ギフトゲームが引き分けに終わった極夜姫と白夜叉。白夜叉はゲーム盤を修繕し私室へと場所を戻す。
私室に戻った白夜叉は極夜姫を見つめてうむ、と頷いた。
「極夜。決闘は引き分けに終わったが………そのだな、」
「はいはい、分かってますよ。服はどこですか?」
「―――!!極夜………すまない。私の我が儘に付き合ってくれて」
「いえいえ。私が好きで白夜姉様の言うことを聞いているだけですから」
ふふ、と笑う極夜姫。白夜叉は極夜姫の頭を撫でる。
「ふふ、私の妹がおんしでよかったと改めて思うぞ。―――これが着てほしい服だの」
「………隠し持っていたんですね」
控えめな発言の割りにはしっかりと準備している白夜叉に思わず苦笑を零す極夜姫。
白夜叉から受け取ったメイド服に素早く着替える極夜姫。無論のこと白夜叉が見ているこの場で。
「………これでよし!白夜姉様、変では………ありませんか?」
着替え終えた極夜姫はクルリと白夜叉に振り返る。それを見た白夜叉はうむ!と親指を立てて絶賛した。
「ああ、問題ない!むしろ似合っておるぞ!やはり私の妹は何着せても可愛いのう♪」
「ふふ、お褒めに与り光栄でございます白夜姉様♪」
白夜叉に褒められて、可愛いと言ってもらえて頬を赤らめて喜ぶ極夜姫。
黒髪の頭には純白のメイドカチューシャ。
黒い姫ドレスは黒いフリルがたくさんついた純白のメイド服に。
黒いニーハイソックスは純白のものに。
靴は変わらず黒い靴―――というより畳の上だから履いてすらいないのだが。
ふと疑問に思ったことを極夜姫は口にする。
「………ところで何でメイド服の色が純白なんですか白夜姉様?」
「ふふ、それは夜でも目立つようにするためなのだよ!………それと私のことは今日からご主人様と呼びなさい」
「え?は、はい!ご主人様♪」
「うむ。さらにおんしには違う名前を与えよう。極夜の名を上層の連中に知られるのはまずい。名は………そうだな、
え?と疑問の声を漏らす極夜姫。だが昔の自分の行いを思い出した彼女は表情を曇らせた。
白夜叉はそれに気づくと極夜姫の下へ歩み寄り、頭をポンと軽く叩いた。
「もう過ぎたことだ、気にするな。それにおんしは見境なくやったわけではなく私の為を想ってやったことなのだろう?」
「そうですけど、でも」
「よい。もうよいのだ。おんしは罪滅ぼしでこの箱庭を去り、私と何千年も別れたではないか」
「だけど、それは白夜姉s―――コホン。ご主人様も苦しめてしまったじゃないですか!」
極夜姫は反論する。すると白夜叉は極夜姫の頭を優しく撫でながらボソリと呟く。
「………ふん。おんしと
「え?何か仰いましたか白夜n―――コホン。ご主人様?」
「な、何でもないぞ。―――それより、私がよいと言っている。メイドは主たる私の言うことに従うべきではないか?」
ハッと極夜姫は今の自分の立場を思い出して慌てて頭を下げた。
「も、申し訳ありません!………ご主人様の御許しが戴けるのでしたら私はそれに従います」
「うむ、では許す。だがもう二度と〝あんな事〟をしては駄目だからな?肝に銘じよ」
「はい。肝に銘じておきます!」
力強く頷く極夜姫。白夜叉はうむ、と頷いて再度頭を優しく撫でた。
「ではおんしの名も改めよう。………今日からおんしは私の専属メイド・黒衣だ。今後一切〝極夜〟の名は名乗ってはならん。よいな?」
「はい。ご主人様の仰せのままに」
極夜姫改め―――黒衣は白夜叉にニコリと微笑み了承した。満足そうに笑う白夜叉。
今後は姉妹であることを隠し通さなければならない。昔とは違って共に四桁の実力しか持たない為、三桁以上に襲撃されればひと溜まりもないだろう。
白夜叉は黒衣を膝の上に乗せると、右腕で抱きしめながら左手で頭を優しく撫でる。
黒衣は頬を赤らめて白夜叉に体を預けて甘える。
そんな中、不意に障子の向こう側から少女の声が聞こえた。
「白夜叉。ただいま戻ってきたのだが………入って構わないか?」
「ん?その声はレティシアか。うむ、入ってきて構わんよ」
白夜叉が許可を出すと、障子が開き美麗な金髪を特注のリボンで結び、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿させるロングスカートを着た、レティシアと呼ばれた少女が入ってきてた。
「………いや、白夜叉?」
「ん?何かの?」
「何かの、ではない。思いっきりお取り込み中じゃないか。―――というよりメイドの彼女は誰なんだ?」
「ああ、この子か?この子は―――私の可愛い妹だ」
「―――………は?」
素っ頓狂な声を上げるレティシア。同じく驚いた黒衣は白夜叉を見た。
「ご主人様?私の正体をバラしても問題ない方なんですか?」
「ああ。レティシアは信頼できる奴だ。正体をバラしても問題ないよ、極夜」
「………はい、白夜姉様♪」
頷いた黒衣は振り返りスカートの裾を軽く摘み上げて優雅に一礼した。
「初めまして、レティシアさん。私は極夜姫と申します。以後お見知り置きを」
「………極夜、だと?」
〝極夜〟と聞いて瞳をいっぱいに見開いて驚愕するレティシア。
極夜姫と名乗る黒衣はキョトンとした。
「………私のことをご存知なんですか?」
「ああ。私は君とは初対面だが、噂を耳にしたことがあってな。極夜という闇夜を彷彿させるような女性は太陽の星霊にして、太陽神を殺す事に特化した最強の神殺しの魔王。夜を支配するその力は我々〝箱庭の騎士〟にとっては憧れで、
「………そ、そうなんですか」
熱心に語るレティシアに、冷や汗をダラダラ流す黒衣。
私情で数多の神群を
あの時の自分はある意味では特異な問題児だったなあと思った。
だがふと吸血鬼たちが自分の事を『救世主』と囁いていたそうだが、箱庭には太陽光を遮る天幕があるのだから太陽が照りつけようがなかろうが関係ないはずだと思った。―――が、黒衣は余り深く考えないことにした。
白夜叉は黒衣の心情を読み取って苦笑いを浮かべた。
「ふふ、それでレティシア。おんしは今後一切、私の妹の真名〝極夜〟を口にしてはならん。この子の事は〝黒衣〟と親しげに呼んでやってくれ」
「………ああ、分かった。理由がどうあれ白夜叉には今回の件で恩義がある。その約束は必ず守ろう」
レティシアは笑って頷くと、黒衣は小首を傾げた。
「今回の件で、ってどういう意味ですか?」
「ん?ああ、このレティシアは元〝ノーネーム〟の仲間なのだが、現在の所有者である〝ペルセウス〟が箱庭の外に売り払おうとしておったから私がこうして
「………要するに盗んできたのですね。
黒衣に注意されてうぐっ、となる白夜叉。黒衣のしっかりとした態度にほう、と一人感心するレティシア。
だが、スッと目を細めた黒衣は物騒な発言を口にした。
「ふふ、ですがご安心くださいませ。私が〝ペルセウス〟を殲滅して外界にいる
「おい馬鹿やめろ。そんなことは絶対にこの私がさせんぞ」
黒衣を止める白夜叉。そもそも外界はいざ知れず、〝ペルセウス〟が壊滅したら証拠隠滅どころか騒ぎになると思うが。
前言撤回。白夜叉と同じで黒衣もとんでもない問題児なのだと確信するレティシア。
白夜叉はコホン、と咳払いをし気を取り直して黒衣に命令した。
「黒衣。おんしにはレティシアと共に行動してもらいたい。よいな?」
「はい。ご主人様が仰るのでしたらその依頼、この黒衣が慎んでお受けいたします♪」