そんなわけで、ナイフ探し。リアムの、「失せ物を探すときは来た道を辿れ」のアドバイスで、二人で来た道を辿る。
「う〜……ど、どこだ〜……」
「すいません。クレープ一つ」
「なんでないんだよ〜どこで落としたんだっけ〜」
「千円で。……あ、まった、3円あります」
「もうダンジョンの中にしかないかな……」
「あ、どうも」
「って、リアム!真面目に探してよ!」
ベルに怒鳴られるも、リアムは涼しい顔でクレープを頬張る。
「そう慌てんなよ……誰かに取られてない限り、ナイフはその場から動かん」
「それが不安なんだよ!」
なんてやってる時だ。路地裏からどっかで見たパルゥムが飛んできた。
「うおっ」
「⁉︎ り、リリ⁉︎」
「あ?……って、あっ」
二人の元にリリが飛んできた。その瞬間、リリは「マズイ!」と思った。同時にリアムはクレープを落とした。
そして、路地裏から出てきたのはリューだった。
「今度はリューさん⁉︎な、何が起こって……」
「テメェかぁぁぁぁッッ‼︎」
怒りに任せてリアムはリューに飛び蹴りした。冷静にしゃがんで躱す。
「……リアム?なんですか?」
「なんですか?じゃねぇだろ!お前の二次災害のせいで俺のクレープはぐちゃぐちゃ殺人事件なんだ馬鹿野郎!」
「そ、それは申し訳ないことをしました」
「許さないね!俺にお詫びでクレープ10年分買うまでゆるさねぇ!」
「1年分がどれくらいなのか分からないのですが……」
「ち、ちょっとリューさん」
ベルが口を挟んだ。
「な、何があったんですか?」
「いえ、それが……」
リューはベルに目を向けたが、そこには誰もいなかった。
「……この辺りにパルゥムはいませんでしたか?」
「いえ、獣人ならここに……あれ?リリ?」
リリの姿はいなくなっていた。
「あれ?」
「………それよりクラネルさん。先ほどこんな物をみつけたのですが」
リューが取り出したのはヘスティアナイフだった。
「うああああああああっ‼︎」
大声で叫ぶベル。そして、リューの手を握って大きく振った。
「ありがとうッッ‼︎本っ当にっ、ありがとうございますっ‼︎」
「……クラネルさん、その、困る。このようなことは私ではなく、シルに向けてもらわなくては……」
「リュー何言ってるの⁉︎」
隣のシルさんが声を上げた。わっひょーいと喜ぶベルの肩にリアムが手を置いた。
「さて、見つかったことだし金」
「ダメだよ。見つけてくれたのはリューさんだもん」
「ざけんなよテメェ。見つかったことには変わりねぇだろ。俺が一緒に探してやった労力は無料じゃねぇ」
「労力って、クレープ食ってただけじゃないか!」
「ほう、おもしれぇ。男なら拳で語ろうじゃねぇか」
と、リアムが指をゴキゴキと鳴らし始めた時だ。リューがそのリアムの肩に手を置いて止めた。
「やめなさいリアム。それに、クラネルさんを傷つけると、シルが怒りますよ」
「そ、それは困る……」
「ふ、二人とも私をなんだと思ってるの⁉︎」
シルが顔を赤くして言った。
○
翌日。朝起きると、リリが朝飯を作っていた。
「あ、おはようございます!リアム様」
「おう。おはよ。早いな」
「いえいえ。朝ご飯できましたよ」
「悪いないつも」
「いえいえ。好きでやってることですから」
そのまま2人で朝飯を食う。すると、リリが立ち上がった。
「さて、ではリリは今日も出かけて来ますね」
「あ?そなの?まぁ仕事なんてどーせ来ないしいいんだけどさ」
「はい。それでは失礼します」
リリは元気良く出かけていった。その背中を見ながらリアムは昨日のパルゥムのことを思い出していた。
(………………ま、いーか)
そう思って、とりあえず布団を干した。真下でアーニャが水撒きをしていた。すると、干してた布団が下にずるりと落ちた。それがアーニャに直撃した。
「あっ、悪い」
「殺すにゃ」
「悪いって言ってんだろ!」
そのままアーニャが上に上がってきて取っ組み合いになりそうになった時だ。
「おい、何でも屋ってのはここか?」
「「あ?」」
見上げると、前にリアムに男の子を掴まれた冒険者がいた。リアムの顔を見るなり、そいつはギョッとする。
「て、テメェは……!」
「…………誰?」
「はぁ⁉︎人の男の子を男の子じゃなくしといてそれか⁉︎」
「なんの話?」
「グッ……(抑えるんだ、俺)まぁいい。お前に用があるんだ」
「なんだよ」
「依頼だよ。探して欲しい奴がいる」
「あ?」
○
夕方。
「「26000ヴァリス……」」
リリとベルが声を揃えた。
「「やあぁーーーーーーーーーっ‼︎」
「すごい、すごいですっ!ドロップアイテムは数えるくらいしか出なかったのにっ、ベル様はお一人で25000ヴァリス以上稼いでしまいました‼︎」
「わっ、わっ、わっ!夢じゃないよね!現実だよね!1日でこんなにお金が手に入るなんて……これもリリのおかげだよ!」
「馬鹿言っちゃいけないです、ベル様っ。モンスターの種類やドロップアイテムにもよりますけど、レベル1の五人組パーティが1日かけて稼げるのが25000ヴァリスちょうどくらいなんです。つまり、ベル様はお一人で彼らを優に凌ぐ働きをしたことになりますっ!」
「いやあ、ほら、兎もおだてりゃ木に登るって言うじゃない、それだよそれ!」
「ベル様が何を言いたいのかリリには全く訳がわかりませんが、取り敢えず便乗しときます!ベル様すごい!まだ上を目指せますよ‼︎」
「褒めすぎだよぉリリぃ!」
と、人の目も気にせず馬鹿みたいに興奮する二人。
「……ではベル様。そろそろ分け前をいただけますか?」
「うん、はい!」
ベルはドサリと13000ヴァリス渡した。
「………へ?」
「あぁ、これなら普通に神様に美味しいもの食べさせてあげられるかも……!」
「あの、ベル様、これは?」
「分け前だよ、決まってるじゃん!あ、そうだ!せっかくだしリリ、よかったらこれから一緒に酒場に行かない?」
ベルが誘うも、リリは不思議な顔をして聞いた。
「ひ、独り占めしようとか……ベル様は思わないんですか?」
「え、どうして?僕一人じゃこんな稼げるはずなかったよ。リリがいてくれたから、でしょ?」
そういうと、ベルは歩き出した。その背中を見ながら、リリは呟いた。
「………変なの」
○
「じゃ、よろしく頼む」
何でも屋に来た冒険者はそういうと去って行った。
「本当にやる気かにゃ?」
アーニャがリアムに聞いた。男からの依頼は、リリの居場所を突き止めることだった。が、居場所も何も自分の家にいるんだから、そのまま言えば任務達成だ。それでも、一応言わなかったんだけどね。
「ああ。仕事とプライベートは分けるタイプなんで」
「でも、同じチームメイトにゃ。それに、あいつに返したら多分、酷いことされるニャ」
「知るかよそんなん。それに、俺は俺でリリについて知りたいことがある」
「うーん……むむむ、でもニャあ……」
「とにかく、俺は俺の仕事をするだけだ。わーったらテメェ早く帰れ。ババァにチクるぞ」
言いながらリアムは、家を出た。