ガルドが去っていったのを確認したジンは飛鳥を見て問いかける。
「そういえば飛鳥さん!先程『〝ノーネーム〟の誇りと魂を賭けて』と仰ってましたが、飛鳥さんは僕のコミュニティに入ってくださるんですか!?」
「ええ、勿論よ。あんな外道コミュニティなんかよりジン君のコミュニティの方がよっぽどいいもの。それにね、私は組織の水準なんかどうでもいいわ。春日部さんもジン君の所で問題ない?」
飛鳥は耀に話を促す。耀はコクリと頷いて答えた。
「うん。私もコミュニティがどうのとかは気にしてない。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」
「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの」
飛鳥は口にしときながら気恥ずかしそうに髪を触りながら耀に聞く。
耀は無言で
「………うん。飛鳥は私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」
『よかったなお嬢………お嬢に友達ができてワシも涙が出るほど嬉しいわ』
ホロリと泣く三毛猫。極夜姫は彼に歩み寄ってしゃがみこむと、彼の頭を撫でながら言う。
「ふふ、良かったですね三毛猫さん」
『ああ、ホンマに嬉しいわ!………姫の姉ちゃん。ワシからのお願いやけど―――お嬢とも友達になってくれんか?』
「そうですね、白夜姉様とも仲良くしてくださるなら即承諾致しますよ」
三毛猫のお願いににこやかな笑顔で返す極夜姫。
耀は三毛猫の不可解な発言に問いただす。
「え?ちょっと待って。三毛猫、『お嬢とも』って何時から極夜と友達になったの?」
『ん?そいは企業秘密ってヤツや。なあ、姫の姉ちゃん』
「ふふ、はい。企業秘密です」
笑みを交わす三毛猫と極夜姫。
耀は釈然としない顔で三毛猫を睨みつけながら呟く。
「………三毛猫に先越されるなんて」
「あら、それは許せないわね。猫の癖に生意気よ」
『な、なんやと小娘!そんなのワシの勝手やろが!』
飛鳥を睨みつけながら威嚇する三毛猫。
すると耀が三毛猫を拾い上げて真正面から見つめて注意した。
「三毛猫。飛鳥は私の大切な友達だから『小娘』なんて言ったら許さないよ?」
『う………すまんかったお嬢。ワシが悪かった………』
「ふふ、はい良くできました」
素直に謝る三毛猫に耀は彼の頭を撫でて褒める。
その光景を極夜姫は温かい目で見守る。
「………極夜。私とも友達になってください」
「………そんな畏まらなくていいですよ?はい、こちらこそよろしくお願いします」
「ありがと、極夜。飛鳥とも友達になってくれたら嬉しいな」
「はい、勿論ですよ。飛鳥さんが許可してくださるなら」
極夜姫は飛鳥をチラッと見る。
飛鳥はまた気恥ずかしそうに髪を弄った。
「ええ勿論OKよ、極夜さん。春日部さん共々よろしくね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
笑みを交わし合う三人。
ジンは飛鳥と耀がコミュニティに入ってくれた事に喜ぶ反面、仲間外れみたいでちょっぴり寂しかった。
それを察した極夜姫はジンの下に歩み寄り声をかけた。
「ジンさんも私達と友達になりませんか?」
「え?あ、はい!皆さんがいいと仰るなら是非お願いします!」
「うん。よろしく、ジン」
「ええ。よろしくね、ジン君」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
ジンは嬉しそうな顔をして、ハッと思い出したように極夜姫を見る。
「そ、そういえば極夜姫さん。コミュニティは白夜叉様が所属している所に入るのでしょうか?」
「………そうですね。白夜姉様がそれを望むのでしたら、すみませんがジンさんのコミュニティには入りません」
ジンに頭を下げる極夜姫。
ジンは慌てて両手を振って返した。
「い、いえいえ!極夜姫さんがそうお決めになるんでしたら僕から言うことは何もありませんよ!気にしないでください!」
「………はい。本当にすみません」
しかしもう一度謝る極夜姫。コミュニティの状況を知っておきながら、加入せず保留にしていることに申し訳が立たないのだろう。
ジンは本当に白夜叉様の妹さんなのだろうか?と疑問に思う。
だがこれ以上考えていても答えは出ないだろう。そう思ったジンは詮索をやめて苦笑いを浮かべたのだった。
★★★★★★★★★★
日が暮れた頃に極夜姫達は十六夜を連れ戻しに〝世界の果て〟へ向かっていた黒ウサギが帰ってきて彼らと噴水広場で合流した。
そこで極夜姫達から話を聞いた黒ウサギはウサ耳を逆立てて怒り、質問の嵐が飛び交う。
「な、なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「一体どういう
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「黙らっしゃい!!!」
飛鳥・耀・ジンはまるで口裏を合わせたかのような言い訳をする。
黒ウサギが激怒すると、極夜姫は首を振って止める。
「彼らを責めないでください黒ウサギさん。全ての発端は私がいけないんです………責めるのなら私だけにしてください!」
「………へ?そ、そうだったのですか………極夜姫様が〝フォレス・ガロ〟のリーダーに喧嘩を………」
黒ウサギは主犯が極夜姫だと知り、何やらブツブツと独り
十六夜はニヤニヤと笑って口を挟んだ。
「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩を売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「………十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど………はぁ~……。仕方がない人達です。まあいいデスヨ、腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。〝フォレス・ガロ〟程度なら十六夜さんと極夜姫様がいれば楽勝でしょう」
「は?何言ってんだよオマエ。俺は参加しねえよ?」
「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ。勿論〝ノーネーム〟に入ってすらいない極夜さんも、ね」
十六夜と飛鳥の言葉に驚いた黒ウサギは慌てて食ってかかる。
「だ、駄目ですよ!お二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」
「そういうことじゃねえよ黒ウサギ」
十六夜は真剣な顔で黒ウサギを右手で制する。
「いいか?この喧嘩は、コイツらが売ってヤツらが買った。なのに俺が手を出すのは無粋ってもんだろ?」
「あら、分かっているじゃない。………あとね、黒ウサギ。たしかに極夜さんがあの外道を怒らせたのだけれど、ギフトゲームの提案をしたのは私。だから彼女を責めたら許さないわ」
「そ、そうなのですか?………はあ、もういいです。好きにしてください」
もう怒る気力も無いといった黒ウサギは、失う物はないしどうにでもなれと呟き肩を落としたのだった。
ようやく次回は白夜叉を出せそうです。