というわけで二話目です。
湖に落ちた四人と一匹。その中で茶髪の少女が湖で溺れかかっている三毛猫を救出してホッと息を
黒髪の少女と金髪の少年は陸地に上がるや否やで各々が
「し、信じられないわ!まさか問答無用で空に放り出すなんて!」
「全くだクソッタレ。下手すりゃゲームオーバーだぜコレ。石の中ならまだ親切だ」
「いえ、それでは動けないでしょう?」
「俺だったら問題ねえよ」
「あら、そう。随分と身勝手なのね貴方」
二人はフンと互いに鼻を鳴らして制服の端を絞る。その後ろを茶髪の少女、三毛猫と続くように陸地に上がり少女は私服の端を絞り、三毛猫は全身をブルブルと震わせて水を弾いた。
茶髪の少女は絞りながらふと呟く。
「此処………どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てらしきものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
少女の呟きに金髪の少年が応える。彼らが知らない場所であることは確かだが。
疑問符を頭上に浮かべている茶髪の少女。その背に
「此処は〝箱庭〟という所ですよ。この世界に来ているということは皆様にも彼女からお手紙が届いていたはずです」
闇を彷彿させるような長い黒髪を風に
金髪の少年はへえ、と目を細めて笑って問いただした。
「なんだオマエ?此処を知ってるのか?しかも〝彼女〟ってことはもしかしてあの変な手紙の送り主も知ってるんだな?」
「はい、勿論知ってますよ。送り主である彼女のことも。ですが彼女についてはあなた方が知る必要はありませんし言うつもりもありません」
キッパリとこれ以上の追及を拒否する極夜姫。
だがそれにより黒髪の少女が少し怒り気味に言う。
「いえ、なおさら知る必要があるわ。私達は何も知らされていないのに此処へ強制的に呼び出されたのよ?文句の一つや二つ、言わせてくれてもいいじゃない!」
「成る程、そういうことでしたか。でしたらなおさら彼女について知る必要はありませんね」
「え?それはどういう意味?」
茶髪の少女が小首を傾げて問いただす。極夜姫はコクリと頷いて答えた。
「はい、それはですね………彼女はあなた方をこの箱庭に呼び出しただけであって依頼者は別にいるということです」
「依頼者は別に、ですって?」
黒髪の少女がピクッと片眉を上げて聞き返す。極夜姫ははい、と肯定した。
金髪の少年はふぅん、と適当に相槌を打つ。
「それで、その依頼者ってのは誰なんだ?」
「………残念ながら私にもその事は皆無です。あなた方とは違って彼女に手紙で直接依頼を受けてこの箱庭に強制召喚された身ですから」
「………そう。ならその彼女に文句を言いたいのは貴女も一緒なのね」
黒髪の少女がそう呟くと、極夜姫はいいえ、と首を横に振った。
「私は
「………へえ?
この時、金髪の少年が瞳を光らせていたように見えたが、極夜姫には見えていなかった。
金髪の少年は気を取り直して髪を掻き上げて全員に質問した。
「まあとりあえず、オマエらの名前を教えな。同じ奴に此処に呼び出されたんだ。この先行動を共にするかもしれねえからお互いの事を知っておくのも悪くないだろ?」
「ええ、それもそうね。だけどその〝オマエ〟って呼び方を訂正して。―――私は
気の強そうな黒髪の少女は〝久遠飛鳥〟と名乗った。
飛鳥は長い黒髪に二つの赤いリボンを左右に結び、白いYシャツの長袖と黒のロングスカートを身につけた青い瞳が特徴の少女だった。
「それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「………
飛鳥とは対照的に物静かな茶髪の少女は〝春日部耀〟と名乗った。
耀は短い茶髪を白いヘアピンで留め、スリーブレスのジャケットとショートパンツを身につけた茶色い瞳が特徴の少女だった。
「そう。よろしく春日部さん。それで、この世界に詳しそうなのに私達に教えてくださらない意地悪な子供の貴女は?」
「意地悪な子供、ですか私?………まあそれは置いておきましょう。私は極夜姫と申します。以後お見知り置きを」
極夜姫は名を名乗り、闇夜を彷彿させるような長い黒髪を揺らしながら黒い姫ドレスの裾を軽く摘み上げて赤い瞳を閉じ優雅に一礼した。
その様子に子供なのに礼儀正しいんだなと三人と一匹は感心した。
彼女の見た目にそぐわない年齢を聞いたらきっと驚くこと間違いなしだろうが。
「そう。よろしく極夜姫さん。最後に、野蛮で狂暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。まあ見たまんま野蛮で凶暴な
軽薄に笑って金髪の少年は〝逆廻十六夜〟と名乗った。
十六夜は癖っ毛のある短い金髪の頭にヘッドホンを装着し、黄色のシャツの上に黒の学ランと長ズボンを身につけた紫色の瞳が特徴の少年だった。
「あら、そう。
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
三人の様子をじっと観察する極夜姫。
そんな彼らを物陰からこっそり覗いていた青髪の頭からウサギの耳を生やした少女が思う。
(うわぁ………なんか問題児ばっかりみたいですねえ………)
召喚しておいてアレだが彼らが協力する姿はどう考えても無に等しい。彼女ははあ、と
だが闇夜のような長髪の少女―――極夜姫を見てあっ、と思い出した。
(そういえばあの黒髪の幼い方。名前はたしか〝極夜姫〟と名乗ってましたね………。それに〝白夜姉様〟って………もしかして彼女の姉は―――!?)
まさか、とは思ったが〝極夜姫〟の名を持つ少女はあの方の妹以外に考えられない。
ウサ耳の少女は内心ドキドキしながらも極夜姫の観察を徹する事にしたのだった。