豊穣の女主人の上に何でも屋を開いた   作:フリーザ様

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調教と探し人

 

 

17階層。そこで、オッタルはミノタウロスを調教していた。これで、20頭目の調教である。と、いうのも本命の1頭を隠すための19頭だ。なぜ隠す必要があるのか、それは……、

 

「随分おもしれぇことやってんなオイ」

 

声を掛けられた。振り返ると、リアムがミノタウロスの頭を引きずって歩いてきていた。

 

「………ふむ、やはりここまで来たか。何でも屋」

 

「あ?初対面だよな?なんで俺を知ってんだ?」

 

こいつの為だ。こいつは、オッタルの主神フレイヤ曰く、ベルの育成の邪魔になる人物だ。こいつは、ベルが危機に陥れば、確実に助ける。助けてしまう。

 

「いや、噂を聞いたことあるだけだ」

 

「へぇ……そういうお前は何?育て屋ですか?どうせ育てるならメタモンも一緒に頼むわ」

 

「すまないが、俺に選別の趣味はない。捕まえた奴や生まれたモンスターがどんな奴でも育てる」

 

「そうかい。じゃ、その育てた奴をどうするつもりだ?」

 

「……………」

 

聞かれるも、オッタルは答えない。目を閉じると、静かな口調で言った。

 

「………すまないが、この場を見られた以上、貴様を生きて返すわけにはいかない」

 

「俺はダンジョンで天寿を全うするつもりはねぇぞ」

 

「ダンジョン育ちの人間がよく言う」

 

「…………」

 

今度はリアムが黙り込んだ。

 

「なんだ、バレていないとでも思ったのか?むしろ、オラリオの人間の方がどうかしている。たかだか髪を黒く染めただけで気付かないとは」

 

「………まっ、別に隠すこたァねぇか。それよりお前、今の内に覚悟決めとけよ」

 

ピリッと雰囲気が変わった。無気力だったオーラが、いつの間にか殺気へと変化している。

 

「どんな理由があれ、モンスターを育ててるバカをほっとくわけにはいかねーよな」

 

ゴオッと風が吹いた。気がした。リアムを中心に。

 

(…………勝てんな)

 

そう判断したオッタルは背中を向けた。

 

「逃げんのか?チキン野郎」

 

「ああ。安い挑発に乗って命を捨てるほど愚かではない」

 

「逃すと思ってんのか?」

 

「貴様に逃がされるのではない、俺が逃げるのだ」

 

言うと、オッタルの背中をまるで庇うようにミノタウロスが立ち塞がった。1頭ではない。7、8頭ほどいる。それ以外のモンスターもダンジョンから生まれ始めた。

 

「………チッ、まぁいいか」

 

そう呟くと、リアムはその辺のクリスタルを無理矢理引き抜き、剣に変えて突撃した。

 

 

 

 

「全っ然っ、のろいッッ!」

 

アレから2日、ベルは軽快にインプを狩っていた。ヘスティアナイフで物凄い勢いでモンスターを倒していく。

 

『ゲッ、ギィイ⁉︎』

 

インプが驚愕の声を上げる中、次々とモンスターを倒して行った。で、あらかた片付き、ベルはリリを見た。

 

「ふぅ……。終わったよ、リリ」

 

「……………」

 

「リリ?」

 

「は、はい!何でしょう?」

 

「どうしたの?何か心配事?」

 

「いえ………」

 

リリは返事を濁らせた。リリが心配してるのは、リアムの事だ。アレから、帰って来ていない。どうせ家賃払うの嫌だから何処かに逃げてるとも考えられるが、どうも嫌な予感がした。

 

「僕で良かった相談に乗るけど……」

 

「いえ、大丈夫です。特に悩みとかはありませんから」

 

リリは作り笑顔を取り繕った。ベルに言えば、必ず助けに行こうとか言い出す。それは無理だ。相手は、ミノタウロス。いくらベルが強くても、今の段階で倒せるとは思えない。

 

(………リアム様)

 

そう心の中で名前を呟く。

 

(リアム様の分まで店のお手伝いさせられてるリリの気持ち、絶対分からせますからねッ!)

 

心配してなかった。

 

 

 

 

だが、それがさらに数日続いては、流石にリリも店の手伝いだのなんだのと言ってられなくなった。

 

(何処にいるんですかリアム様……⁉︎)

 

ベルにお休みをもらって、街中を馳け廻る。が、手掛かりなんてまるで皆無だった。

 

「リアム様………」

 

もう闇雲に走っている。ソーマファミリアの事など忘れて。だが、見つからなかった。そして、路地裏の角を曲がった時、

 

「ムギュッ!」

 

誰かとブツかった。体格差があったからか、ゴロンッゴロンッと転がった。

 

「あん?」

 

上を見ると、獣人の冒険者と思わられる男と緑色の髪の女が立っていた。

 

「コラクソガキ!急に走ってくんな、危ねぇだろうが!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「そう怒るなベート。………むっ?貴様は……」

 

緑色の髪の女、リヴェリアが声を漏らした。リリにも見覚えがあった。確か……と、朧げに思い出す。

 

「………あぁ、何でも屋の所の助手が」

 

「アァッ⁉︎何でも屋だァ⁉︎」

 

リヴェリアが声を漏らすと、隣の獣人、ベートがクワッと目を見開く。

 

「何々ー?」

 

「どうしたの?」

 

さらに、後ろから二人のアマゾネスのティオネとティオナが顔を出す。

 

「どうかしたかベート?」

 

最後に出て来たのはフィンだった。

 

(ろ、ロキファミリアほぼ勢揃い………)

 

圧巻の迫力にリリが軽く引いてると、フィンがリヴェリアに聞いた。

 

「知り合いか?リヴェリア」

 

「ああ。前、何でも屋に依頼した屋根の修理の時に……」

 

「へっ?この前、リアムにリヴェリアが直してもらったのって屋根どころか部屋そのものじゃなかった?」

 

「はぁ?………あっ」

 

ティオナに口を挟まれ、しまった!といった顔になるリヴェリア。その場にいた全員がジト目でリヴェリアを見た。

 

「リヴェリア、あとで話がある」

 

「…………はい」

 

フィンに言われて肩を落とすリヴェリア。

 

「それより何でも屋助手。何かあったのか?かなり慌てていたようだが」

 

「それが……」

 

と、リリは「エイナからの依頼」というところは伏せて説明した。

 

「………ふむっ、なるほど。もういなくなって4日か……」

 

リヴェリアが声を漏らす。

 

「ギャハハッ、案外もうくたばってンじゃねェのか?てかくたばっててくンねェかな」

 

「ベート、縁起でもないこと言うもんじゃないぞ」

 

フィンが口を挟んだ。

 

「まぁ、そういうことなら今度近いうちに我々は遠征に向かう。その時、ついでにその何でも屋とやらを拾っておこう」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

フィンに言われて、リリは頭を下げた。

 

 

 

 

その頃、ベル。豊穣の女主人にて、皿洗いを手伝わされていた。

 

「ごめんなさーい、ベルさんっ!私のお仕事をわざわざ手伝ってもらって!」

 

「わざわざ連れてこられたんですよ⁉︎無理矢理!」

 

シルに手伝わされていた。なんでこんな目に……と、ベルは後悔しながら皿を洗ってると、何となく他の店員さんたちの表情が暗いことに気がついた。

 

(何かあったのかな……)

 

心の中でそう思ってると、隣にリューが立った。

 

「大丈夫ですか、クラネルさん」

 

「へ……?」

 

「この量は凶悪だ。手伝いましょう」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

そのまま二人で洗い物。手伝ってくれたのはありがたかったが、やはり雰囲気は暗い。

 

「あの、何かあったんですか?なんか、空気が暗いような……」

 

恐る恐るベルは聞いてみた。

 

「いえ。大したことではありません。リアムがここ四日間ほど帰って来ていないだけです」

 

「ええっ⁉︎そ、それ大したことじゃないんですか⁉︎」

 

「前にも何度かありましたから。恐らく、大掛かりな仕事をしているのでしょう」

 

「リリを置いて、ですか?」

 

「リアムはどうでもいいことには人に迷惑をかける癖に、自分がヤバそうだと思った事には決して他人は巻き込まない。今回も、その判断で彼女を置いて行ったのでしょう」

 

「………もしかしてリューさん、リアムが心配なんですか?」

 

「ええ、まあ。リアムは私達の中では弟のようなものですから」

 

「そう、なんですか……」

 

すると、ベルはふと思ったことがあったので聞いてみた。

 

「あの、リアムって冒険者だった、んですか?」

 

「…………」

 

リューの手が止まった。

 

「………何故、そう思ったんですか?」

 

「いえ、単純に強いからですけど……。前に怪物祭の時に素手でシルバーバックと殴り合ってましたから……」

 

「なるほど……残念ながら、リアムは冒険者ではありません」

 

「あ、そうなんですか……じゃあ、何をしてたんですか?」

 

「私の口からは語れません」

 

「へっ?なん……いえ、そうですか……。すいません」

 

他人の過去を詮索するのはよそうと思い、黙った。

 

「いえ、気にしないでください。ただ、リアムの過去は余り詮索しない方がいいし、知ってしまえば、後悔するかもしれない」

 

「………分かりました。でも、リューさん達、リアムのこと大切にしてるんですね」

 

「………さっさと、終わらせましょう」

 

ベルに言われて、照れたのを隠すようにリューは言った。

 

 

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