唐突な極夜姫の問いに、ガルドは固まる。
「………ええと、レディ?貴女は何が言いたいんですか?」
「分かりづらかったですか?ではこう問いましょう。ガルドさん、貴方は何故私達を勧誘したんですか?」
質問を別のものに変える極夜姫。
ガルドは笑って答えた。
「それはもちろん、人材が欲しいからに決まっていますよ。異世界から来た人材ならばどのようなギフトを持っているか興味がありますし」
「そうですか。たしかにその考えはいいです。ですが、何故この場に居合わせていない黒ウサギさんの名前が出てくるのでしょうか?………貴方が私達に説明してくださっている時にも彼女の名前は度々出てきましたし、何より貴方は彼女に同情しています」
「………それは黒ウサギの彼女が可哀想だからついでに私のコミュニティに引き取ってあげようと考えたわけです」
「黒ウサギさんをついでに、ですか」
ガルドの言葉にふふ、と笑った極夜姫は小首を傾げる。
「
「………ぐっ、そ、それは―――」
「それは、実は貴方は黒ウサギさんが〝本命〟で私達が〝オマケ〟だからです」
「………っ!」
ガルドは自分の失敗に気づいた。ここは両方欲しいと答えるべきだったと。
焦りを
「貴方は黒ウサギさんが欲しくて私達に接触、勧誘を行いました。交渉が成功すれば後は黒ウサギさんだけを手に入れて、私達が使い物にならないと判断したらコミュニティから追放、
「―――ッ!!?」
〝殺す〟という言葉を聞いたガルドはドキリと心臓を跳ねさせる。
そんな彼の反応を極夜姫は見逃さなかった。
「え?〝殺す〟は冗談で言っただけですよ。それとも―――人を
「……………っ!!!」
なんとか怒りを
ガルドは隣に立ってにこやかな笑顔の極夜姫を殺気の籠った鋭い視線で睨みつけると―――勢いよく立ち上がり彼女の胸倉を掴んで引き上げた。
「テメェ!
「………そうですか。その反応ならば同士殺しも平気でやってそうですね」
胸倉を掴まれて人間ならば危険な状態であるというのに、極夜姫は冷静にガルドを見据えている。
ガルドは不可解―――というより不気味だと内心で呟く。
(なんだコイツ!?なんで俺に首絞めかけられてんのに落ち着いてやがるッ!!!………しかも一切抵抗しねえだと!?)
そう。彼の言う通り極夜姫は胸倉を掴んでいる手を引き剥がそうともしなければ、隠し武具を持っている様子もない。
彼女は戦う意思すらなくただ無防備な姿を
困惑しているガルドに、飛鳥が叫んだ。
「極夜さん!?………今すぐ彼女を
「―――な、何!?」
ガルドは自分の意に反して極夜姫を解放してしまった。何故そうなってしまったのか理解できなかった。
続けて飛鳥はガルドに命令する。
「貴方は
「は?………な、何だとッ!?」
急に金縛りにあったかのように身動きの一切を封じられて驚愕するガルド。
その様子にジンと耀も驚きを隠せない。ただ命令しただけであの
これには極夜姫も少し驚いて飛鳥の下に歩み寄った。
「飛鳥さん?貴女のギフトは言葉で人身を操る事が出来るんですか?」
「ええ、そうよ。それより極夜さん!首を絞められていたようだけれど大丈夫なの!?」
「え?あ、はい。首は絞められてませんし心配はいりませんよ。………ですが私の身を案じてくださるなんて飛鳥さんは優しいですね。ありがとうございます」
極夜姫に笑いかけられると、飛鳥はなんだか照れくさくて頬を掻いた。
耀とジンも極夜姫の下に駆け寄った。
「極夜、大丈夫?」
「はい、平気ですよ耀さん」
「ほ、本当に大丈夫なんですか!?」
「はい、どこも怪我してませんよ。ふふふ」
心配性な三人に思わず笑ってしまう極夜姫。
一方、ガルドは身動き一つ出来ずに苛立たしさが増していた。
「クソ!なんで動けねえんだよ―――ッ!!」
「………ガルド=ガスパー」
ジンはガルドに近寄る。するとガルドは鋭い目つきで彼を睨みつけた。
「な、何だよ小僧ォ!!俺が身動き取れねえ事をいいことに笑いにきたってのか!?」
「い、いえ。別にそういうわけではありません。ただ―――極夜姫さんに手を出すのはやめた方がいいですよ!」
「あ?それはどういう意味だよ!?」
極夜姫に手を出さない方がいいと言われるが、ガルドはその意味が分からない。怒りに支配されているから思考が鈍っているのだろう。
ジンはガルドの目を真っ直ぐ見て告げた。
「………極夜姫さんの姉は白夜叉様なんです!ですから彼女に手を出したら最後―――貴方は肉は愚か骨も残らないと思ってください!」
「な、」
ガルドは絶句した。極夜姫の姉があの白夜叉だという事実に。
彼はハッと思い出す。
(そういやあの小娘は白夜姉様とか言ってやがったな。まさか、白夜ってのは本当にあの白夜叉を指してんのか!?)
もし本当なら最悪だ。ガルドは極夜姫に視線を向けて冷や汗を流した。
そして彼女があの時一切の抵抗を見せなかったのは、ガルドでは自分を殺す事が出来ないことを分かっていたからだろう。
「………極夜さん。ガルドさんをどうしようかしら?」
「そうですね。とりあえず何かしらの悪事を働いているのはたしかです。ですので―――飛鳥さんのギフトで洗いざらい吐かせて見ましょう」
ガルドはギョッと目を見開き極夜姫を見た。このままでは今まで働いていた悪事の全てがバレてしまう。
ガルドが懇願するよりも早く、飛鳥は
「あら?それはとても面白そうな提案だわ。ふふ、というわけでガルドさん―――今まで働いていた悪事を
「―――ク、クソォオオオオオッ!!!」
ガルドは断末魔のような声を上げたのち、今まで働いていた悪事の全てを洗いざらい吐いたのだった。
《ガルド、自白中―――以下省略》
ガルドの自白(強制的に)を聞いた飛鳥・耀・ジンは共に不愉快極まりない表情で彼を睨みつけていた。
極夜姫も表情の変化は見られないものの、にこやかな笑顔とは打って変わって赤い瞳は冷えきっている。
「………ッ、これで、満足かテメェらッ!!!」
「ええ、貴方の化けの皮がいい感じに
ガルドの怒りと殺気の籠った瞳と声を飛鳥に向けるが、彼女は怯む様子もなく冷ややかな視線を彼に向けている。
そして、ふと面白い案が思い浮かんだのかガルドの顎に指をかけて微笑んだ。
「ねえ、ガルドさん。貴方は極夜さんのお姉さん―――白夜叉さんの前に突き出されて彼女に手を出したことをバラされるのと………私達とギフトゲームをするのと、どちらがいいかしら?」
「―――ッ!!そ、そんなの、後者を選択するに決まってるッ!!!」
ガルドは声の限り叫ぶ。飛鳥は満足そうに笑った。
「ふふ、奇遇ね。私も後者を選んでくれないか期待していたところなのよ」
「……………な、何が言いたい!?」
「ええ、それはね。私達と『ギフトゲーム』をしましょう?貴方の〝フォレス・ガロ〟存続と〝ノーネーム〟の誇りと魂を
飛鳥はガルドの顎を掴み、その顔を覗き込んでそう宣言したのだった。