ラビリンス・ワールド   作:坂田 信長

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続きです。ぜひ読んでください!


新たな通路

9

    蓮太との戦いの後、俺は早速、迷宮探索へとでかけようとした。

「ちょっと奏君!怪我してるのに、無理しちゃダメよ!」

    恵那はそう言い、俺を部屋に戻そうとする。だが俺は、怪我を治したいという気持ちよりも、早く現実世界に帰りたいという気持ちの方が大きかった。

    背中を押す恵那の手を押しのけ、俺は恵那の方を向く。

「大丈夫だって!恵那さんが手当してくれたおかげで、まだまだ全然動けそうだし!恵那さん、手当の仕方が上手いからな!」

    俺は笑顔でそう言う。恵那は下を向く。

「そ、そうかな……」

    恵那はそう呟く。その表情は、少し照れている様に見える。

「まぁ、奏が自分で言ってんだ。許してやっても良いんじゃないか。」

    恵那の背後から、涼一が近付いてくる。

「涼一さんまで……もう、無茶はしないでよ!」

    恵那は溜息を吐くが、すぐに笑顔になった。

 

 

 

    涼一は約束している他の人と探索に行く事になっており、俺は恵那と二人で探索に行く事となった。

    洞窟に入ると、いつもの風景が広がっている。

    やや湿った道。水が滴る天井。ゴツゴツした足場。歩きやすいとは言えない様な道を歩いていくと、俺達の前に分かれ道が姿を現わす。

    分かれ道は三つの通路に分かれており、俺達はその場に立ち尽くす。

「なぁ。どの道を行けばいいんだ?」

「私が分かるわけないでしょ!」

    俺の問いかけに、恵那はそう答える。確かに、ここは初めて来る場所だ。どの道が正解かなど、分かるはずがない。

    俺達はしばらく黙り込んでいたが、深く考えても無駄だという事に気付いた恵那が口を開く。

「……真ん中よ。真ん中が正解の道よ‼︎」

    恵那は人差し指で真ん中の道を指し、自信ありげに言う。

「え⁉︎恵那さん分かったのか⁉︎」

    俺はそう叫び、恵那を尊敬の眼差しで見る。こんな短時間で正解の道を割り出すとは、さすがだと思った。

「……分からないけど。」

    恵那は俺から目を背け、今度は自信なさそうに呟く。これには俺も、肩を落としてしまう。分からないのかよ!と、俺は心の中で思いつつ、再び前を向く。

「でも、もしかしたら、これが当たりの道かもしれないでしょ?人生何事もチャレンジよ!行ってみなきゃ分からないわよ!」

    恵那は笑顔で言う。俺は恵那の言葉を、目を細めて聞いていた。だが、よくよく考えれば、恵那の言う事も一理ある。実際、その無茶苦茶な《チャレンジ》が、残りの約四百五十人を、この迷宮のゴールへと導くかもしれない。

「……そうだな。迷ってても仕方ないよな!よし、行くか‼︎」

    俺達は迷いを捨て、真ん中の道へと入っていく。しばらく歩いても、何も出てこない。ただ延々と、何もない通路が続いているだけだ。

「ほーらね!やっぱり真ん中の道で正解だったのよ!私って冴えてる‼︎」

    恵那はそう言い、一人で喜んでいる。だが、何かがおかしい。恵那は気付いていないらしいが、俺はその《何か》を、敏感に察知していた。

    何か音がする。何かが崩れる様な音が。ふと、俺の頭上に砂が落ちてきた。俺は咄嗟に上を向く。その天井を見て、俺の表情は次第に青ざめていく。

「恵那さん、危ない‼︎」

    俺は恵那を、思い切り後ろに押した。俺と恵那は、二人同時に倒れ込む。

「いてて……どうしたの?」

    恵那はそう言い、後ろを向く。直後、先程まで俺達がいた場所に、太く鋭い針が付いつり天井が落ちてきた。

    そのつり天井を見て、恵那はその場に凍りついた。

「危ねー……早く気付いて良かったよ!」

    俺はゆっくりと立ち上がり、そっと胸を撫で下ろす。すると恵那は、俺の手を力強く握る。

「あ、ありがとう!奏君がいなかったら私、ここで死んでたよ‼︎」

「んな大げさな……でも、この道が外れって事は分かったな。あとは……」

    俺はふと、言葉を止める。ある一点を凝視したまま、俺の目は動かない。恵那も咄嗟に後ろを向く。見ると、横の壁からこちらに向かって、何かの発射台の様なものが現れている。

「な、なぁ、あれってまさか……」

「私も同じ事考えてるかも……」

    俺達は互いにそう呟く。次の瞬間、その発射台から、無数の槍が発射された。その槍は少しもブレる事なく、一直線にこちらに向かって飛んでくる。

「だぁぁー‼︎トラップはまだあったんだー‼︎」

「もう嫌ぁぁー‼︎」

    俺達は出口に向かって一目散に走り出す。背後からは槍が次第に近付いてくるが、一瞬たりとも振り向かず、ただ走り続けた。

「で、出口だ‼︎」

「飛び込むわよ‼︎」

    俺達はそう叫び、全ての力を振り絞る。

「そりゃっ‼︎」

    俺達は同時に、一本道から飛び出した。俺達が前に倒れ込む。その直後に、槍は俺達の頭上を通り過ぎ、目の前の壁に刺さる。

「たっ……助かった〜‼︎」

    俺は額から出る汗を拭いながら言う。その横では、恵那がスカートを握り締めながらその場に座り込む。

「心臓に悪すぎよ‼︎もう!」

    恵那が頬を膨らませながら叫んだ。

    俺も座り込み、胡座をかいた。

「大体、この迷宮を作って私達をこんな目に遭わせてるのは誰なのよ!そいつの面を見てみたいわ!」

    恵那は更に喚く。少し怒りすぎな様な気もするが、恵那の気持ちは俺にもよく分かる。

    俺達がこの世界に来たあの日、俺達にこの迷宮脱出を伝えたのはただの文字で、誰の仕業かは未だ判明していない。その人がどういう目的でこの大迷宮を作り、どういう目的で千人もの人々を閉じ込めているのか。

    実はあの日の数日後、腕時計の文字は追加でこんな事を説明してきた。

『この迷宮のゴールが開放された時点で、その時に生き残っている全ての人間が現実世界に戻る事ができます。』

    と。この文字の言う事が本当なのかは分からないが、俺達はその文字を信じて、今までずっと危険な冒険をしてきたのだ。

    ゴールへ辿り着けば全てが終わる。その瞬間がいつか訪れる事を、俺達は願っている。

「よし!今度は右の道を行こう!確信はないけど、俺達ならきっと大丈夫だ!」

    俺はそう言い、右の道へと足を踏み出す。恵那も、何の迷いもなく俺の後に続く。

    この通路も、先程と同じ様に何もない。ごく普通の道だ。だが、まだ油断はできない。いつどこからトラップが現れてもおかしくないのだ。

    と、次の瞬間。

「……っ‼︎」

    恵那が何かに気付き、息を詰まらせる。

「ん?恵那さん、どうしたの?」

「奏君、危ない‼︎」

    恵那は俺を前に押す。俺は前に倒れ込み、恵那は後ろに倒れ込む。すると、横の壁から鉄板の様な巨大な刃が高速でスライドしてきた。

    もし恵那が気付かなかったら、今頃俺は真っ二つだ。

「おい、嘘だろ⁉︎この道も外れかよ‼︎」

    その時、恵那は何かを発見し、声を上げる。

「奏君、あれ見て!このトラップの向こうに、何かスイッチみたいなものがあるわ!」

    言われるがまま、俺は恵那の指す方を見る。そこには確かに、丸いスイッチが壁に設置されていた。

「あのスイッチ、何かある!恵那さん!何としてもあれを押そう‼︎」

    俺の言葉に、恵那は頷く。だが、どうやってスイッチを押すかが問題だった。あのスイッチを押すには、高速で動く刃のトラップを上手く回避しなくてはならない。仮にこのトラップを通り抜ける事ができたとしても、その先に別のトラップがある可能性も否定できない。

    俺は臆病風に吹かれ、後ずさりをする。もし飛び出せば、僅かな判断ミスで命を落としてしまうかもしれない。すると、恵那が俺の肩に手を置いた。

「奏君!勇気を出して!私達にならできる!絶対に!」

    俺は、恵那の言葉に後押しされる。今更、死ぬのが怖いと言って逃げ出すわけにもいかない。今やらないと、後々必ず後悔するだろう。

「あぁ、やろう!絶対にあのスイッチを押すんだ‼︎」

    俺と恵那は、スイッチに向かって走り出す。すると文字通り、巨大な刃のトラップが俺達を襲ってきた。俺は剣を抜き、剣でそのトラップを食い止めようとする。だが、トラップの力の方が大きく、俺の手の力は次第に抜けていく。

「そ、奏君‼︎」

    恵那がこちらを向いて叫ぶ。俺は何とか耐えつつ、恵那に叫び返す。

「俺の事はいいから、早くそのスイッチを押すんだ‼︎」

    恵那は俺を心配そうな表情で見るが、俺の言葉を信じ、スイッチの方へと走っていく。幸いにも、その先にトラップはなく、すぐにスイッチのある位置に辿り着く事ができた。

「押すわよ‼︎」

    恵那は叫び、力強くスイッチを押した。すると、俺を襲っていた刃のトラップは次第に消えていく。それだけではない。何と、奥の壁が光と共に消えていき、その先に新たな通路が現れた。

「や、やったー‼︎」

    俺達は同時に、喜びの声を上げる。俺達が、新たな通路への扉を開いたのだ。

「とりあえず、バリナースの街に戻りましょう!この事を皆に伝えないと!」

「あぁ、そうだな!そうしよう!」

    俺達はそう言い、バリナースへと戻っていく。

    新たに開通された未知の通路に、俺の心は弾んでいた。

    




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