「いだだだだ!ちょっと待てって!痛いって!」
豊穣の女主人の裏。リアムはアーニャとリューに消毒と包帯を巻かれていた。馬鹿みたいに喚くリアムの頭に包帯巻くアーニャが言った。
「男なら我慢するにゃ」
「染みるって!染みてるって!」
「子供ですかあなたは」
足の傷に消毒液を垂らすリューも呆れたように言うと、リアムはギロリと睨んだ。
「じゃーお前やってみろよ!シルバーバックのパンチ正面から受けるよりいてーからな!」
「怪我してない人が消毒されても何も意味ないじゃないですか」
「あれだよ。心と言葉の毒を消すんだよ」
「頭に来ました」
「どこの正規空……いだだだだっ!傷口を握り締めるなアホ!ごめんなさい!俺が間違ってました!」
なんてやってるのを見ながらシルが楽しそうに笑った。
「でも珍しいね。リアムが怪我作って帰って来るなんて。なんだか懐かしい。昔は毎日だったよね」
「そうにゃ。その度にシルがものすごい心配してリューが剣を持って仇討ちしようとしてたにゃ」
クロエが懐かしむように言った。
「あの時のリアムは獣のようでしたからね。少しでも自分や私達の悪口が聞こえると相手が冒険者でも噛み付いてましたね」
「お前だって大して変わらね……だから傷口にデコピンすんな!」
リューにデコピンされて、思わず涙目になるリアムだった。すると、ガチャッとドアを開いてルノアが入ってきた。
「ねぇ、リアムにお客さん来てるけど……」
「へっ?俺に?また仕事?いやぁ、最近商売繁盛してますなぁ、あっはっはっ」
「いや、そういうんじゃないと思うけど。一応、上で待っててもらってるよ」
「じゃ、ちょっと行ってくるか……」
リアムはよっこらせっと立ち上がると、自分の家に向かった。
○
中にいたのは、エイナだった。
「あ、リムくん」
「おー。エイナさんか」
「今日はありがとね。助かっちゃった」
「別に。で、何の用だ?また依頼?」
「ううん。お金まだ渡してなかったから」
「ああ、そういやそうか」
言いながらエイナは封筒を渡した。それを手に持っただけで分かった。
「………多くね?」
「いや、怪我人無しで今回防げたのは間違いなくリアムくんのおかげだって、ガネーシャ様も感謝してて、大会運営側みんなからお礼」
「マジで?」
「うん。私からも少し奮発しちゃった」
「エイナ、お前神。マジで神……そこらの神より3倍くらい神様やってる……」
「もうっ、何言ってるの?」
クスッと微笑むエイナ。
「これでお前ここしばらくは俺、調味料と512分の1カップ麺生活から脱出できるわ」
「いいんだよお礼なんて。ほんのお礼の気持ちだから。ありがとね。これからも何かあったら、ご贔屓にさせてもらうからね」
エイナは言うと立ち上がった。
「もう帰んの?」
「うん。まだ後片付けが済んでないから」
「手伝おうか?」
「ううん。もうお金渡しちゃったし、またね」
エイナはそのまま出て行った。そのあとをぼんやりリアムは見たあと、封筒の中身を見ないでポケットにしまい、机の上に出しっ放しになっていたヘルメットを拾った。今回の作業でたまに被っていたものだ。そして、それを振りかぶると窓に向かって思いっきりぶん投げた。
「ニャー!」
その瞬間、悲鳴とドッシーン☆という効果音が聞こえた。窓の外を見ると、シル、アーニャ、リュー、ルノア、クロエが倒れていた。どうやら、五人でその五人の所に飛び降りるリアム。どうやら、全員で肩車して中の様子を覗いていたようだ。そのバカ五人の所に飛び降りるリアム。
「おいテメーら。何覗いてんだコラ。この性犯罪者共が」
「いやーいい感じだったからついニャ……」
「それより、いくら入ってたにゃ?」
クロエが誤魔化しに入った。そういえばそうだなとリアムは中を見た。そこにはドラマでよく見るようなような札束が一つ入っていた。
「ッ⁉︎ マジで⁉︎」
「どのくらいニャ⁉︎」
「誘拐犯との取引交渉で使われる金の一部みたいな金額!」
「それはすごいにゃ!」
などと馬鹿みたいに騒ぎながらリアムは札束の枚数を数えた。だが、
『俺の肩叩き券』
『俺の店のお買い物券20円分』
『俺の店の割引券10%引き』
などがところどころに挟まっており、総額すると枚数の半分くらいだ。
『……………』
全員が微妙な空気になる中、クシャっと札束を握り締めた。
「あんのクソ野郎どもがぁぁぁぁぁッッ‼︎‼︎」
リアムが吠えた時だ。ザザッ!とミアが現れた。
「クォラ!小娘ども!店番サボって何やってんだぁ!」
「あっ、ヤバイにゃ!」
「逃げろ!」
「待て!俺は関係な……!」
「逃すかぁっ!」
鬼ごっこが始まった。