ラビリンス・ワールド   作:坂田 信長

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続きです。ぜひ読んでください!


一人の女性

6

    バリナースに戻り、宿に入る。まだ午後の四時。涼一は帰ってきていなかった。

    やはり、帰ってくるのが早すぎたか?俺はそう思い、部屋に入る。ベッドに横たわり、上を向く。

    だが、心の中で何かがムズムズしている。何か落ち着かない。

「まだ寝れないな……ちょっと外に出よう。」

    俺はそう呟き、起き上がる。部屋を出て、宿の入口の方へと歩く。すると、一人の女性が入ってきた。

「……あ」

「……あ」

    俺と女性は見合わせて、二人同時に呟く。その女性は、先程俺を助けてくれた恵那だった。

「奏……君……」

    恵那は表情一つ変えず、口をポッカリと開けて呟く。

「あ、恵那さん、さっきはありがとう。助かったよ。」

    俺は笑顔を作り、そう言った。すると恵那は、俺に近付いてくる。

「うん、気にしないで。私は、自主的にあなたを助けただけだから。あと……」

    ほんの少し黙り込み、俺の肩を掴む。

「私とは、関わらない方が良い。」

「……え?」

    俺は思わず恵那を見る。恵那は俺にそう言い捨て、宿の中へと入っていった。

    それから俺は、二時間程街中を歩いた。やはり、恵那の先程の発言が気になる。関わらない方が良い?なぜ?

    俺はこの二時間、この事ばかりを考えていた。

 

 

 

    やがて、涼一も戻ってきた。

「よう!奏!今日はどうだった?俺の方は全くだ。」

    涼一は残念そうな表情で言う。俺もダメだったと涼一に伝える。

「なら、今日も進展なしか……よし!風呂でも入るかな!」

    涼一はそう言い、宿へと入っていく。俺はあの事をずっと考えていた。だが、一人で考えても解決はしない。そこで俺は、涼一に相談してみる事にした。

「何?その、恵那って女性が言ったのか?『私とは関わらない方が良い』って?」

「あぁ、そうなんだよ。でもさ、その言葉の意味が分からなくてさ。何であんな事言ったんだろ?もしかして俺、嫌われた?」

    俺は湯船の壁にもたれかかり、深く溜息を吐く。

「いやいや、それはない。多分、俺でもそう言われてたぞ。」

    涼一は、俺を慰める様に言った。その直後、何かに勘付いたのか、少し自慢気な表情で口を開く。

「……分かったぞ、奏。なぜ、その恵那って人がそんな事を言ったのかが!」

「何⁉︎本当か⁉︎」

    俺は涼一の方に身を乗り出す。涼一は続ける。

「その恵那って人、何か悩みがあるんだ。しかも、誰かに相談したい様な悩みがな。」

「え?どういう事?」

「つまり、相談したいのに、できないんだ。自分のせいで、誰かを巻き込んじまうかもしれないから。だから、お前を巻き込みたくなかったから、関わらない方が良いって言ったんだよ。」

    成る程な。俺は涼一を尊敬した。まだ会った事もない人の事を、ここまで読み取るとは。

「ありがとう、涼一!何か、すっにりしたよ!」

「おう!お前も悩みがあったら、いつでも俺に相談しろよ!」

    俺達は拳を合わせる。今日はよく眠れる気がする。俺はそう思った。

 

 

 

    朝になり、俺と涼一は再び洞窟へと入る。できるだけ多くの情報を掴むため、それぞれ別の道を行く。

    迷宮探索をしている途中、俺は曲がり角を曲がる。すると、人にぶつかってしまった。

「あ、ごめん!うっりしてて!」

    俺は座り込みながらも、何とか謝る。見ると、一人の女性が座り込んだまま、こちらを見ている。その女性は、恵那だった。

「また……会ったわね……」

    恵那はそう呟き、立ち上がる。俺も服を叩き、立ち上がる。

「な、なぁ。恵那さんも、迷宮探索してるんだよな?良かったら、一緒に探索しないか?」

    俺は思い切って言う。恵那は俺の方を向き、口を開く。

「だから、私とは関わらない方が良いって言ったでしょ?」

    恵那は少しぶっきらぼうに言う。そんなに大きな悩みがあるのか。

「一人より、二人の方が探索も有利になるだろ?その方が、早く現実世界に帰れる可能性も膨らむ。今日だけだ。これが終わったら別れよう。」

    恵那はしばらくの間黙り込むが、やがて首を縦に振る。

「……分かった」

    恵那は何とか承諾してくれた。

    それから俺達は、様々な通路を通った。安全な道、危険な道。一緒に探索をしていく内に、強張っていた恵那の表情も、次第にほぐれていった。

    腕時計を見れば、すでに午後の二時になっている。

「……奏君、良かったら、食べる?」

「あ、ありがとう!腹も減ってたんだ。」

    俺達は座り込み、一休みする事にした。俺は恵那から貰ったハンバーガーを頬張る。

「これ、めっちゃ美味いぞ!どこで買ったんだ?」

    俺は恵那に問う。恵那は横を向き、口を開く。

「それ、私の手作りだけど。」

「マジで⁉︎すっごい美味い!」

    俺の言葉を聞き、恵那は素直に嬉しそうだった。

    ハンバーガーを食べ終わり、持って来ていた飲み物を飲む。すると、恵那が申し訳なさそうな表情で言う。

「奏君、その……さっきは関わらない方が良いなんて言って、ごめん。」

「いいよ、気にしなくても!でもさ、何であんな事言ったのか、気になるんだけど。」

    恵那は下を向き、黙り込む。やはり、聞いたらまずい事だったか。

「……奏君になら、言っても大丈夫かな。」

    恵那はそう言い、こちらを向く。そして、自分の事を話し出した。

 

 

 

    




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