西門が派手に吹き飛んだ。それと共にリアムとモンスター合計9匹ほどが飛び出てきた。
「っ⁉︎ な、なんだ⁉︎」
「モンスターだ!」
と、騒然となる中、リアムは受け身を取り、モンスターに向き直った。
「! リムくん⁉︎何事⁉︎」
近くにいたエイナがリアムに聞く。
「なんか知らんがモンスターが逃げた。俺がここを食い止めるから、お前はガネーシャに連絡、それと冒険者を掻き集めてこい」
「食い止めるって……武器もないのにどうやって……⁉︎」
すると、リアムは近くのぶっ壊れた鉄パイプを握った。
「こいつでどこまでやれるか、だな」
「そんな無茶よ!」
「俺に生きて帰って欲しけりゃ、早く増援を呼んで来い」
「………わかった」
そのままエイナは走り出した。
○
「ガネーシャ様!捕らえていたモンスターが脱走したそうです!」
「何⁉︎脱走したモンスターの数は何匹だ?」
「9匹です。中には腕利きの冒険者じゃないと危険な相手も……!」
「なら他のファミリアの冒険者にも力を借りろ!市民の安全が最優先だ!」
「はい!」
と、台詞だけでわかる会話だった。
○
「と、いうわけなの!だから……!」
「わかった!」
と、色んな人に協力してもらってるエイナ。すると、そのエイナの後ろから声が掛かった。
「あの、何かあったんですか?」
アイズだった。アイズ・ヴァレンシュタイン。
「それが……モンスターが逃げ出してしまったみたいで。今、リムく……怪物祭の運営員が一人で交戦中です」
それを聞くと、アイズは隣のロキを見た。
「うん、ええよ。もうデートどころじゃないみたいやしね。この際、ガネーシャに貸し作っとこか」
許可を得たところでアイズはエイナに聞いた。
「モンスターは何処ですか?」
「こっちです」
エイナとアイズとロキはそのモンスターの場所へ向かった。
○
「モンスターが出たぞぉぉおおおおッッ‼︎‼︎」
その声にベルとヘスティアが反応した。見れば、シルバーバックが真っ直ぐと二人を睨んでいる。
「べ、ベルくん……」
「逃げましょう神様!」
「う、うん!」
そのまま逃げ出す二人をシルバーバックは追った。
○
エイナ、アイズ、ロキが西武門に到着した。
「リムく……!」
と、エイナが言いかけた時、モンスターの方からものすごい勢いで何かが転がってきた。
「えっ……?」
恐る恐る後ろを見ると、屋台に叩きつけられたリアムが倒れていた。
「リムくんっ‼︎」
エイナはリアムの所に駆け寄ろうとした。だが、
「あー畜生……責めて武器があればな……」
頭から血を流したリアムが鉄パイプを担いで歩いてきた。
「あ?エイナさん?戻って来たの?」
「あ、あなた……大丈夫なんですか⁉︎」
「このくらい怪我のうちに入らねーよ」
なんて話してると、二人に影が掛かった。
「「あ?」」
間抜けに二人で声を揃えると、上にトロールのハンマーがあった。そのまま二人の上に振り下ろされるハンマー。だが、それをリアムは鉄パイプでガードする。
「大丈夫か、エイナ」
「は、はい……」
ポケーッとするエイナ。すると、トロールの身体に一本の光が入った。瞬間、真っ二つに裂けた。アイズが叩き斬ったのだ。
「あの、大丈夫ですか……?」
「………援軍か?」
「はい。状況を、教えてもらえますか?」
「シルバーバックが一匹逃げたけど、大体はここにいる。二匹殺した」
「分かりました」
「おい無乳。エイナ頼むぞ」
「誰が無乳やこの罰当たり!」
無視して二人はモンスターの群れに向かっていった。
○
大通りに入ると捕まると判断したベルは路地裏に逃げ込んだ。
「どうしてっ、神様が狙われてるんですか⁉︎」
「し、知るもんか⁉︎あんなモンスター初対面も初対面だ!僕は何もしちゃいない!」
シルバーバックはまっすぐと、ヘスティアを追っている。それは明白だった。そのまま入り組んだ路地裏をくねくね曲がり、自分でも何処を走ってるのか分からない。後ろにモンスターの姿は見えないが、逃げ切ったという保証はない。とにかく走った。
「ベルくんダメだ!こっちはっ……!」
「えっ⁉︎」
目の前にあるのはダイダロス通りだ。人工的に作られたオラリオのもう一つの迷宮。街がすごい入り組んでいる。仕方なくベルは引き返そうとした。だが、
『アアアアアアアッッ‼︎‼︎』
シルバーバックの咆哮が響き、路地裏にモンスターがはっきりと姿を現す。ベルは最早、ダイダロス通りにはいるしなかった。
ゴチャゴチャした道を選んで走るも、シルバーバックは迷わず追ってきた。このままでは追い付かれる、それはベルにもヘスティアにも分かっていた。
「神様、そこ曲がります!」
「う、うんっ……!」
そして、そのまま何度も何度も進む方向を変えた。
(振り切った……⁉︎)
引き離した後方を見る。だが、自分の真上に嫌な音がした。何かが軋む音。
「上っ⁉︎」
その瞬間、シルバーバックが真っ直ぐ降下してきた。
『ギャアアアアアッッ‼︎‼︎』
真上から降ってきたため、ヘスティアとベルは離れ離れになってしまった。そして、シルバーバックはヘスティアを睨む。
『オオオオオオオオオオッッ‼︎‼︎』
「ひっっ⁉︎」
思わず小さな悲鳴が上げるヘスティア。それを見て、ベルは心の底にある小さな勇気を奮い立てた。
(行けよ。行けよっ。行けよッ!行かなくちゃ⁉︎)
「うああああああああああっっ‼︎⁉︎」
ナイフを構えて突っ込んだ。シルバーバックが迎撃しようと太い腕をベルに振り回すも、思いっきり頭を下げたベルに躱され、大きく空振りする。千載一遇のチャンスが来て、ベルはガラ空きになった左腕に向かって、斬り込んだ。だが、ナイフの方がガギンッと音を立てて折れた。
(刃こぼれ⁉︎)
その瞬間、シルバーバックの拳がベルを正面から捉えた。
『ガァァァッ!』
「ガッ……!」
身体を掴まれ、壁に叩き付けられた。
「ベルくんっっ!」
ヘスティアの悲鳴が響いた。
○
会場の西門。
「ゥウアアアアッッ‼︎」
気合を入れて、リアムは鉄パイプでモンスターの顎をジャンプして殴り上げた。だが、それでも所詮は鉄パイプだ。モンスターはなんとか堪えると、空中のリアムに拳を叩き込んだ。ブシィッ!と血が噴き出す。
だが、血が出たのはリアムからではない。リアムは、鉄パイプをモンスターの下腕に突き刺し、ぶら下がっていた。ニィッと笑うと、ぶら下げてる両足を振り上げてモンスターの腕を思いっきり蹴り上げた。ボギイィッ‼︎とモンスターの腕がへし折れる音が響く。
『ギアアアアッッ‼︎』
続いて、モンスターの悲鳴も響いた。その隙に、腕から鉄パイプを無理矢理引き抜いて、顔面を袋叩きにした。
『ギッ!ギアッ……!アアッ……‼︎』
モンスターの意識が薄くなっていく中、目の前でリアムは鉄パイプを振り被った。そして、脳天に思いっきり振り下ろした。
ドシャッ……と膝をつくモンスター。その戦いぶりを見ながらロキが呟いた。
「………なんや。あの兄ちゃんも中々やるやん。どこのファミリアなん?」
「さ、さぁ……あの子は、何でも屋さんをやってることしか知らないので何処のファミリアとかさっぱり……」
「しかし、なんや見たことあるなぁ。あの子の戦闘」
「へっ?」
「ほら、少し前に伝説のレベル9とかいう噂あったやん。その戦闘にそっくりなんや」
「………見たことあるんですか?その戦闘」
「一回だけな。あの時も、なんていうか……どっちかっつーとモンスター同士の戦いみたいやったなぁ……」
そんな話をしてる間に、あっという間にモンスターは全滅してしまった。
「ふぅ……これで終わりか」
リアムとアイズが仕事を終えて戻って来る。
「り、リムくん!血ぃ出てるよ!ほら、手当てしないと……」
エイナが急いで駆け寄った。だが、リアムは首を振った。
「いや、まだ終わってないか。シルバーバックが一匹残ってる」
「そんな体で行くつもり⁉︎」
「ああ。俺は役員だからな」
「臨時の役員にそこまでさせるつもりはないわ!後は……!」
「いいだろ別に。ブランク明けでようやく身体があったまってきたところだ。ここからが本番だろうが」
そう言いながらニヤリと口を歪ませるリアムに少しゾクっとするエイナだった。
「じゃ、行ってくるわ」
そう言うとリアムはシルバーバックの後を追った。何処に行ったか知らないのに。