『ギフトゲーム名〝夜を穿つ一縷の光〟
・プレイヤー一覧
逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
・勝利条件
〝極な夜の魔王〟に一撃を与える。
・敗北条件
降参か、気絶した場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝サウザンドアイズ〟印』
〝契約書類〟を見た十六夜は胸を躍らせながら極夜姫を見つめた。
「姫ロリに一撃与えろ、ねえ。いいね、面白そうじゃねえか」
「ふふ、お気に召されたようで何よりです」
にこやかな笑顔で返す極夜姫。
飛鳥だけは不服そうな顔をしていた。
「私は嫌よ。極夜さんを傷つけるゲームなら降りるわ」
「え?大丈夫ですよ飛鳥さん。貴女に殴られたところで、ちっとも痛くも
極夜姫はニコニコと、しかし言葉は挑発するような物言いをする。
これには飛鳥は眉をピクつかせて怒りを滲ませた。
「そう………。ええ、いいわよ極夜さん。貴女がそのつもりなら―――一瞬で終わらせてあげるわ!」
「ふふ、その息です」
「―――ッ!い、十六夜君!」
「はいはい、分かったよお嬢様」
怒りの表情のまま飛鳥は振り返ると、十六夜は肩を竦めて笑った。
だがスッと目を細めて十六夜は不敵に笑う。
「そんじゃまあ………覚悟はいいか?姫ロリ」
「はい。何時でもお相手致しますよ、お二方」
スカートの裾を軽く摘み上げて優雅に一礼する極夜姫。
そしてギフトゲーム〝夜を穿つ一縷の光〟が開戦した。
★★★★★★★★★★
睨み合う三人。先に動いたのは十六夜だった。
力強い踏み込みと共に一瞬で極夜姫に肉薄する十六夜。まあ距離は数メートルしか離れてないから本当に一瞬で接近出来るわけだが。
飛び出した勢いを殺さないまま十六夜は右の拳を突き出し極夜姫の顔を打ちにかかる。
いきなり容赦なしだが極夜姫は全く動じることなくそれを頭を少し右に傾けて避けた。
右の拳を引っ込めた十六夜はすぐさま左の拳で極夜姫の顔を殴りかかる。
それを今度は頭を少し左に傾けて避ける極夜姫。
三、四、五………八、九、十発ほど連打で殴りかかる十六夜。
だが身長さのせいか十六夜の拳はさっきから当てにくい顔ばかりに向かい、それを極夜姫は身体は一切動かさずに頭のみを動かして避けていく。
「………チッ、ロリは小さいから当てにくいな!」
「ふふ、だからといって十六夜さんに殴られやすいように浮きながら戦ってあげるつもりはありませんよ?」
「ハッ、言われなくてもんなこと頼まねえ―――よ!」
十六夜は左脚を軸にして回し蹴りで極夜姫のこめかみを打ちにかかる。
それを屈むことで難なく回避する極夜姫。だが十六夜はその行為を待っていたように笑う。
右脚を戻した十六夜は、今度は左脚を振り上げた。そして振り上げた左脚を勢いよく振り下ろし極夜姫の脳天に踵落しを繰り出す。
極夜姫はそれを察して屈んだ状態のまま後方に下がる。そのすぐに十六夜の踵落しは白い雪原を砕き無数の雪が彼女の視界を遮った。
だが目眩ましなど極夜姫には通用しない。腕を真横に振るってそれらを吹き飛ばした。
「………え?」
遮っていたものを吹き飛ばして視界が晴れるが、肝心の十六夜の姿はなかった。
極夜姫は瞬時に周りと背後に目を向ける。しかし十六夜の姿はない。ならば―――上しかない。
上を見る。すると案の定十六夜の姿があり、極夜姫を踏み砕きに降下してきていた。
距離にして二メートル弱。十分に回避出来る間だった―――が、
「―――
「!?」
飛鳥の一喝によりほんの一瞬、動きを封じられた。本当に一秒とかからない一瞬の間だけ。
後方に下がろうとした時には十六夜の両足が極夜姫の眼前に迫っていた。
そして余裕を持って回避出来たはずの十六夜の一撃は、飛鳥の一喝により紙一重で避けることになった。
その結果、極夜姫は十六夜の踏み砕いた雪原から出来た雪の塊を避けれず弾き飛ばす羽目になってしまった。
極夜姫は一旦その場から離れると、十六夜も飛鳥の方へ戻った。
「おいおい、さっきのはなんだったんだよお嬢様。姫ロリの動きが一瞬鈍くなったように見えたぜ?」
「え?………ええ。それは私の力が極夜さんに少しだけ通じたからだと思うわ」
「へえ?お嬢様のギフトはもしかして人を操る類いのものか?」
十六夜が瞳を光らせて問うと、飛鳥は苦い顔をして答えた。
「そ、そうよ。私の力は人間を支配するもの。だけどこの力は私は嫌いだわ」
「そうか?俺は結構いいギフトだと思うぜ。何せどんな奴でも操れれば自分の思い通りに出来るんだろ。女王様気分を楽しめるとか面白そうじゃねえか」
「な、十六夜君!?………面白そうって貴女ねえ」
十六夜の感想に呆れる飛鳥。すると十六夜はヤハハと笑って飛鳥の頭をポンと軽く叩いた。
「まあオマエがなんで人を操るギフトを嫌っているのかは知らないが、そのギフトは姫ロリに勝つためには必須だ。だから否が応でも使ってもらうぜ」
「え?だけど私のギフトが通じるのはほんの一瞬だけよ」
「ああ。その一瞬があれば今度こそ姫ロリに一撃与えられる」
「………そう。ならいいわ。行きましょう十六夜君。それで、一体どんな作戦なのかし―――きゃあ!」
飛鳥は悲鳴を上げる。十六夜が問答無用に彼女をお姫様抱っこしたからだ。
飛鳥は余りにも突然な出来事に混乱して十六夜の頭をポカポカと殴った。
「な、なななちょっと十六夜君!?これはどういうつもりよ!」
「おい暴れるなってお嬢様。いいか?これが俺の―――作戦だ!」
十六夜はヤッハハハハハハハ!と笑いながら白い雪原を疾走する。飛鳥をお姫様抱っこしたままの状態で。
その光景に一瞬キョトンとする極夜姫。ギフトゲームの最中に何をやっているんですか、と。
そして十六夜達が極夜姫の下へ辿り着くと、十六夜は不敵に笑った。
「待たせたな姫ロリ。ゲームを終わらせに来たぜ」
「そうですか。それで、その行為は一体何のつもりですか?」
極夜姫が小首を傾げて問うと、十六夜はニヤリと笑って告げた。
「それはなあ………こうするんだよ!」
十六夜は笑って飛鳥を思いっきり上空へ―――――
「は?きゃあーーーーーッ!!?」
「はいぃッ!!?」
飛鳥の悲鳴と極夜姫の驚愕の声が上がった。流石の極夜姫でもこれを見れば驚かざるを得なかった。
そして唖然とする極夜姫を見て十六夜はこの上なく笑っていた。
「待ってたぜ。アンタが油断するこの時を!!」
「!?」
ハッと我に返り視線を十六夜に戻すと、極夜姫の眼前に十六夜がいて拳は既に彼女の鳩尾を狙っていた。
この至近距離で、なおかつ攻撃モーションに入っている十六夜の拳を避けるには、
―――というのは全くの嘘である。避けようと思えば避けられる。………
「今だ、お嬢様!」
「ええ。―――
「―――ッ!!?」
十六夜の掛け声と共に飛鳥の一喝が極夜姫の耳に響く。
一秒にも満たない一瞬の縛りが極夜姫を襲う。
そしてこの一瞬さえあれば、第三宇宙速度を凌駕した十六夜の拳は―――彼女に届く。
「俺達の勝ちだ、姫ロリ!」
「……………ッ!!!」
十六夜の拳は遂に極夜姫を捉え、彼女の鳩尾に突き刺さるとその場に叩きつけた。
星を揺るがす程の一撃をまともに喰らった極夜姫は、苦痛に顔を歪めて吐血した。
その様子を見ていた十六夜は落下してきた飛鳥を抱き止めると、ニヤリと笑った。
「やっとアンタにダメージを与えられたぜ」
「………ふふ、そのようですね。人間にしては痛すぎる一撃でしたよ、十六夜さん」
「当たり前だ。手加減は一切してなかったからな」
ヤハハと豪快に笑う十六夜。そうですか、と笑って返す極夜姫。
一方、飛鳥は顔を真っ赤にしながらプルプルと怒りに震えていた。
「ちょっと十六夜君!?レディを放り投げるなんて一体どういうつもりよ!?」
「ん?ああ、悪いなお嬢様。ほら、お詫びの印に頭撫でてやるからよ」
「は?いらないわよそんな―――の………ん、」
そう言っておきながらも十六夜に頭を撫でられて嬉しそうな笑みを見せる飛鳥。
その様子に十六夜はニヤニヤと見つめていたが、飛鳥は気づいていなかった。
白い雪原に仰向けで横たわっていた極夜姫は、自嘲し一人呟いていた。
「………流石に