全ての試練を終えた問題児一行は黒ウサギの下へ、極夜姫は白夜叉の腕の中に戻っていた。
黒ウサギは早速白夜叉にギフト鑑定を頼んだが、白夜叉はゲッと気まずそうな顔になる。
「よ、よりにもよってギフト鑑定か。無関係なのだがの」
とはいえ、二つの試練をクリアしたのだ。何もしてあげないわけにはいかない。
白夜叉は極夜姫の頭を撫でながら十六夜・飛鳥・耀を見つめた。
「どれどれ………ふむふむ………うむ、三人共に素養が高いのは分かる。だがしかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトの力をどの程度把握しておる?」
「企業秘密」
「右に同じ」
「以下同文」
「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」
「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札貼られるのは趣味じゃない」
拒絶する十六夜に同意するように頷く二人。
これに極夜姫はムッと振り返った。
「白夜姉様のご厚意を無下にするおつもりですか?そんなこと私が許」
「「敗者が口出し(するな・しないで)」」
「………うぅ、白夜姉様ぁ!!」
十六夜と飛鳥に痛いところを突かれて白夜叉に向き直り、涙目で飛びつく極夜姫。
白夜叉は極夜姫の頭をただ優しく撫でてあげるだけで何も言わない。
ハンデについてはお任せにしていたが、まさかギフト未使用の極甘ハンデをした挙げ句、敗北してくるとは思いもしなかったのだろう。
それ故に白夜叉は極夜姫を甘やかせるわけにはいかない。頭撫でている時点で甘やかせてるようにしか見えないが。
白夜叉は首を振り頭を切り換えると、あっと妙案が浮かびニヤリと笑った。
「まあ、何にせよ〝
不意に白夜叉は両手を前に出してパンパンと柏手を打つ。すると三人の眼前に光輝く三枚のカードが現れる。
カードにはそれぞれの名前と、体に宿るギフトを表すネームが記されていた。
コバルトブルー
逆廻 十六夜
ギフトネーム
〝
ワインレッド
久遠 飛鳥
ギフトネーム
〝威光〟
パールエメラルド
春日部 耀
ギフトネーム
〝
〝ノーフォーマー〟
「ギフトカード!」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!?このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!耀さんの〝生命の目録〟だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」
「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」
「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」
三人は黒ウサギに叱られながら各々のカードを物珍しそうに見つめる。
「我らの双女神のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは〝ノーネーム〟だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」
白夜叉は説明すると、懐から夜色のカードを取り出して極夜姫に渡す。
「ほれ極夜。あの日外界に去る時に私に預けておいたおんしのギフトカードだの」
「はい。たしかに白夜姉様の温もりが詰まった
「これ勝手に名称を変えるでない。そのギフトカードの正式名称は〝ラプラスの紙片〟だ。全知の一端でそこに刻まれるギフトネームは自身の魂と繋がった〝
「へえ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」
ん?と白夜叉は極夜姫から離れて十六夜へと歩み寄りギフトカードを覗き込む。
〝正体不明〟の文字を見て彼女は顔色を変えた。
「………いや、そんな馬鹿な。〝正体不明〟だと………?全知である〝ラプラスの紙片〟がエラーを起こしたというのか?いやだがそんなはずは、」
「まあ何にせよ、鑑定出来なかったんだろ。俺はむしろありがたいさ」
ヤハハと笑う十六夜。対照的に納得のいかないような表情の白夜叉。
十六夜は極夜姫に目を向けて歩み寄る。
「姫ロリのギフトカードはどんな感じなんだ?」
「はい、これです」
極夜姫は十六夜にギフトカードを見せた。
ポラーナイト
極夜姫
ギフトネーム
〝太陽と極夜の星霊〟
〝極な夜の魔王〟
〝
〝
〝天動説の片割れ〟
〝白夜と繋がりし者〟
〝
〝神格〟
「………おいおい、中々物騒なギフトばっかじゃねえか!〝天動説の片割れ〟ってことは、白夜叉が〝天動説〟を司ってるもう一人か?」
「はい。正しくは、元来〝天動説〟は白夜姉様だけのギフトです」
「は?そいつはどういう意味だ?」
「さて?どういう意味でしょうね」
フフフ、と悪戯っぽく笑う極夜姫。教える気はないらしい。
十六夜はチッと舌打ちした。
★★★★★★★★★★
「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
「そうね。黒ウサギから聞いたのだけれど、極夜さんはギフトを一切使用せずに私達の相手をしてくれたそうよ。もう少し本気出してくれてもよかったのに」
「冗談はよせってお嬢様。姫ロリのギフトカードを見せてもらったが、俺はギフト未使用で助かったと思ってる」
珍しく弱気な十六夜に飛鳥は首を傾げた。
「………そんなに恐ろしいギフトだったの十六夜君?」
「ああ。そもそも極夜ってのは〝太陽が昇らない〟現象だ。光を奪われた環境だと俺達じゃ為す術ねえだろ」
「そ、それもそうね。太陽の光がない世界とか気が滅入っちゃうものね………」
「だな」
苦笑いを浮かべる十六夜と飛鳥。
白夜叉と極夜姫はふふ、と笑い―――白夜叉だけは急にスッと真剣な顔で黒ウサギ達を見る。
「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」
「ああ、名前とか旗の話か?それなら聞いたぜ」
「ならそれを取り戻すために、〝魔王〟と戦わねばならんことも?」
「聞いてるわよ」
「………では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
ドキリとした黒ウサギは視線を逸らす。
それを見た白夜叉は、悟られるまで隠していたようだなと黒ウサギの思いを読み取った。
「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」
「〝カッコいい〟で済む話ではないのだがの………全く、若さゆえのものなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰れば分かるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが………そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」
「「……………っ、」」
「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力をつけろ。小僧はともかく、おんしら二人の力では魔王のゲームを生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、何時見ても悲しいものだ」
「………ご忠告ありがと。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」
キッと白夜叉を睨みつけて宣言する飛鳥。
すると極夜姫が白夜叉より一歩前に出ると、物騒な笑みで告げた。
「ふふ、飛鳥さん?白夜姉様と決闘がしたいのでしたらまず―――私の本気に勝てたらにしてくださいね?」
「………ッ!?え、ええ。分かったわ」
試練の時の温厚さはまるでなく、にこやかな笑顔のまま殺気を滲ませる。
白夜叉はやれやれだの、と肩を竦ませたあと、ニヤリと笑った。
「ふふ、そうだのう。私は3345外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。………ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらいかつ私の妹との死闘を潜り抜けてからだの」
「嫌です!」
黒ウサギは即拒絶した。白夜叉は拗ねたように唇を尖らせた。
「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせるのだぞ?三食首輪つきの個室も用意するし、私の
「三食首輪つきってソレもう明らかにペット扱いですから!―――って白夜叉様!?今さりげなく極夜姫様のことを〝メイド〟と仰いましたよね!?」
「うむ、言ったがそれが何かの?のう、極夜?」
「はい。白夜姉様がお望みでしたら
極夜姫は嬉々として承諾する。黒ウサギの心配は杞憂に終わった。
そう、忘れてはならないのだ。
白夜叉と極夜姫は〝ノーネーム〟一同の背を見送ったのだった。