豊穣の女主人の上に何でも屋を開いた   作:フリーザ様

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本と情報収集

 

数日後、その数日の間、リアムは朝と夜以外は家を空けていた。それは、リリも同じである。とはいえ、別に二人の中は険悪というわけでもなく、朝も夜も飯の間とかは仲良くツッコンだりボケたりして暮らしていた。

その静かな二階とは裏腹に、一階の豊穣の女主人。

 

「くしゅん!」

 

シルが可愛らしいくしゃみをした。口元に手を当てた姿勢でキョロキョロしてると、他の店員たちの注目を集めていた。

 

「シル、風邪ですか?」

 

「う、ううん。平気、大丈夫だから」

 

リューに聞かれて、苦笑いしたまま返した。

 

「誰かがシルのことを噂してるんじゃニャいか?」

 

「だったら答えは明白……ニュフフ、あの冒険者の少年ニャ」

 

「……怒るよ、クロエ?」

 

と、言ってもクロエは気にした様子なく、スカートから伸びる尻尾を振って見せた。それを見てシルはため息をついた。

 

「でもあの冒険者くん、昨日は来なかったねー」

 

「いつもは空にニャッたシルの愛情弁当を持って帰ってくるのにニャー」

 

「せっかくシルが早く店を上がって少年を探しに行ったっていうのにニャー」

 

「探しには行ってません!」

 

四方八方から心を抉られ、顔を赤くするシル。

 

「シル、大丈夫です。クラネルさんはシルの思いを等閑にする人ではない。きっと、昨日はたまたまダンジョンからの帰りが遅くなったのでしょう」

 

「リューもその言い方は少し違って……うん、もういいや」

 

途中で面倒になりシルは諦めた。

 

「ダンジョンでくたばった、ニャんてことはニャいのかニャ?」

 

「ちょっとアーニャ、それ不謹慎!あの冒険者くんがシルを置いていなくなるはずないって!」

 

「私もう、疲れちゃったよ……」

 

「シル、気を確かに。クラネルさんはきっと無事です」

 

「いや、リュー、そうじゃなくて……」

 

「リューの言う通りニャ。あの少年が死ぬはずニャいニャ。というか、死んでほしくニャいニャ。もし死んでしまったら、ミャーは胸が張り裂けるかもしれニャい……」

 

その瞬間、ザワッと店内から囁きが聞こえた。

 

「少年はかけがえのニャい存在ニャ……そう、代わりニャんてどこにもいニャい……」

 

「く、クロエ?何言ってるの?」

 

シルが不安げに聞いた。

 

「シル。ミャーはカミングアウトするニャ……」

 

「な、なにを?」

 

「ミャーは、あの少年のぷりっとした形のいい未成熟のお尻に興奮を覚えずには……あ、ちょ……痛っ、ごめっ、ゆ、許しっ……ぁ!」

 

「おい馬鹿娘どもぉ!遊んでないでさっさと働きなぁ!」

 

いつになく騒がしかった。

 

「ん?シル、それ何?」

 

「ふえっ?」

 

ルノアの指差す先には本が置いてあった。

 

「これって……」

 

「誰かの落し物?」

 

「ニャんだニャんだ?」

 

「どうかしたのかニャ?」

 

と、本の周りにワラワラと店員が集まってくる。その群れに店の奥から声がした。

 

「何べん同じこと言わすんだい!それとも言っただけじゃわからないって⁉︎よぅし、あたしが直接あんたたちの体へ叩き込んでやろうじゃないか!」

 

全員が身震いした。

 

「ま、待つニャ、母ちゃんっ。ミャー達は不審物を発見したのニャ!」

 

「これっ、これっ!」

 

シルが例の本を差し出した。

 

「ミアお母さん、この本、どうやらお客様の落し物のようなんです。どうすればいいですか?」

 

「店の中で目につきやすそうなところに置いときな。馬鹿じゃなかったら、忘れたことに気付いて取りに来るだろ」

 

「はい、わかりました」

 

そう言うとミアは自分の仕事に戻って行った。その背中を見ながらクロエがアーニャに小声で言った。

 

「………相変わらずおっかニャいニャ」

 

「あれに対抗していつも家賃を払わニャいリアムはある意味すごいニャ」

 

「……リアムといえば、ここ最近どこに言ってるニャ?」

 

クロエに聞かれて、アーニャは黙った。アーニャは唯一、リアムが何をしてるか知っているからだ。口止めされているし、アーニャとしても他の人に言う気にはなれなかった。だから、誤魔化すことにした。

 

「に、にゃー?ミャーにはなんのことかサッパリにゃ?」

 

全力で誤魔化せない言い訳だった。

 

「………ニャんか隠してるニャ?」

 

「ニャ、ニャにも知らニャいニャ!」

 

「みんなー!アーニャが何か隠してるニャー!吐かせるニャー!」

 

「ニャー!ニャんもニャいのニャー!」

 

だが、驚くほど誰も二人の方を見なかった。「ニャ?」と二人して首を傾げると、二人の肩に手が置かれた。ビクッとする二人。ギギギッとぶっ壊れかけのロボットのように振り向くと、ミアが立っていた。

 

「………覚悟は決めたね?」

 

それは問いであって問いでなかった。出来てようが出来ていまいが、これからすることは変わらない。

 

「「ご、ごめんニャさ……」」

 

人から出るとは思えない音が響いた。

 

 

 

 

翌日、リアムが家を出たあと、アーニャはこっそりと尾行した。

 

「むむむ……絶対突き止めるニャ……」

 

と、呟きながらあとをつけるのだが、3分後に後悔することになった。リアムはどう見ても十人以上はいる冒険者の群れに囲まれた。

 

(来なけりゃ良かったニャ!)

 

いつ自分が巻き込まれるか分からない場所で見ていた。リアムは恐れることなく言った。

 

「おーい、あんたらの所の事について聞きたいんだけど。いいか?」

 

「あ?いきなり何言ってんだテメエ」

 

「カスは黙って俺の質問に答えろ。あんたらのとこの神が作る酒はどんなんだ?」

 

「誰がカスだコルァ!」

 

「ぶっ殺す!」

 

「ったく、なんで毎回こうなんだよ……」

 

(そりゃそうニャるニャ!)

 

心の中でアーニャが突っ込んでる間に、リアムが絡んだ連中は全員壁にめり込んだ。

 

「あーあ……また気絶させちまった……仕方ねぇ、そろそろやり方変えるしかねぇか……」

 

そう思ってリアムが引き返して来た時だ、

 

「あ、アーニャ。何やってんのお前」

 

「あっ……」

 

見つかった。

 

 

 

 

「で、心配にニャッてお姉ちゃんはついてきたニャ」

 

「誰がお姉ちゃんだ」

 

事情を説明した。

 

「まぁ別に心配するようなことはしてねぇよ」

 

「武器持ちの冒険者数十名に手ぶらで挑んだ奴の台詞じゃニャいニャ!」

 

「あんなん武器なくても平気だっての」

 

言いながら、くあっと欠伸をするリアム。

 

「てかオメー仕事は?」

 

「元々今日は休みだったニャ!」

 

「休みを何に使ってんだテメーは。まぁいいや。とにかく、俺は行くからな」

 

「また拷問に行くニャ?」

 

「やり方は変える」

 

言うと、リアムはギルドへ向かった。

 

 

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