豊穣の女主人の上に何でも屋を開いた   作:フリーザ様

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ミノタウロスの肉と冒険者

一気に17階層辺りまで降りた。

 

「レフィーヤ!前だ!」

 

「!」

 

リヴェリアの声で前を見ると、レフィーヤの前のミノタウロスのが石斧のような物を振り下ろした。

 

「きゃっ……!」

 

レフィーヤが思わず頭を抱えたとき、横からリアムがレフィーヤを押し飛ばして、ミノタウロスの肘を脇腹に挟んで、関節を逆方向に曲げながら背負い投げし、武器を離させながら投げて転ばせると、上から石斧で顔面を叩き斬った。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい……」

 

ほけーっとするレフィーヤ声をかけながら、そのミノタウロスの腹を石斧で抉ると、ライターで火を起こし、肉をその辺の木の枝に刺して焼いた。

当然、他のミノタウロスは襲い掛かってくる。襲い掛かってきた二匹の内、一匹は石斧を投げ付けて首を飛ばし、もう片方の突進は正面から両腕でガードした。というより、押し返した。

壁に押し付けると、そいつの脚を思いっきりローキックでヘシ折り、動かなくなったところを顔面に拳を叩き込んだ。

 

「そろそろ焼けたか……」

 

リアムはさっきの焼いてるミノタウロスの所に戻り、肉を刺してる木の枝を掴んだ。

 

「………あちっ。懐かしい味だなオイ」

 

と、呟いた時だ。ゴガッ!とフィンの跳び蹴りが後頭部に炸裂する。

 

「いってぇな!何すんだよ!」

 

「こっちの台詞だよ!何やってんだ君は!」

 

「いや、お腹空いたからつい……」

 

「つい、じゃないだろう!」

 

怒鳴られても知らん顔でリアムは焼いた肉を少し抉って、レフィーヤに差し出した。

 

「レフィーユだっけ?食うか?」

 

「レフィーヤです。あと、その……いりません」

 

「なんだよ美味いのに……遠慮しなくていいんだぞレシーブ」

 

「や、だからレフィーヤです。あの、それより早く魔石を取った方が……」

 

「魔石取っちまったら消えちまうだろうが。少しは考えろカミーユ」

 

「レフィーヤです!」

 

なんて話しながらリアムは肉を咀嚼してると、口の中でガリッと音がした。

 

「あ?」

 

ペッと吐き出すと、魔石だった。瞬間、ミノタウロスの肉は消えて無くなった。

 

「あー!飯がー!」

 

「ベート五月蝿い!」

 

ティオナに怒鳴られ、リアムはメンチを切り合う。そんな様子を見ながら、フィンとリヴェリアはお話しした。

 

「しかし、今日のベートは随分調子がいいみたいだな」

 

「と、いうか戦闘スタイルを変えたのか?なんというか…えげつない戦い方してるな……」

 

「自分より弱い奴はほっとくタイプのあいつが、さっきレフィーヤに『大丈夫か?』とか言ってたよな」

 

「てか、あいつ本当にベートか?」

 

二人はジーッとベートを見た。で、フィンは少し考えたあと、言った。

 

「おいベート」

 

「あ?」

 

「ちょっと来い」

 

「何なんだよ戦えっつったり来いっつったり。ベートさんは一人しかいないんだよ」

 

「や、そうじゃなくて。いいから来い」

 

仕方なくリアムは戻った。

 

「なんだよ」

 

「少ししゃがめ」

 

「あ?」

 

「届かないから」

 

言われてしゃがむリアム。すると、フィンはリアムの頬を抓った。

 

「あ?」

 

「ふんっ」

 

で、引っ張られる。

 

「いだだだだ!てめっ……なにしやがんだクソガキ!」

 

問答無用で拳を振り下ろすリアム。フィンは避けて後ろに下がり、リヴェリアに言った。

 

「本物だ」

 

「むぅ……やはり今日のベートは一味違うだけなのか?」

 

「オイ、何のつもりだカス共」

 

「いや、何でもない。それより、攻略に戻ってくれ」

 

「チッ」

 

ちょっと、怪しまれていた。

 

 

 

 

その頃、豊穣の女主人。

 

「ベル様のレベル2を祝して、」

 

「「「「かんぱ〜い!」」」」

 

ベル、リリ、シル、リュー、ベートが乾杯した。

 

(………何やってンだ俺は……)

 

割と本気でそう思うベートに気付かずシルがベルに言った。

 

「さぁ、ベルさん。沢山お飲みになって下さい。今日はベルさんが主役なんですから。それとも、何かお食べになりますか?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

いつの間にかシルがベルの隣に座り、甲斐甲斐しく世話を焼いている。

 

(たかだかレベル2になった程度で……これだから雑魚は……)

 

馬鹿馬鹿しいと思いつつも、ここではベートはリアムを演じなければならない。なんとか声を掛けようとした。

 

「……………」

 

何も声が出なかった。

 

(やっべぇぞ……あのバカとこいつの距離感がイマイチ分からん……)

 

下手なことは言わない方がいいと思い、口を閉じた。

 

「本当におめでとうございます、クラネルさん。よもやたった一人で【ランクアップ】を成し遂げるとは……どうやら、私は貴方の事を見誤っていたようだ」

 

リューが言った。

 

「い、色々な人に助けてもらった、そのおかげですよ。リューさんにだって、僕は……」

 

そのベルの台詞を聞いて、ベートは少し感心した。普通、そう褒められたら調子に乗るものだと思っていた。

 

「謙遜しなくていい。レベル2にカテゴライズされるモンスターの中でも、ミノタウロスを倒したことは壮挙と言うべきです。クラネルさん、貴方はもっと自分を誇っていい」

 

その通りだ。ベートがミノタウロスを倒せたのは間違っても一ヶ月ちょっとなんて速さではない。どうせなら、この機会にどうなマジックを使ったのか探るのもいいかもしれないとベートは思った。

 

「ちなみに、オメェはどうやってそんな早くステイタスを上げやがったんだ?」

 

「へっ?」

 

さっきまで黙ってたベートが急に口を開いたので、少し怯んだものの、ベルは言った。

 

「どうも何も……普通にダンジョン潜って、神様から更新してもらってたら強くなってただけだよ」

 

「と、いうか、リアム様がそんな事を気にするなんて珍しいですね」

 

「えっ?め、珍しいの?」

 

リリに言われて、思わず怯んだ。そもそも、ベートの中のリアムというのは、ダメニートというイメージしかない。キャラがイマイチ掴めないのだ。

 

(やっぱ、下手に口ださねぇ方がいいか……)

 

と、思い直し黙った。

 

「で、クラネルさん、今後はどうするのですか?貴方達の動向が、私はいささか気になっています」

 

リューが聞いた。

 

「えーと、取りあえず明日は、装備品を揃えに行こうと思っています。防具とか壊れちゃったんで」

 

「その後は?」

 

「へっ?そ、その後?」

 

「いえ、端的に聞きましょう。クラネルさんとアーデさん、貴方達はダンジョン攻略を再開させる際、すぐに中層へ向かうつもりですか?」

 

「……ああ、いえ。11階層で今の体の調子を確かめようと思っています」

 

「差し出がましいことを言うようですが、中層へ潜ることはまだやめておいた方がいい。貴方達の状況を見るに、少なからず私はそう思います」

 

「つまりリュー様は、ベル様とリリでは中層に太刀打ちできないと、そうお考えなのですか?」

 

「そこまで言うつもりはありません。ですが、上層と中層は違う」

 

今更口にすることではないと思いますが、とリューは続けた。

 

「各個人の能力の問題ではなく、ソロでは処理しきれなくなる。中層とはそういう場所です。アーデさんがどれほど助力できるのか私はわかりませんが、クラネルさん一人では、モンスターやダンジョンの地形に対応が追い付かないでしょう」

 

「では、リュー様は……」

 

「ええ。あなた達はパーティを増やすべきだ」

 

「でも、それなら問題ないんじゃない?」

 

シルはそう言うと、ベートを見た。頭に「?」が浮かぶベート。その時だ。

 

「はっはっ、パーティのことでお困りかあっ、【リトル・ルーキー】⁉︎」

 

横にでかい男が仲間を二人引き連れてやって来た。ベートは舌打ちする。これだ、ベートの嫌いなタイプの冒険者。

 

「話は聞ぃーた。仲間が欲しいんだってなぁ?なんなら、俺たちのパーティにてめえを入れてやろうか?」

 

「えっ⁉︎ど、どういうことですか?」

 

「どうもこうも、善意だよ。同業者が困っているんだ。広ぇ〜心を持って手を差し伸べてやってるんだよ。ひひっ、こんなナリじゃ似合わねぇか?」

 

(同業者、ねぇ……。この俺と、この雑魚が)

 

いきなり絡んできた男を睨みながらもベートは耐えた。

 

「いい。結構です。貴方達の手は、彼に必要ない」

 

断ったのはリューだった。

 

「おぉ?何でだい、妖精さんよぉ?俺たちじゃあそいつのお守りは務まらないかい?」

 

「ええ、だから帰りなさい」

 

「ひひっ、おいっ、聞いたかぁ!ポッと出の新人相手にオレ達は足手纏いだとっ!逆じゃなくてよ、はっはっ⁉︎」

 

男達の哄笑。

 

(堪えろ、俺。堪えるんだ)

 

ベートは心の中で呟いた。

 

「嬢ちゃん、俺たちはこれでもずっと前から中層に篭ってるんだがよ?」

 

「そうでしたか」

 

「ああ、レベル2さ。俺たち全員、な」

 

「わかりました。では、失せなさい。あなた達では彼に相応しくない」

 

ピクリと男の顔が揺れた。笑顔を消して、もう一度笑う。

 

「……嬢ちゃん、そんなに俺たちは頼りねえかい、そこのカスみたいなクソガキよりよぉ?」

 

言いながらリューの肩に手を置こうとする男。その手をベートが掴んだ。

 

「あ?」

 

「おいデヴ。タダの雑魚のテメェらが、冒険者を気取ってんじゃねぇぞ」

 

そう言った瞬間、思いっきりブン殴った。

 

「ゲファッ⁉︎」

 

「あっやべっ」

 

思わず手を出しちまった。豊穣の女主人で。気まずそうな顔をしてミアの方を見ると、意外にも頷いていた。

 

「いいよ。今回は許可する。ただし、外でやんな外で」

 

「……そうかい。すまねぇな」

 

そう言うと、ベートは冒険者の群れを店の外に放り出すと、指を鳴らしながら言った。

 

「来いよ、冒険者」

 

 

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