鉄格子の前でヘスティアは待機していた。
(大丈夫かな、二人とも……)
今にして思えば、ヘスティアはリアムの素性も強さも知らない。ただ、尋常じゃないレベルでさっき頼りになり、なんとなく雰囲気で頼んでしまった。
(やっぱり、様子を見に行こうかな……)
そう思った時だ。
「「ぬおおおおおおおおおおッッ‼︎‼︎」」
ベルとリアムがすんごい勢いで走って来た。
「! ベルくん……!リアムくん……!」
後ろにシルバーバックを引き連れて。
「うえっ⁉︎」
ヘスティアも逃げ出した。
「ち、ちょっとちょっとちょっと!なんでそいつまで引き連れてるのさリアムくん!やっつけてくれるんじゃなかったのか⁉︎」
「俺はそんなこと言ってねぇ!ベルを助けると言っただけだ依頼は達成しました!」
「「どこが助かってるんだよ!」」
二人にツッコまれてもリアムは走りながらシルバーバックに言った。
「というわけだシルバーバック!俺はこいつらとは無関係だ!だから見逃してくれー!」
「そうは行かないぞ!君にもしっかりと最後まで付き合ってもらうからな!」
ヘスティアがリアムに飛び掛った。
「てめっ!やんのかコラァッ!」
「あー二人とも!そんな場合じゃないでしょう⁉︎」
ヘスティアとリアムが取っ組み合いの喧嘩になるのを仲裁するベル。その三人に陰が掛かった。
「「「んっ?」」」
上を見上げると、シルバーバックが飛びかかってきていた。
「「「あっ」」」
間抜けな声を出す三人に、シルバーバックの全体重の乗った拳が落ちてきた。ズズウゥーーーンッ……と、重低音が響いた。ベルもヘスティアも、今度こそやられた、と思った。だが、自分達の身には何も起きていない。恐る恐る上を見上げた。リアムが、両腕でシルバーバックの攻撃を支えていた。
「り、リアム、くん……?」
「おいクソガキ二匹」
リアムはそう言うと二人を見下ろした。
「ここは俺がなんとかするから、助けを呼んでこい」
「へっ……?」
「早くしろ。俺に武器はねぇ。長くはモタねぇぞ」
「そ、そんな……!」
「ベルくん!」
ヘスティアがベルの手を引いて逃げた。それを確認すると、リアムはシルバーバックの腕を押し返した。
「さて、踏ん張りどころだな」
○
「神様!待ってくださいって!神様!」
しばらく走ってから、ベルがヘスティアに言った。だが、ヘスティアは止まらない。
「なんだいベルくん!」
「あのままじゃリアムがやられますよ!」
「だからって引き返せないよ!戻ったって三人でやられるだけだ!」
「だからって見捨てていい理由にはならないですよ!」
「じゃあ、今の君に何ができる?」
「っ」
言われて、ベルは怯んだ。そして、悔しそうに下唇を噛んだ。
「でも、だからって……」
「心配するなベルくん。君の言う通り、彼を助けるのは君の役目だ」
「へっ……?」
で、二人は路地裏に隠れた。レスティアは自分の胸に掛かっている布を取った。中から出てきたのはナイフだ。
「いいかいベルくん。こいつで、シルバーバックを君が倒すんだ」
「これは……?」
「このナイフは君が成長すれば、このナイフ自体も成長するんだ。つまり、ベルくんの【ステイタス】が上がれば上がるほど、このナイフの性能も上がるんだ」
「なるほど……ここ最近、全然【ステイタス】更新してませんでしたからね」
「問題は、君にシルバーバックに向かっていく勇気があるかだよ」
「!」
「大丈夫、僕が君を勝たせてやる。今、君は自分のことを信じてやれないかもしれない。なら、代わりに君を信じてる僕を信用してやってくれないかい?」
「………わかりました!」
○
シルバーバックの拳をリアムは躱すと、勢いを殺さず、そのまま背負い投げをした。どっかの壁に突っ込むシルバーバック。だが、すぐにリアムをギロリと睨んだ。
「チィ、ちったぁ怯めよ……!」
そうボヤくリアムにシルバーバックは襲い掛かった。手に繋がれてる鎖を鞭のようにしならせて襲い掛かった。それを落ち着いてリアムは躱し、隙を見つけて自分の腕に鎖を巻きつかせた。そして、
「ウオラァッ‼︎」
力づくで鎖を引っ張り回し、反対側の壁に叩きつけた。が、シルバーバックは壁に着地していた。
「………マジ?」
逆に鎖を引っ張られ、壁にリアムは叩きつけられた。
「いってぇな……倍返しだ」
リアムは更に鎖を引っ張ってやり返そうとした。だが、その鎖はバギン!とブチ切れた。
「うおっ……!」
後ろにひっくり返るリアム。そのリアムにシルバーバックが襲い掛かった。
「ちぃっ……!」
リアムはガードしようとした。だが、自分の体が何者かに運ばれた。
「っ⁉︎」
「大丈夫?リアム」
「ベル……!何で、戻ってきて……!」
「決まってるだろ。僕があいつを倒すからだ」
言うと、ベルはヘスティアナイフを抜いて、シルバーバックを睨んだ。そして、脱兎の如く駆け出した。
「うああああああああッッ‼︎‼︎」
雄叫びを上げながらシルバーバックに向かう。シルバーバックも迎撃しようと走り出した。シルバーバックの鎖を前転して躱し、着地の瞬間に思いっきり地面を蹴った。
「あああああああああッッ‼︎‼︎」
シルバーバックの胸に向かってナイフを突き出し、全身全霊をかけて一撃必殺を放った。そのナイフが胸部中央に突き刺さった。そのまま固まるモンスターとベル。が、すぐにシルバーバックは後ろに倒れた。
「っ………」
ベルも尻もちを着いた。
(倒した……僕が、モンスターを……)
まだ信じられなかった。すると、後ろからベルの腕をリアムが引き上げた。
「大丈夫か。ベル」
「リアム……君の方こそ大丈夫なの?今更だけど、助けに来てくれた時から血が出てたよね」
「怪物祭の方でチョッとな。まぁこのくらい問題ない」
「………じゃ、戻ろっか。神様が待ってる」
「おう」
二人はヘスティアの元へ戻った。