翌日。朝からピンポーンと呼び鈴が鳴った。当然、昨日徹夜で働かされて眠かったので、留守の振りだ。それは、冒険から帰ってきたリリも同じで、居眠り決め込んでいる。
「……………」
「……………」
ピンポーン
「…………リリ」
「………………」
「てめっ、起きてんだろ。分かってんだよ」
「………なんですか?」
「お前、出ろ」
ピンポーン
「やだですよ。疲れてるんですから」
「お前と違って俺はあの地獄のメニューを昼飯抜きでやらされてたんだぞコラ」
「リリだってダンジョン帰りですぐですよ」
「サポーターは精々援護射撃くらいで戦わねぇだろ」
ピンポーン
「分かりました。ジャンケンです」
「勝っても負けても恨みっこなしだからな」
「分かってますよ」
で、二人で布団の中から手を出す。
「心理戦込みでいきましょう」
「いいぞ」
「リリは、パーしか出しません」
「じゃあ俺はお前がパー以外を出したらブッ殺す」
「ふえっ⁉︎」
「じゃーんけーん……」
「じ、じゃんけん……!」
ピンポーン
リアム→チョキ、リリ→パー
「はい、俺の勝ち」
「えーやですよー」
「いいからいけ」
「あと五分だけ〜」
ピンポーン
「オラ早くしろ」
「ちぇー」
言われるがまま、リリは起き上がり、玄関を開いた。
「ふわ〜い……新聞ならいりませ……」
と、言いかけたところでリリの声は止まった。
「あの、何でも屋さん……ですか?」
「」
「あれ?君は……」
リリの呼吸が止まる。目の前にいるのはアイズ・ヴァレンシュタイン。剣姫だ。思わず見上げたまま唖然としてると、後ろから声が掛かった。
「てめっ、応対にいつまで掛かってんだよ」
「り、リアム様!大変です!あの剣姫が……!」
「おう、アイズ」
「こんにちは、リアム」
(知り合いっ⁉︎)
ガビーンとするリリを捨て置いてリアムは言った。
「何の用だ?」
「何でも屋さん、だよね……?お仕事の、依頼なんだけど……」
「うーい、じゃあ上がれよ」
そのままアイズを連れて家の奥に向かうリアムをみながらリリは思った。
(なんなんだろこの人)
○
ソファーにアイズを座らせ、その前にリアムが座った。
「お茶です」
「ありがと……」
リリがアイズにお茶を差し出すと、リアムの隣に座った。
「で、なんの用?」
「その、リヴェリアとエイナさんから、相談事ならオススメだって言われて……ベートさんには止められたんだけど……」
「ベートにとりあえずクタバレって言っといて」
「分かりました」
「えっ?分かっちゃうの?」
リリが全くなことを口から漏らしたが、無視された。
「それで、相談は?」
「その……ベル・クラネルのことなんですけど……」
「あの白髪がどうかしたか?」
「……知り合いなの?」
「ああ。下僕だ」
「どういう関係、なの……?」
「だから下僕」
「違います」
リリが口を挟み、そのまま説明しようとした時、言葉が出なかった。
(………この人とベル様ってどういう関係なんだろ)
困った顔をしてると、「ま、いいやな」とリアムが続けた。
「とにかく、ベルがどうした?」
「その、ベルとお話がしたいんです。ちょっと、お話があって……」
「ふーん……どんな?」
「それは……その、少し前に、彼をミノタウロスから助けたことがあって……それ以来、会うたびに逃げられちゃうんです……」
ショボンとした顔で言った。
「つまり、あいつをベッコベコにして捉えりゃいいんだな?」
「いやそこまでは言ってないけど……」
「とりあえず、連れて来ればいいんだな?」
「うんっ、お願い」
「じゃああと30分くらいここで待ってな。そうすりゃすぐに来る」
「そうなの?」
「この、ちっこいのがあいつのサポーターだからな。ダンジョンに潜るなら迎えに来るだろ」
「なるほど……わかりました」
言うと、アイズを待機させた。数分後、
「おーいリリー。ダンジョンに行こー」
玄関の方からベルの声がした。
「あ、ベル様!もう少し準備に時間が掛かりますので上がって待っててください」
「ん?そう?じゃあお邪魔します」
ベルは言うと、家に入った。廊下を歩き、今に入ってくる。
「よーしリアムくん。この前のウノの続きでも……」
そこで、言葉が途切れた。目の前に、リアムとリリとアイズがいたからだ。固まること10秒、互いを認識するには十分過ぎる時間が過ぎた。と、思ったらベルは逃げ出した。
「あっ………」
アイズが切なそうな声を上げた時、リアムは手元にあった電気スタンドを振りかぶった。
「逃がすかこの野郎ォォォォッッ‼︎‼︎‼︎」
それを思いっきりぶん投げ、フル回転しながらベルの後頭部に直撃させた。
「捕獲したぞ」
「ありがと」
とりあえず、お礼を言うアイズだった。