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何か音がする。ピチョーン、という水滴が滴る音だ。
地面も微妙に冷たい。はっとして、俺は目を覚ました。
辺りを見回す。どうやら俺は、洞窟の中にいるらしい。
俺は何とか起き上がるが、頭がガンガンする。手で頭を押さえ、下を向く。少し待つと、次第に頭痛は消えていく。
「……ここ、どこだ?」
俺は思わず呟いた。それ以外にセリフが思い浮かばなかった。
佇んでいても仕方がないと考え、俺は歩き出した。
しばらく歩いても、洞窟の出口らしいものは一切見当たらない。どこを歩いても、同じ様な通路が続く。まるで迷路の様な洞窟だ。
俺はどこに行けばいいのか分からない。そもそも、なぜこんな事に?俺はただ、本屋で漫画を購入し、スーパーでコーラを買い、家に帰宅していただけだ。
それに、瑠奈との約束もあり、夕方までには帰らなければならない。
「やっべぇ……遅刻したら、瑠奈姉ちゃんに怒られる!」
早く帰りたいのだが、出口が分からないのでは帰りようがない。
その時、俺はふと、左手首を見た。そこには、腕時計の様な物が左腕に巻かれている。
「これ、何だ?」
俺は呟き、その機械を触る。だが、とても頑丈で、全く取れない。俺は取る事を諦め、再び歩き出した。
目に映る光景は一向に変わらず、同じ所をグルグル回っている様に感じる。
「……ったく!ここは何なんだ⁉︎出口はないし、道は変わらないし!」
俺は大きく背伸びをして喚く。と、その時だった。
突然、左腕にある先程の腕時計の様な物が光り出したのだ。俺はその眩しさに目を閉じるが、その光に目を慣れさせ、次第に目を開けていく。すると、そこに文字が浮かび上がってきた。
『千人集まりましたので、ご説明させていただきます。』
「……は?」
その文字を見て、俺は呟く。説明?何を?心の中で突っ込みながらも、俺は文字の続きを読んだ。
『現在あなた方は、一人の方、もしくは大勢の方がおられると思います。ですが、これから説明する内容は、これからのあなた方にとってとても大切なので、お静かに、必ず目を通しておいてください。』
俺は唾を飲み込む。一体これから、何が始まろうとしているのだろう。文字は続ける。
『先程も申した通り、現在この迷宮には、千人の方々がいます。その方々は、これからこの迷宮から脱出するゲームをしてもらいます。この迷宮から脱出する以外に、この世界から抜け出す手段はありませんので、ぜひ、積極的にチャレンジしてもらいたいと思います。』
「……どういう事だ?」
この文字の意味を、俺は理解できなかった。脱出?ゲーム?抜け出せない?様々なワードが頭の中をグルグル回る。文字は更に続く。
『また、この迷宮からの脱出は命懸けです。分かれ道がある時は、正しい道を選んでください。間違った道を行くと、様々なトラップに襲われ、ほとんどの確率で死が訪れます。くれぐれも気を付けてください。……では最後に。今、あなた方が装着しているこの時計は、生き残っている人の数を表しております。また、時間を見る事もできます。それでは、ゴールを目指して頑張ってくださいね。』
文字はそこで終わり、光と共に消えていった。
「……何だよそれ」
俺は俯き、そう呟く。何か分からない想いが、心の底から込み上げてくる。恐らく、他の人達も同じ気持ちだろう。
ほんの十数分前まで、俺は日常にいたのだ。家のドアを開ければ、瑠奈が優しい表情で俺に、おかえり、と言ってくれる、そんな日常に。
それなのに、今はどうだ。迷宮から脱出しろだって?
「そんな事……いきなりそんな事説明されても、すんなり受け入れられるわけねーだろーが‼︎‼︎」
俺は思い切り壁を叩きつける。怒り、悲しみ、不安。その三つの感情が、心の中で葛藤している。
俺はその場に座り込む。俺が叫んでも、誰も応えてくれない。どうやら、この辺りには人はいない様だ。
数分の後、俺はゆっくりと立ち上がる。
「……分かったよ。この迷宮の《ゴール》に辿り着けばいいんだろ!やってやるよ!」
俺は上を向く。だが、目に入るのは岩の天井のみ。左手の腕時計を見る。数字はまだ"千"を示している。
「瑠奈姉ちゃん、俺、夜にはーーいや、しばらくの間帰れそうにないよ。でも、絶対に帰るから!約束するから!」
俺は拳を握り締める。
ふいに、俺の脳裏に瑠奈の笑顔が蘇ってくる。すると、俺の目に涙が浮かんできた。唇を噛み締め、眉を顰める。俺は涙を拭い、前を向く。家族の元に帰るため、俺は最初の一歩を踏み出す。
読んでくださり、ありがとうございます!
この話を読んで分かると思いますが、この物語はシンプルで、ただ迷宮から脱出するだけです。そういったシンプルな内容のこの話を、できるだけ面白い物語にしようと思います。
頑張りますので、これからもぜひ読んでください!