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恵那は、自分の事を話し出す。
「……実は私、ある人に追われてるの。男の人なんだけど。」
「それって、ストーカーの事か?」
俺は真剣な表情で言う。恵那は続ける。
「まぁ、簡単にいればそうなるわね。半年前に、その人と出会ったんだけど、最初の方は、私に良くしてくれる、とても優しい人だと思ってた。でも、彼、私の事が好きだったみたいで、その行動は、次第にエスカレートしていったの。無理矢理キスをさせられそうになる事もあったわ。」
俺はその言葉を、息を飲んで聞いていた。この世界に、そんな奴がいるのか。
「もし、その人と付き合ったら、取り返しのつかない事になりそうで。無理矢理結婚させられそうで、怖くて……だから私、逃げてきたの。ずっとずっと逃げ続けて、気付いたら、バリナースの街にいて。その人がここに来るのも時間の問題だと思うの。あとね……」
恵那は下を向き、拳を握り締める。やがて俺の方を向き、話を続ける。
「彼、私に関わった男の人を、次々と殺していったの。」
「なっ……」
俺は思わず、息を詰まらせる。それはつまり、この世界で殺人が起きているという事だ。
「私も、彼と剣で戦ったわ。でも、全く歯が立たなかった。だから、もう誰にも相談したくなかったの。関わらない方が良いって言ったのは、そういう事よ。」
恵那の話を聞き、俺は拳を握り締める。
「恵那さん、心配すんなよ!その男も、もしかしたら死んでるかもしれないし!元気出そうぜ!」
俺は笑顔で言った。すると、恵那は笑い出した。
「もう!奏君ったら、本当に前向きなのね。でも、あなたの言う通りね。ずっと後ろを向いてても、仕方ないもの。私も、もうちょっと前向きになろうかな。」
俺達は立ち上がり、探索を続ける事にした。
腕時計を見ると、いつの間にか午後の八時を過ぎていた。
「うお!もうこんな時間だ!そろそろ街に戻ろうかな。」
「そうね。帰りましょ。」
そう言い、歩き出した。その時、恵那が突然後ろを向いた。
「……?どうかした?」
「い、いや……気のせいかな?」
恵那は前を向き、再び歩き出す。一体どうしたのだろう。俺は気にはなったが、それ以上聞かない事にした。
街に戻り、宿に入る。すると、恵那の表情が一変した。その視線の先には、一人の男が立っている。
「よぉ、恵那!どこに行ったかと思ったぜ。で?このチビは誰だぁ?」
男は俺を指差す。チビだと?俺はムッとした。
「え、えーと、その子は……」
「とぼけでも無駄だぜ。何せ、あの洞窟で全部見てたんだからな!」
成る程、そうか。だから、あの時恵那は振り返ったんだ。
「おいガキ!そういやお前、恵那の手作りハンバーガー食ってたな。まだ俺でさえ、恵那の手料理は食ってないってのによぉ!」
男は俺の肩を力強く掴む。
「明日、俺と決闘しろ。お前が勝ったら、恵那は諦めてやる。だが、俺が勝ったら、お前の命はねぇからな!」
「……あぁ、いいよ!あんたみたいなゲス野郎に殺される予定はないんでね。」
俺は男を睨みつける。恵那は俺の肩を掴み、叫ぶ。
「何言ってるのよ、奏君!殺し合いなんてやめて!奏君は関係ないじゃない!」
だが、俺の覚悟は揺るがない。俺は男の顔を見上げ、叫ぶ。
「恵那さんは、俺が守る!」
男は俺を睨む。
「ほぉ……良い度胸じゃねぇか。俺は蓮太だ。まぁ、お前を殺すのを楽しみにしておくぜ!」
男はそう言い捨て、宿から出て行った。
「おい、奏!何だ⁉︎何事だ⁉︎」
涼一が俺の方に走ってくる。俺は、今の出来事を涼一に話した。
「何⁉︎決闘だと⁉︎なら、俺も一緒に戦うぜ!お前一人じゃ危険だ!」
「いや、ダメだ!奴は、俺との一対一を望んでいる。下手に大勢でかかったら、何をし出すか分からない!悪いけど、今回だけは、手出ししないでくれ。」
俺はそう言い、部屋に戻っていく。恵那は俺の背中を、不安な表情で見ていた。
朝になり、俺と蓮太は街の広場に来た。
太陽が照り付けている。広場はとても広く、戦うにはちょうど良い場所だ。
広場の脇には、一体何事かと、大勢の野次馬が来ている。その中に、涼一と恵那の姿もある。
「フン……野次馬がいるとはいいね。お前を叩き潰す様子を、皆に見てもらえるんだからな!」
蓮太はそう言い、剣を抜く。俺も腰から剣を抜く。
「うおぉぉぉ‼︎」
「とりゃぁぁぁ‼︎」
二人は雄叫びを上げ、互いに突っ込んでいく。人間同士の戦いが、今幕を開く。
何か話の展開が凄い事になってきました……(笑)