ギフトゲーム終了後、白夜叉と黒衣は〝ノーネーム〟にレティシアの譲渡を行った。
すると、問題児三人は口を揃えて、
「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」
「え?」と黒ウサギが固まり、
「え?」とジンも同じく固まり、
「はい?」と黒衣が小首を傾げ、
「………ほう」と白夜叉は瞳を怪しく光らせ、
「は?」とレティシアが間の抜けた声を発した。
飛鳥が腰に手を当てて言う。
「え?でもは?でもないわよ。だって今回のゲームで活躍したのって私と十六夜君と春日部さんの三人だけじゃない?黒ウサギは審判でジン君に至ってはついてきただけだったもの」
「うん。私なんて全力で殴られたり石にもなったから」
「つーかゲームマスターと元・魔王様ぶちのめしたの俺だろ?所有権は俺達で等分、お嬢様が3で春日部も3、そして俺が4でもう話はついた!」
「何を言っちゃってんでございますかこの人達!?」
黒ウサギが叫ぶ。ジンも唖然としている中、レティシアは「ふむ」と顎に手を当てて冷静に考えていた。
「そうだな。君達がギフトゲームに勝利してくれたお陰でまたこうしてコミュニティに戻れる。私はその事にとても感動している。だから君達が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか」
「レ、レティシア様!?」
黒ウサギはあっさりOKを出したレティシアに驚愕していると、白夜叉が待っていたとばかりにメイド服をどこからともなく取り出した。
「フホホホ!メイド服の事ならこの白夜叉に任せろ!大小様々なメイド服を取り揃えておるぞ?」
「ご主人様。いつの間にかご用意なさってたんですね………相も変わらず抜かりないです」
「ふふ、当たり前だ!小僧共の事だから私が可愛い妹を専属メイドにするように!レティシアをメイドにすると読んでおったわいッ!!」
「「「流石は白夜叉。分かってる(じゃない・じゃねえか)!!」」」
「うむ!」
問題児三人と白夜叉は親指を立てて笑みを交わし合う。苦笑する黒衣とレティシア。
黒ウサギとジンは痛い頭を抱えていた。
飛鳥は早速レティシア用に白夜叉が基調した紅と白のメイド服を、白夜叉から受け取りレティシアに振り返る。
「私、ずっと金髪の使用人に憧れていたのよ。これからよろしく、レティシア」
「よろしく………いや、主従なのだから『よろしくお願いします』の方がいいかな?」
「使い勝手がいいのを使えばいいよ」
「そ、そうか。………いや、そうですか?んん、そうでございますか?」
「黒ウサギの真似はやめとけ」
ヤハハと笑う十六夜。意外と和やかな四人を見て、黒ウサギは力なく肩を落とした。
すると、白夜叉が何かを思い出したようにレティシアに手招きした。
「ああ、そうだ。レティシア」
「ん?なんだ、白夜叉?」
「メイドの心得ならば私の妹に聞くとよいぞ。黒衣は私のお世話を一から億千万とこなせる、〝
「………ああ、分かった。ご教授のほどよろしく頼むぞ、黒衣」
「はい。たっぶりしごかせてもらいますね?レティシアさん♪」
全身からおぞましいオーラを滲ませて微笑む黒衣。それにレティシアは「お手柔らかに頼むよ」と背中に冷や汗をダラダラ流しながら答えたのだった。
★★★★★★★★★★
〝ノーネーム〟にレティシアを譲渡し終えた白夜叉と黒衣は〝サウザンドアイズ〟支店に戻り、二人は向かい合って白夜叉の私室に座っていた。
白夜叉はスッと目を細めて口を開いた。
「さて、黒衣―――いや、
「はい………な、なんで、しょうか?」
白夜叉の怒りの表情とドス黒いオーラにびくびくする黒衣。白夜叉は扇の先をビッと黒衣に向けて、
「私が怒っている理由は分かっておるな?」
「は、はい。ご主人様の前で魔王として力を振るった事………ですよね?」
「そうだ。私は〝
「は、はい………ごめんなさいご主人様」
白夜叉の指摘に黒衣は申し訳なさそうな顔で謝る。白夜叉はフンと鼻を鳴らして忠告した。
「よいか駄妹。今回は相手が相手だったから目を
「はい………肝に銘じておきます、ご主人様」
「―――うむ。分かればよろしい。………来なさい」
「はい」
何時ものような飛び込みはなく、ゆっくりと立ち上がり―――
「トオッ!!」
「ひゃ!?」
立ち上がった瞬間を見計らい、白夜叉は低い姿勢で黒衣に
黒衣がキョトンとする中、白夜叉は黒衣の上に重なるような体勢で両手を畳につき見つめた。
「して黒衣。おんしはまだ私に隠し事をしておるな?」
「へ?」
「なんだ、その間抜けな声は。やはり隠し事をしておるのだな?悪いことは言わん。包み隠さず話せ。………ついでに
「は、はい。ご主人様がそう仰るのなら」
黒衣は
「って後半のはジョークだからの!?本当に脱ぎ出す奴がおるかッ!!」
「え?違うんですか?………ふふ、照れてるご主人様はとても可愛いですよ」
「―――っ!!ええい!妹メイド風情が私をからかうでないわッ!!」
「……………っ!!?」
黒衣は不意に唇を奪われた。白夜叉が叫んだ後に彼女の唇を自分の唇で塞いだのだ。
甘い静寂の時が過ぎ去り―――頬を赤らめ合った二人はゆっくりと顔を白夜叉が離してニヤリと笑った。
「ふふん。何時もはおんしからキスをしてくるから今日は特別に私からしてやったぞ?くくく、ドキドキしたか?」
「はい………とてもドキドキしました………!もう一回、いいですか?」
「馬鹿言え。後でたっぷりじっくりキスしてやる。だが今は―――おんしの隠し事について洗いざらい吐いてもらう時間だ。さあ言うのだ。言わねばこの後の楽しみは全てなかったことに」
「や、だ、駄目です!話しますからお預けはしないでください!」
首を横にブンブン振って必死に懇願する黒衣。白夜叉はニヤリと笑って、
「では、全て話してくれるな?」
「うー………ズルいですご主人様!………分かりました。全てをお話しますからお預けしないでくれますか………?」
「ああ。話してくれるならお預けはせんよ」
「………はい。ではあの日、ご主人様と別れた後の話をさせていただきます」
黒衣はコホンと咳払いをして、あの日あったことを語り始めた。
「まず最初に―――嘘をついてごめんなさい!実は私、クイーン・ハロウィン様に隷属しています」
「―――………は?」
「クイーン・ハロウィン様は昼と夜の境界線を支配できるお方でしたので、
「いや、ちょっと待て!あやつに隷属しているとは………真か!?」
「はい、すみませんが真実です。………もしかして
嬉しそうに笑う黒衣に、白夜叉は「うぐっ」と頬を真っ赤にして叫んだ。
「ち、茶化すなっ!―――それで、隷属とはまさかあやつに私の妹を殺させた、と?」
「いえ。ご主人様と同じで私は殺されてなんかいませんよ。望むのは―――ご主人様と一緒に死にたいですから」
「そ、そうか。………もしかして、私と感覚がリンクしておるのもあやつのギフトか?」
「はい。ご主人様との繋がりを取り戻したくって、クイーン・ハロウィン様に
満面の笑みで白夜叉を見つめる黒衣。白夜叉は苦笑いを浮かべて「そうか」と頷いた。
「そうだな。私の妹を秘密裏に召喚できたのはあやつが黒衣を隷属させていたからだったんだな………ようやく納得がいった」
「はい。あと私の役目は一緒に召喚された三人………つまり十六夜さん、飛鳥さん、耀さんをよろしくと書かれました。あとご主人様のご褒美とも書かれていました」
「ほう。あの小僧共の面倒を見ろ、か。ん?黒衣がご褒美とな?―――ふふ、全くもって私のご褒美だの♪」
「ひゃ!もう、ご主人様ったら積極的ですね♪」
「ふふ、おんしに比べたら消極的な方だの」
「それもそうですね」
抱きしめ合い笑い合う二人。だが白夜叉はふとある疑問が浮上した。
「(………ん?あやつに隷属しておるのなら―――何故黒衣の〝契約書類〟は黒い?)」
そう。白夜叉のように隷属しているならば、〝契約書類〟の色は黒ではなく『魔王』の称号も『元・魔王』となるはずだ。
「(最初に言った〝嘘をついて〟とはこの事を意味するのか?………いや、それよりも私に嘘をついてまで魔王として在り続けたい理由はなんだ?)」
白夜叉は考える素振りをする。本当はその答えをとっくに分かっているが、分からないフリをした。
そして黒衣が魔王として在り続けたい理由、それは―――
『魔王として力を振るい、白夜叉をいつでも守れるようにするため』だった。
それは一見いい意味に思えるが、『魔王』として力を振るうことは決していいことではない。
「(恐らく上層の奴らに極夜が戻ってきている事は筒抜けなはずだ。すぐにでも何処かの神群が弱体化している今を狙って討伐しにかかるだろうな………だがそれは絶対に私がさせん。だがもしおんしが誤った方向に走ってしまったのならその時は―――)」
白夜叉はスッと目を細めて哀しげに呟いたのだった。
「(私が―――
これで一巻は完結です。
階層支配者制度………完璧に忘れていましたね。
白夜叉が『下種一匹殺したところで誰も気に留めんわ』と言っていたから彼らに主催者権限を使用したことやその事に目を瞑った二人は咎められない―――かな?
まあ、極夜姫の存在が上層に知られた以上、どこぞの神群が討伐しに下層へ赴くかもしれませんが。