ギルド。リアムが向かうと、ちょうどエイナが出てきた。
「あら、リムくん」
「エイナ?ちょうどよかった。話があったんだ」
「私も、リムくんに依頼があったんだ」
「「ソーマファミリアについて」」
と、二人は声を揃えた。
「えっ?エイナも?」
「うん。実は、最近ソーマファミリアの人がやけに殺気立っててね。それにベルくんのサポーターもソーマファミリアだから、何かあるのか少し調べようと思ったんだけど」
「えっ?あいつサポーターなんて雇ったの?」
「うん。だから、ソーマファミリアについてリムくんに調べてもらおうと思ってたの」
「マジでか。じゃあエイナもなんも知らないって事か……」
「ねぇリムくん。私はリムくんと違って仕事があるから中々調べたりする時間がないの。だから、依頼出来ないかな?」
「物をお願いされながら傷付けられたの初めてだわ。まぁいいけどよ。その代わり、そっちも何か分かったら教えろよ」
「うん。もちろん」
そのまま二人は別れた。
○
結局、調べまわったものの収穫は酒が超美味いしかなかった。
「はーあ……いっそ、酒でも飲んでみるか……」
リアムにはソーマの酒を買うような金はないが、いざとなれば万引きするまでだ。
「でも、流石に明日にするか……」
今日は帰った。
○
「あ、おかえりなさいませ。リアム様!」
リリがパタパタと玄関まで出迎えた。
「おお、ただいま」
頭を無造作に撫でながら、リアムは居間に向かう。
「ところでリアム様。今日は何をなさっていたのですか?」
「仕事だ」
「仕事?どうしてリリにも声をかけてくださらなかったのですか⁉︎」
「お前は朝からいなかっただろ」
「ぶー……リアム様とお仕事したかったです……。でも、どんなお仕事を?」
「人探しと情報収集だ。まぁこういう人の粗探しみたいな仕事は俺一人のがいいだろ。お前に予定がないなら付き合ってくれてもいいが」
「いえ、リリもやる事がありますから」
「………そうか。ま、やり過ぎんなよ」
その何気ない一言をリリは特に大きく受け止めなかった。リアムとしては、「あまり悪さするな」と言ったつもりだったのだが。
○
二日後。昨日は思いっきり爆睡して寝坊したため、ソーマの酒をパク……買えなかったため、リアムは今日行くことにした。酒屋に着いた。
「………ここか」
万引きした回数は星の数ほどあったが、酒屋に入るのは初めてなので、若干緊張していた。で、唾を飲み込んでいざご入店。酒以外にもアイテムも売っていた。ポーションとか。酒などが置いてある棚は、リアムより遥かに背が高くて、店員からは死角しかない。こりゃ万引き楽勝だなと思いつつ、ソーマの酒を探してる時だ。
「何でも屋じゃないか?」
声をかけられた。振り返ると、いつぞやの屋根修理のお得意様、リヴェリアが立っていた。
「あっ、リヴァリアじゃん。どしたのこんなところで」
「いや、先日アイテムを切らしてしまってな。その補充だ」
「ふーん……。冒険者ってのも大変だねぃ」
「何でも屋は何の用で来たんだ?」
「俺はソーマの酒をパク……いや、万引……もらいに来たんだよ」
「全部同じ意味だからな。まぁいい。お前には世話になった買ってやろう」
「いや、別に酒自体が必要なんじゃねぇんだ。俺に必要なのはソーマの酒の秘密の方だ」
「秘密?どういう意味だ?」
「いや、秘密ってのも違うな。もっとこう……ソーマファミリア全体の事なんだよ。そのために、まずは酒を飲もうと思ってさ」
「なるほど。確かに、あのファミリアの団員の言動は薄ら寒いものがあると聞くな」
「あ?そなの?てかなんか知ってるなら教えてくれよ」
「すまないが、私はあのファミリアについて知ってることはあまりない。だが、あの派閥の事情に少なからず精通している人物なら心当たりがある」
「マジ?」
「ああ。ついてくるか?私達のファミリアに」
○
(まさか、近いうちに二度も同じところに来るとは……)
内心でそう思いながらリアムはロキファミリアに入った。玄関をくぐって、まず現れたのはいきなりアイズだった。
「リヴァリア、おかえりなさい」
「アイズ、ただいま」
「その人は………」
アイズはリアムの顔を見て呟いた。
「怪物祭の時の……」
「………ああ。お前あの時のめちゃんこ強い金髪さんか」
「なんだ、知り合いか?」
リヴァリアが二人に聞いた。
「うん。名前は知らないけど、一緒に戦った」
「ほう、強いのか?」
「鉄パイプ一本でトロールやソードスタッグとか……他のモンスター達六匹を相手に渡り合ってた」
「……………えっ?」
「やめろよ。あの時は久々の運動で腕が鈍ってたんだから」
リアムをリヴェリアは瞬きをしながら見た。
「ほ、本当か何でも屋?」
「あ?まぁ、そうだけど」
「…………………」
偉人は割と近くにいる、という名言を思い付きながらリアムをまじまじと見るリヴァリア。
「おい、それよりソーマファミリアについて詳しい奴ってどれだよ」
「あ、ああ。すまない。今案内する。アイズ、ロキは何処にいる?」
「居間でゴロゴロしてたよ」
「そうか。すまない」
言われるがまま、居間へ向かった。その居間へ入る途中、白い獣人とリアムの肩がぶつかった。
「おい、待てや」
「あ?」
その白い獣人、ベートはリアムに声を掛けた。
「テメェ、人にぶつかっといて礼もなしか」
「礼」
言うと、リアムはリヴァリアの後に続く。
「いや待てぇええええ!なんだ今のはそりゃあ!」
「あ?礼もなしかっつーから礼出したんだろうが」
「言葉に出してどうすんだよ!いや言葉に出すんだけども!そうじゃなくてもう少し言い方考えろや!」
「南斗水鳥拳!ヒャオゥッ!」
「そっちのレイじゃねぇよ!てか無駄に上手いな!そうじゃねっつってんだろ!そもそも誰だテメェ!なんでここにいやがる!」
「なんだ、いちゃわりーのか?」
「悪いわ!俺は雑魚が嫌いなんだよ!冒険者でもねぇ雑魚がこんな所にいんな!」
「やめろベート」
口を挟んだのはリヴェリアだ。
「彼は私の客人だ。それに、お前では勝てんぞ」
「アァ?」
「恥をかきたくなければそれ以上の暴言はよせ」
「おいおい面白ぇ冗談言うようになったなリヴェリア。俺がそんな奴に負けると思ってんのか?」
「冗談ではない。………まぁこれも良い機会だ。やってみろ。ただし、やるなら表へ出ろよ」
「はっ、そんな必要ねぇ。こんな奴、5秒で済ます!」
そう言うとベートは殴り掛かった。顔面へ一撃飛んで来たが、それを首を曲げて躱すリアム。
「おいリヴェリア。何勝手に開戦の火蓋切ってくれてんの?」
「すまない。そこのバカを一度とっちめてやってくれ」
「別にいいけどよ……」
「なるべく、ここを荒らさないようにな」
「余所見してていいのかよ!」
ベートはそう吠えると、顎を殴り上げてきた。それを後ろに反って躱す。アッパーの勢いで空中に舞い上がったベートは、空中から踵落としをして来た。
「オラァッ!」
ブアッ!と音を立ててリアムに直撃した。リアムの足が床にめり込んだ。だが、肝心の踵落としは両腕でガードされている。
「ッ⁉︎」
そして、踵をリアムは払ってベートの姿勢を崩すと、顎に掌底を放った。直撃し、後ろにひっくり返るベート。
「悪いリヴェリア。床に穴空いた」
「それはそこのバカのせいだ。気にするな」
「おい待てェ!納得いかねぇ!もう一回だ!」
ベートが勢いよく起き上がった。
「今の食らって気絶してないのか……中々タフな野郎だな」
「いいからもっかいだコラァッ!」
と、吠えるベートを心底ウザそうに見た後、リアムはクアッと欠伸をした。そのリアムの肩をヤケに黒い手が掴んだ。
「あん?」
「君強いねー!あのベートを一発で倒すなんて!」
「倒されてねえ!喧嘩は片方が折れるまで終わらねえ!」
「いやいや、どう見ても負けてたよベート」
「見てたけどこの子、今一歩も動いてなかったもん」
黒いのが二人に増えた。
「いやいや。誰なの君タチ?」
リアムが聞くと、片方の胸のない方が言った。
「私はティオナだよ!よろしくね!」
「ティオネよ。よろしくね」
「いや、わかりずれーよ。もうちょっとキャラ付けし……」
と、言いかけたところで、リアムの目が二人の胸に行った。
「………無い方が『ナ』か」
「どこのことだぁ!」
ティオナが殴り掛かろうとするが、それを抑えるティオネ。隣のリヴェリアが解説した。
「ちなみにその二人は双子の姉妹だ」
「双子なの?どこでこんなに差が……」
「おいぃ!よく本人の前で言えるね君は!」
「さぁ、ロキの元へ案内しよう」
「うーっす」
「待て!一発殴らせて!」
「テメエ!俺との勝負はついてねーぞ!」
ギャーギャー五月蝿い二人を捨て置いて、リヴェリアとリアムはロキの元へ向かった。