話が終わり、本拠に戻ろうとした四人。だが、そんな彼らを嘲笑うかのように一本の褐色の光が射し込んだ。
レティシアはハッとして振り返って叫ぶ。
「アレは………ゴーゴンの威光!?まずい、見つかった!」
レティシアは慌てて光から庇うように三人の前に立ち塞がる。
光の正体を知る黒ウサギは悲痛の叫び声と共に遠方を睨む。
「ゴーゴンの首を掲げた旗印………!?だ、駄目です!避けてくださいレティシア様!」
「そうですよ。貴女は下がってください」
「え?」とレティシアは驚く。それは彼女の手を引いて黒衣が前に出たからだ。
十六夜は軽薄な笑みを浮かべて問う。
「姫ロリ。お前何するつもりだ?」
「ふふ。こうするんですよ」
黒衣は笑って濃密な闇を纏わせた右手を前に出して褐色の光に触れる。すると次の瞬間―――褐色が、闇色に塗り潰された。
「「なっ!?」」
「へえ?」
驚愕する黒ウサギとレティシア。十六夜だけは興味津々に眺めた。
黒衣は闇色に染め上げたソレを先程光を放ってきた方面に押し返す。
「な、なんだ!?」
「分からん!我々の放ったゴーゴンの威光が黒に染まったことぐらいしか………!」
「た、退避ッ!!」
翼の生えた空駆ける靴を履いた騎士風の男達は慌てて回避しようと動く。だが、
「生憎ですが私の
邪悪さを孕ませた笑みで告げた黒衣は両手を広げる。その刹那、一本の細い闇は爆発的な勢いを持って横に広がり―――騎士達の逃げ場を塞いだ。
「なあっ!?」
「これほどか!」
「た、助け―――!」
逃げ場を失った騎士達は、一人残らず闇に呑み込まれた。
それを確認した黒衣はパンパンと柏手を打ち―――騎士達を一人残らず闇ごと消し去った。
「「「え?」」」
「ふふ、これでよし。さて、レティシアさん。私達はご主人様のところへ戻りましょうか」
「は?………いや、彼らは………〝ペルセウス〟の騎士達はどこへ?」
「彼らですか?彼らなら―――私のゲーム盤『
「そ、そうか。ならいい………のか?」
疑問形で小首を傾げるレティシア。十六夜は〝終わりなき闇夜〟と聞いて笑う。
「ふうん。〝終わりなき闇夜〟ってのは姫ロリのゲーム盤だったのか。俺はてっきり箱庭を永遠の極夜に封じ込めるモノかと思ったぜ」
「そうでしたか。あ、ですが十六夜さんの言った通り永遠の極夜の中にこの箱庭を封じ込める事だって可能ですよ?パラドックスゲームを開催すれば」
「は?」
「まあ、今の私では霊格が著しく落ちていますから出来ませんけどね」
笑って答える黒衣に、十六夜は珍しく頬を引き
黒衣はその表情を満足そうに眺めた後、レティシアに振り返る。
「それでは戻りましょうかレティシアさん。恐らく私が捕らえている彼らのリーダーはご主人様と接触しているでしょうからね」
「ああ。………黒ウサギと十六夜。また後でな」
「はいな。また後ででございますよ、レティシア様」
「おう」
二人に暫しの別れをしたレティシアは、黒衣の手を取り―――彼女の空間跳躍により共に姿を消した。
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そして現在、〝サウザンドアイズ〟支店の前に空間跳躍し、女性店員と顔を合わせた。
「極夜様。オーナーでしたら中でルイオス様と一緒です」
「はい?―――ちょっと待ってください店員さん!私のご主人様と二人きりですか!?」
「は、はい―――ってご主人様?」
「そのルイオスとか言う人は男ですか!?女ですか!?」
「え?あ、男です」
「………そうですか」
ルイオスの性別が〝男〟と分かった瞬間、黒衣はとてつもない殺気とドス黒いオーラを放ち、レティシアに振り返った。
「フフ、フフフフフ………レティシアさん」
「な、なんだ黒衣?」
「ご主人様と二人っきりとか許しません!ルイオスとかいう男―――
「ま、待て!早まるな!彼は腐っても〝サウザンドアイズ〟の同士だ!同士殺しは重罪だぞ!?」
「そんなの知ったことありません!同士殺しが重罪ですか?どうでもいいですね。ご主人様の身の安全が最優先です!というわけで―――」
「は?」としたレティシアをガシッと抱きかかえると、第六宇宙速度で白夜叉の下へ向かった。
即ち、瞬く間もなく白夜叉の下へ辿り着く。空間跳躍ではないがまさに瞬間移動の御業だった。
遮るものを全て吹き飛ばして白夜叉の前に現れた黒衣兼ねレティシア。白夜叉とルイオスは余りにも派手な登場の仕方に瞳を瞬かせた。
「な、何事だ!?」
「ご主人様!ご無事ですか!?そこの男に何かされていませんか!?体を触られたりとか匂いを嗅がれたりとか髪を撫でられたりとか唇を奪われたりとか見つめられたりとか抱きしめられたりとか貞操を傷つけられたりとか怪我を負わされたりとかプロポーズされたりとか罵声を浴びせられたりとか添い寝されたりとか
「ええい!一辺に尋ねるな戯けがッ!!」
バシィインッ!!と黒衣の頭を白夜叉の半ば本気の扇一閃が炸裂した。
「痛っ!」と黒衣は頭を抱えて涙目になる。白夜叉はフホホ!と笑いながら黒衣を引き寄せ抱きしめ頭を優しく撫でる。
すると黒衣は気持ち良さそうに目を細めて白夜叉に身を
一方、突然の出来事についていけない亜麻色の髪に蛇皮の上着を着た線の細い男ルイオスはポカーンと眺めていた。
「………えと、白夜叉様?」
「何かの?」
「その子誰?」
「ふふん。この子は私の可愛い専属メイド
黒衣をギュッと抱きしめながらルイオスを睨む白夜叉。ルイオスはふうん、と黒衣の全身を見つめた。
「たしかに可愛いお姫様って感じだね。だけど生憎僕はガキみたいな体には興味ないからね。僕が欲しいのは大人しくて豊満な胸の持ち主だよ」
「ふん!貴様にやる部下など一人もおらんわい!他を当たれ!」
ニヤニヤ笑うルイオスをキッと睨みつける白夜叉。
レティシアが苦笑していると、ルイオスは彼女に気づいて目を細めた。
「それよりも、なんでその吸血鬼がここにいんの?今頃は僕の部下達が石化して連れ帰っていたと思ってたんだけど………あの無能共しくじったみたいだね」
「ふふ、私のメイドが追っ払ったんだろうな。のう?黒衣」
「はい。〝ペルセウス〟の騎士達は私のゲーム盤の中に閉じ込めておいてますよ」
「「は?」」
思わず素っ頓狂な声を上げる白夜叉とルイオス。まあ、追い払ったのではなく捕らえているからだろう。
〝ゲーム盤〟と聞いてルイオスは目を見開いて問いただす。
「お、おい。君はメイドなんだろ?何でゲーム盤なんか持ってんだよ!」
「ふふ、メイドは何でも持っているモノなんですよ?ルイオスさん」
「いや。流石にゲーム盤を持っているメイドは数少ないと思うのだが」
冷静にツッコミを入れるレティシア。黒衣はルイオスにフッと笑みを消して言う。
「あ、でも貴方の部下達を人質にしてレティシアさんを無条件で手に入れようとは思ってませんから」
「え?あ、うん。お前は白夜叉様の専属メイドってことだし〝サウザンドアイズ〟の同士。つまり傘下の幹部である僕ら〝ペルセウス〟とも同士なんだ。つーかそれ犯罪だろ?」
「それもそうですね。私は犯罪を犯すつもりはありませんしそんな真似は絶対にしません」
「そうだよね。じゃあさっさと僕の部下達とそこの吸血鬼を返しなよ。お前は犯罪は犯したくないんだろ?」
いやらしく笑うルイオス。だが黒衣は悔しがるどころか嬉々とした笑みを浮かべていた。
「ふふ、ところでルイオスさん」
「なんだ?まだ何かあるの?」
「はい。ルイオスさんは―――相手を強制的にギフトゲームに参加させられる方法は………ご存知ですよね?」
「うん?ああ、それは魔王が持つ〝
ルイオスは黒衣の狙いに気づいて身構える。黒衣は悪魔のような笑みを浮かべて一言。
「それではルイオスさん―――――覚悟はいいですね?」
そして黒衣は悪魔な笑みと共に黒い〝