ様子でしたが」
女性店員が告げると白髪の少女は彼女の肩をガシッと掴んだ。
「おんし、どうやら私の妹を泣かせてくれたようだな」
「へ?あの子供のお客様はオーナーの妹様だったんですか!?」
「
「う………は、はい。分かりました………」
白髪の少女はいつになく真剣な顔で女性店員を睨みつけていた。女性店員は滝汗を流す。
白髪の少女は地面を踏みしめると、砕く勢いで飛び出した。
(待っておれ極夜!今すぐおんしの愛しい姉であるこの私が―――白夜叉様が迎えに行くからなッ!!)
白髪の少女改め―――白夜叉は愛する妹、極夜姫の下へ向かうのだった。
★★★★★★★★★★
一方、黒ウサギ達〝ノーネーム〟御一行は〝サウザンドアイズ〟に向かっている最中だった。ちなみにジンは一足先に本拠へ戻っている。
ふと前方に小さな人影を捉えた黒ウサギは、その人影がすぐに極夜姫のものだと分かり駆け寄った。
「ど、どうしたのですか極夜姫様?大変落ち込んでしまわれているようですが………」
「はい………実は店員さんに追い返されてしまいました。白夜姉様ともまだ会えてません………」
目に見える程落ち込んでいる極夜姫。彼女の表情は泣きそうだった。
黒ウサギは極夜姫を見て思わず抱きしめてあやしてあげたい衝動に駆られる。
だがその衝動は絶叫にも似た一つの声が掻き消した。
「―――極夜ぁああああああああッ!!!」
「!!!」
その声に極夜姫は勢いよく振り返る。
そして、声の主の顔を見るよりも早く身体にとてつもない衝撃が走る―――白夜叉のフライングボディーアタックを受けて。
しかし極夜姫は吹き飛ぶ事なく優しく受け止めて白夜叉の背に腕を回して名を呼ぶ。
「………白夜姉様。会いたかったです!」
「何を言う極夜。私の方こそおんしにもう一度会える日を心待ちにしておったわいッ!!」
白夜叉はさらに腕に力を籠めて極夜姫を強く抱きしめる。今度は絶対に離さないように。
極夜姫も白夜叉を強く抱きしめ返すことで応える。
「しかし帰ってきていたのなら私に教えてくれればよかったのに………極夜は馬鹿だの」
「すみません、白夜姉様。姉様を驚かせようと思って内緒にしてました♪」
「………その結果が私の部下に泣かされる始末とな?」
「う………お恥ずかしい限りです」
白夜叉にごもっともなことを言われて照れくさそうに頬を掻く極夜姫。
そんな光景を十六夜・飛鳥・耀の三人がニヤニヤと眺めていた。
黒ウサギは驚いたような声を上げる。
「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」
「ん?そろそろ黒ウサギが来るかと思ってな。まさか遥か昔に生き別れた私の可愛い妹と会えるとはのう♪」
白夜叉は極夜姫の頭を優しく撫でながら返す。
極夜姫は気持ち良さそうに白夜叉の肩に頭を
黒ウサギ達は極夜姫の性格が変わりすぎていることに瞳を瞬かせる。
白夜叉は十六夜・飛鳥・耀の順に見回してニヤリと笑った。
「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たという事は………遂に黒ウサギが私のペットに」
「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」
ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。
極夜姫は黒ウサギに便乗する。
「そうですよ白夜姉様。ペットにするなら私にしてください!」
「「「「え?」」」」
「いや、極夜は私の妹だからペットにはせんよ。かといって可愛がらないわけでもない。その事については安心しなさい」
「………!はい、白夜姉様♪」
再び白夜叉に頭を優しく撫でられてうっとりとした顔で彼女の肩に凭れかかる極夜姫。
この反応を見た黒ウサギ達は確信した。
再会して早々にいちゃつく………これぞシスコンの真骨頂ですッ!!←